ワインセラーを改造し、長さ120cm以上の望遠鏡が入る大型防湿庫を安価に自作する
2025/2/22

これまでカメラレンズや双眼鏡を保管するのに既成品の除湿庫を使ってた。
欲しいと思ったときに中古家具屋(ReOK泡瀬店)に東洋リビングの古い大型除湿庫がいくつか並んでるのを見つけて、安く(高さ1mちょいの大型で7千円)で購入して長く使ってる。
宇宙好きなので、いつか望遠鏡(安物アクロマートのSE120L)2本を合体させてオフセット式の双眼望遠鏡にしようと2本買って1本は単体で観望に使い1本は放置してたが、子供が成長して宇宙大好き少年になり制作のやる気が出てきて着手した。
問題は保管で、2本合体させるとものすごくでかくなり(天頂ミラーやファインダーを付けて120×50x20cmm)、このサイズが入る防湿庫(PH-322W-M2)は30万円する。中古の出物はない。
産業用のデシケーター(乾燥庫)も良い大きさのものがあるが、10万円以上する。
かといって高温多湿の沖縄で部屋保管するとひと夏でカビが生える。
そこで自作することにした。
1・筐体の検討、選定、購入
内部の高さが1.5mくらいある箱を考える。
- オフィスなどにある鉄製の中古ロッカーを買って、気密のため接合部をコーキングして内部に市販の除湿器を置くことを考えたが、扉開閉部のいい気密方法が思い浮かばない。ペラペラ・ヘナヘナの扉にゴムパッキン付けてもどこかが浮いて隙間ができそう。
- 木製の洋服タンスの中古はどうか。作りはしっかりしてるが、内側全面に内張りが必要になるうえ、やはり扉開閉部の気密保持が難しそう。
- 最初から気密が確保されてる家電といえば、冷蔵庫。家庭用の冷蔵庫は部屋が分かれてて内寸高120cm以上あるものが見つからない。業務用の大型冷蔵庫は中古でも10万円以上して高い。
- トラックの荷台に積まれてる冷蔵室の中古…安いが大きすぎて部屋内に置けない。
- ケーキやドリンクの冷蔵ショーケース。ちょうどいい大きさで、業者向けの中古販売店で扱いがあるが、冷蔵機器部が大きすぎ、全面ガラスで重すぎて、中古でも値段が高い。
いろいろ探してると、ワインセラー(ワインの冷蔵保管庫)というものが存在するのを知った。高さ1.5mとちょうどいい大きさのものがあり、重量100kg以内でなんとか一人で運べて、扉が透明で中が見える。
ワインは「温度低くて湿度有り」が理想で、カメラレンズは「湿度低くて平温(冷やすと結露するので厳禁)」が理想なので真逆だが、気密確保されたガワだけほしいのでかまわない。「ワインに呼吸させる」必要があるらしく空気穴が開いてるが、塞げばいい。
沖縄という特殊立地で、通販で県外から中古を買うと本体価格以上の送料がかかってしまう。ヤフオクの検索で出品地を沖縄限定にして検索したが出品皆無。県内の中古販売業者は商品ごとのサイト掲載をしておらず、実店舗をまわって探さないといけない。
ということで、ジモティー(出品地ごとに特化した個人売買サイト)で探す。
タイミング良く動作品のフォルスターST-NV270(内寸1279×520×448mm、外形1513x606x562)が1万円で、冷媒漏れのハイアールJQ-F398A(内寸不明、外形1680×670×668mm)が無料で出品されてるのを見つけた。
(でかい方のハイアールは新品34万円、末期の在庫処分価格でも20万円、中古動作品でも10万円する。前オーナーもワイン保管用ではなく昆虫飼育用として中古を購入したらしく、捨てる神拾う神だな)
すぐに両出品者に連絡。フォルスターのは出品即連絡で売ってもらえることになり、ハイアールは見つけたのが遅く無料だと先着順で負ける可能性があるので5千円でオファーし、取引成立した。早めに引き取ってほしいとのことで、5日後の土曜に引き取りに行くことになった。
2・防湿庫筐体(ワインセラー)の引き取り、運搬
運搬で予想される問題点
- 自分の乗用車に入らない
→軽トラックを0泊1日3000円でレンタルした。(じょりーオート)
- 引き取り場所(2階の店舗、エレベーター有り)から駐車場までの運搬方法
→台車は容易に入手できるが、取手のない80kgを一人で持ち上げて台車に乗せるのは難しい。底面にひっかけ斜めに倒して運ぶ二輪運搬車(キャリーカート、ハンドトラック)なら一人で運べる。
「トラスコ中山 スチールパイプ製二輪運搬車 H1060」が耐荷重100kgで1万円ちょっとと最適だが、沖縄県内のメイクマン・カインズホーム・アストロプロダクツを探したが同等品が売ってない。カインズで店舗取り寄せしたりネット通販だと1週間以上かかるので間に合わない。
またまたジモティーで探すと、アメリカ製の自販機運搬用?耐荷重700kg二輪運搬車が12,000円で出品されてたので10,000円に値切って、ワインセラー引き取りに行く途中に引き取ってそのまま持ってくことにした。オーバースペックだが自重20kgで持ち上げられる重さなのでまあよい。
- 軽トラ荷台への積み込み方法
→荷台の地上高60cmに一人で持ち上げて積み込むのは無理。傷防止のマット(古い敷布団)を荷台に敷いて、ワインセラーの冷却機能は使わないので故障上等で、背面を荷台フチにひっかけて滑らせながら上に上げて、横倒しに乗せる。
- 軽トラの荷台から降ろす方法
→荷台フチにひっかけて斜めにすべらせて降ろす。
- 設置部屋まで自宅内で運ぶ方法
→平日夜に2Fのベランダから木星や土星やオリオン星雲を見ることあるので、ベランダ前の部屋に置きたい。大荷物をリュックのように背負える運搬ベルトをamazonで2000円で購入し、背負って2階まで運ぶ。
出品者から引き取り、軽トラ荷台に積み込み。(観光地の店舗なので目立った)無事自宅まで運んで1階ガレージに仮置き、再出発してもう一台も引き取って横に置いて、トラック返却。

