DMX-HD1Aのレンズを交換式にする


暗所性能アップと広角化のため、DMX-HD1Aのレンズを取り外してCCTVレンズが付けられるように改造した。

注意・・内蔵レンズユニットにメカシャッターが組み込まれているので、この改造をするとまともな静止画は撮影できなくなり動画専用となります。フォーカスは手動調整のみとなります。
また当然に無償修理保証は効かなくなります。失敗すればカメラが使用できなくなります。
あくまで私の行った改造の紹介ですので、マネして不具合が起きても責任もてませんのでよろしく。

なめてかかるとこんなことに・・・(改造失敗したHD1A達のなれはて・・5台目にて成功させたが16万円無駄にしてしまった。)

参考
フルHDザクティHD1010をCマウントに改造
Cマウントレンズ24本レビュー&実写サンプル
安物フルHDビデオカメラをCマウントに改造
安物ビデオカメラをCマウントに改造
安物デジカメをCマウントに改造


DMX-HD1で鉄道の展望ビデオやバイク車載動画を撮影しているが、常にレンズはワイド端+純正ワイコンで50m先にフォーカスロックの状態でズームやAFなんて使わない。車載ビデオを撮影してる人はみんな同じじゃないだろうか。

HD1のレンズは38〜380mm相当の10倍ズームになっている。10倍ものズームのせいで広角端では描写にしわ寄せがきてるだろうし、レンズの明るさがワイド端でもF3.5と暗くなっているし、レンズエレメントが増えることから表面反射での光量損失も大きくなっているだろう。(実際にHD1は逆光に弱くいくつものゴーストが出る。)
広角にしようとワイコンをつけると周辺部では色収差やボケが出てしまう。
どうせ広角端しか使わないのに高倍率ズームレンズをつけているのはとても無駄。

ということで、暗所性能の改善・画角の広さアップ(ワイコン不要化→小型軽量化&描写改善)・逆光性能の改善を狙って、明るくワイドなレンズに付け替えることにした。


検討

改造案として考えたのは3つ。
@内蔵レンズからズーム用のエレメントを抜いて単焦点化する。→ 絞り機構やメカシャッターがそのまま使える利点はあるが、試しにDMX−C1をばらしてみたものの、どのレンズを抜いたらいいのかわからんがな・・・ダメ

A同じサイズのCCDを使う広角デジカメからレンズをもってくる。→ 1/2.5インチCCDで広角レンズを持つデジカメとして、コダックV570&V705(23mm単焦点)があるが値段が高い。リコーのカプリオRシリーズは28mmとそんなにワイドでないし高倍率ズームなのでメリットが少ない。パナの広角シリーズは値段が高い。・・・・ダメ

B監視カメラや産業カメラ(CCTV)用のCマウント・CSマウントレンズを使う。→ CCDサイズが1/2〜1/3インチとほぼ同じで、超広角から望遠・単焦点やズーム・安いものから高いものまでラインナップが豊富、絞り機能もある・・・・・これに決定。


内蔵レンズを外してCマウントをつける

まずは分解。

分解のコツはとにかく外せるネジを全部はずしていくこと。シールの下に隠れたネジは無いので、外部の見えるネジを全部外せばボディがパカっと開く。そして基板をとめてるネジをはずしていく。ネジをはずして部品をずらすと、また下にネジが見えるのではずして・・・とパズルのようにずらしたり外したりしていけば完全に分解できる。あとで部品の配置を忘れないようにデジカメで分解途中の写真を撮っておくとよい。
レンズ部を持ち上げればCCDユニットとレンズユニットがすっぽり外せる。CCDからのフィルムケーブルは基板のソケットに上から刺さってるので、上に持ち上げると外れる。
CCDユニットの後ろに見える3本のネジを外すとCCDヒートシンクが取れ、さらにネジ3本外すとCCD部とレンズ部が分離できる。
フィルムケーブルはすごく弱いので基板から抜いておいたほうが良い。特に操作パネルから伸びるフィルムケーブルがとても切れやすいのでここは真っ先に外しておいたほうがいい。

