EXCEED-04
「エンドルフィンと維持」
それからバルガン、グリッド、ディードの三人暮らしが始まった。
木こりの仕事に行くバルガンを見送ったあと、グリッドはいつものように
ログハウスの掃除や食事の準備などに追われて大忙し。
床磨きの仕事をもらったディードは意気揚々とログハウスの隅々まで磨きにかかる。
ディードは日に日に他の仕事もこなしていくのでグリッドも大助かりだった。
またある日にはバルガンの仕事にもついて行った。ここでもディードは些細なことに
気がつき、バルガンの補助的役割をこなしていく。
そうこうしているうちに3人は目に見えない絆が深まっていくのを感じていた。
バルガンやグリッドは実の「弟」のように、ディードは実の「兄」ができたような
気持ちだったのである。
ディードには「記憶を取り戻す」という大切な目的があった。
しかしその「取り戻したい気持ち」とはうらはらになにか"別"の気持ちも
持つようになっている自分に気づいていた。
「ああ、このままこの暮らしがずっと続けばいいのに・・・・・・。」
・・・・・・・・ある日の夜。
「よーし、そろそろ頃合だ。ディード、バルガンを呼んでくれ。」
「うん!!バルガーン!!ゴハンだよー!!」
「おー♪できたか!!メシ、メシー!!」
「今日はシチューだよ、グリッド特製のね。」
「おほ♪うまそー!!・・・・・ん?でもなんか具が・・・少なくねーか?グリッド。」
「んー、しょうがねぇよぉ。だってなぁ・・・・・・材料が・・・。」
「・・・・・・やはりそろそろ・・・・・底をつくのか。」
バルガンとグリッドは顔を見合わせた。
そこにディードが不安そうな目でバルガンに話しかける。
「バルガン・・・・・。街・・・・行くの?」
それは皆わかっていたこと。街に行くとどうしてもディードの身元を捜さなくてはいけなくなる。
バルガン達もディードを弟のように思う今となっては別れるのがつらかった。
だからなるべく買出しに行かないよう、食料がギリギリなくなるまで
行かないようにしていたのだ。
だが、その時が来てしまった。バルガンは落ち着いた口調で話し出す。
「ディード。明日、俺と一緒に街へ行こう。おまえの両親を探すんだ。」
「・・・・・・・え?・・・ま、まだいいよボクまだ床磨きをちゃんと終えてないから。」
「いいや、このままここにいてはダメだ。おまえの母さんや父さんも心配してるハズだ。
いつまでもココにいるわけにはいかないんだぜ?」
「・・・・ボクに両親がいるかどうかもわからないのに?・・・・ボクもっと働くよ・・。だから・・。」
ようやく自分のシチューを持って席についたグリッドが言う。
「んー、そういうことじゃなくて。両親がいるかは探してみないとわからないだろぉ?
それに今ディードはこんな山奥にいるべきじゃないと思うんだ。もっと、ホラ
友達作ったり勉強したりしないと・・・。」
「でも・・・・・でも、もう少しここで一緒に・・・・・・。」
「だめだ。」
泣きそうになるディードを睨みつけるバルガン。
「そうだ、今までグリッドがやっていたオフロ掃除や皿洗いも全部ボクが・・・・。」
「ダメだ!!!!」
「う・・・・グスッ・・・・バ、バルガンのバカー!!!!」
泣きながら席を立つと2階の自分の部屋に駆け込むディード。
しばらくして大きく溜息をついたバルガンに少し微笑みながらグリッドが話しかける。
「これでよかったんだろ、バルガン。」
「ああ・・・・。あの子のためにはな。いつしか別れるのは俺たちもつらいんだってこと
わかってくれるさ。」
「そうだな。」
「・・・・・・早速明日の早朝に買出しに行ってくる。必要なモノを書き出しておいてくれよ。」
「わかった。んー??ディード、ほとんど食ってねぇじゃないか。シチュー。」
「やれやれ、じゃちょっくら俺行ってくるわ。」
バルガンはディードのシチューを片手にゆっくりと階段へ向かった。