ツーリング5日目


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 静か、涼しい、蚊いない、人がくる心配なし、で最高の寝心地だった。
 ふつうなら廃村の廃屋なんて薄気味悪くて寝ないだろうけど、俺は目に見えないものは気にしないからな。

 野宿するときの自分ルールとして、
 ・去る前に掃除して、来たときよりも美しくして帰る
 ・火は絶対に使わない(火災防止)
 ・無人駅等人が来るところで寝るときは、終発のあとに設営して、始発の前に片づける
 を心がけてて、明るくなってから軽く掃除してたら
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 隣の部屋で子鹿(野犬?)のミイラを発見してしまった。
 うむぅ、これと一緒に一晩過ごしたのは、ちょっと気味悪い。(変な細菌とか繁殖してないかという心配で)
 でも近づいてもなんの匂いもしないので、完全にミイラ化してるみたで、安心した。
 入口の扉がないから入り込んで、出口がわからなくなって飢え死にしたとかなんだろうか・・・?

 この家の台所には食器が残り、壁にはカレンダーがかかっていて、積もった埃を除けばまるでつい昨日まで人がすんでたようだ。
 家の主だったお年寄りは、引っ越したのではなく亡くなったのかなぁ

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 6時に走り出した。雨が軽く降ったり止んだりで、カッパを着るかどうか迷う。
  廃集落の北に行くと道は行き止まりだが、せっかくなので行けるところまで行ってみた。
   途中で舗装は途切れてジャリ道に。
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 行き止まり直前で道に水がたまってた。

 うーやだなー、泥ヌタ道苦手なんだよ。
 ゆっくり行ったらオンロードタイヤだからスタックしそうだし、勢いよく行ったらすべってコケそうだし。
 行き止まりには壊れかけた小さなお堂があるらしいので見たかったけど、やめとこう。

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 昨日、廃集落の手前で見掛けた廃小学校。
 東ノ川小中学校といったらしい。           
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 昨日は暗くてわからなかったけど、内部はガラの悪い落書きだらけ。
  窓ガラスは全部割られ、床には土砂が流れ込んで土だらけなっててとても荒れていて、ここで寝なくてよかったと思った。


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 がっがっ 崖からヘルメットが落ちた
 ザンギリ林道とゆー道で、眺めがいい切り立った崖の場所があったのでバイクをギリギリにとめて、ヘルメットをシートの上において、バイクを入れて風景写真を撮ろうとしたら・・・

 メットがシートから落ちて、そのままガードレールと地面の隙間から崖の下に転がっていった。

 ガツッガツッと音をたてながら崖の急斜面にぶつかって転がり落ち、小さくなっていくヘルメットが見えたが、どうしようもなかった。
 「えー!うそー!うそー、うそぉ・・・」と信じられない気持ちばかり。お気に入りのメットだったのに・・

 もしザンギリ林道付近の沢でマットグレーのギブソンYX-3(ビデオカメラマウント付き)があったら、それは俺のです。

 で、これからどうすんべ?こんな山の中で・・・
 人里に出て新しいのを買うしかないが、それまではノーへルで走るしかないな。

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 耳がつめてー 頭がぬれるー
 と思いながら小雨がふる林道をそろそろ下って、近くの河合集落まできた。

 林道から集落に入ってすぐの橋の手前にバイクを止め、近くの自動車修理工場で
 この集落でバイクのヘルメットを売ってるところがないか尋ねたが、無いと。
 60kmくらい北上した大淀まで行かないとホームセンターはないらしい。

 大淀まで走って買ってきます、といったら「捕まるよ」と笑ってた。
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 たしかにヘルメットなしで国道を走るのは危険すぎる。安全面でも、免許面でも。

 近くに駐在所が見えたので(写真中央の青い建物)、事情を説明してノーヘルの黙認をもらえないかと、歩いてきた。
 駐在所は無人だったので玄関ですいませーんと呼ぶと、奥さんと女の子が出てきた。
 「そこのザンギリ林道でヘルメットを崖の下に落として失くしてしまいまして、この近くでヘルメットを売ってる店はないでしょうか」
 と聞くが、人のよさそうな奥さん、やっぱり大淀まで行かないと無いと言う。
 「バスで大淀までいけますか?」と聞いたら、1日2本しかないと。既に出た朝のと、夕方のと。

 二人で困った困ったどうしようと言ってたら、おまわりさんが帰ってきた。
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 中に入って事情を説明したら、
 「それなら以前バイクに乗ってた頃の使ってない自分のヘルメットがあるから、それかぶって大淀まで行って、返すのは近くの吉野警察署に預けてくれればいいよ」と。
 後ろの物入れから黒いフルフェイスヘルメットをひっぱりだしてくれた。
 助かります!ありがとうございます!

