秋月の10W LEDでオートバイのヘッドライトを作る

2012/3/8

 
GN125-2Fに乗ってるが、ヘッドライトバルブがH4BSと特殊な形状で入手製が悪く、ハロゲンバルブが高価。
長寿命化・高輝度化・省電力化のため、ハイパワーLEDでヘッドライトを作ることにした。
(HIDはこまめなON/OFFに向いてないのと、バラスト等が必要でかさばるのと、高価なのでやめ)

参考・ハイブリッド自動車(プリウス)のLEDヘッドライトを改造してバイクのヘッドライトを作る




H4タイプのマルチリフレクターヘッドライトと厚手のT字型アルミアングル端材をヤフオクで見つけて購入したので、前作(このページの下部参照)完成後すぐにもう一つ製作開始。
今回意識したのは、なるべくLEDで電圧を低下させて電流制限抵抗での消費電力を減らすこと。電気を熱にして捨てるのはもったいないから。
かといってあまりに抵抗値が低すぎると電圧変動での電流変動が大きくなりすぎるので、2Ω前後を目指す。
霧や雨天時のため、手前や両サイド照射用に黄色LEDを複数使用し、白色は正面先を見通すプロジェクター的な役割とした。

回路図(当初計画→実際)

バイクのエンジン稼動時の電圧14V − 逆流防止ダイオードSK54の電圧低下0.4V = 電源電圧13.6V ハイビーム時はロービームも光るようにする。ハイビーム時の合計消費電力は9.8+13.4+4.3=27.5W。改造前のH4BSバルブ35Wより少なく、はるか上の明るさを得られるだろうと期待。

材料
3W白色LED(OSW4XME3C1E)×2、3W黄色LED(OSY5XME3C1E)×6、10W白色LED(OSW4XAHAE1E)×1、2Wセメント抵抗1Ω×6、ショットキーバリアダイオードSK54×3 3W LED用定電流駆動ドライバ×1(以上、秋月電子)
6インチマルチリフレクターヘッドライト、T字型アルミアングル端材(ヤフオク)、ヒートシンク(家の在庫)、エーモン4端子コネクタ、3端子コネクタ(ホームセンター)

回路図には入れてないが、バッテリーの+−端子間にスパークノイズ対策として過渡電圧サプレッサ(TVSダイオード)1.5SMC18AT3Gと、パスコンとして電解コンデンサ25V2200μF×3、セラミックコンデンサ25V10μF×2をはさんである。

FIのバイクなら電子回路が搭載されてるので標準でノイズ対策されてるはずだが、GN125はローテクなので念のため。



左が前作、右が今回のベースになるアルミT型アングル材。アングル材の幅は40mmで、削らずにそのままH4の穴に入った。


横方向に光を配分するため、上面の一部ヤスリで削って斜めに。手作業での完璧な平面出しはほぼ不可能なので適当なところであきらめた。(ベルトサンダーが欲しい!)


背面にヒートシンクをシリコンボンドで接着。もちろん、全ての接着面を400番&2000番のヤスリで平面出ししてある。


リフレクター内部は空気が流れないが、わずかでも対流と熱放射で放熱させるためLEDの前後にもヒートシンクを接着。
前の下側はステーの厚みを生かしてハイビームLEDの光を邪魔しないように、ステーを削ってヒートシンク状にした。

 
LEDの取付け位置決め。ステーに色付きのビニールテープを小さく切りぬいて貼って、ライトの前から角度を変えながら反射像を見て最適な位置を探る。

結果、この配置になった。シリコンボンドで接着。


ロービームで光が上空に逃げて無駄になるのを防ぐ&対向車のまぶしさ防止のため、アルミ板(空き缶の底)を切り抜いて反射板として付けた。
リフレクターのポジションランプがついてた穴はアルミテープで塞いだ。


渋滞など風が来ない時のためにクーリングファンを設置。ポジションランプの電源に並列に付け、ON/OFF連動するようにした。
リフレクターにLEDユニットをワイヤーで固定。ネジでギュっと締めあげた。


