大志田駅〜浅岸駅間 12.9km 冬の雪道踏破

 2010.1.1


正月休み6日間で、沖縄では見られない雪を見に東北ぐるっと一周鉄道旅をすることにした。
大好きな大志田駅と浅岸駅にも行くが、旅程が宮古→盛岡となるため、両駅で1時間以上を確保しようと思ったら大志田駅に朝6:59の始発で降り、浅岸駅から17:30のに乗るしかない。駅間は歩くことにした。
夏にバイクツーリングで2回、輪行で折りたたみ自転車で1回走ってるのでどういう道かはわかっている。
雪の林道を徒歩で・・・生まれて初めての経験。しかも駅間距離は10km以上。今回の旅の一番の楽しみのメーンイベントとなった。

まだ暗いうちに宮古から盛岡行始発で出発。6:59大志田駅着、下車。

降りるとホームは除雪され、駅の下にある建物の周りで数人が除雪作業をしていた。全くの無人地帯で除雪もされてないだろうと予想してたので意外。
太陽が顔を出す前に歩き回って写真をとりまくって、駅ノートにスケッチした


9:50、キャリーカート(リュックのように背負っても運べる)を背負って肩掛けかばんをたすき掛けして、浅岸駅に向かって歩き始めた。

距離は10kmほどなので、時速5〜10kmで歩くとして1〜2時間、のんびり歩いても3時間あれば着くだろうと予想。
飲み物は500mlの緑茶ペットボトル、500mlのミルクティーペットボトル、350mlの青森県産JAりんごジュースペットボトル、250mlの野菜ジュース紙パック。これだけあれば十分だろう。


あたりの雪はふわっふわのパウダースノー。駅から1人の先人の足跡が続いている。


駅の下にある建物に車が6台とまっており、駅周辺は無人地帯というわけではないようだ。 大志田駅周辺は人がいるのに停まる汽車は一日3本、浅岸駅周辺は廃屋だらけで全く人の気配がないのに一日6本。
なぜ?という疑問は浅岸駅で地元の方と話して解決した。

駅から50mほど歩くと先人の踏跡は途中で斜面を降りて下の建物にむかい、そこから踏後は無くなった。


10:01、駅前道路(県道204号線・大志田停車場線)に出た。
浅岸に向かう方向は積雪のため冬季通行止めで鉄柵の門が閉じられていた。 ゲート脇から進入。

道の積雪は30〜40cmくらいで踏跡は皆無。ただ1週間くらい前につけられたのだろう消えかけた車の轍が1つだけ延びている。巡回か道路管理の車だろうか?

新雪が積もった道を歩くのは初めてだが、すごく歩きづらい。普通に歩くと足が雪の抵抗を受けるので、真上に足をもちあげて真下におろして足を回転させるように動かすと歩きやすいとわかったが、これだと進むペースが遅い。
轍のところは少し圧雪されて歩きやすいので、これからこの轍の上を歩くことにする。タイヤの幅は10cmくらいしかないので片足しか使えないが、それでもだいぶ楽。
自分以外の先人の跡があるのは少し残念だが、無ければ苦労しただろう。景色的に轍がなくなってほしい気持ちと、歩き的にいつまでも続いて欲しい気持ちが両方。


10:03、振り返ると大志田駅0.8kmの道標。けっこう歩いた気がするけどまだ800m!?先は長いなぁ。


道と平行して流れる米内川のせせらぎしか聞こえない。凄く静か。


10:33、線路と1回目の遭遇。時計を見るとあと30分くらいで宮古行きの汽車が通過するので大休止とする。


キャリーバッグを降ろし、雪の上にビニール袋と発泡ウレタンの断熱シートを敷いて座って汽車が来るのを待つことにする。
今日は朝5時に起きてすぐサラダを食べただけなので、ついでに昼飯を食べる。昨日に青森駅前の市場で買ったイクラ(400円)を、八戸駅前の食堂でパックに詰めてもらった白米(200円)に掛けてイクラ丼を作った。