ST-NV270にコンセントを刺してみると、動作して冷却できた。
二階まで持ち上げるのに今回のために買った背負いベルトを付ける。
自分がだいぶ前かがみになって、背中にワインセラーを乗せる形にすればなんとか持ち上げられたが、バランスをとるのがとてもむつかしく、少しでも傾くと自分ごと横に倒れてしまう。
もう一人補助役がついて後ろで横に倒れないように支えてもらえばいいが、そもそも二人いるのなら二人で横にして上下端を持てばもっと楽に運べる。
そのままでは到底無理だったので、軽量化のため解体して冷媒ガスコンプレッサーやラジエターやファンを取り除くと、だいぶ軽くなった。さらに扉が2重ガラスでとても重いため、軽量化のため外して別に運ぶことにした。

ここまですると本体は元の半分以下に軽くなり、背負った状態でなんとかバランスをとることができ、2階まで背負って運べた。
2つめのワインセラーはもう背負いベルトを使う気がせず、ワインセラーの背面に古い敷布団をロープでくくりつけてそりのように滑らせ、階段では下から押し上げて2階まで運んだ。
3・除湿で出る結露水の排水
ワインセラーの中に市販の除湿器を置いて除湿させるが、除湿器のタンクに水が貯まる。市販のペルチェ式防湿庫の除湿ユニットは出た水を背面のスポンジに吸収させ熱して蒸発させているので、そこが異なる。
水タンク排水のため扉を開けて取り出したら湿気が入るし、シーズン外は長期放置するので定期的にタンク水量を確認するのが面倒。除湿器にドレンホースを付けて、防湿庫の壁に穴をあけてホースと除湿器電源ケーブルを外に出して外部排水させる。
水はそのまま部屋の外に出したい。部屋全体もコンプレッサー式除湿器で除湿するので、その排水も一緒に外に出す。
10cm以上あるコンクリ壁に排水ホース穴を開けるのは大変なので、はめ殺し窓ガラスの隅に穴を開ける。
ガラスに穴をあけるにはダイヤモンドホールソー。
amazonで各種サイズのセットを買って、その中で一番大きな12mmを使用。低速で回したいのでドライバードリルに付ける。
摩擦熱でガラスの一部だけ熱くなると割れるので、冷却が大事。ペットボトルキャップに穴をあけてホースを付け、底を抜いたペットボトルを上下逆にしてダクトテープで窓に付けて、水を垂らして冷やしながら穴をあける。
最初に手足でドリルを支えて回したらブレて全く固定できなかったので、12mmの穴を開けたアルミ板を両面テープで窓に張り付けてガイドにしたら上手くいった。

