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略  伝 (Biographical Sketch)
 ポートレート
 茶谷 浩(CHATANI Hiroshi) は1969年(昭和44年)に近畿大学原子炉工学科を卒業し、同年から2007年(平成19年)まで京都大学原子炉実験所(Kyoto University Research Reactor Institute: KURRI (現)京都大学複合原子力科学研究所)で技術職員として働きました。 茶谷は京都大学研究用原子炉(Kyoto University Research Reactor: KUR)の運転・保守・宿日直等をする傍ら、専門分野・関心分野として 原子炉工学および放射線測定に関する研究を行いました。  日本原子力学会会員。 
 茶谷が行なった研究の概要
 1983年にNuclear Instruments and Methods(NIM)に掲載された論文ではトリウム232(232Th)の核分裂中性子スペクトルに対する(n,2n)反応の平均断面積1)を測定した結果を報告しています。 これは90%濃縮ウランでできた直径30cmの円盤、核分裂板と言いますが、これを重水熱中性子設備にセットして純粋な核分裂スペクトルをもつ高速中性子を発生させて、その中性子をトリウムに当てて232Th(n,2n)231Th反応を起こさせ、その反応の確率(“断面積”と言いますが)を求める実験です。 
 この反応断面積の測定は、コッククロフト・ウォルトン型加速器を用いて、14.5 MeV 中性子に対しても実験を行いました。 この成果は1992年にAnnals of Nuclear Energy で論文発表しています。 
 これら一連の断面積測定実験を行っているとき231Thのγ線の強度についてはまだ実験値が少ないということが分かりました。  そこで231Thのγ線の測定実験を始めました。 
 ゲルマニュウム検出器を用いて231Thから放出されるγ線の全エネルギー範囲を測定したのは、茶谷が世界で3番目ですが、茶谷はさらに231Th崩壊に伴う新しいガンマ線を2本発見しその強度も特定しました。 この成果は1997年に核データの国際会議で、1999年にNIMに論文として発表しました。 
 このγ線の測定を行っているとき、点状の放射線源を用いて求めたゲルマニュウム検出器の検出効率を、面状の線源に適用する場合の補正係数を出さなくてはならないことになりました。 ゲルマニュウム検出器の使用に当たってはγ線の検出効率を求めなくてはなりませんが、一般に検出器の較正に用いる標準放射線源は体積や面積が無視できる程の点状であるのに対して、測定対象となる試料は無視できない体積や面積を持つ場合が多いです。 茶谷は特に円盤状の試料(特に放射化箔)に注目して、点状線源で求めた検出効率を面状線源に適用する場合の補正係数について研究しました。  この種の補正係数の報告は多いのですが、ある一定の条件下では、補正係数にきれいな系統性があることに着目したのは世界で茶谷が初めてです。 この成果は1999年にNIMに論文として発表しました。 
 233Thの捕獲反応(n,γ)断面積は茶谷の測定が世界で2番目です。 しかしその断面積の値が「2200m/sの中性子に対する」と明確に述べている点では茶谷が世界で初めてです。 この成果は2004年に核データの国際会議で発表しました。 
 一方233Thの(n,γ)反応の共鳴積分2)は未だ測定されていないと言っても過言ではありません。  しかしながら定年を迎えて再雇用を拒否されたため無念にもこの共鳴積分測定実験を断念せざるをえませんでした。  この共鳴積分の測定はアメリカの原子力学会誌(Nuclear Science and Engineering:NSE)に対応するレベルの仕事であることを考えれば返す返す無念です。  
 年代が前後しますが、近畿大学の堀部教授との共同研究では、主に14MeV中性子に対するしきい反応断面積の予測値を計算しました。 この計算で茶谷が用いた計算機は、すでに博物館入りしている OKITAC system 50 と当時普及していた EPSON PC−286VE,NECのPC9801/vm であり、それぞれFORTRANとBASICを駆使して計算しました。 これらの成果は Progress in Nuclear Energy や Annals of Nuclear Energy で論文発表しています。 
1) 断面積: 核反応の確率のこと。 単位はbarn(バーン)
2) 共鳴積分: 断面積の一種   

