建設経済常任委員会所管事務調査報告
１ 日 程 平成15年11月10日（月）～12日（水）
３ 出席者
委 員：福森 登、渡邉孝広、小菅基司、髙橋照雄、大野祐司、佐藤文昭、阿蘇佳一
執行部：大島建設部長
事務局：谷議事班主幹
【北九州市】
(1) 中小企業支援策について（説明者：柏木中小企業振興課長、伊崎中小企業振興課主幹）
・ 支援センターの主な事業としては、新規創業者やＳＯＨＯ事業者をはじめ、中小企業者に対して経営、技術、法律、情報化などあらゆる相談に、各分野の専門家を配置して個別に相談に応じる総合窓口の設置やアドバイスを受けることで円滑に事業展開ができるように、各企業が希望する専門家を派遣する事業などを実施している。平成14年度の実績として、570件の窓口相談、70社270回の専門家派遣を行っている。
・ 支援センターが入居している北九州テクノセンタービルの中に北九州市中小企業振興課も入居していることから経営・商売に役立つ総合的な支援サービスをワンストップで提供できる体制となっている。
・市が実施している中小企業融資制度は、目的別に１１のメニューが用意されており、貸付利率及び信用保証料は通常より低く設定されている。融資実績は、市内の事業所の約３分の１が利用している。受付窓口は、通常の事業に必要な一般事業資金及び緊急対策としての緊急借換特別資金については金融機関となっているが、創業の支援としての起業支援特別や開業支援などの融資申込対象者に該当するかどうかの認定申請が必要となる融資については市が窓口となっている。
［主な質疑］
問：商工会議所との連携の状況はどのようになっているか。
答：2年間商工会議所に派遣した職員が中小企業振興課に配置されており、スムーズな連携ができている。市だけで中小企業の支援をすべてカバーすることは困難であるため、支援の住み分けをきちっと行い、市のできることは市が進んで事業を実施している。
問：大手企業から中小企業への受注、発注などの仲介を行っているか。
答：県の振興公社と連携して仲介を行っている。
問：ベンチャー企業に対する支援策はどのようになっているか。
答：大きく分けて①事業をはじめるための研修②事業場所の提供③新技術・新製品開発への助成④事業化のための融資⑤経営課題解決のための支援を実施している。
問：起業の実績はどのようか。
答：平成11年から平成14年までの開業率の実績は、全国が3.8％に対して北九州市では4.4％と高い数値になっている。
答：政令市ということで県と同等の政策を実施してきた経過があること、民間が市に期待しているということ、民間企業等のＯＢが中小企業を支援していくという気構えが強いことなどが挙げられる。
(2) 紫川マイタウンマイリバー整備事業について（説明者：大庭都心開発課長、稲垣都心開発課主査）
・この事業は、治水工事や交通渋滞の緩和などのために、10本の橋を架け替え又は新設し、併せて水辺を生かしたまちづくりを推進するものである
・以前、紫川周辺は治水安全度の低い川であり、市民も川に背を向け、活力を失ったまちであったため、総合的なまちづくりの取り組みが必要なことから、昭和62年に当時の建設省の河川・都市・道路･住宅の４局の横断的な連携により河川改修を機軸に都市基盤整備と周辺市街地整備とを一体的に行う「マイタウンマイリバー整備事業」が創設されたため、当事業に名乗りを上げ全国に先駆けて指定を受けた。
・事業の特徴としては、基本構想段階から広く市民アイデアを募集し、そのアイデアに技術的検討を加え実現を図った。応募件数は453点あり、実現化されたものとして水環境館、人口の滝、橋梁のデザインなどがある。さらに事業を総合的かつ効率的に推進するために、河川や道路、公園、建築、福祉といった分野の横断的な組織「紫川周辺開発室」を設置した。
・これまでに、河川・橋梁の整備、道路等の整備、公園の整備、市街地の整備、紫川周辺夜間景観整備やまちづくり団体等との連携などに取り組み、平成17年度を完了年度として引き続き整備の推進をする予定である。
・いままでに、甦る水百選(建設大臣賞)に選定されるとともに手づくり郷土賞(建設大臣認定)及び土木学会技術賞を受賞している。
＊ 概要説明及び質疑応答後に庁舎展望室から現地視察
［主な質疑］
問： 川の水質改善運動をどのように実施してきたか。また、これだけの大規模事業が継続してできた理由と進ちょく率はどのくらいか。
答： 知事と市長が自ら率先してどぶ川に入ってごみ拾いをしたことから水質改善の機運が高まり、流域の自治会や自然保護団体による河川愛護活動により取り組みが行われたことと、下水道の整備により水質が改善された。また、事業が継続できた理由としては、現在５期目の市長の一貫した政策が底辺にあったためである。事業は、現在約80％の進ちょく率であるが、行政が強い意志を持って推進してきた成果だと考える。
問：テーマパークが各地で失敗しているが、この事業に対する評価はどのようか。
答：この事業は、市民の安全性を高めるものでありテーマパークとは性格が違うと考える。底辺にインフラの整備があり集客性という意味では比較できない。
問：この経済状況の中で事業の継続を心配する声はなかったか。
