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■CUT 07■

EXCEED-07
「対峙、赤の追跡者」

「ゴホッ!ケホッケホッ!!こ、このローズ様が来たからにはもう逃げられなくってよ!観念なさい!!」


ディードが見上げた先には美しく光る赤毛の女、そしてその後ろにはタバコに火を灯す黒豹の男がいた。


「おいローズ。いい加減やめろよソレ。」

「なに言ってんですか!イイ女にはタバコ、というのが第一条件じゃないですか!そういう先輩だって!!」

「どういう条件なんだよそれ。それにタバコは男が吸うもんなんだよ。」

「答えになってないですよ先輩〜。男女差別反対です!」


二人の会話が終らぬうちにディードはその場から逃げ出そうと大腿筋に力を集中する。しかし次の瞬間

その行動を知ってるかのようにローズと呼ばれた赤毛の女はひらりとディードの前に舞い降りる。

後ろにはバルガン、前には赤毛の女。ディードは困惑した。


「グゥルルルルルル・・・」

「あたしのお誘いを断るつもり?失礼しちゃうわ。」

「お手並み拝見だな、ローズ。」


そういうと黒豹は狼の後方の負傷したバルガンに目を向ける。


「ようバルガン、奇遇だな。傷の方は大丈夫なのか?」

「奇遇だと?ファクト、どうしておまえが・・・・・さては俺達をマークしてやがったな?」

「・・まあそう言うなよ。詳しい話は後だ、捕獲する。」

「先輩、行きます!」

「んー??バルガンの知り合いなのか?ってああ!」


グリッドがバルガンに尋ねるのと同時にディードはかなりの瞬発力を見せつけ大地を強く蹴った。ローズも

それに負けまいと取り出した無数の光る針を取り出しディードをマークする。

「そこっ!!」

投げつけられる無数の針は常にディードの足元を狙い続ける。ディードは右へ左へ紙一重にかわしながら

生い茂った木々の茂みの中へ逃げ込もうと一直線へ走り出した。

「甘いわね、逃がさないわよ!」

今度は茂みの側の木に向ってナイフを投げつける。ナイフは線のようなキラリと光る軌道を残しつつ

ディードよりも先にそれに突き刺さった。ワイヤーのようなものがローズの腕から伸びている。

ディードはそのワイヤーの光に気がつくとすぐさま向きを変え今度はローズに向って走り出した。

「ガァルルルルッ!!」

「やっとデートしてくれる気になったかしら?・・・・・来なさい!」

ローズは姿勢を低くし、向ってくる狼へ撃ちこむ位置を見極めている。

「フフッ、いい子だからそのままよそのまま。」

右手から2本のワイヤーナイフを撃ちこみすぐさま移動するローズ。ディードはそれを難なく避けるが、

ローズがクンと手元でワイヤーを引っ張ることでナイフは軌道を変え、ディードに絡んだ。更に左手から

無数の針を投げつけたローズは誇らしげな表情を浮かべた。


「流石にこれは避けられないでしょう?」

が、しかし。ディードは避けるどころか両腕を前に突き出し立ち止まる。ディードの回りに気流のような

なにかが渦巻き、針は四方八方に飛び散って絡まっていたワイヤーの束縛さえも衰えさせた。


「!?な、なにこれ!!・・風!?」

そして次の瞬間ディードは忽然と姿を消す。その体は空を切ってローズを飛び越していたのだ。

「しまった、上!?せ、先輩!!!」

「・・やれやれ、まだまだだなローズ。」


今度はディードがハッとした。逃げ道に思えた誰もいない道に先ほどの黒豹がいるではないか。

黒豹は手にムチを滑らせ、戦闘態勢に入る。ムチが地面にパァンと撓った。


「・・・・・・おまえに恨みはないが・・・・」


「・・・・・悪いな。」


逃げ道もなく攻撃することで防御に出たディードはその瞬間、黒豹が2つに分かれたような錯覚に落ちた。

バシッバシンッ!!