イクラ大好き。たっぷり山盛でうまい!幸せ。
ショルダーバックを軽くしたくて500mlの緑茶は全て飲んでしまった。


11:04、汽車が来たので撮ったが、ピンボケしてた・・・

背負ってるのは山登り用のリュックではなく、ゴロゴロ転がすキャリーカートを背負いもできるようにしてあるだけのバッグ。10kg以上ある。背負いベルトがあまりよくないようで肩にベルトが食い込んで痛い。
肩から下ろすと再び背負うのが大変なので、立ったまま前かがみになって背中でバッグの重さを受け、肩の負担を減らして小休止すると少し楽になる。


↑肩掛けカバンのベルトをたすき掛けしてると掛けてる肩だけ痛くなるので、新しい持ち方を考案した。
肩掛けカバンの重さが肩にかからず、しかもカメラを肩掛けカバンの上に置くことができ首にかかる重さも無くなるので楽になった。


11:25、2回目の線路との遭遇。汽車がもうすぐ来る時間だったので三脚を広げてパノラマ素材の撮影。だがタイミングがずれて撮れなかった。

大志田から浅岸への道はほとんど登り。ひたすら上り坂が続く。GPSで確認すると歩くペースは時速3〜4km。
まだ足の筋肉は余裕があるが、息が切れてきた。肩も痛いので2〜300m進むごとにひんぱんに立ちどまって前かがみになり小休止する。
ミルクティーを長持ちさせるため一回の小休止ごとに一口だけ飲む。それだけで甘さが体にしみこんで力が回復する気がする。
普段なら甘すぎるミルクティーの甘さがすごく美味しい。


予想より飲み物の消費ペースが速い。足りなくなりそうなので、雪を食べることにした。
轍をはずれて道の端に向かうと体力を使うので、道の真ん中まで張り出した木の枝につもった雪にかぶりつく。山の雪はきれいなはず。体が発熱してるので冷たさは全く平気。
食べるというよりも、雪に口をつけて口を大きくあけて息を吸い込むとパウダースノーが喉や気管に当たり、ひやーっと冷やされて気持ちいい。


11:49、線路と3回目の遭遇。今度は鉄橋じゃなくて同じ高さ。

線路をみながら小休止。
ミルクティーが減ってきたので雪を入れて水増ししようとペットボトルを傾けたら、雪の上にこぼしてしまった。
ああ勿体ないと雪と混ざったミルクティーを手ですくって食べてみたら・・・メチャウマ---o(*'▽'*)o----イ!!
シャーベットとも違う、強烈に冷やされて半固形になっててシャリシャリして冷たくて甘くて美味しいーーー
うまうま思いながら、こぼしたぶん全部食べてしまった


12:00、線路と4回目の遭遇。線路はこれから長いトンネル(第一浅岸トンネル)に入るのでしばらくお別れ。
ここで汽車が来たら最高の写真が撮れそうだけど、次の14:55ごろ通過まで待ってると浅岸から乗る汽車に間に合わなくなるので無理。

 
米内川は一部凍ってるところがあり美しい。


12:25、少し開けたところに出た。ここで3回目の大休止。
写真右下の道標の雪を払って上に座った。紙パックの野菜ジュースを一気に飲み干した。

ゲートルがずれてるので雪を払って巻き直す。
予想よりもだいぶペースが遅い。予想の3倍以上の時間がかかってる。
「けっこう歩いたな」とGPSで現在地を確認すると、思ってるより進んでなくてうんざりする。積雪路がこんなに歩きづらく脚力を使うとは思わなかった。
まあ浅岸には最低でも17:30までに着けばいいから、焦りはない。無理せずのんびり歩けばいい。たぶん3時ごろには着くかな。


12:35、米内川と源衛門沢の合流点に来た。初めての渡川地点。
まっすぐ行く県道204号は支川の源衛門沢に沿って北上し国道455号を目指す。浅岸駅に行くには右に曲がって橋を渡り、米内川本流に沿った林道に入る。