電流制限抵抗と逆電流防止ダイオードはライトケース(金属製)内側にシリコンボンドで貼り付けてそこで放熱させる。(前作はLEDのヒートシンクにつけたが、考えたら別で放熱させたほうが効率がいい。)

ケースとリフレクターを分離できるように4端子コネクタを付けた。(GND、ロービーム、ハイビーム2系統)
ロービームの電流制限抵抗はケーブルで外に引き出してキャブに貼り付け、アイシング防止のキャブヒーターとして発熱を有効利用するつもりだったが、 配線処理が面倒なのでやめてライトケース内側に貼り付けた。沖縄ではいらないし。
ポジション(フォグ)用の定電流回路はシリコンボンドで覆って防水処理し、放熱しやすいようにケースの口付近にぶら下げた。


反射板とリフレクターの間から少し光が上方に漏れるので、2mmアルミ板で庇を作って付けた。

ライトユニットを完成させてバイクに取り付けようとしたら、純正のケースよりも後ろが出っ張ってて、メーターユニットにぶつかって取り付けられない。
こんなこともあろうかと、EN125用のヘッドライトステーを入手してあったので交換。

左がGN125用、右がEN125用。6インチヘッドライトは10mmボルトだがEN125は8mmボルトなので、穴をドリルで広げてある。

フォークを外すついでに、フォークオイルの交換・ホイルベアリングのグリスアップ・フォークブーツ取り付けもやったった。


もともとライトケースの中に入ってたケーブル類は防水布(破れたカッパから切りとった生地)でくるんだ。オフ車で使われてる手法。

完成。


ノーマル、前作、今回のものを同じ露出・ホワイトバランスで撮り比べ。

前作に比べてロービームで横に光が広がった。黄色と混合なので霧や雨で見やすくなったはず?

色に惑わされず明るさだけで比較できるよう、ロービームをモノクロにして並べた。

LEDを増やして電流制限抵抗での消費電力が減ったことで、少ない消費電力でより明るくなった。
ハイビーム時は圧倒的なので比べるまでもないでしょう。




旧バージョン

LED・・・順方向電圧10Vで1Aを消費する10Wのもの。1.4Aまでオーバードライブできる。LEDは熱に弱いので素人のハンダ付けによる損傷を避けるため、リード線つきのものにした。ハイビームとロービームでそれぞれ1つずつ、計2つ。

電流制限抵抗・・・電流制限は抵抗で行う。1A流せる10W容量のコンパクトな定電流回路キットなんて売ってないので。
GN125の電圧を測定したところ、エンジンOFF時12.5V、アイドリングのヘッドライトOFF時14.4V(ヘッドライトを点けると14V)、4000回転時13.8V。 バイク電圧14.1V − SK54ダイオード1100mA時の電圧低下0.4V = 電源電圧13.7V
これにLED電圧10Vで1100mA流すのに必要な抵抗値は3.36Ω。10Ωを3個並列接続で3.33Ωにした。

逆流防止ダイオード・・・電圧低下が少なく、大きな電流を流せるショットキーバリダイオードにした。

回路図



製作


ステーにするのはL字型のアルミアングル材2つ。平面成型したあと曲げたものは曲がる部分で熱伝導率が落ちそうなので、最初からL字型で成型された肉厚なものにした。


ヘッドライトのリフレクター部分を取り外し、現物あわせでアングル材を加工。リフレクターの穴に入るように両側を削った。発熱したLEDの熱を効率よく背面まで伝えるため穴ギリギリの幅した。また、一番熱伝導が悪そうな90度曲がった部分の幅を確保するため、直線に削らずRをつけた。
内側の1面は放熱のため表面積をかせぐべく、わざと荒めのヤスリで荒らした。それ以外の3面はヒートシンクをつけるため、鏡の上で400番と2000番のヤスリで平面出しをしてなめらかにした。


