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シネマ日記 2011
文・ 古川卓也
- 『チョコレート・ソルジャー RAGING PHOENIX』(2009年タイ 114分)
- 【監督:ラーチェン・リムタラクーン 主演: ジージャー・ヤーニン・ウィサミタナン】
ジージャー待望の第二弾映画『チョコレート・ソルジャー RAGING PHOENIX 』をDVDレンタルでついに観た。やっぱり凄い。女優アクション・スターの醍醐味は半端じゃない。ストーリーでさえも吹っ飛ぶ。日本の女優でいったい誰がここまで出来るかといえば、誰もいない。外国にもアクション女優はたくさんいるが、カンフーや格闘技でここまで出来る達人がいるかといえば、わりと少ないだろう。この映画の中で悪役を演じるギャング団の女ボス、ジャガー・ロンドンを演じた大柄のルンタワン・ジンターシンは柔道家にしてボディービルダーだが、可愛らしい小柄なジージャーがとても小さく見え、ルンタワンなどはその意味でも貴重なアクション女優といえる。多くのアクション女優はスタントを使うか、CGやワイヤーアクションなしには演じられない。『キル・ビル』のユマ・サーマンも日本刀を持てば凄みもあるが、女ブルース・リーはなかなかいるものではない。演劇を学び、格闘技を身に付け、苦しいトレーニングに耐え、絶品の映画作りへ果敢に臨む真摯な俳優魂は尊敬に値する。この映画『チョコレート・ソルジャー RAGING PHOENIX』の作品内容や評価については、私はまったく気にしない。凄絶な描写は危険を伴い、今回の場合もジージャーの危険な負傷には心が痛む。あまりに無謀で、よく生きているなあ、というのが感想。満身創痍もいいが、安全なやり方で撮影してほしいと思う。
昨年12月にNHKのBS番組で「アジアンスマイル」というドキュメンタリー番組があって、ジージャーを取材したものが放送されたが、私は早速録画した。本当に凄いチャレンジ精神だと思った。映画を完全に超えている。そういう目線で彼女の演技や映画を多くの人たちに観て楽しんでもらいたいと思う。なにせ体を張った映画には、ごまかしが効かない。4メートルもの高い所から転落して背中から落ちるなんて、とても見てられない。土の下にはクッションが隠してあるのかもしれないが、それにしても落ちたあとの反動が硬いためかリアルすぎる。だが、彼女は実際にそれで首を強打して命を危うくした。自分が死んだら誰が母を楽にしてやれるのかと親孝行のジージャーは、自分の亡父にも悔やんでいる姿は、切ないほどいじらしい。また、ぼろい吊橋での格闘シーンで最後に暗い底に落ちてゆくサニム(カズ・パトリック・タン)の場面はCGだとしても、人間の動きはすべて実写だ。そして、女ボスのジャガー・ロンドンとの決闘は実に圧巻だ。タイの格闘映画には、トニー・ジャーを初めジージャーといい、本当に頭の下がる思いがする。それに比べて、行動力と実行力に乏しい日本の俳優陣は情けなくなる。顔さえよければ主演になれるバカバカしさは、日本だけかもしれない。それでも最近のアニメ実写版の邦画『あしたのジョー』(2011)などを観ると、日本人の俳優も近年それなりに体格づくりや努力はしているように窺える。いくらCGやVFXが盛んだからといって、登場人物がモヤシばかりの主人公では、げんなりする。矢吹丈を演じた山下智久、力石徹を演じた伊勢谷友介、彼らのような俳優魂を持った若い俳優がどんどん出て来てほしいものだ。海外では当たり前のレベルなのだが、どうも日本映画には俳優自身の気構えが軟弱すぎるようだ。
綾瀬はるか主演映画の女・座頭市『ICHI』(2008)を観ても、どちらかといえば、アクションよりも劇画的装飾要素を優先してみえる。これも一つの邦画の特徴ではあるが、中村獅童と竹内力だけは役者として堂に入っているものの、中村獅童はジェット・リーとの共演映画『SPIRIT』(2006)で日本刀さばきの殺陣(たて)を見せてはくれたが、迫力には欠けていた。もう少し筋肉の鍛錬が必要であろう。ジェット・リーの影響は受けたはずだ。洗練された格闘の技には、何年も何十年も修行しなければ身に付かないものだ。スティーヴン・セガールもいいお手本ともいえる。と同時に、鍛えるだけでは俳優になれないので、そこからどう演劇のエキスパートになれるのかは、より良い原作や脚本に出会うか、また、どんな監督の元で律してゆくのかも左右されるだろう。さらには一流の世界的映画会社に出演してゆくのも肝心といえる。タイ母国でのジージャーの活躍は、将来、ハリウッドで知名度を上げることにもつながってほしいものだ。次回作の『ジャッカレン』や『THE KICK』、『トム・ヤム・クン2』、『チョコレート・ファイター2』など、目白押しなんだから、今後の楽しみはさらに倍増だ。可憐で強靭、アジアのスーパースターことジージャー・ヤーニン、世界屈指のアクション女優であることには間違いない。-
(2011/11/15)
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