出発前の予想ではもう浅岸駅についてる時間だが、まだ大志田駅から3.9km。まだまだ先は長い。


橋を渡り、県道204から離れて林道を登る。轍は同じ方向に続いている。


延々と登り坂が続いてかなりキツクなってきたが、地図を見て米内川と離れれば下り坂になるという希望を持って・・・

 
くねくね道だといいが、たまに長い直線路があって先が見通せると、ひたすら上り坂が続いてるのが見えてうんざりしてしまう。
直線路を登りきったあそこで休もう、と目標をたててがんばって足を動かす。
動物の小さな足跡がいっぱい。道を横切って川に向かうもの、道と平行に進むもの・・・平行に進む足跡は俺と同じく轍の中を通ってておかしい。


12:56、直線路を登りきったところで2回目の大休止。ガードレールの杭の上に積もってた雪を払いのけて、発泡ウレタンシートを敷いて10分くらい座る。
足は雪まみれ。防水のショートブーツを履いてるがゲートルが役立った。ゲートルが無かったら靴の中に雪が入ってびしょびしょになってたはず。
キャリーカートの背中部分は体からの蒸気が結露して濡れまくり。
どうも大休止すると次に歩くとき余計疲れる気がするので、これから歩くペースを落として立ったままの小休止で対応することにする。


13:14、なんか開けたところに出た。えらく雪が高くなってるけど、盛られた土に積もってるんだろうな。

このあたりから景色が特に美しくなった。この美しい雪景色があるから歩ける。
  


ときおり青空が見える。白い木々と青い空の対比がとても美しい。

  
少し歩くとがらっと景色が全く変わる。白い雪の葉をつけた枯れ枝、白い雪の帽子をかぶった針葉樹・・・ちっとも飽きない。

 
13:46、大志田下の橋。


13:57、大志田中の橋。
ミルクティーが底をついた。350mlのりんごジュースに切り替える。これが最後の飲み物なので大事に飲まないと。積極的に雪を食べて喉をうるおす。

  
森の木々と林道と川が織り成す美しい雪景色が続く。
後から写真を見返すとこのあたりで一番きれいな写真が多いので、このあたりがハイライトだったんだな。

 
14:17、ようやく米内川と離れて中津川(の支川である芦ヶ沢)に向かう分岐に来た。大志田から6.9km。
地図で見てここから下りになると期待してたが・・・がー!
まだ登り続きかよ・・・しかもこれまでよりキッツイ最大級の登り坂・・・だが行くしかない。仕方ない。


激登りに備え、橋の上でリュックを下ろして大休止。

 
川から離れて登り始めると、これまでより積雪が深くなり40〜50cmほどになった。代わりにここから轍が2台分になり幅が広がって両足とも轍の中を歩けるようになったが、轍内でも30cmほどの積雪があり歩きづらい。
積雪が深くなって足を高くあげないといけなくなったので、太もも前側の筋肉が動かなくなってきた。時速1kmくらいでのろのろと歩き、50mおきに小休止。時間ばかりかかって疲労ばかり溜まってちっとも前に進まない。いつまでこの苦行が続くんだろう。早く汽車にのって楽したい・・・
このペースだと浅岸着は17:29の汽車ギリギリになるかも。


「広域基幹林道 岩神線」


14:45、登りが終わって平坦になった。きっとここが峠だ!のはず!であってくれ!
見えている足跡は動物のもの。

地図にない新しい林道の建設工事中で、えんえんと続いてきた車の轍はここで終わっていた。工事の車だったのかな?
杭は「平成19年度(繰越) 森林管理道 笹ツ尾線 開設工事」
地図を見ると、この峠から芦ヶ沢に下りるまで既設の林道は大きなヘアピンカーブを描いてるので、それをショートカットするものだろう。


下りだ!ようやくの下り道。なぜか積雪も減って20cmくらいに。
下りは足が勝手に進む。足に自動装置がついたみたい。すっごい楽。ペースも時速6kmくらいにアップ。これだと16:30には着くかも。

 
先人の跡がまったく無い真っ白な道を踏み歩くのは最高!


