父は几帳面なので、ときどき思い出したように、終活しなくちゃと言う。
私は、それより一日一日を楽しく過ごしたらと笑ってみせる。
あとのことは残された者たちのしごとだと思う。
どんな生き物だってあしたのことはわからない。
わかるのは今この時だけだ。
できるなら、いただいている時間を楽しんでほしいと願う。

すこし前に、半年ぶりに両親と買い物に行った。
母は、車いすに乗って商品をいろいろ見て回り、透析時に着るパジャマを
いくつか自分で選んで買った。
久しぶりだったので、とてもうれしそうだった。
それからひと月くらいあと父が私に、パジャマ結局着てないんだよとしぶい顔で
ぼそっと言った。
父が、せっかく買ったのに着ないのはもったいないと思うのはよくわかる。
けれど私は、母が自分で出かけて、自分の目で手で感覚で買い物をしたという時間が
なにより大切だと思っている。
おおげさかもしれないけれど、それが生きている楽しみのひとつじゃないかと。


急にあたたかくなってきた。
梅の白やピンクが目にとまる。
時は流れているなぁと思う。
おそれることはないか。
不安だとチカラが出せない。
自分で自分を大丈夫にしよう。




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