タンデム&ミキシングアンプを作る

2016.8.14



タンデムツーリング時に会話をするためヘルメットにタンデムマイクを付けることにした。タンデムなので無線(bluetooth)は必要なく有線でいい。
ヘルメットにヘッドセットを付けるついでにMP3プレーヤーの音楽も聴けるようにした。



最初にamazonで千円程度で売られている中国製のタンデムトーキングを買ったが、ノイズが多い。ホワイトノイズだけでなく、たまにブゥゥーンと発振してるような耳障りなノイズも出る。 ラインインも付いているが、低音スカスカで音質が悪いしモノラルになる。
上位にKTELのDF1011という既成品があるが2万円と非常に高いうえ、本体は大きいし、電源が別に必要だし、専用の高価なヘッドセットも買わないといけない。

ステレオでバッテリー内蔵でコンパクトなタンデムアンプを自分で作ることにした。



ヘルメットのヘッドセット

aliexpressで売られているヘルメット用ヘッドセット。これで送料込み10ドル。amazonでも中国からの直輸入品が1350円で売られている。
ホン部分はステレオで、低音も出ていて音質は悪くない。3千円くらいの安物ヘッドホンと同程度の音質。
プラグは3.5mmの4極で、一般的なCTIA規格(根元からマイク、アース、R、LでiPhoneやスマホのヘッドセットと同じ)になっている。
テスタでホン部分の直流抵抗を測定すると33Ωだったので、ユニットのインピーダンスは32Ωかな?
アンプ出力から並列接続した2つのヘッドセットに出力するので、16Ωということになる。

音質改善のため、マイク部分を分解してもとのマイクカプセルを外し、WM-62PCに付け替えた。元のマイクカプセルと同径でそのまま収まる。

ケーブル途中についてるボリュームは不要だし雨で濡れると壊れそうなので、分解して可変抵抗を除去しハンダ付けして短絡処置。
引っ張られて切れないようアルミワイヤーで補強したあと、防水のためシリコンボンドで覆った。
これで使わないときはプラグをヘルメットの隙間につっこんどけば、雨でも平気。



筐体

単三×3本の箱形電池ボックスを流用する。
内部の端子・スイッチや仕切り壁を切り取ってがらんどうにする。

電源

SJCAMのSJ4000等用リチウムイオン電池を使う。手持ちが大量にあるし、大きさがちょうどよかったので。
これの充電器をaliexpressで2ドルで買えるので、分解して電池ボックスにする。



回路


回路図の説明(左から順に)

●3.5mmミニ4極ジャック@、A
ヘッドセットからのプラグを刺す。共立エレショップの通販で購入。

●パッシブミキサー
ジャック@Aの2つのマイクからの出力を1つにまとめる。直結するともう一方のマイクに逆流して不具合を与えるらしい。
合流前に3KΩのカーボン被膜抵抗をつけ、合流後にラインインのレベルと合わせるため5KΩの可変抵抗をつけた。
VRのもう一つの足は最初アースに落してたんだがブブブブブと発振してしまい、切り離したら無くなった。
これをLRの2chに分ける。

マイクアンプは無し。メインアンプの増幅率だけで十分な音量を確保できる。
最初、下の図の形でマイクアンプを付けたが増幅されすぎて音割れしてしまった。
コンデンサマイクへの電源供給のためバイアス抵抗2KΩを介してバッテリー+へ接続。


マイクの並列接続で感度が落ちるようで、ジャックにプラグ1つだけ刺してるのと2つとも刺してるのでは明らかにマイク音量が落ちる。
バイクで使うには2つ刺しでも問題無い。(それでも感度が高すぎるくらい)

●3.5mmステレオミニプラグ(携帯プレーヤーからのラインイン)
ステレオミニジャックを付けてもいいんだが、わざわざ両オスのケーブルを持ち歩くのは無駄なので、プレーヤーに直刺しできるようケーブル長5cmのミニプラグを付けた。セリアで売ってる100円のステレオ延長ケーブルから切り出し。
ちなみに携帯プレーヤーの音量3/10(カナルイヤホンつけて室内でちょうどいいくらい)のイヤホン端子出力と5KΩを少し絞ったマイクのゲインが同じくらい。
なのでラインインにはボリュームは付けずパワーアンプに直結する。

●3回路2接点スイッチ(ヘッドセット(マイク)・プレーヤー(ラインイン)切替)
タンデム会話とヘッドホンアンプを同時に使うことは無いので、スイッチで切替える。(パッシブミキサーで混合させることも考えたんだけど、マイクをLRに分けるところでラインインのLRが少し混合しちゃうのが嫌だったん。)
マイクの電源も同時にON/OFFさせたいので、3回路2接点のトグルスイッチを使う。
小電力だが手持ちの3回路スイッチは大きいものしか無かった。aliexpressで10個10ドルの安物。

●パワーアンプ

2〜10Vで動くアンプIC、TA7368PLを使う。1回路なのでステレオで2つ必要。秋月で1つ60円。パワーは電源4Vで16Ωのスピーカーにつなげたとして最大120mWくらい?高速走行時の風に十分負けない音量になる。

回路は基本的にデータシートの応用例そのままだが、プレーヤー更新時の出力レベル変動にあわせて音割れしないギリギリの高増幅率に調整できるよう、3番ピンに1KΩの可変抵抗を付けた。0Ωで最大の約40db(112倍)、300Ωで約29db(27倍)になる。
データシートでは28db(25倍)以下だと発振しやすくなるので不可とのこと。

出力側のカップリングコンデンサとして、最初は秋月の10V470μF高分子ハイブリッド電解コンデンサを付けたが、でかくてケースの余地に収まらなかったので10V100μFのチップ積層セラミックコンデンサ4つ並列に付け替えたら、音の違いはわからんかった。(なんで5つじゃないかって?10個セットのうち2個は9番電源ピンとアースの間に付けたからだよ。)
もともとTA7368は高音質ではないし、ビュービュー風きり音と排気音で騒がしい環境だから、音量が確保できればいいんだ。
他のコンデンサもすべて低グレード温度誤差大の安物積層セラコン。オーディオマニアが見たら卒倒するかも。

ステレオ2回路分をくっつけて空中配線で組んで非常にコンパクトになった。上写真だけでヘッドホンアンプ一式。
信号線が短いぶん基板で組むよりノイズにも強くなっただろう。

これを2分岐させてライダーとタンデマーのヘッドセットのジャックにつなげる。
ボリュームは付けない。マイク音声は高速走行時に十分聞こえる音量で固定。そのマイク音量と携帯プレーヤーの音量4/10が同じ音量になるようにしてあり、音楽を小さく・大きくしたいときはプレーヤー側で音量調節する。

最初はもっと高出力なAD8532ARで作ったが、データシートの応用回路例通りに組んでもうまく動かず(最初の2秒程だけ音が鳴って、あとはミュートになってしまう)。
次にヘッドホンアンプICとして評判のいいLM4880MXで組んだらRfを変えても増幅率が足りないようで音が小さく使い物にならなかった。


●メインスイッチ
電源スイッチとして1回路2接点のトグルスイッチ。インジゲーターとして300Ωの電流制限抵抗をはさんで赤色LEDをつけた。




電池ボックス下面にドリルで穴を開け、切替スイッチ、電源スイッチ、4極ジャック2つ、入力プラグを並べて固定した。
筐体内。電池ボックスとマイクアンプ2枚とパワーアンプをなんとか詰め込んだ。


サイズは高さcm横cm厚みcm、バッテリー込で重さg、パンツのポケットにすっぽり入る。既製品に比べてコンパクトに収まった。