プリズムのない星見用双眼鏡を造る


お気軽星見用に笠井トレーディングからSuper-view 4x22を買ったが、他の双眼鏡と比べてどうも見える星の数が少なく、使わなくなってしまった。なんせ9800円のダハプリズム双眼鏡、プリズムでだいぶ光量を損失してヌケが悪くなってるんじゃないだろうか?
「星見には正立像は不要、プリズムは像質を悪化させるだけ」と考え、プリズム無しの双眼鏡に作り変えることにした

 ● 分解


外面のラバーをはぐ(接着剤でとめられてるので一部破れたがキニシナイ!)。
ボディの後部に左右それぞれ4箇所、前後二つずつマイナスのイモネジがあるので、後ろ側のネジだけ外すと接眼部が取れる。(前のイモネジはプリズム固定ネジ) 接眼部を外したら内側からアイピースを抜くことができる。


プリズムでかい!口径は対物レンズとほぼ変わらない。低倍率広視野を得るためものもでしょう。
ダハなのにずんぐりむっくりしてるのはこの巨大プリズムのせいだったのか。


対物レンズ。D22mm、f80mm。写真では色が薄くてわかりずらいけど、両面ともマルチコートされており反射像は二つとも青い。


アイピース。F80mmの対物レンズで4倍ってことは、焦点距離20mmですね。左写真の接眼側は対物レンズと同じコーティングだが、右写真の内側はノーコートのようでギラギラした反射・・・


プリズム。22mm双眼鏡としては異様にでかく、重い。左写真の対物側は対物レンズと同じコートがされているが、右写真の接眼側はノーコート・・・この値段だから位相差コートもされてないだろうなぁ。

 ● 工作


接眼側のヘリコイド式ピント調整装置はそのまま流用するため、余計な部分をニッパーで切り落としてヤスリで整形。これの内側に水道用のVP35塩ビ管(内径31mm、外径38mm)が図ったかのようにぴったり嵌る。


アイピースは抜けどめのリングがついてるので、同じくニッパーで切り落としてヤスリで整形。外径30mmなのでこれまたVP35塩ビ管にぴったり入る。


材料一覧。左から接眼部、対物レンズ(実はSuper-viewのではなく、ジャンクのニコンSportStarVから取ったD27mm f80mmのを使用)、外径25mmプラパイプ(100円ショップの空気入れのボディ)、VP30塩ビパイプを11cmに切り出したもの×2。


塩ビパイプに接眼部と対物レンズをはめこんで(まだ接着しない)、実際に覗きながら光軸をあわせ、25mmプラパイプを介してエポキシパテで固定する。(自分専用なので眼幅固定で問題なし。バイクツーリングでもってく予定なので、頑丈さ第一ということで。)
写真は塗装にむけて前後をビニールテープで覆ってマスキングしてる状態。


塗装には「ストーン調スプレー」を使用。塗膜が頑丈で、なにより完成後に高級感がでるのでお勧め。


乾くのを待つ間に、内面につける植毛紙リボンと遮光環を製作。
パイプの内面に直に植毛紙を張るのは至難の業なので、100円ショップのバインダーのPPプラ板に植毛紙を貼って1.5cm幅の短冊状に切り出し、丸めて遮光環と交互にパイプに入れる(右写真)。
遮光環も同じくプラ板の両面に植毛紙を張り、サークルカッターで切り出す。穴のサイズ26mm、24mm、25mmの3つをつくり、この順に1.5cm間隔で入れた。
フードとして対物レンズの前は1.5cmあけてあり、そこにも植毛紙を張った。


接眼部をつける前に、蛍光灯にかざして遮光具合を確認〜。環のフチが反射してるけど、このくらいなら、まぁいいかっ。(手前で反射してる部分はアイピースが入る部分。サイズぎりぎりなので植毛紙は貼れないのだが、光路にかからないので問題なし)


組み込んで完成!

お遊びでスーパービューから剥がしたシールを貼った。実際には対物レンズはNIKONから持ってきてるので4x27になってるんだけども。


光源に向けた状態で接眼部を見る。プリズム式の双眼鏡とは比べ物にならないほど内面反射が少ない(遮光環のフチがわずかに光ってるだけでほぼ皆無)。これは何十万円するドイツ・オーストラリア製の超高級双眼鏡でもかなわないでしょー。このため、コントラストは非常に高いです。


スーパービューの残骸と比較。高さと幅は小さくスレンダーに、全長は1.5倍くらいに長くなった。重量は実測295g。プリズムがなくなって軽くなったけど、左右の鏡筒を固定するのに使ったエポキシパテが予想外に重くて・・・
右写真は対物レンズのコーティング比較。上の自作双眼鏡はニコンスポーツスター3の対物レンズ(自作双眼鏡では植毛紙のテンションで支えており、押さえ金具が無くなったので口径27mmになった)。マルチコーティングは外面にしかされてないようだが、反射光は裏面はスーパービューと同じくらい、表面ではより抑えられている。


残骸・・接眼部がなくなったSuperViewと対物部がなくなったSportstar-V。ジャンク箱行き・・まあまた何か使う機会があるだろ〜

 ● 実際に使ってみて

昼夜どっちで使ってみてもコントラストがとても高い。抜けも非常に良い。夜に街灯や月を見るとアイピース内の反射によるものと思われるゴーストがわずかに見られる。
夜に星を見ると、ノーマルスーパービューより明らかに見える星の量が多い(ただしこれは対物レンズを換えて瞳径が大きくなったこともあるだろうから、プリズムが無くなった効果だけとは言えないけど)。星見では裏像は気にならない。
星像は中心部ではそこそこシャープ。像面湾曲が強く出ていて、視野6割目くらいからボケはじめ外周2割くらいは完全にぼやけた状態。外周側でピントをあわせると結像するが、コマ収差がでていて光が滲む。また昼間に景色を見てみると、周辺部でわずかに倍率が上がっているようで引き伸ばされたようになる(これは星だと気にならない)。
プリズムが無く光路が大きいため、視野のかげりは皆無。シビアな双眼鏡だと視野の中で目線を動かしたり、接眼レンズに眼を近づけすぎるとブラックアウトするが、これではそうならない。
軽いので楽に使える。当初の目的である「旅行に持っていける星見専用双眼鏡」という目的は果たせたかな。