クロが亡くなった
父が大病を診断された頃にやって来て、そのまま居ついた黒猫の女のコだった。
父と母ふたりきりの暮らしを、やんわり楽しくしてくれた。
来てすぐの頃は中くらいの大きさだったのが、母がたびたびチュールをあげたものだから、
みるみる育って(笑)、体重計に乗せてみたらちょうど五キロになっていた。
目がまんまるで澄んでいて、おっとりとしていて、どんな時にも噛むようなことはなかった。

父がひとり暮らしになってからは、夜は枕元に眠り、昼間、家仕事や散歩の際には、
いつもそばにいて、父の寂しさをやわらげてくれたようだった。
車にあたって頭を打ったのか、家の近くの道路の左端に横たわっているのを私が見つけて、
すぐさま父に知らせふたりで連れて帰った。
まだあたたかくてやわらかで、目をあけたまま眠っているようだった。
その日は父の眼科受診があったので、ひとまずバスタオルにくるんで箱に寝かせて、
行ってくるよとふたりで声をかけてから、哀しい気持ちで病院へ向かった。

亡くなった直後に私が見つけて、遺体が傷む前にふたりで家に連れて帰れたのが、
せめても本当に良かったと思う。
病院にいる間、父は何度も、かわいそうなことしたなぁ・・・、と言っていたので、
これからもお父さんとお母さんを守ってくれるよと、私も何度も言うしかなかった。
クロのおかげか、父の両眼は、軽度の白内障があるものの、眼底関係の病気はなく、
まずまずほっとすることができた。

クロや、今までどうもありがとう。
お父さんが具合悪く寝たきりだった時にも、足元にいつも寝ていたり、
かわいらしくあたたかく楽しくしてくれたね。
もうチュールをあげることはできないけれど、ゆっくりと休んでくださいね。
そして、これからも、お父さんとお母さんのこと、いつでも守ってくださいね。
クロや、どうかお願いしますね。



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