CCDの上にある赤外線カットフィルタ(IRカットフィルタ)は、ゴムの上に乗っかってるだけなので落っことさないように注意!今後落ちないようにエポキシボンドで固定してやったほうがいい。ゴムもCCDの上にのっかってるだけなので、基板までボンドを垂らして基板と固定したほうがいい。瞬着は使わないこと。このゴムはくっつかないし、乾くときにCCD表面に揮発成分がついて白くなってしまうので。(私はエポキシパテで周りを覆って固定した) ボンドが表面につかないように慎重に・・もし表面に付いた場合はすぐに拭わず、完全に硬化するのを待ってからナイフの刃先で慎重に削り取る。
CCDまわりのガラス部には手を触れないように。なるべくホコリもつけないこと。赤外線カットフィルタのコーティングは非常に弱く、綿棒で何度か拭いただけで剥がれてマダラになってしまう。これを知らずに一つパーにしてしまい、結局は1600円で落札した安物デジカメから赤外線カットフィルタだけ外して移設した。(トホホ。。)
カメラの最重要部分であり、ここで失敗するとカメラがパーになるので丁寧かつ慎重に・・
CCDまわりはIC足が銀色に光ってたり、基板表面が緑色にテカってたりするので、乱反射を防ぐためにリング内側は全部黒く塗ってやったほうがいい。植毛紙を貼ってやると最良。(双眼鏡用に買ってあったのでそれを使った。)

CCDユニット基板にCマウント延長リングをつける。リングはここで購入。アルミ製の5mm延長リング(C→CS変換リングにもなる)が3本1000円と格安。
CCDの載ってる基板にはチップ抵抗とか凸凹があるので、リングのぶつかる部分を削っておく。
5mmリングをふたつを重ねてバックフォーカスの調整をし、ちょうどいいところで接着剤で固定。CCD表面からマウント前端までの距離をCSマウントの12.5mmにしておけば、CマウントレンズもCSマウントレンズも両方使える。
リングの中心とCCDの中心を合わせるのが難しい・・・瞬着ではなく硬化に時間がかかるエポキシパテでリング内側を埋め、硬化するまでの間にリングの上にモノサシを置いて真上から見て中心を合わせた。

元のCCD方向だとボディが干渉して太いレンズが付けられないが、基板とCCDユニットをつなぐフィルムケーブルが短いためCCDは元の方向か上向きにしか置けない。せっかくなので底面(三脚面)と光軸を並行にしてやる。これまで斜めで不便してたので・・
フィルムケーブルを途中でぶったぎって間にコードを半田付けして延長させようかとも思ったが、フィルムケーブルへのハンダ付けは神業級の技能が必要なので無理(ノイズの影響も受けるだろうし)。横にむけてケータイ型にする手も考えたけど、スイッチや液晶画面がものすごく使いづらくなるのでやめた。

CCD基板だけでレンズを支えようとすると負担がかかるので、ボディ側でも支えるようにリングとボディをエポキシパテでがっちり固定してやる。
結果的にCCDをこの位置に置いたことで、CCDユニットが基板の発熱から遮断され熱対策の点で非常に良くなったと思う。(CCDは熱くなるとノイズが増えるので出来る限り冷やしたほうがいい。)

レンズ部は使わないので取り外しておきたいところだが、残念ながらレンズから伸びているケーブルを本体基板から抜くとエラーとなり起動しなくなってしまう。センサーでレンズ位置をチェックしてるようだ。
これが電子工作の得意な人なら、レンズの回路と基板とでやりとりしてる信号を解析して、マイコンチップでレンズ回路をエミュレートしてレンズが付いてると本体を騙せるんだろうけど・・・
レンズユニットそのままだとかさばるので、上半分を削り取り、レンズを外して稼動する枠だけにして、シェイプアップして取り付ける。


操作パネルは外してしまうと起動しなくなる。撮影・再生モードの選択をした状態でないといけないみたい。しかしそのままだと置く場所がないので、上半分パネルを切り取ってケーブルを90度折り曲げてL字型にして上部(元背面部)に設置する。上半分のパネルはアルミ板で作り直し、動画撮影ボタンはプラ棒で自作。


