クラシックフィルムカメラにデジカメ(ソニーDSC-WX1)を組み込む

2010.3.19



sony DSC-WX1を改造して、1940年代製のフェイクライカと合体させた。
クラシックな外見で最新の機能と画質を持つデジカメができた。


動画(youtube)で各部の構造や実際の動作の様子を紹介

参考
Cマウントターレット式16mmシネマカメラをフルHDビデオカメラに
バルナックライカをデジカメ化&Cマウントレンズ交換式に
フィルムカメラdemiをデジカメ化&Cマウントレンズ交換式に




ボディは、ソ連のライカコピー機zorki-1(ゾルキー)の刻印を打ち変えたフェイクライカでドイツ海軍(Kriegs marine)仕様。いわゆるマリーンライカ。
e-bayで140ドルで購入。他に海外通販代行手数料、米国内送料、日米間送料を足したら総額2万円くらいかかった。
刻印は忠実に再現されていて、軍艦部には海軍独自の小さな鷲マークと「Fl.no」のコードレター、背面には「luftwaffen eigentum」の文字が打たれている。ただし本物のブラックライカは綺麗なエナメル塗装だが、これはブツブツザラザラの半つや消し塗装。
元のzorkiがDIIのコピーなので、スローシャッターダイヤルとアイレットは無い。

中に組み込むのは、ソニーのDSC-WX1。ヤフオクで保証書無しの中古を18000円で購入。(どうせすぐ分解するから新品を買うのは馬鹿らしい)
裏面照射CMOSを使い高感度に強く、換算24mm F2.4という広角で明るい(F1.4が当たり前のCマウントレンズに比べると暗いけど・・)ズームレンズを備え、720Pの動画も撮れる。
ただしメモリースティックしか使えないのはマイナスポイント。SDHCをたくさん持ってるので、できれば使いまわしたかったが。
メモステが嫌で最初はキャノンのIXY930ISと迷ったんだが(こっちはSDHCなので手持ちのが使える)、本体の形状がWX1のほうが四角くかくばってて組み込みしやすそうだったのでWX1にした。



分解、前準備

WX1はサイズ的にはそのままでも中に入るが、そうすると電源OFFのときレンズ部分がボディ表面よりも奥に引っ込んで見栄えが悪いし、WX1は薄いのでレンズをボディ前面に寄せると液晶モニターが中にひっこんでしまう。
配置の自由度を高めるために分解した。
見えるネジを全部外して、パズルのように組み合わされた各部をずらしてばらしていく。30分ほどで下の状態になった。

@本体基板&電池ボックス、Aレンズ&CMOS基板、B上面スイッチ基板&ストロボユニット、C背面スイッチ基板、D液晶モニタ
の5ユニットで構成され、本体基板とそれ以外の4ユニットはリボンケーブルでつながっているのである程度の配置代えができる。改造しやすくて助かる。
本体基板は小さい。このサイズでこの機能ってのは凄い。


zorkiを分解して内部構造を撤去。動作快調だったので勿体無いけど、フィルムなんて使わないからなー。空動作させるにも16mmシネカメラのほうが面白いし・・
表皮(グッタペルカ)はバキバキに割れるので全部はがすことにした。後から本革を張ることにする。


zorkiの内部構造を撤去して底蓋のロックが効かなくなったので、ボディに小さなネジをつけ、ネジの頭がロックにかかるようにした。
aufとzuの位置が逆になるので、いったんロック金具を外して180度回してつけた。

現物合わせで配置を検討。完成した姿を想像しながらボディにデジカメの中身をはめこむ、このときが一番楽しい。



組み込み


WX1は液晶モニタが大きく、zorkiのボディの高さとモニタの縦幅が同じ長さ。
(あと数mmでもモニタが大きかったら入らなかったので危なかった。本当に図ったかのようにぴったり同じサイズ。)
なのでモニタをボディにはめ込むには、ボディ背面に穴を開けるのではなく一部を切り取らないといけない。レンズをはめ込むため前部分も切り取るので、ボディが完全に左右セパレートになり強度が落ちてしまうが仕方ない。
ハンドソーでモニタの幅分を切りとり、モニタをはめ込み、エポキシパテで固定した。