答：経済環境が変わり、橋の架け替え工事ばかりでそこまで推進しなくてもいいのでは、という声があった。事業の必要性を市民に説明してきたがなかなか浸透しなかった。しかし、最近のアンケート調査では、約７割がこの事業に賛成であり約１～２割の人が進めて欲しくないとなっている。
問：本事業の橋も該当すると思うが、設計士が必要以上に橋の化粧をするため、市民から批判の声はなかったか。
答：あったが統一したテーマで橋を架け替えてきた。昭和63年に計画ができたが、あくまでも構想は構想として、その都度アンケート調査を実施して次の工事に結果を生かしていった。市民との協働により、実際に計画よりモニュメントを小さくするなど修正しながら工事を継続していった。この市民との関わりについても表彰された。
【下関市】
調査事項
(1) 地域産業活性化事業について
（説明者）：吉野商工振興課長、野田商工振興課課長補佐、藤田商工振興課商業係長
・第四次下関市総合計画の分野別主要プロジェクトの１つとして「ぐんぐん産業プロジェクト」があり、その中で地域産業活性化事業として５つの事業が計画されている。活性化事業は、工業系と商業系に分かれている。
・工業系の支援として「下関市創業支援施設の設置等に関する条例」を平成14年12月に制定し、新規の事業を展開しようとしている創業者を育成し、新たな雇用確保を図ることを目的とする施設を設置した。
・施設は、商工会館１階のロビーに３室(各室28㎡)確保し、使用期間は最長３年、使用料は月額14,000円とした。当初、５者の応募があり運営協議会で協議し２者を本年４月からの入居者として決定した。５月に再募集し、３者の応募があり、残りの１室の入居者を決定した。
・入居者の業種は、主に韓国海苔を扱う貿易業、医療機器向けのソフト開発を行う情報技術サービス業及び無線機器のメンテナンス業である。
・商業系の主な支援としては、創業者支援セミナー事業、チャレンジショップ運営事業、あきんど活性化支援事業を実施している。
・この事業は、希望者が個々の能力に応じてステップアップしながら受けられるように支援するシステムとなっている。創業者支援セミナーは、創業者向けの基礎的なセミナー、チャレンジショップ運営事業は、少ないコストで起業体験できる場を提供する事業、あきんど活性化支援事業は、実務的な内容のセミナーとなっている。
［主な質疑］
問：創業支援施設の入居者を決定する運営協議会は、どのようなメンバーで構成されているのか。
答：委員数は１１名で、市内の関係団体から商工会議所、金融機関などの代表者、学識経験者として大学の教授、税理士など、市から担当部長が委員となっている。
問：事業の運営には、マネージメントやコンサルティングができる専門員が必要となるが、入居した３者に対して支援しているか。
答：他市の例では、大規模な施設の場合には必ず専門員を配置しているが、本市の場合は対費用効果の点で、現在配置していない。今後、施設が３室から増加したときには、専任の専門員を配置していきたいと考えている。
問：入居する業種の選定基準は、どのようであったか。
答：当初ＩＴ関連の業種を考えていたが、人口規模やビジネスモデルなどを考慮して運営協議会で選定した。この結果、最初は２者だけの選定となった。
問：使用期間が最長で３年というのは、短すぎるのではないか。
答：３年プラス２年が適当と考えるが、税金を使用して支援していること、甘えてもらっては困ること、居座られても困ることなどから３年とした。しかし、今後状況により検討していく予定である。
問：空き店舗対策により成功した事例があれば教えてほしい。また、産学公連携の取り組み状況はどのようか。
答：成功事例はないが「あきんど活性化支援事業」により３店舗が開業している。その内の１店舗の服を売買する30代の店主は、いつも店の前に出て接客するなど高齢化の進む商店街に活気を与え、よい効果が出ている。また、産学連携については、大企業等で行っている企業もあるが、交流会を積極的に実施することによりすそ野を広げて行きたいと考えている。
(2) 緑陰道路の整備について
（説明者：小林公園緑地課課長補佐､秋元公園緑地課管理係長､末次公園緑地課技師）
・本年、国土交通省が実施していた「緑陰道路プロジェクト」のモデル地区に応募して指定を受けた。本プロジェクトの目的は、街路樹を極力剪定しない管理について、市民の協力により試行的に取り組んでいこうとするものであり、補助金はない。
・全国で２５か所指定されているが、国道の指定が多く市道では仙台市と本市のみである。また、応募している担当課は、道路関係課がほとんどであるが、本市では公園緑地課が木を管理していることから応募した。
・民を巻き込んでの道路管理が国のねらいであるが、本市でも約10億円の予算のうち約55％が維持管理費となっていることから、住民の協力を得て管理することにより経費削減をしていくという目的が一致したことと、裏腹に指定を受けることにより予算要求をしやすくするという狙いもあった。
・指定されか箇所は、延長700ｍの両側に中学校、病院や公園などが隣接する道路で、歩道にメタセコイアの大木が並ぶ道である。また、同地区は、平成10年度第３回下関都市景観賞を受賞している地区である。
＊ 現地視察後、概要説明及び質疑応答
［主な質疑］
問： 高齢化の中でベンチ等の対策は、どのようになっているのか。