レンズを上向きにしたので、それにあわせ三脚穴を新たに底部となる元前側に移設。ホームセンターのL字型金具の穴を利用しエポキシパテで固定し、その金具をボディやレンズマウントリングとパテでがっちり固定。


リモコン受光部は新たに後部となる元底部に移設。フォトトランジスタを元の位置からニッパーで切り離し、コードをハンダ付けして延長。ちょうど元三脚穴の部分が四角く開いてるので、そこに受光部の黒いプラ板を同じ形に整形してつけてやる。


HD1の発熱は有名だが、内部を見るといちおう対策はされていて、基板とボディの間に厚い熱伝導シートが挟んでありボディで発散するようになってる。が、それでも追いつかずにHDモードで長時間撮影していると発熱で停止してしまうのは有名な話。
俺は対策としてボディの両側にアルミのヒートシンクをつけていたが、中身を見ると「チップ→熱伝導シート→プラのボディ→熱伝導シール→ヒートシンク」と非常に効率が悪くなっていたわけで、基板の発熱する部分と反対側のSDカードケース部分のボディに穴をあけて、直接チップ接するようにヒートシンクを付けた。シリコンボンドで固定。
20分も連続撮影しているとモニタ側のシンクが触り続けられないくらいに熱々になる。


これまでは内蔵電池型の外部電源アダプタを自作して常に外部電池しか使ってなかったので、少しでも接触抵抗を減らすため内蔵電池用の端子は外して基板の電源ピンにケーブルを直接ハンダ付けした。真ん中のピンはリチウムイオン電池を充電する際に温度を監視するための端子なので外部電源オンリーとするなら必要ない。

レンズユニットやフレームがむき出しだとかっこ悪いので、0.8mmアルミ板を折り曲げてボディとする。
スピーカーと外部マイク端子はここに移設。フラッシュは静止画は撮らないので撤去。


隙間部分をエポキシパテで埋め、ヤスリで整形。銀のスプレーで塗装して完成。




レンズ

CCTV用のCマウント・CSマウントレンズはたくさんのメーカーで大量に造られており選択肢豊富。今回の改造で必要な条件として・・・

@1/2インチ以上のCCD用のもの。
1/3インチ用レンズを1/2.5インチのHD1で使うとイメージサークルが足りないため、CCDの四隅に像が写らず黒くなってケラレが出る。なので1/2.5インチより大きなサイズのCCDに対応したレンズが必要。(あとから編集で上下左右をクロップしてもいいんなら安くて品数豊富な1/3インチCCD用レンズでもいいけど。1/3用レンズでもイメージサークルに余裕があって1/2.5CCDくらいなら蹴られないものもあるみたい。)
ちなみにレンズの描写というのは一般的に、中央ほど良くて周辺ほど悪くなるので、大きなCCD用のレンズを小さなCCDで使うと中央のおいしい部分だけ使うことになり、写りが良くなるのではないかと期待できる。(小さなCCDほど単位面積あたり解像度を要求するのでレンズの精度が必要という考え方もあるけど、ハイビジョン動画程度なら光学上の解像度よりも細かい精度を要求するってことはまずない。よっぽど研磨や組付けの悪い粗悪レンズでない限り。)

A焦点距離が短いもの。
HD1の内蔵レンズは実焦点距離6.3mmで35mmフィルムカメラ換算38mm。(純正ワイコンをつけると、中央部は28mm相当、周辺部で像が縮小する歪みがあるので対角は25mm相当になっている。)
換算28mm以下の画角を得るには実焦点距離4.6mm以下のレンズが必要。
(一般的に広角レンズは周辺部でCCDへの入射角が浅くなり周辺減光が起ると言われているが、最後部レンズ径とバックフォーカスが決まればレンズからCCDへ向かう光線の角度もだいたい決まるわけだから問題ないんでないかな、と思うが如何に。)