ホールソーがだいぶ埋まっても貫通しない。貫通後に確認したら、このガラス10mm厚もあった。台風の風圧に耐えられるよう頑丈に作ってあるんやな。自分の家なのに知らんかった。ガラスカッターでは無理だったな。

屋外散水用の内径4mm外径6mmホースとT字ジョイントを使い、部屋除湿器、防湿庫A、防湿庫Bの3つの排水をまとめて出せるように配管。

防湿庫制作前に部屋除湿器を繋いで一晩運転させ翌朝見たら、タンクが満水になって停止してる。なぜ!?ホース内に水が詰まって流れてなかった。内径4mmでは細すぎて自重では流れないみたい。このホースは陽圧のかかる上水直結用なんだな。
散水ホースを撤去して、内径8mm外径10mmのクリヤビニールホースとT字8mmプラジョイント3つ(一つは予備配管)で配管し直した。窓ガラス手前から外にかけては対候のため同径シリコンホース(高い)にしてベランダの排水口につっこんだ。

これでうまく流れるようになった。ホースの中を流れる水で除湿状況が目に見えて面白い。
4・ワインセラー本体の改造
amazonで4千円で売られてる安物ペルチェ式除湿器をワインセラー内に置いて除湿させる。ペルチェ式は寿命が短めなので簡単に交換できるように、ワインセラー上部に棚を作りそこに置くだけ。(予備として同じ除湿器をあと2つ買って保管してある)
除湿器を分解して、電源スイッチと満水停止スイッチを外してパスし、DCジャックから出てるケーブルとペルチェ・ファンのケーブルを直結させる。ACアダプタから9Vが供給されてる間は常に動くようにする。
分解したついでに、冷却(結露)ヒートシンクと導水部にシリコンオイルを塗って水滴が落ちやすくした。

除湿器水タンクの水受け部の下に6mmホースジョイントをエポキシパテで固定。水タンクに穴を開けてホースを通し、ホースジョイントに接続しドレンホースにする。
ホース劣化による交換を防ぐために、対候性の高いシリコンホースにした。内径6mm外径8mm。

湿度が上がると電源ON,下がると電源OFFにできる湿度センサースイッチSTC-3028がaliexpressで送料込み1200円で売られており、これに除湿器ACアダプタを付けて庫内の湿度を保つ。
ペルチェ素子は電源ON/OFF(冷/熱サイクル)で劣化するそうで常時稼動だと寿命が長くなるが電力を食うので、なるべくON/OFF頻度を減らすために湿度50%で電源ON、湿度40%で電源OFFの設定にした。
(最初から湿度センサー付きのドレンパイプ式除湿ユニットも5000円程度で売られてるのだが、故障時のことを考えるとセンサー部と除湿部は別のほうがよく、市販の汎用除湿器を使うことにした。)
STC-3028の湿度表示が信頼できないので、我が家で唯一信頼できるシンワ測定の湿度計を湿度センサーと並べて除湿器の排気口に置き、校正する。
といってもSTC-3028にキャリブレーション機能はないためメモして頭で変換するしかないのだが。
幸いにも大きな違いはなかったため、表示数値をそのまま使うことにした。
湿気を含んだ重い空気は底に溜まるので除湿器は底に置くのがいいのだが、今回は排水のため上に置いたので、除湿器から防湿庫の底まで吸気ダクトを付けて底部から吸気させ、除湿器からの乾燥空気は上部に排出して、庫内の空気を循環させる。
カビを防止するには風に当てるのがいいともいうので、庫内全体の空気が動けばカビ予防効果が高まるだろう。
直径50mm塩ビパイプとL字ジョイントでダクトを作った。
除湿器のメッシュ状の吸気面をプラ板(ポリプロピレンまな板)でふさぎ、冷却ヒートシンクの前に50mmの穴を開け、そこにパイプをはめ込む。
パイプから出た空気が効率的に冷却ヒートシンクにあたるようになった。
吸気口のまんまえにSTC-3028のセンサー部を置いた。

