バイク用の高解像度PCナビを作る
2012/9/13
ツーリングで知らない土地の細い道を探索するのが好き。ポータブルナビやカーナビ搭載の地図だと情報量が足りない。
ツーリングしながら国土地理院のウォッちず(基盤地図情報。地形や田舎の建物や登山道・遊歩道レベルまで表示)をカシミール3Dで閲覧したい。
幹線道路を走ってるときも、スーパーマップルデジタル(SMD)だと町の様子まで分かる。
そこで、小型軽量のwindowsタブレットパソコンにカシミール3DとSMDをインストールし、USBのGPSレシーバーを付けて、自作の防水ケースに入れて、バイク用パソコンナビを作った。
動作動画。
必要なハードウェア
MSI windopad 110W
・・・ナビ用途にキーボードは要らないので、タブレットタイプ。カシミール3Dとスーパーマップルデジタルを使いたいのでiPadやandroid機ではなくwindows機。 以前にVAIO VGN-U70Pと弁当箱改造ケースで同じものを作ってTT250Rレイドで使っていたが、画面解像度が800×600で狭い。より広く地図を表示したいので、1280×800のこれにした。
防水ケース
・・・アルミアングル材で自作する。下に記載。
12V安定化電源
・・・windpad110WはDC12V入力なのでバイクのバッテリーに直付けできそうだが、実際はエンジンを回してるときの車両の電圧は14V程度になっている。念のため、8〜24V入力から安定して12Vを出力するDCコンバータを間にはさむ。
Holux M241
・・・GPSロガーだが、USBでつなげばGPSレシーバーになる。USB接続時はUSBからの電気で、それが切れれば内蔵の単3電池で動くので、パソコンOFF時も位置情報を保持しつづけてくれ、再起動してすぐに現在位置を表示できる。
防水USBテンキー
・・・シリコンゴムで覆われた安物のUSB接続テンキー。バイクに付けてキー入換ソフトとキーボードマクロソフトを組み合わせて、2つの地図ソフトを切り替えたり(Alt+tab)、地図の縮尺を変更したり(page down,up)、GPS信号受信開始・終了させたり(マウスクリック)、画面の明るさを増減させたり、パソコンの電源を落としたりできるリモコンにする。
インストールするソフト
カシミール3D
・・・フリーの地図閲覧ソフト。林道や細い道の探索用。地図データは含まれていないので、国土地理院の1/80万、1/20万、1/5万の電子国土と1/12500のウォッちずの日本全土分をデスクトップPCのキーボードマクロで自動閲覧してローカルに保存したキャッシュデータをSSDにコピーしてある。
スーパーマップルデジタル
・・・有料地図ソフト。都市間移動用。道路地図としてはゼンリン電子地図帳よりもマップルのほうがずっと見やすい。
仮想分配器つき通信ポートx8
・・・シェアウェア。一つのGPSレシーバーからの位置情報信号を複数の地図ソフトに分配する。地図ソフトを一つだけ動かすのなら必要ない。
配付されているのは32ビット用だが、配布元のサポート掲示板で無サポートを条件に64ビット動作版をもらった。Ready Driver Plusでドライバ署名の無効化が必要。
X button maker
・・・キー入れ換えソフト。フリー。テンキーのワンプッシュをCtrl+1のように複数押しのショートカットキーに入れ換えて、下のキーボードマクロソフトに渡す。アクティブのアプリケーションによって内容を入れ替えられるので、アプリごとに異なるショートカットを1つのキーで再現できる。
KMmacro
・・・キーボードマクロソフト。フリー。キー入れ換えソフトから渡されたCtrl+数字キーをトリガーにして、記録しておいたキーボード入力・マウスクリックを再生させる。(カシミール3Dの縮尺変更や、SMDのGPS再生・オフの切替等)
backlightwin
・・・液晶バックライトの輝度変更ソフト。フリー。VAIO用だがwindpadでも使える。ctlr+alt+F5で輝度ダウン、ctlr+alt+F6で輝度アップ。KMmacroでテンキーの−キーと+キーに登録した。10〜100%の間で調節出来る。
MonitorOff
・・・液晶バックライトOFFソフト。フリー。ショートカットをwindowsのタスクバーに登録して、windowsキー+1キーで起動させる。KMmacroでテンキーの*キーに登録した。
旅先で役立つサイトのキャッシュ
・・・「駅から時刻表」(鉄道時刻表)や「さいきの駅舎訪問」(日本全駅の写真)や「じゅんブログ」(野湯訪問)や「北海道一周で訪れたい観光地」「自己満足 北海道」「北海道旅情報」(北海道B級スポット案内)などのサイトのデータをローカルに保存して、SDカードに入れてwindpadに刺してある。ツーリング先で調べ物をするときに役立つ。