 コーヒーを出してくれて、ついでに大淀までの道中の見所まで紙に書いて教えてくれた。
 「警察官を長くやってて、ヘルメットを落としたって人は初めてみたよ」って。
 俺もバイクに長く乗っててツーリング中にヘルメットを失ったのは初めてでっす。

 写真の黒いのがお借りしたもの。(こうやってシートに置いておっことしたんだよ・・)
 ヘルメットはちょいとカビくさい・・というか実際にチンストラップにカビが生えてた・・けど贅沢言ってられん。

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 おまわりさんと奥さんに礼を言って、ヘルメットをかぶって走り出した。
  よかった。あとは町に出て新しいのを買うだけだ。
 問題が解決して晴れ晴れとした俺の心を映し出すように、空は青空が見え、路面も乾いてきた。
  お巡りさんオススメの国道309号線はザンギリ林道に劣らない、展望のいい道だった。
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 バイクを停めて写真を撮るときは、写真のようにちゃんとヘルメットを地面に置くようになった。
 また同じ過ちを繰り返したら、もう救い様がないからな。

 そういや9年前に日本一周ツーリングしてたとき、クラッチケーブルが切れて3日間足止めをくらったのも近くだったなぁ
 なんか紀伊半島と因縁でもあるんだろか

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 コーナン大淀店でヘルメット購入。
 フルフェイスが良かったんだけどへちょいのしかなかったので、沖縄に帰ってからも近場の買いもので使えるように軽い(=安い)ジェットヘルにした。
 中途半端なフルフェイス買っても、家に帰ったらダブって使わないから。
 写真のシート上の黒いのがお借りしたもの、ハンドル上のシルバーのが買ったもの。

 吉野警察署で受付のおまわりさんに、河合駐在所の○○さんから借りたヘルメットを返しに来ました、
 といったら「聞いてるよ」と。
 とても助かりました、○○さんにお礼を言ってたと伝えてください、とお願いした。

 よーし無事解決。
 駐在所に電話して奥さんが出たので、無事購入できましたと報告して礼を言ったら「わざわざ丁寧にありがとうございます」と言われてしまった。
 こちらこそありがとうございました。本当に助かりました。

 2年後の2012年GW

 DL650で紀伊半島ツーリングした際、改めて直接お礼を言うために駐在所を再訪。
 おまわりさんこの時の事を覚えてて、1時間くらい新しいバイクや紀伊半島や沖縄や当時の事を話しました。

 そんでまたコーヒーごちそうになっちゃった。



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 新鹿に来た。
 9年前の日本一周ツーリングでクラッチケーブルが切れて立ち往生したときに、とても世話になった人たちに直接礼を言うため。
 (当時のツーリング日記 の12/2〜12/5)
 このために沖縄から雪塩ちんすこうをリヤボックスに入れて持ってきてたんじゃよ。

 もう夕方5時だったので、まず郵便局に。
 受付にいた人に「9年前にここで配達してた方にお世話になったんですが、名前を忘れてしまって。」と尋ねると
 「○○さんやな、もう辞めてるで。家はどこやったかなぁ・・」と言いながら住宅地図をめくって家を探してくれた。

 雨の中、家に向かう。
 「何となく覚えてるぞ、この道・・」とどきどきしながら走り、「この家だっけ?なんとなく覚えがある・・」
 呼び鈴を押し出てきた奥さんに9年前にバイクのトラブルで世話になった者です、と伝えると、思い出してくれた。
 旦那さんも出てきた。ああ!この人だ!はっきり顔を覚えてる。
 9年ぶりの再会。しばらく話をして、改めて礼を言って、ちんすこうを渡して、分かれた。

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 次はガソリンスタンド。ここはすぐに場所がわかった。
 ここで給油できるように調整してきたんだ。

 先に明かしてから給油を頼んで「お代はいいよ」となったら困るので、給油して精算を済ませてから打ち明けることにした。
 ドキドキしながら給油を頼むと、かなり若い兄ちゃん。
 お金を払いつつ「ここの息子さんですか?ご両親は?」と聞くと、出かけてて不在だって。ああ、残念!!
 当時世話になった者だと伝えて、両親とカブを貸してくれたおじいさんに、9年前のライダーが来て礼を言ってたと伝えこれを渡してほしいと、ちんすこう2つを預けた。

 別荘に泊めてくれた大阪の社長さんは先日大阪に帰ったばかりだって。これまた残念。
 またここに来たら伝えてほしいとことづけた。

 「あの時そこの事務所で宿題を教えたの、覚えてる?」 と聞いたら、それは彼の兄で、今は大学に行って一人暮らししてるって。
 そりゃそうか!もう9年たってるもんな。なんかつい最近の事みたいに思い出してたよ。(俺ももうオッサンだなぁ)

 こういう出会いは一期一会だからいいんだ、とも思うけど、近くにきたのに素通りってのは不義理じゃろ?
 ああ、なんかすっきりしたのは荷物が減ったせいだけじゃない。借りを返した、みたいな・・・


 その後、googleマップでツーリングの経路を見てたら、新鹿にGSが表示されず「あれ?」となり、 検索すると2018年のレビューで「親父さんが死去したため閉業」とあってショック。
 会えなかったのは残念だけど、でも息子さん経由でお土産を渡せただけでもよかった。


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 今日の寝床は、紀伊井田駅。
  9年前の日本一周ツーリングで寝ようとしたら、寝る寸前で地元のおじさんに声をかけられて家で寝させてもらったので、結局寝てない駅。( 当時のツーリング日記の12/1)
   9年ごしのリベンジ。

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