答： 道路管理課と道路建設課と話し合いを始めたところであるが、道路幅を狭めて歩道の幅員を広げることはなかなか難しい。病院前の緑道は、スペースがあったためベンチを設置している。
問： 隣接する中学校の協力体制と環境教育は、どのようか。
答： 一応協定は締結しているが、事故等の問題があるため、授業中は難しいとのことである。以前から落ち葉の清掃等は行っており協定内容は、あまり前進した内容となっていないことからも、非常に難しい問題だと感じている。
問： 歩道の補修対策は、どのように行っているのか。
答： 目にあまる場所を順次予算化して対応しているのが現状である。財政当局にアピールするために、今回よい指定を国から受けたと考えている。
問：ごみのポイ捨てなどに罰則を設けたりしている市もあるが、マナーの強化策はどのようになっているか。
答：山口市がフン対策として犬猫の条例を制定しているが、本市では啓発用の看板を作成して配布している程度である。公園のごみ箱については、ごみ袋の有料化に伴い本年の６月１日から撤去した。
問：公園を新たに築造する場合、計画の段階から市民が参加しているか。
答：新たに築造する場合又築造し直す場合には、必ずワークショップ形式で市民に参加していただき築造している。築造後の管理については、現在415箇所ある都市公園等のうち206団体の愛護会があるが、管理まですべて市民にというところまではなかなか難しい状況である。
【草津市】
調査事項
(1) 地域通貨について（説明者：金澤ＮＰＯ法人地域通貨おうみ委員会理事長）
・地域通貨「おうみ」は、平成10年５月に市が200万円補助して立ち上げた「草津コミュニティ支援センター」という市民活動をサポートしていく中間支援組織の運営手法の一つとして運用を始めた。
・現在は、平成14年４月にＮＰＯ法人としての認証を受けて、地域経営にも視点を広げ、企業や商店・行政・教育機関・市民・各種団体など、セクター間のパートナーシップを促進するきっかけづくりのためのプロジェクトを展開している。
・活動内容としては、まず「おうみ」の発行がある。「おうみ」は、リストに登録されているサービスの中で自分のできることを提供することによって、手に入れたり、寄付金100円につき１おうみがその御礼として発行される。また、「おうみ貸出制度」や「おうみ交換券」などがあり「おうみ」を広める努力をしている。「おうみ」には「１おうみ」と「10おうみ」の２種類があり、１おうみは100円の社会的価値に相当する。
・平成14年10月から「おうみありがとう券」を発行している。この券は、清掃作業や各種イベントを実施している市民団体が、ボランティアで協力してくれた人に対して配布している。草津市商店街連盟加盟店全店(約350店舗)で1枚につき100円の買い物ができるようになっており、地元商店街の活性化に寄与している。
・平成15年７月から９月まで県と提携して「ノーリリースありがとう券」を300万円分発行した。この事業は、琵琶湖などで釣り上げられたブルーギル及びブラックバスをリリースしないで、外来魚引換所に持って行くと重量500グラムに対して100円相当の券を渡すものである。問題点が明確な事業だったため、子どもに対する生態系の勉強やホームレスの支援になるなど一定の成果があった。
［主な質疑］
問：１枚100円相当の価値としているがなぜか。
答：当初200円で実施していたが、わかりやすいようにとの理由で100円とした。
問：地元商店街と連携しているが、ポイントカードで十分ではないかという声はなかったか。
答：商店街と３年かけて何回も交渉するなど関係を深め信頼を受けることができたことと、会長の理解があったために実現できた。さらに、マスコミが地域通貨として「おうみ」を取り上げてくれたことも大きな要因となっている。
問：税務署等の課税の問題はどのようになっているか。
答：「おうみ」は基本的に寄附でなりたっていることと、会員制度であることから収益事業ではないということで課税されない。ただし、タクシーや映画館など金券として使用された場合、扱った店舗は商品券と同じ扱いとなり課税される。
問：どの位発行したかなどの管理は、どのようにしているか。
答：券を買い取っていただくシステムにしているため、赤字にはならない。また、使用期間も６か月間としている。
問：商店街の活性化に寄与していることが感じとれるか。
答：ボランティアの川の清掃等⇒ありがとう券⇒おかし・おかず等⇒大型店から小売店へということで寄与していると考えるが、なかなか成果が見えてこないのが実状である。今後、市などもイベント時に積極的に利用してほしいと考えている。
問：今後、貯金ができるような通帳方式の導入は、考えていないか。
答：当初からメリットがあるため、導入したいと考えていたが、商店街の理解が得られなかったために換金方式としている。
問：行政に対してどのようなバックアップをしてほしいと思うか。
答：市のイベント時の参加賞としての採用や市職員の互助会での利用を促進してほしい。また、「貸出制度」などを積極的に市民や自治会にＰＲしてほしい。
問：今後の課題はなにか。
答：収益を上げて、次にこの事業を担ってくれる人が生活できるようにすることであるが、幸いにもマスコミが多く取り上げてくれた結果、経営的に向上している。