動作の軽快化・安定化のため、プリインストールされているいらないアプリは削除する。基本的にネット接続はしないので、ウイルス対策ソフトやオフィス等は削除。不要なwindowsのサービスも停止。
防水ケースの作成
条件
透明のアクリル板で前面を覆ってしまえば簡単に完全防水化できるが、モニターのタッチパネルを生かすため液晶の表示面を露出させたい。
発熱したときはファンが回り背面と底面から吸気して左側面から排気するので、吸排気口の確保が必要。完全密閉はできない。
ツーリング先でバイクを離れるときは防水ケースごと取り外して持ち歩くので、簡単にパソコンを出し入れできるようにする必要はない。だが、帰宅後に保管するときや故障したときのために完全に固定もしない。
L字型アルミアングル材をハンドソーで切り、エポキシボンドで接着しボルト止めしてフレームを作る。
右側は排気口、左側はUSBを刺すので1.5cmずつ空ける。下側はDCジャックを刺すので2cm空ける。上はくっつける。
下側のスペーサーとして硬質スポンジをつけ、つぶれないように上にアルミ板を接着した。
USBケーブルと電源ケーブルのジャック部分を分解してハンダ付けし直してシリコンボンドで覆い、コンパクト化。
バイクから離れるときに防水ケースを外して持ち歩けるように、電源ケーブルとUSBケーブルの途中に耐水コネクタ(カーショップでよく売られてるやつ)を付けた。
電源2本、USB5本で計7端子が必要だが7端子コネクタは無いので、4端子と3端子のものを合体させた。ケースに穴をあけて固定して雨水が入らないようにパテで隙間を充填。
電源スイッチを外から押せるように、ケースに穴をあけ、イヤホン用イヤーピース(シリコンゴム製。100円ショップで購入)とプラ棒をシリコンボンドで接着して防水ボタンを作った。
前面の防水化のため、液晶の表示面にあわせてスポンジタイプの両面テープを貼り、そこに表示面に合わせて四角くくりぬいたシリコンゴムシート(キーボードカバーとして売られてる物)を貼り付けた。
ベニヤ板で前面カバーを作った。裏側に発泡ウレタンを貼り付けてあり、それでシリコンゴムシートを抑え付ける。ケースにはめ込んで下側を金具とネジで固定する。
ケース完成
横から出た排気はL字アングル材の下の隙間から裏面に抜ける。
吸排気のため、裏面の底に隙間を空けてアルミ板でカバーを付けた。吸排気が混ざらないように間に仕切りをつけてある。
バイクにケースを固定するためのステーを付ける。
3mm厚アルミ板を曲げて作ったステーをダッシュボードに付けてケースの底を受け、スクリーンのステーからアルミのアームを伸ばして前後に倒れないように固定する。
ステーとケースは手で外せるように蝶ネジで固定。4本のネジをはずせばケースをバイクから取り外せる。
主電源スイッチとしてトグルスイッチをリヤカウル横に付けた。(2つのうち1つはnuviの電源スイッチ)
エンジンがかかってるときのバイクの電圧は14V程度で定格12Vのwindpadに直接入力するのは心配だったので、8〜16Vから安定して12Vを出力するZUS151212を間に入れた。バッテリー〜ヒューズ〜ZUS151212〜windpadと。
しかしZUS151212は1.5Aまで流せるはずだが、使っていると発熱のせいか容量が足りないのか発振状態になってしまったので、外してバッテリーに直接接続した。
DL650はFIでコンピュータを搭載してるので、標準でノイズ対策されてるはず。今のところ問題は出ていない。
M241は非防水なので、ブリスターパッケージの透明板と双眼鏡のキャップとペットボトルのキャップとシリコンゴムで防水ケースを自作。
上空の見通しがよくパソコン(ノイズ源)から離れた場所・・バックミラーのステーに取り外し可能なタイラップで固定。
windpadからひっぱったUSBケーブルの先にテンキーを接続し、テンキーに内蔵されているUSBハブ2口のうち一つにGPSレシーバーのケーブルを挿す。
もう一口は何か(カードリーダーとか携帯電話とかキーボードとか)を使うときのために延長ケーブルを挿した。延長コードの先にはキャップをはめて、キャップ周辺にシリコンボンドを塗って防水化。テンキー刺口の隙間もシリコンボンドで埋めて防水化。
テンキーは左タンクシュラウド上に固定。テンキーの外装はシリコンゴム製で接着剤や両面テープが着かないので、1.5mm厚アルミ板を曲げてケースを作り、それを強力両面テープでカウルに付けた。
実際に何度か使ってみて、
操作するたびにいちいち視線を下に向けてると危ないとわかったので、ブラインドで操作できるように主要なキー6つ
(地図の縮小・拡大、地図の切替え、GPS測定の開始・中止、モニターバックライトOFF)にシリコンゴムを切り抜いて作った出っ張りを接着した。