背面スイッチ基板はモニタの右に固定した。
一番上のズームボタンから一番下のメニューボタンまで、zorkiのボディにギリギリ収まる。

zorkiのレンズマウント穴の後ろにWX1のレンズユニットを付けると、電源OFFでレンズが収納された状態だとへこんでしまってかっこ悪い。
レンズは少し飛び出してたほうが見栄えがいいので、レンズユニットがあたるzorkiのボディを全部切り取り、レンズユニットの前面とzorkiボディ表面を一致させ、エポキシパテで固定した。
この状態だと見栄えが悪いが、後から表革を貼るので問題ない。




注意・・・リチウムイオン電池の分解は危険なのでマネしないでね。


WX1の電池NP-BG1は容量が小さいし、本体に付属の一つしか持ってないので、大容量でたくさんもってるDB-L50(=KLIC-5001)が使えるようにする。
WX1の本体基板ユニットにくっついている電池ボックスを取り外し、電池端子にケーブルをハンダ付けし、ジャンクデジカメから取り外したNP-60(DB-L50と端子形状は同じ)用の電池ボックス端子を付けた。

が、しかし!

試しに電源を入れ試運転してみると、レンズが出て一瞬だけライブビューが表示されたあと、黒画面になり「このバッテリーは使えません」の文字が表示されたのち勝手に電源が落ちてしまった。
NP-BG1の中に識別回路が入っていて、それ以外の電池だとチェックして拒絶するようになってるみたい。

一瞬呆然としたあと、怒りがわいて来た。
「ソニーよ、わざわざコストをかけて電池に識別回路を付けてまで純正品を買わせたいのか。他メーカーのデジカメにはこんな制限ないぞ!メモリカードだけでなく電池まで囲い込みか!!ふざけるな!!!」と。
「もう2度とソニー製品は買わねぇ。」という思いと共に「これに屈してNP-BG1の予備電池を買ったら負けだ。なんとかDB-L50を使ってやろう。」という挑戦意欲も沸いてきた。

NP-BG1を分解して識別回路を取り出して流用することにした。
つまりこれまでは「WX1〜(電池ボックス)〜NP-BG1回路(ハンダ付け)NP-BG1生セル」だったのを「WX1(ハンダ付け)NP-BG1回路〜(電池ボックス)〜DB-L50」にする。
WX1にはNP-BG1がついてるように認識させて、NP-BG1の回路にはDB-L50を生セルとして認識させる。
これに失敗したらNP-BG1を一つ失ってしまい余計な金を使うことになるが、ソニーの思惑通りに純正電池を買うことは絶対にしたくない。


リチウムイオン電池の解体は初めてなので慎重にNP-BG1を分解。蓋の部分に回路が収納されているようだ。
蓋と生セルの間にある金属箔を切断し分離。蓋の金属箔にケーブルをハンダ付けし、DB-L50の電池ボックスを付けた。
ここで電池ボックスにDB-L50を付けてNP-BG1の出力端子を計ると0.15Vくらいしかない。何で?
NP-BG1の蓋の下部には電池の金属ケースに触れるような端子があり、そこにプラスをかけたら4.2Vが出た。(ふつうケースはGNDだからマイナスだと思ったが違った。)
WX1の電池端子とNP-BG1蓋の端子にケーブルをハンダ付けして接続。

さあWX1の電源を入れてみよう・・・ドキドキ・・・

よし正常起動した!撮影もできた!ざまあみろソニー、してやったぞ!!
自分で考えたアイデアがうまくいくと達成感がある。
NP-BG1の蓋はショートしないようにテープで巻いて、zorkiのボディ内部に両面テープで固定した。

電池は縦に入れて、底から抜き差しできるようにしたい。
DB-L50(NP-120)の縦の長さ+電池ボックス端子の厚み(1.5mm)と、zorkiのボディの高さはちょうどぴったり同じなので、電池の底にひっかけて抑えるプラスチックの爪を入れる余裕はない。zorkiの底蓋で直接電池を抑えることにする。
底を下にした状態で底蓋を外すと電池が落ちてしまうので、電池交換やメモリカード交換のときは底を上にした状態で底蓋を開けて対応する。


レンズとモニターの間の隙間がDB-L50の厚みと同じなので(というかDB-L50が入るようにモニタとレンズを固定したんだけど)、アルミ板を曲げて左右のレールを作りエポキシボンドで固定、 電池ボックス端子をエポキシパテで固定した。

これでNP-BG1の倍の容量(2000mAh)があり、互換電池が安く(一つ1000円くらい)で買えるDB-L50が使えるようになった。
HD1010改ポケットムービーHDV改ポータブルGPSナビも全部DB-L50を使うように改造してあるので、持ち歩くバッテリーが一種類で済み使いまわせて便利。
俺の中ではDB-L50・NP-120は単三電池のような汎用電池扱いになっている。