BF値が小さいもの。
F値が小さいほど明るいレンズになる。CCTVレンズはF1.4〜F1.8が多く、HD1内蔵レンズのF3.5よりは明るいものばかりなので問題ない。(F値が1.4倍になると明るさが1/2になる。つまりF1.8はF3.5の約4倍明るい。F3.5-SS1/30秒とF1.8-SS1/120秒は同等の明るさ。)
ハイスピードレンズ等の名前で売られているF1を切るような更に明るいレンズもあるが、1/2インチ対応で広角のものは少ないし値段も高いので(時々ヤフオクで中古の出物があるので要チェック)、よほど暗所撮影メインでなければ必要ないかと。F0.9にすれば内蔵レンズの16倍明るくなるので、CG6あたりに同様の改造をすれば月明かりでも動画撮影できるようになるかも?

C単焦点(fixed-focal)か、あまり変倍率の高くないバリフォーカル(vari-focal)のもの。
変倍率が高くなるとレンズ枚数が増えて表面反射損失が増え暗くなるし、ゴーストやフレアが出やすくなるし、どうしても描写に無理が来てしまう。(ちなみにズームレンズとは焦点距離を変えてもピントがズレないレンズのことで、CCTVでは焦点距離を変えるとピントがずれるバリフォーカルレンズが一般的。ズームレンズもあるが高いし画角が広いのがないし、そもそも車載用途には必要ない。)

Dメガピクセル対応のもの。
CCTVカメラはTVで見る用途なのでレンズは640×480ピクセル・30万画素程度の解像度を持ってればいいことになる。SDならいいがHD動画を撮るときに解像感が得られるか不安。
最近はハイビジョンタイプのCCTVカメラ用レンズがメガピクセル対応レンズとして売られているので、念のためそれにする。工業用レンズといって売られているものは高解像度だけでなく歪み(ディストーション)補正もしてあるが、高いし広角のものが無い。
(でもメガピクセル対応ではない普通のCCTVレンズをHD1につけて動画撮影したら十分な解像度が得られた。)

Eオートアイリス(自動絞り)のもの。
今回の改造の最大のポイントかつ難所。(この機能が必要な理由及び対処法は次項で。)


・・・以上の条件を満たすレンズとして、computer社(CBC)のHG2Z0414FC-MPを購入。

f4〜8mm(HD1で24〜48mm相当)のバリフォーカル、F1.4、1/2インチCCD対応、メガピクセル対応。発売されたばかりで日本のサイトではまだ売ってる所がなかったので、アメリカの通販サイトから購入。
CCTV用レンズは日本メーカー製や日本製のものでも、なぜか日本とアメリカで2倍以上の価格差がある(日本で35000円のものがアメリカでは$75だったり・・)ことが多いので、送料足しても海外通販がお得。アメリカのサイトから直に日本に発送してもらうと送料が1万円とか馬鹿高いので、個人輸入代行サイトの転送サービスを利用したほうが安い。今回、コメットという個人輸入代行サイトを利用。(米国内送料1500円、日米間送料2500円、手数料1000円くらい)
メガピクセル対応を謳っているだけあり、絞り開放でも中心から周辺部まで解像度が高く、強い光源が画面内にあってもゴーストが出ず画質はよかった・・・が、強い樽型歪みが出るのが気になりHD1では使わないことにしてデジカメ用にマニュアルアイリスに改造してしまった。

そこでpanasonicのWV-LA4510を使うことに。

1/2CCD対応、焦点距離4.5mm(HD1で27mm相当)の単焦点、明るさはなんとF1!ととても明るい。絞り羽が3枚でボケ方がきれい(CCTVレンズの多くは2枚羽)。絞り開放でも中心から周辺部まで解像度が高く、なによりこの広角で樽型歪曲がほとんどないのが気に入った。画面端にある直線もまっすぐ写る。
ヤフオクでかなりの美品を千円で落札。一つ買ったら画質がすばらしくよかったのでもう一つ予備に買った。金属部品が多く使われていて重いのが欠点(これの一つランク下のWV-LA4R5A(4.5mmF1.4)はプラ製で軽いので、耐久性や高級感のためにあえて金属を使ってるんだろうけど・・)。