2枚をシリコンボンドで張り合わせてT字型に。


LEDに近い面で少しでも放熱するよう、LED取り付け面に小型のヒートシンクをつけた。(リフレクター内部なので空気の対流が無く、あまり効果はないと思うけど・・・念のため。)穴に干渉しないよう角を少し削ってある。
○ヒートシンクの付け方・・・シリコンボンドも熱伝導はするが、金属同士が接触したほうがずっと良い。だが少しでも空気(気泡)が入ればそこの伝導率はゼロに近くなる。空気が入るくらいならシリコンボンドがあったほうがいい。
シリコンボンド層を薄く、かつ空気の混入を防ぐため、ヒートシンク中央にシリコンボンドを盛り、ヒートシンクを押さえつけながら細かくスライドさせたり回転させてシリコンボンドを伸ばし、それをボンドの層が薄くなってヒートシンクとステーのアルミ同士が接触するまで続ける。接触したら正確に位置決めしてボンドが硬化するまでクリップではさんでおく。


背面は外気と触れる部分なので、ここで主に放熱させることになる。
大型のヒートシンク2つと中型のヒートシンクを中央で切断したものをシリコンボンドとネジで付けた。もちろん接触面は400番と2000番のヤスリで平面出ししてある。

LEDの取り付け位置はH4BSバルブのフィラメント位置とあわせる。ここがズレるとうまく集光しなかったり光軸がズレたりする。

電球バルブとステーをリフレクター基部を基準に並べて、Hi/Loフィラメント位置でステーにマーク。Loは上面、Hiは下面に付ける。
バルブのフィラメント形状に合わせて、LEDの取り付け方向を上面は縦、下面は横にした。

振動でステーから脱落しないようにシリコンボンドだけでなくネジ止めもするため、径1.2mmドリルでステーにネジ穴を開けた。(ジャンクデジカメから取り出した径1.4mmくらいのタッピングネジを使うので、タップでネジ穴は切らなかった。)
このLEDの裏面は綺麗に平面が出てないのでそのまま付けないように注意。放熱のため一番重要な部分なので、鏡の上に2000番のヤスリを置いてすりすり平面出し。
 
ヒートシンクをつけるのと同じ要領でシリコンボンドをつけたあと、ネジでギュッと固定した。


ロービーム時に対向車へのまぶしさを防ぎ、かつ上空に逃げる無駄な光を減らすため、0.2mmのアルミ板で上面LEDの前に遮光版を付けた。少し斜めに傾けてあり、これに反射した光がリフレクターに反射し、フロントタイヤ直前あたりを照らすことになる。
GN125のリフレクターは浅いため、遮光板がないと光の1/3くらいが上空に逃げて無駄になってしまう。(改造前のH4BSバルブではそうなってる。点灯時にライトを斜め上から覗くと発光するフィラメントが直接見える。電球の中に大きな遮光板を入れるのは無理だから仕方ないが。)


LEDユニットがズレないように、リフレクターのバルブ取り付け部後端を少し削って段差をつけた。

この段階で試点灯して集光具合を確認して取り付け位置を微調整。


10Ωのセメント抵抗を3つ並列にハンダ付け。
14.1V-10V(LED)-0.4V(SBD)=3.7Vの3.3Ωなので、抵抗で4W消費。定格5Wの3つ並列で15Wとなり十分余裕がありそうだが、試験点灯させると意外と発熱したのでシリコンボンドでヒートシンクに接着した。
ハイビームのときはロービームと2個同時点灯させるので、Hi/Loそれぞれ用に2セット作った。


メインの大型ヒートシンクの両側にシリコンボンドで付けて、念のためアルミワイヤーで縛った。
逆流防止のチップダイオードも1W程度(ハイビーム時0.4V×2.2A)食って発熱するので、ヒートシンクにシリコンボンドで接着した。
 
ロングツーリング中にLEDが破損したときに備えて、簡単に標準バルブに取り替えられるようにしたい。なのでケーブルは直結せず、コネクタをかませる。
もともとついてたコネクタの市販品が見つからないので、ホームセンターで買えるエーモンの3極コネクタをはさんだ。