振り返ると俺の足跡だけ。


峠の手前と景色が違う。針葉樹が多くてこっちのほうが人の手が入ってるような気がする。
でも相変わらず雪をかぶった木々は美しい。

   
こちら側もなかなか良い景色。

 
15:15、浅岸駅前を通る林道に合流。除雪されていて、残った雪も車で潰され圧雪路になってる。

合流地点の道標で初めて大志田駅と浅岸駅までの距離が同時に表示された。3.4+9.5で合計12.9km。事前に地図で約10kmと見てたが思ったより長かった。

 
ここから浅岸駅までまた登りになるが、傾斜は緩やかだし除雪されているのでハイペースを維持。
除雪されてるとすっっっごい歩くの楽。こんなに違うとは。登りなのに足がサクサク動く。


15:19、峠を越えてから初、5回目の線路との遭遇。ひさしぶり。
でも道が除雪されてると絵にならないな。


道は川の右に行ったり左に行ったり。何度か橋を渡る。


15:31、浅岸駅まで2km。


雪の重みで?曲がってる木があった。ゴール手前のアーチのよう。


空が暗くなってきた。ギリギリ日没前には着きそうだ。


15:49、6度目のレールとの遭遇となる鉄橋の下をくぐると開けたところに出た。強風が吹くと木々につもった雪がとばされ吹雪みたい。
峠を越えてから飲んでなかったりんごジュースを飲むと、半分凍ってシャーベットになっていた。甘さとシャリシャリ感が美味しい。エネルギー充填。あと1kmくらいで駅だろうから飲み干した。

 
風景が山岳道から山村風景っぽくなってきた。

  
浅岸駅周辺廃屋群。




16:05、川の向こうに駅が見えた。


旧中津川小学校跡


駅前道らしくなってきた。


浅岸駅最寄の民家。廃屋なのか季節によって人が住んでるのか不明。


16:16、浅岸駅についた。ふう。道中、車や他の人とは一度も会わなかった。


駅手前までは除雪されていたが、ホームに登る階段からは全く除雪されておらずふかふかの雪が30cmほど積もっていた。


16:17、待合室に入った。よし、乗る汽車まで1時間ある。これだと写真を撮って駅ノートに記帳もできるぞ。

頭についた雪を落とそうとしたら、後ろ髪が凍り付いていた。キャリーバッグのベルトと背中に接する部分はびしょぬれ。アンダーシャツは登山用の高い奴(4500円でニッピンで買った)なのでほとんど濡れてなかった。これがユニクロのヒートテックだったらびしょぬれになってるのに。高いだけあってすごい効果。着替えるつもりだったが必要なかった。

休んでる暇はない。すぐにカメラと三脚を持って駅周辺をうろうろ。写真を撮り終わるころ街灯がつき、あっという間に暗くなった。
 


駅ノートに記帳していると、17:25、一台の車がやってきて、若い男性が駅前の小屋から道具を取り出して階段とホーム上を除雪し始めた。
お疲れ様です、地元の方ですか?と声をかけ話すと「駅周辺は世帯がなくなってるが、先の藪川に数軒の家があってそこから来た」とのこと。
なるほどー、駅周辺は廃屋しかないけど、少し離れたところに住民がいてそこの利用があるのか。それで大志田よりも停車本数が多いんだな。
除雪が済むと車の中から若い女の子(彼女?家族?)が出てきて、俺と一緒の汽車に乗った。男性は汽車には乗らず彼女のために雪かきをしにきたみたい。
浅岸駅は5度目だが、地元利用客を見たのは初めてだ。(以前に見た1回も前の駅で降りるはずだった女子学生が寝過ごして慌てて降りたってだけだけど・・)

汽車に乗り込んだ。あったかい車内でまどろんでるだけでびゅんびゅん進む。ふー
雪道歩きはきつかったけど、とても楽しかった。川から離れたところでは俺の息以外なにも聞こえず完全な静寂。人の気配がない真っ白な雪景色がすばらしかった。

これまで雪山登山にあこがれていたけど、今回の経験で俺には絶対無理だとわかった。
腰まであるような雪をラッセルしながら急斜面を登るんでしょ?それもキャンプして数日かけて・・・無理無理。





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