アイリス機構をCDS(照度センサー)で駆動させる。

HD1がもつ動画の露出調整機構は、シャッタースピードが1/15〜1/10000(666:1)・ISO感度200〜1600(1:8)・絞りF3.5〜6.8(4:1)。つまり666×8×4で1:21312の明るさの変化に対応できることになる。(NDフィルタもあるけど、どうもマニュアル以外では使われないみたいなので考慮しない。)
これを絞り固定のCCTVレンズにするとF値での露出調整がなくなるので、1:5328にまでダウンする。しかも困ったことに、暗所での性能を得ようとしてF1にしている場合、シャッタースピードと感度で最も暗くしても、HD1内蔵レンズの最も露出が暗い状態の約40倍も明るい。逆光では露出オーバーで画面全体が真っ白になってしまうだろう。 明るさがそんなに変化しない対象の撮影や、撮影中ずーっとカメラのそばに付きっきりで絞り操作していられるなら、手動絞り(マニュアルアイリス)のレンズでも良い。でも俺の用途では、列車が走ってる間ずーっとカメラを置いている列車前部に立ち続けるのは(体力的にも他人からの視線も)キツイので無理。

ということで電動で絞りを動かすオートアイリスレンズとなる。しかしオートアイリスはCCTVカメラから出力される信号によって動かすもの。HD1にそんな信号を出す機能はないので、なんとか工夫しないといけない。ここが今回の改造の最大の問題点。

オートアイリスレンズには、カメラから入力された映像信号によってレンズ内アンプが明るさを判断し絞りを駆動させるビデオアイリスと、アイリスを動かす電圧を直接カメラから供給するDCアイリス、の2タイプがある。ビデオ信号を出力する回路なんて造れないので、DCアイリスのレンズを買った。

ここで困ったのが、DCアイリスの駆動方法。どのくらいの電圧をどうやってかければ絞りが開く&閉じるのかがわからない。各種レンズのスペック表を見て想像するに、レンズ内に2つのコイルがあり、一つは駆動(ドライブ)コイルであり通常はスプリングのテンションで閉じられている絞りを開ける方向に動かす。もう一つは制動(ダンピング)コイルであり電圧をかけると閉じる方向に絞りを動かす。駆動コイルに電圧をかけてみると、だいたい3Vで絞り開放となり、0.5V以下になると閉じた状態になるようだ。

照度センサーとしてCDSを使う。秋月電子の通販で購入。CDSは明るくなると抵抗値が減って数百Ωになり、暗くなると抵抗値が増えて約2MΩとなる。ただしCDSの反応は薄暗いときは敏感で抵抗値を大きく変えるが、曇天程度で既に数KΩ、晴天下の直射日光を当てると0.数KΩとなり太陽光下では数値の変化が小さく使いづらい。そのため、CDSの表面を黒マジックで黒く塗りつぶしてNDフィルタの代わりとした。晴天直射日光で5K、晴天順光で15K、曇天で50K、蛍光灯下の室内で500K・・と使いやすい抵抗値となった。

トランジスタ(今回はFET)と可変抵抗とCDSを使い、明るくなると電圧が下がり暗くなると電圧が上がる回路を作り、レンズの駆動コイルに電圧を入れた。

電源はHD1の外付けバッテリーに配線を割り込ませて取り出す。バッテリーの残量によって電圧が変わってしまうので、チャージポンプICのLTC3202で4Vに安定化させて電源とした。 が、これはうまくいかなかった。駆動コイルに同じ電圧をかけても絞りの開き具合が一定にならない。コイルの磁力とバネの力の釣り合いだけで動いてるので、つりあい具合がその時々で変わってしまうみたいだ。
もともと監視カメラ用なのでいい加減なものなのか、それとも制動コイルへの電圧の掛け具合でうまく調整してるのか・・・制動コイルにもいろいろ電圧を加えてみたがうまくいかず、レンズに付いているアイリス装置を利用することはあきらめた。