こんな感じになりました。

 
上の写真で完成の予定だったが、試点灯させてたら思ったよりもヒートシンクが暖かくなっていた。
走行中なら外気がライトケースの中に入るからいいけど、真夏の夜に渋滞でノロノロ運転になったら放熱せずヤバそうなので、クーリングファンをつけることにした。
家にあった有り物の4cm角12Vファンをつけた。電源は共有させて、ライトのON/OFFと連動して回るようにした。
ノイズが出そうなのでファンの根元にパスコン(セラミックコンデンサ)をはさんである。


ユニット完成。
LEDそのものは小型軽量なのに、放熱のためのヒートシンクが重くてかさばる。
ハイパワーLEDで発熱対策を怠るとあっという間に壊れるので、やってやりすぎという事はない。(このLEDのデータシートによれば、20,000mmの放熱面積が必要とのこと・・・10cm×10cmの裏表両面でそのくらい。)
リフレクターにはアルミワイヤーで固定。

 
そのままではライトケースに収まらないので、ライトケース内にある電装関係のコネクター全部を外に出して、防水布(やぶれたカッパの生地)でくるんだ。

ケースそのものは無加工で収まった。少し余裕はあるが、空気の対流のためにケーブル類は入れないほうがいいだろう。
ケース裏面下部にある穴から外気が入るので走行中はよく冷えそうだ。

  
リフレクターが浅いため、遮光板でも遮光しきれない光が少しだけ上側に漏れる。 気に入らないので、ライト上部に1.5mm厚のアルミ板で庇をつけた。

完成!
  



ポジションランプは5mm径の高輝度白色LED OSPW5161Pを4本直列にした。
  
3.2V×4=12.8V 30mAで電源電圧14.1-0.4=13.7Vなので、電流制限抵抗30Ω(1/4W炭素皮膜抵抗75Ω並列2本)。消費電力は0.4W。
砲弾型LEDは指向性が高いので、前を照らすように斜めに設置した。

最初は1W白色LEDあたりにしようかと思ったけど、順方向電圧が3.3Vなので1個だけだと電流制限抵抗での消費電力が大きすぎてもったいないし(14.1Vの350mAだと5Wになっちゃうからにゃ)、かといって3つ直列にしてもリフレクターの穴に収まらないし、でやめた。



ついでにテールランプもLED化
秋月電子のハイパワー赤色LED、OSR5XME3C1E。一つだと電流制限抵抗での消費電力が多すぎてもったいないので、2つ直列接続する。ナンバープレート灯として白色LEDもつける。3つもあるのでフルパワーでなく半分の電流とする。

テールランプ時は2V×3=6V 80mA→電流制限抵抗 96Ω (1/4W炭素皮膜抗 100Ω直列3本×並列3セットで計6本)
ブレーキランプ時は2.5V×3=7.5V 350mA→電流制限抵抗 17.7Ω (5Wセメント抵抗 20Ω、ブレーキ時はテールランプと同時供給となるので、20Ωと上の100Ωの並列接続となり合成抵抗値16.6Ωとなる。)


700mAドライブのものに350mA流すので発熱はそんなにこだわらず、軽量化のためヒートシンク無しで2mm厚アルミ板をベースにした。
GN125テールランプのリフレクターにあわせて曲げた。


なるべく表面積を稼ぐため、アルミ板の裏面をPカッターでひっかいて溝を付けた。


LEDをシリコンボンドで接着。真ん中が白、両側が赤。
右下に見えるのは、ナンバープレートを照らすために0.2mmアルミ板で作った反射板。白色LEDの光の半分をこれで下方向に反射させる。

 
逆流防止ダイオードと抵抗をアルミ板の上に付けた。

万一LEDユニットが破損した場合にすぐに電球に戻せるように、LEDは直結せずソケットをそのまま残すことにした。
市販のテールランプ口金BAY15Dのお尻部分に配線をつけて、アルミ板に固定した。


バイクに装着。あ、いかん水平がズレてた・・・いまさら直すのも面倒だからまあいいか。


露出固定して撮り比べ。明るさは同程度かな。(やっぱ斜めになってるの丸見えでかっこ悪いから直そうか・・・)
消費電力は元の21W/5Wから5W/1W(14.1V×0.35A/14.1V×0.08A)となった。