上面スイッチ基板にあるシャッターボタン、電源ボタン、連射モードボタンの位置を変えるためにケーブルをハンダ付け。


シャッターボタンは半押し全押し2段階の特殊なスイッチなので、ジャンクデジカメから取り出したシャッタースイッチを流用した。
zorkiのレリーズボタンの裏側にスイッチを固定し、レリーズボタンの軸がスイッチを押すようにした。
WX1の半押しはクリックがなくボタンに軽く触れた程度でも反応してしまい気に入らなかったが、スイッチを換えて半押しもしっかりとしたクリック感とストロークが得られるようになった。


電源スイッチはzorkiの軍艦部についているフィルム巻上げリリースレバーの裏側にタクトスイッチをつけてレバーで押すようにしたかったが、スペースが無く無理。
zorkiのシャッタースピード調節ダイヤルの下に大きなタクトスイッチをつけ、ダイヤルを押してON/OFFするようにした。

連射モードスイッチは小さなタクトスイッチを背面のズームレバーの右に固定した。
マイクは元のセルを外し、WM-62PCを付けた。ケース前面に1.5mmドリルで穴をあけてマイク穴とした。


前から見たときに見栄えが悪くなるからストロボは生かすか殺すか迷ったんだけど、実用重視でつけることにした。
ストロボ設置のためzorki上蓋を少し削った。


上面操作パネルをzorki内部にエポキシパテで固定し、zorki上蓋につけてあるシャッターボタンと電源ボタンのケーブルと接続した。
ストロボ発光用の高圧コンデンサはいったん上面操作パネルから取り外し、ケーブルを付けて隙間に移設した。


表革は牛革ハギレを現物合わせで切り出してボンドで張った。背面スイッチの穴をぴったりの位置で開けるのが難しく、2回失敗してやり直した。
手元にある革は3mmで厚すぎるので、ヤスリで裏を削って薄くした。(えっれー手間がかかった)
しっとりとした手触りで、グッタペルカよりも持ってて気持ちよくなった。色は明るめのブラウンで高級感が出た。

WX1のレンズの径がライカLマウントよりも小さくそのままだと見栄えが悪い。
金属を綺麗に真円に切り抜く技能は無いので、ジャンクカメラとジャンクデジカメのレンズ部から飾りの円盤を取り出し組み合わせ、固定した。かなり見栄えがよくなった。


zorkiの三脚穴は大サイズで不便なのでパーツを外して、ジャンクデジカメから外した普通のサイズの三脚穴パーツをエポキシパテで固定した。

zorikiについてきた革ケースの上蓋を外し、背面に液晶モニタとスイッチ類の穴を開け、直付けのストラップを切ってDリングをつけた。
底の固定用ネジは大サイズなので取り外し、安物三脚のクイックシューから取り外したネジをつけた。
底にはネジ固定用に1mm厚のアルミ板と皮を敷いた。



完成

2つめのバルナックライカのデジカメなので、デジバルナ2と名付けた。機能や撮れる絵は完全にWX1そのまんま。
延べ20時間ほどの作業で完成。いつものレンズ交換式にする改造と違ってすんなりできた。映像素子周りをいじらないのは気が楽。
   

 
持つと大きさのわりにずっしりと適度な重さ。軍艦部にあるレンジファインダーユニットが真鍮のムクで重いんだよな・・撤去すれば軽くなるけど、このカメラのキモだしな。
高感度に強いしAFで気軽に使えるので職場の飲み会に持ってって撮ってたら、「このカメラ何ていうの?」「かっこいいカメラですねこれ」って好評だった。


前回作ったデジモと一緒に。革ケースに入れると渋くてカッコイイ。
動画はデジモ、静止画はこれで撮ると適材適所。両方一緒に持ち歩くと気分はもうWW2宣伝部隊。


海軍仕様ライカなので、ルガーP08マリーネ(6インチバレルモデル)と一緒に。


革ケースに入れて首から下げて歩くのが仰々しいときは、canonのDEMIに付いてた三脚穴に付けるストラップをつけて、ポケットに入れて持ち歩いている。



実写サンプル・・・はWX1そのままなのでいらないか。
動画の画質はポケットムービーHDV組込みのほうが良いが、写真の画質はこっちのほうが良いしAFなので楽に使える。スラックスのポケットに入れて毎日持ち歩くならこっちかな。