 そこで、ラジコン用のサーボを使うことにする。RCサーボはきわめて正確に位置決めができる。RCサーボはパルスによって制御する(PWM)。20ms(50Hz)周期で、明るさによってオンタイムが1〜2msと変化する発振回路を作ればいい。
サーボは最初はGWS PICOを購入したがレンズケースの中には入りきらなかったので、より小さなミニスタジオ MiniS RB50を購入。驚くほど小さく軽い。千石電商の通販にて1300円。安い。ついでにサーボとCDS回路をつなげるための3ピンコネクタ等も買っておく。
タイマICのNE555(のCMOS版互換品であるμPD5555を購入。他にもLMC555やICM7555などがある)を使い、CDSの抵抗値の変化によってパルス幅が変わる回路を作る。マイコンを使うとシンプルにできるようだが、プログラミングなんてできないのでダメ。「サーボテスター」「サーボコントローラ」という名前で同様のものが市販されているが、周波数測定・表示機能や複数サーボの同時制御機能など無駄な機能がついており大きく重く値段が高いのでダメ。


サーボ制御は電流が流れるオンタイムが1〜2ms、流れないオフタイムが18ms程度とするのが標準。NE555はオンタイムが抵抗RaとRbの合計した数値から求められるのに対して、オフタイムはRbの数値のみから出される。抵抗値にマイナスはないので、素直に考えればどうやってもオンタイム>オフタイムとなってそのままでは使えない。
そこで、ダイオードを使う。データシートを見るとオンタイムとオフタイムでRbに電流が流れる方向が逆になるため、Rbの手前で回路を二股に分岐させてRb1とRb2の二つの抵抗をつけ、一方方向にしか電流を流さないダイオードをそれぞれ逆向きにつけ、オンタイムとオフタイムで別の抵抗値となるようにすればオンタイム<オフタイムとできる。
ここでR2aに固定抵抗を、R2bにCDSを付ければ、明るさによってオンタイムを変化させサーボを制御することができる。ダイオードをどのくらいの抵抗値と見なせばいいのかわからないので、CDSの代わりに可変抵抗をつけ必要なサーボ駆動範囲から抵抗値を計測すると15〜19KΩだった。CDSの抵抗値が0〜2MΩなので、CDSに並列で4KΩ、直列で15KΩの抵抗をつければいい。設置後に微調整ができるよう半固定抵抗をつけた。並列の抵抗で可変範囲を、直列の抵抗でプリセット位置を調節できる。
NE555のオフタイムは「秒=0.693xRb抵抗値xコンデンサ容量」となり、オンタイムは「秒=0.693x(Ra抵抗値+Rb抵抗値)xコンデンサ容量」となるので、この回路ではオフタイムは0.693×457K×0.1μ=31.67ms、オンタイムは0.693×(1K+14K〜18K)×0.1μ=約1〜1.3msとなる。HD1のフレームレートが30fpsなので、サーボの動きによる明るさの変化とフレーム更新タイミングが合うようにオンタイムとオフタイムあわせて33.33....msに近づくようにした。
(このサーボは1〜2msで0〜200°の回転をするが、絞りを開閉させるのは60°の回転で足りたので1〜1.3msとした。周期は標準では20msだが、これより長くなってもトルクが小さく動作が遅く消費電力が減るだけ。絞りを動かすにはサーボの力はオーバートルクなので消費電力を減らすためにもオフタイムを31.67msと長くした。サーボの駆動範囲に影響するのはオンタイムのみで、全体の周期が可変しても問題ないのでオフタイムは固定でよい。)

CDS回路とサーボの電源はHD1の外付けリチウムイオンバッテリーに割り込ませて取り出す。サーボの定格は4.8Vだが、3.7Vでも問題なく動作した。NE555発振回路の周波数やサーボの可動範囲は電圧の影響はうけないので、昇圧せずにそのまま使う。
レンズからオートアイリス機構をとりはずし、空いたスペースにエポキシパテでサーボを固定し、針金でホーンとアイリスレバーを連結した。