「出た!先輩のツインヴァイパー!」

黒豹は目にも止まらぬ速さでムチを振るい、ディードの後方へ突き抜けた。何が起こったのかわからぬまま

その場に崩れ落ちるディード。慌てるバルガンとグリッド。


「ああ!!ディードが!!」

「安心しろ、命には別状はない。」

「テメェ、もうちょっと他にやり方があるってもんだろうが!!」

「悪いな、不器用なんだ。」冷静に切り返すファクト。

「だいたいテメェはいつも・・・」

怒り口調ながらも少し安心したような表情で罵言雑言を投げつけるバルガン。

へぇ仲はいいんだ、とグリッド。ローズは訝しげに警戒しながら倒れこんだディードに近づく。


「あ・・先輩!!」

「む、まだ動けるとはな。」

「ガハッ!ガハッ!!グ・・グゥルルル・・・」

全身を強く引っ張るその重力に懸命に逆らいながら立ちあがったディードは更に逃亡を続けようと

足を引きずり一歩、また一歩と茂みに近づいていく。

バルガンは肩を押さえながら走り出す。

「クッ・・・・ディード!!もう逃げるのはやめろ!!」


あとほんの5Mほどでディードに辿りつこうとしたその時、バルガンはディードの側の茂みの異変に気がつく。

突然巨大な腕と一閃の青白い光が生い茂る茂みより飛び出して腕は頭部をガッシリと掴み、光は

鈍い音を立ててディードの体に突き刺さる。

ディードの体は大きく弓なりに反り返り、2.3度痙攣するとやがてぐったりとした。逃亡に終止符が打たれたのである。


「やるなら最後までやってこそプロなんじゃねーの?カッコワリィ〜。」

「誰だ!!」

すかさず身構えるファクトとローズ。

茂みの分かれ目から出てきた腕と光の正体は赤髪の巨大な獅子と和服を纏ったまだ幼き白熊だった。

なんのお咎めなくディードに突き刺さったその刀からは真っ赤な鮮血が滴り落ちる。

獅子の腕に捕まって揺れるその肉体から流れた雫は刀を伝って時折右へ、左へとその落下点を変えた。


「ディードォー!!!!」

「まあまあそんなにカッカするなよあんちゃん。コイツは元々オイラ達のもんなんだよ。当然、

オイラ達がどう処分しても誰にも文句言われる筋合いもないってワケ・・・わっ!!」

「テメェらのモンだと!?離せ!!」そこへ割って入ったのはバルガン。だが肩からの失血のため思うように力が出ない。

伸ばした右手は空を掻き、それと同時に獅子と共に担がれたディードの肉体は後方へ一躍する。


「ビックリするじゃねーか、人の話聞いてんのかよ全く・・。ま、恨むんだったら

コイツがここに「来てしまった」運命を恨んでくれよな。いくよスレイブ。」

「くそ、させるか!ファクト!!」

「承知!」

バルガンの声が届く前から黒豹のムチはヒュンヒュンと音を立てて宙を舞う。


「・・・・・・・ゼロ。」

「分かってるよ、まかせて。」


ファクトは獅子達に真っ直ぐムチを撓らせ、それと同時にローズは再びナイフを取りだし走り出す。

幼い白熊は手に持つ刀を地面に突き刺し、目を閉じた。すると刀から煙が立ち込めたちまち

獅子と子供の体を覆い隠していくではないか。

ムチはすぐさまその煙の中に入り目標を捕らえたはずだったが不思議なことに何にも絡むことはなく煙だけを切る。

「む!煙幕か?」

「う・・・・さ、寒い・・・なんだこりゃ!?」バルガンは思わず両腕で肩を抱えた。

ファクトは煙の中から引き戻されたムチを掴み損ねる。先ほどまでの「撓り」が失われているためだった。

落ちついた物腰でムチを確認するファクト。「これは・・・氷か。」

「先輩、獅子達が・・・。」

「ああ、すでに逃げたか。奴ら・・・只者ではなさそうだな。」

驚いたことに煙と同時に白熊と、ディードを抱えたあの巨体は音もなく消え去っていたのだ。バルガンと

グリッドは信じられないといった表情でファクトに駆け寄る。


「ハァハァ・・・・一体どうなってるファクト!!あいつらどうやって消えたって言うんだ!!」

とても悔しそうなバルガンは怒りに体を振るわせる。傷の痛みもまるで忘れているようだ。

「落ちつけよバルガン、狼には発信機を取り付けておいた。まだそう遠くは離れていまい。」

「だったら・・・い、今からすぐに後を追うぞ!!」

「む・・・しかしおまえのその傷、そちらの処置の方が先決と思うのだが・・」

「こんな傷・・なんとも・・・・・うう・・」

遂にその場で膝をつき倒れるバルガン。出血は以前よりもどんどん酷くなっているようだった。

「うわぁ!やっぱり大丈夫じゃなかったんだ!!」慌てるグリッドはどこからバルガンを起こそうか地団駄を踏んだ。

「ディ・・・・・ド・・・・。」


「やれやれ無茶なのはあいかわらず、か。」ファクトは持ち上げようとするグリッドに手を貸した。





「余計なゴミが入ったのは計算外だったがまあ許容範囲だ。後は「奴ら」がどう動くかだな。

いや、どう動こうが我々にはなんの関係もない、か。・・・・・次だ、モタモタするな。」

「ハイ、カシコマリマシタ。・・・・エグゼキュート。」


■INFINITY DIVIDE■