ビクセン パノラマ7000をプリズム無しの超広角双眼望遠鏡(7x35 fild14')にする



今は無きビクセン開発から発売されていた超広角双眼鏡、パノラマ7000 。(今はケンコーにOEMされ7x32SWAという名前 で売られてる)
これは92°という広い見掛け視野をもっていて、瞳径も5ミリ近く あり、星見に最適では・・と思って買った。
視野が広大で覗いていて気持ち がいいものの、プリズム面までマルチコートされたavantar10x50と比べると 見える星の数が寂しく、使う機会がなくなってしまった。で、最近みたら対 物レンズ内側にカビが繁殖しはじめていた・・・
このまま使わずに腐らせるよりはと、前回のスーパービューと同じくプリズム 無しの双眼望遠鏡にして星見にバリバリ使えるよう改造した。

 ● 分解


後ろのねじ3つを外しても接眼カバーが取れない。これはゴムの外装によっ てボディと接眼カバーが固定されてるため。ゴムカバーをはがすと接眼カ バーが取れる。


中身。接眼側、対物側の反射面がミラーになっている。この視野をもつ双眼 鏡としてはプリズムが小さいような。ミラーの反射面、プリズムの空気接触 面ともコーティングはされていない。プリズムハウスは金属むき出しで艶消 し処理されていない。(まあ1万円ちょっとの双眼鏡にそこまで求めるのは無理か・・)

ミラーの反射率が90%、ガラスの空気接触面の透過率が96%なので、 90x90x96x96=74.6%となる。レンズから入ってきた光の3/4しかアイピース に届かず、正立系だけで1/4も光量損失していることになる。さらにミラー とプリズムが対物レンズやアイピースレンズと比べて小さいため、周辺光量 を低下させてるかもしれない。やはり星見双眼鏡に正立系は不要じゃないか との意を強くした。


アイピース内部。アイピースのレンズは数面がコーティングされている。
目側から順に、目側が平面の単凸レンズ、アクロマート凸レンズ、ミラー側 が平面の単凸レンズの3群4枚構成になっている。
レンズのコバ塗りはされておらず、レンズ間のプラスチックリング内側の艶 消しも不十分だったので、艶消し塗料を塗布。
収差を補正するためか対物の焦点距離を短縮するためか、アイピースとミ ラーの間に度の弱い凸のメニスカスレンズがプリズムハウスに固定されてい る。こちらは前後ともノーコートで反射テカテカ。パノラマ7000は逆行に弱 く、強い光源を見ると激しくゴーストが発生するのだが、たぶんこれが原 因。レンズ周りのプラスチックもつやつやてかてか。艶消し塗料を筆で塗っ ておく。


対物レンズは表面のみ緑のマルチコート、裏面はノーコートっぽい。 (写真撮り忘れてたので完成後に撮影。)
レンズ押さえはプラスチックリング。押し込まれてるだけなので、細いマイ ナスドライバーでこじってリングを引っ張り出すとレンズが取れる。レンズ 押さえで3ミリ食っていて、レンズそのものは直径35ミリ。今回はレンズセルの テンションで固定したのでD35mmになった。焦点距離は約 100mmと双眼鏡標準のF4よりも短焦点。
コバ塗りはされていないので墨汁をぬってやる。
カビは溶剤(ブレーキクリーナー)をつけたティッシュでゴシゴシ拭いたら 取れた。
 ● 工作


鏡筒として外径48mm・内径44mmのVU40塩ビパイプを使う。
最初は小型化のために外径38mm・内径31mmのVP30を使おうかとも思ったが、 対物レンズの径を使い切れないのと、遮光環を入れると視野に陰りがでるこ とになるのでやめ。


作った対物レンズセル。VU40を1.5cm幅で切り出して直径を切りつめ、二つ 重ねてレンズに巻き付けると、ちょうどこれの外径とVU40の内径がぴったり になる。

パノラマ7000はCF式だが、なぜかアイピースとステーに左右ともネジが切っ てありIF式にもできるようになってて好都合。ステーを取り出してヘリコイ ド式のピント調整装置としてそのまま利用する。このステーにVU40の径を切 りつめたものを巻き付けると、ちょうどVU40の外径と同じになってこれまた 好都合。


遮光環を左右4枚ずつ入れることにする。前回の経験から、遮光環は環の エッジの面積を少なくすることが重要だとわかったので、コンパスカッターで切り出した後、環の内側をカッ ターで斜めに切り取ってエッジを立てる。植毛紙は対物側にのみ張り、裏面は艶消し塗装のみとする。(写真で見ると全然反射率が違うなぁ〜)
もちろん鏡筒内のすべての面に植毛紙を張ったプラ板を入れる。


光源に向けて覗いてみる。鏡筒を太くしたのが幸いして、遮光環のエッジが わずかに光って見えるだけ、鏡筒面は陰になって完全に見えない。


アイピースステー+塩ビパイプの外径はVU40の内径とちょうど同じ。ジョイ ントを介してハンマーでたたき込む。(バイクのフォークオイルシールのた たき込みと同じ要領)


鏡筒完成。
プリズムハウスに固定されていたメニスカスレンズはアイピースに接着固定した。


アイピースをはめて覗いて光軸調整しながら固定。
前回と同じくプラパイプ(潰れないように中にパテを詰めている)を介して瞬着と少量のエポキシパテで仮固定後、 固定の遅いエポキシパテで整形しつつガッチリ固定する。
某掲示板で「スワロ フスキーもどきにしたらどうか」との提案を受け、面白そうだったのでプラ パイプを2分割して中心軸に見立ててみた。遠目にシルエットだけみたらス ワロフスキーに見えないこともない、かも・・
前回の改造スーパービューは寄り目気味にしていたが、今回はアイピースか ら目を離して瞳射出に写る像を一致させ完全に並行にした。


ストーン調スプレーで塗装し、対物レンズの前に植毛紙リボンを入れ、完成。
コントラスト向上のため視界にかからない限界までフードを伸ばした(対物レンズ前面から4cm)。当初 は収納式のフードも考えたが、バイクでの運用が前提なので堅牢性を優先し て鏡筒と兼用。そのため全長はかなり長くなってしまった。

重量は450gになった。パノラマ7000はもと もと軽い(710g)ため正立系が無くなっても大して軽量になってない。
見える星の量は明らかに多くなった。徹底した迷光対策によってコントラス トも大幅に向上。また、壊しても簡単に直せるという精神的安心感から、運 用性が上がった。(扱いがラフになった、とも言う・・・)