指先の感覚でボタンを判別できるように少しずつ形を変えたが、冬用の分厚いグローブをつけてると「出っ張りがあるな」としかわからない。
でも「右下の出っ張りだから地図の切り替えだな」「その上の出っ張りだから地図の拡大だな」と判断できるので、見ずに操作できるようになった。
完成
目の位置から撮影。タイヤ直近の路面は見えないが、普通に走る分には問題ない。
オフロード走行のときは外してnuviにしたほうがいいな。
東北被災地ツーリングに持っていって使った。
街から街へ移動するときには、スーパーマップルデジタルで。経路は黒丸の連続となって表示される。
道路やランドマークが目立って表示され、道路移動で使いやすい。
林道や集落の中を探索するときには、カシミール3Dの1/12500国土地理院地形図。経路は赤い線となって表示される。(上のSMDと同じ位置、中央1/3くらいを拡大表示させてる状態。)
どんな田舎でも建物(黒い四角)や地形表示がされてて、向かう先の様子が手に取るようにわかる。
ハンドルにnuvi205wも付けて、20万分の1くらいの全体表示をさせていた。
nuviで今自分が日本のどのあたりにいるかおおよその位置を掴んで、細かい道路選定をSMDで、更に細かい探索を地形図でやって、非常に便利だった。
ポータブルナビ(nuvi205w plus)とパソコンナビの画面を比較。山田線の大志田駅周辺。
nuviの純正地図。
nuviの純正地図上に国土地理院の基盤地図情報をコンバートした道路・建物地図をオーバーレイ表示させたもの。
駅周辺の廃屋(緑色)や遊歩道・登山道まで表示されている。
カシミール3Dのウォッ地図1/12500。建物は黒く表示され、登山道は点線表示されている。探索ツーリングではこの地図が一番見やすい。表示サイズはwindpadの1280×800に合わせてある。
スーパーマップルデジタル。建物の表示は無いが、道路名称や道路番号や交通規制やランドマーク名が表示されていて、普通のツーリングではこれが一番見やすい。
ちなみに、ナビと言っても俺は目的地を指定して経路を案内させる使い方はしない。現在地を自動表示する地図という使い方。
道の分岐でこっちのほうが崖っぷちを走って眺めが良さそうな道だな、とか、この道は行き止まりで通り抜けられないからやめとこう、とか。
ナビに行き先指示されて走るなんて、単なる目的地までの運転代行じゃん?ツーリングはその時の気分で自由に走りたいから、
あくまで現在地と周辺状況を把握するための「現在位置自動センタリング電子地図」として使う。
(そもそもロングツーリングでは「目的地」なんて決めない・・・地図みて面白そうな道を走るだけ。暗くなってから寝る場所を探す野宿ツーリングなので自由なのだよ。)
紙のツーリングマップルに対して
長所
縮尺が細かくできるので複雑な分岐や街中で迷わない
細かい地形や建物が把握できるので集落探索・林道探索において地図だけで 先の様子が見通せる
現在位置が常に中心に表示されるのでページめくりが必要ない
防水ケースに入れてるので雨が降ったときに濡れる心配がない
短所
ツーリング向けのお勧め道路やお勧めスポットの案内がない
ポータブルメモリナビに対して
長所
高解像度で広い範囲を表示できる (ナビは最も高解像度な物でも800x480、 今回作ったのは1280x800)
地図が細かい。等高線や遊歩道や田舎の建物まで表示でき(ナビは都市部だ け)、向かう先の様子が把握しやすい。バス路線が表示できるので鉄道がない 土地で野宿場所を探すのに役立つ。
地図を最新版に更新する費用が安い(スーパーマップルデジタル全国版の アップグレード版は実売7000円程度)
事前にローカル保存しておいた旅関係のサイトの閲覧ができる(鉄道時刻表 や温泉案内等)
windowsなのでデジカメで撮った写真や動画を取り込んで編集、アップロー ド、PC向けサイトの閲覧、文書作成等なんでもできる
短所
起動・終了に時間がかかる
でかくて重い
高価で作るのに手間がかかってるので、盗まれるとダメージがでかい
目的地を探すときはナビのほうがUIが洗練されていて手軽
昭文社がスーパーマップルデジタル上にツーリングマップルの道路案内・スポッ ト案内を上乗せした、ツーリングマップルデジタルを出してくれれば最強なん だけど・・・アドオンとして発売してくれないかな。
カシミール3Dは紙地図をスキャンして画像ファイル化して四隅の緯度経度を指定 すれば普通に電子地図として使えるので、ツーリングマップルをばらしてス キャンする手もある。
が、日本全国分のページをスキャンして上下左右のページ と重ならないようにきれいに切り抜いて四隅の緯度経度を手入力して・・・と いうのは膨大な時間と手間がかかるので保留中。
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