アナログの湿度計もあったほうがよいので、100円ショップの気温・湿度計を扉ガラス内側につけた。
3つ買ったが3つともバラバラな値だったため分解して、シンワ測定の温度計・湿度計を基準にして数値を合わせて校正した。
これでしばらく稼動させてみると、除湿器の消費電力ぶん中の空気が熱せられて内部気温が高くなってくる。元冷蔵庫なだけあって要らない保温機能が効いてる。
あまり熱いとレンズのゴムや樹脂部品に悪影響がありそうなので、保温機能を低下させるため、扉の2重ガラスのうち内側のガラスを除去することにした。
まずガラスカッターで窓枠に沿って筋を入れて、なるべくまっすぐ割れるようにする(結果的には全く無意味だった)
扉を開けて下にレジャーシートを敷いて、自動車事故脱出用のガラス割ハンマーを内側から扉にたたきつけると、ビシッと全面にヒビが入って手でボロボロ崩せた。

内部の温度が上がると扉ガラスが熱くなり、熱が逃げて内部気温が下がりやすくなった。
庫内照明(フォルスターは白熱灯、ハイアールは白色LED)が天井に付いていたが、天井のみだと下部まで光が届かないし、白色光だと暗順応した目に刺激があるので、長さ1mアルミバーに赤色LEDテープを貼り付け、直接目に入らないように入口手前に奥に向けて付けた。
扉スイッチと手動スイッチを並列で付けて、扉を開けたときと手動スイッチ操作したときに点灯するようにした。
5・完成
フォルスターには棚網を入れて双眼鏡やアイピースやファインダー等の小物(といっても口径70mm〜100mmの大型双眼鏡だが)を。
ハイアールにはSE120L双眼望遠鏡、シュワルツ150L、SE120L単筒×2本を入れてある。シュワルツは口径150mm、焦点距離1200mmの大物だが、ドローチューブをピント位置にして天頂ミラーを付けたまま入れてまだ上部に余裕がある。あと20cmくらい長い筒でも入りそう。

特大除湿庫2つの制作費用
本体価格 ワインセラーA 10,000円+ワインセラーB 5,000円+除湿器4,000円×2+湿度センサースイッチ1,000円×2=25,000円
運搬費用 二輪運搬車10,000円+軽トラレンタル3,000円+運搬ベルト2,000円 =15,000円
道具小物 ダイヤモンドホールソーセット1,000円+排水ホース・ジョイント、塩ビパイプ等2,000円 =3,000円
総計43,000円(一つあたり21,500円)
ジモティー見てたらフォルスターST-SV270Gの冷却不可ジャンクが無料で出てたので、また軽トラ借りて貰っちゃった。
この防湿庫制作の一番のキモはいかに安くで大型ワインセラー筐体を入手できるかで、いつも出品されてるものではないのであるときに貰っておく。

今回のは1か月くらい載ってて引き取り手がいない状態だったので、有料オファーはせずそのまま無料で貰い、費用は軽トラレンタル代3,000円と高速通行料1,000円のみ。
ハイアール防湿庫がもう一杯なので、今後作る予定のシュワルツ120S双眼望遠鏡や今後買うかもしれない200mm反射望遠鏡を入れるのに予め作っておくといいかなと。
防湿庫はいくつあっても困ることはない。(カメラ用の中型・小型まで入れたら6つになった)
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