EXCEED-01
「その人は大きくて温かく、そしてやさしかった。」
深く生い茂る森の中、僕はここにいた。
気がつけばここにいたんだ。でも何してたんだろ、僕。
あ、あれ?思い出せない・・・・・。
(どうして?何のためにここにいるんだ?)なぜだろう、何かさみしい・・・。
(それに頭もイタイ。しっかりと歩けない。変だ!!絶対!!)
(・・・・・怖い。誰か!!誰でもいいから僕を助けて!!イヤだよ・・・こんなの・・。)
だんだんと怖くなって来た僕は声を上げるよりも先に足を力のかぎり動かそうとした。
でも前からゆっくりと近づいてくるなにかに気づいた僕はとりあえずそれをやめざるえなかった。
(あれは・・・人?人だ。)
それは不安だったからなのか期待からくるものなんかはわからない。でも期待の方に
かけたかった。歩く力さえ薄れてきている自分をよく知っていたから。
その大きな影はすっぽりと僕を覆い、更に僕の不安を掻き立てた。やがてその巨体に相当する
低い声が僕に話しかけてくる。
「どうしたんだ?おまえ。」
とても心が潤う。この森の中で人と話すということがこんなに安らぐなんて・・。だんだん涙が
あふれてくる。
「わ、わかんないんだ。」
「わかんない?どっから来たんだ?服、ボロボロだぜ!?」
(どうして僕はここに?)知りたいのは僕自身の方だった。
「わかんないよっ!!僕にも!!わから・・・・あ、ああ・・頭がイタイ。気持ち・・悪い・・。」
「おまえの家はどこだ?家まで送ってやろうか?」
(家!?そうだ家に帰らなきゃ!!・・・でも家って・・!?・・僕に家があったのか?)
「・・・・・・・・・・・。」
「困ったなぁ。それじゃなんにも・・、まさか、おまえ記憶・・・喪失??」
「家・・・も・・思い出せない・・。」
「う〜ん・・・。・・・じゃとりあえず俺の家に来るか?」
「え・・?いいの・・・?」
「しょうがねぇ、病人を見てみぬふりするわけにもいかねぇだろ?ましてや"記憶喪失"と
なるとな。えっと・・・おまえ名前は・・・名前は言えるのか?」
名前・・・そうだ、名前だけは覚えている。僕は・・・
「ボクは、僕はディード。」
「ふむ、俺はバルガンってんだ。どうだディード、歩けそうか?」
「あ、ありがとう・・バルガン・・・。」
このままこの人について行っていいのか僕にはわからない。でもなぜだか懐かしい気がする。
いや、もう僕には選択する余裕なんかなかったんだ。このままこの幸運に身をまかせてみよう。
バルガンは足どりのはっきりしない僕に気がつくとその広い背中に僕をおぶさり、
力強く歩き始めた。
(その人はとても大きくて温かく、そしてなによりもやさしかった・・・・・・・。)