その後、実際に太陽光にかざしながら可変抵抗をまわしてプリセット位置、可動範囲を微調整した。

ちなみにCDSは光量変化に対する反応が遅いと言われているが、このCDS回路を蛍光灯にかざしてみると、サーボがガクガクとふるえだした。白熱灯だと震えない。蛍光灯のチラツキに反応してるわけ・・・カメラの絞り駆動装置としては必要以上に早いくらい。オフタイムをもっと長くすれば動作は遅くなるが、かわりにサーボがカクカクと動くようになるのでフレームレート(30fpsなら33.33..m秒、60fpsなら16.66...m秒)以下にはしないほうがよいかな。

コンパクトにするため、可変抵抗とコネクタをベースに空中配線で組み込み。CDSにゴムで作った筒をかぶせ、前からの光のみ受けるようにした。CDS素子は後ろからの光にも反応してしまうので、後ろ側はケーブルをハンダ付けしたあとで黒のシリコンボンドで埋めておく。

完成。
CDSと発振回路は三脚に固定、コネクタでサーボと接続させた。



撮影ではPモード(絞り固定モード)にして運用する。レンズのオートアイリスで絞りは動いているが、それも含めて外部光の変化としてカメラに捉えさせる。おおまかな露出補正をレンズの絞りで行い、細かな部分はHD1のシャッタースピードと感度で調整させることになる。


改造後の暗所性能・画角・描写の比較


本当は改造前後で同じ位置から撮り比べたかったんだけど、比較用の画像を撮ってない・・
レンズ比較画像は土日にツーリングに行ったときに撮影してアップする予定。4月中くらいをめどに。


暗所動画の比較。左は改造後にWV-LA4510をつけてオートモードで撮影。右は改造前にワイコンをつけてランプモードで撮影。別の鉄道だけど車両はほぼ同じ。
どちらもHD-SHQ、撮影した動画からQTで切り出したのみで無編集。下の画像がリンクになってます。
改造後改造前
列車の前面から撮影。改造後はトンネル内で列車の前照灯のみでとても明るく写っている(ランプモードだともっと明るく写る)。トンネル内に入るシーンでは、まずレンズのオートアイリスによる絞り変化がおき、続いてHD1のSS&感度による露出補正が遅れて行われている。ジジジ・・・という音はサーボが動く音。音はローランドのR-09で別録りしてるので問題ない。逆光のシーンだがゴーストは出ていない。(HD1本来のレンズだといくつか出る。)また、HD1+純正ワイコンのときと比べて歪曲や周辺部の色収差がかなり抑えられている。
ちなみに、改造後の屋外映像がなんとなく霞がかったようになってるのは、窓ガラスの汚れのせいでレンズのせいではありません。

静止画撮影のサンプル。撮影できることはできるんだが、メカシャッターが無くなったせいでCCDからのデータ読み出し中も露光されちゃってるようで、プログレッシブ状のしましまノイズが一面に出てしまう。実用には耐えない・・
もともと静止画用のデジカメを別に持ってて、HD1で静止画撮影したことは全く無いのでいいけど。


HD-SHQで撮影した動画から切り出したもの。全て同じモード(オート撮影)。

@画角による描写の違い。全て絞り開放。
HG2Z0414FC-M。広角端4mm(24mm相当)、望遠端8mm(48mm相当)。

panasonic WV-LA4510 単焦点4.5mm(27mm相当)


A絞りによる描写の違い。
HG2Z0414FC-M。開放F1.4と、たぶんF5くらい

pana WV-LA4510 開放F1と、たぶんF5くらい


おまけ。

中途半端に完成したまま放置したHD1と、改造失敗したHD1A3台の残骸・・・わざわざ新しく買ったHD1A2台が一度も使わないまま2日でパーツ取りになってゴミと化しちゃった・・・・(;ωq`)
(HD1の改造は完成したもののバッテリーの持ちがHD1Aに比べて悪いのが気に入らず放置、HD1A一台はバラしていたら何処で失敗したのかわからないまま何故か起動しなくなり、もう一台はフラッシュ用のコンデンサをニッパーで切り取るときに基板とリークしてバチッ!と放電・・周辺部がコゲて当然起動しなくなりましたとさ。コンデンサを外す際はニッパーを使わず、コンデンサをぐりぐり動かして足を金属疲労させて取りましょう・・)

2007.4.4