EXCEED-05
「ムーンライト・フォールダウン」
コンコン!!
「ディード、入るぞ。」
シチューを片手にドアをゆっくりと開けるバルガン。
部屋の中には明かりもつけず、ベッドにうつ伏せになっているディードがいた。
バルガンはわざとそのまま明かりをつけずに近くのテーブルにシチューを置くと
カーテンを少し開け、側に有る椅子に腰かける。
2人はそのまま互いの存在を知りながらしばし沈黙を続けていたが、
やがてディードがそのままの姿勢でその細い声を絞り出した。
「・・・・・・・・・・ごめんよ、バルガン。」
「・・・・・・・ん?」
バルガンはまるで本当の父親にでもなったかのような笑みを薄っすらと浮かべて
ディードの側にいる。
「本当は・・・・本当はボクだってわかっていたんだ。いつかこの日が
来ることを。・・・・・でも、実際にこの"時"が来ると怖くなって・・・。」
「ディード。おまえはオレ達のことを本当の兄のように思ってくれたし、
オレ達だっておまえのことを本当の弟のように思ってた。オレ達だって
いつまでも一緒に暮らしたいさ。それはわかってくれるな?」
突然起き上がり、透き通るようなその目でバルガンを見つめるディード。
涙のあとがうっすらと残るまま、そのわずかに震えている口を開く。
「・・・・・バルガンは・・・これでいいの??ボクと同じように
バルガンはつらくないの!?」
「そりゃつらいさ。でもな、このままじゃいけないのも十分知ってる。おまえのためにも、
グリッドとオレのためにも・・・・・・いつまでもここに置いておくワケには行かないんだ。
"おまえ"はここにいちゃいけないんだ。」
バルガンは立ち上がり、テーブルに置いてあったシチューを取ると
また泣きそうになってるディードに差し出す。
「なぁディード。これは別れじゃない。俺達がまた会うための第一歩なんだ。
おまえの両親や家を見つけてから、またここに遊びにくればいい。まだ見つかるか
どうかもわからないけどな。このまま探さないまま、おまえは本当に幸せなのか?」
ポロポロとこぼれる涙を拭いながらバルガンの差し出したシチューを受け取る。
だが以前よりよほど穏やかな顔に変わっている。
「また手伝いに来てくれるよな??ディード。」
その言葉を聞いてようやく笑みを浮かべるディード。といっても、まだ涙は
止まっていないのだが。
「グスッ・・・・うん。・・・でも・・・今度は・・・ちゃんとしたお客さんとして
扱ってもらうよ、バルガン。」
「お??こいつ、急にエラそうになりやがったな!!ちゃんと金払えよ!!」
「グスッ・・・・ハ・・・ハハハハハ・・・ハハハハハハハ。」
「ダハハハハハハ!!!」
ようやく軽くなった空気の中、大笑いする2人。ディードもやっと落ち着き始めたのか、
スプーンを取るとすっかり冷めてしまったシチューを口にし始めた。
「ハハハハハハ・・・・・オイ、グリッド。そこにいるんだろ??入ってこいよ。」
「ギクッ!!ん、んー、今上がってきた所だよぅ・・。」
「いいから、いいから。ところで今からディードの見送りパーティーでもやろうかと
考えているんだが・・・材料、イケそうか?」
「んー?パーティか、なーるほど♪食べる物はほとんどないけど、酒とジュース、
おつまみくらいなら用意できるかなぁ。」
「よし、それで十分だ。質素なパーティーだがそれで勘弁だぜ、ディード。」
「バルガン・・・・。」
「んー?なんだかいかにもバルガンらしいパーティーって感じだなぁ。」
「あ、グリッドもそう思った?アハハハハ。」
「コイツ・・・・・なんか性格変わってきたんじゃねーのか!?」
呆れるバルガンの顔を見て笑いながらグリッドは早速準備をするため部屋を出ていく。
ディードは食べていたシチューをテーブルに置くと、すっかりグシャグシャにしてしまった
ベッドシーツを整え始めた。シーツに当たる月の光が眩しいくらいだった。
「わぁ、キレイなお月さんだねぇ。」
「おお。この調子だと、明日もいい天気になりそうだな。」
しばし月に見惚れるディード。あまりに熱心に見惚れているので
バルガンが切り出す。
「ホラ、ディード。下に下りるぞ。」
「う・・・・・・・・ん・・・。」
「・・・・・・・・?・・・ディード??」
「・・・・・・・・・・ヒ・・カ・・・・・・・・・リ???これ・・・・・・・!?!?」
「どうしたんだ?よく聞こえねぇよ。」
「・・・・・・・・・サ・・・・・・・・ラ・・・・・・?」