茶谷の研究業績 (Principal Research Achievement of Mr. H. CHATANI)
 論文・報文・レポートなど31編、日本原子力学会発表12件でありそれらの内、主な研究業績は下の表のとおりです。 
論  文
Journal Articles
Authors Title Publication
Hiroshi Chatani Systematization of efficiency correction for disk sources with semiconductor detectors Nuclear Instruments and Methods, A 425, pp. 291-301 (1999)
Hiroshi Chatani Measurement of gamma-ray intensities of 231Th using semiconductor detectors Nuclear Instruments and Methods, A 425, pp. 277-290 (1999)
O. Horibe and
H. Chatani
Horibe's simplified formula for the prediction of (n,p) and (n,α) reaction cross-sections at around 14 MeV neutrons Progress in Nuclear Energy, 29, [1] pp.57-61 (1995)
H. Chatani and
I. Kimura
Measurement of the 232Th(n,2n)231Th reaction cross section with 14.5 MeV neutrons Annals of Nuclear Energy, 19,[8], pp.425-429 (1992)
O. Horibe and
H. Chatani
A new empirical rule for the prediction of around 14 MeV neutron reaction cross sections Annals of Nuclear Energy, 17, [2], pp.63-80 (1990)
Hiroshi Chatani A measurement of the averaged cross section for the 232Th(n,2n)231Th reaction with a fission plate Nuclear Instruments and Methods, 205, pp.501-504 (1983)


国際会議
International Conferences
Authors Title Publication
Hiroshi Chatani Measurement of effective cross section of
Th-233(n,γ)Th-234 reaction using the KUR
International Conference on Nuclear Data for Science and Technology. Santa Fe, New Mexico, USA, Sept. 26 - Oct. 1, (2004). Proceedings pp. 664 - 667.
Hiroshi Chatani Measurement of gamma-ray intensities of 231Th International Conference on Nuclear Data for Science and Technology. NDST-97, Trieste, Italy, May 19-24 (1997). ITALIAN PHYSICAL SOCIETY. Conference Proceedings Vol. 59. Part 1. pp. 788-790.
O. Horibe and
H. Chatani
Cross sections of the reactions
55Mn(n,2n)54Mn, 58Ni(n,2n)57Ni and 58Ni(n,np)57Co
averaged over the U-235 fission neutron spectrum
International Conference on Nuclear Data for Science and Technology. Julich, FRG, 13-17 May, p. 68 (1991). Springer Verlag, Berlin, (1992)
O.Horibe, Y.Mizumoto,
T.Kusakabe and
H.Chatani
U-235 Fission Neutron Spectrum Averaged Cross Sections Measured for Some Threshold Reactions on Mg, Al, Ca, Sc, Ti, Fe, Co, Ni, Zn, Sr, Mo, Rh, In and Ce 50 Years with Nuclear Fission, April 25-28, 1989, Washington, D.C., USA.
O.Horibe and
H.Chatani
A New Empirical Rule for The Around 14 MeV Neutron Reaction Cross Section on Light Nuclei International Conference on Nuclear Data for Science and Technology, May 30-June 3, 1988, Mito, Japan.


研究会における主な報文(Proceedings)
 「原子炉及びその照射設備における中性子束密度の測定」 【PDFファイル290kB】
 「233Th(n,γ)234Th 反応の断面積測定」 【PDFファイル130kB】


研究発表等の写真集
ポスター会場 トリエステ  1997年5月 イタリアのトリエステで開催された核データ国際会議のポスター会場における一コマと、会場となった国際理論物理学センター(ICTP)の庭にて。 
 (まだデジタルカメラが一般に使われていない頃で、この二枚の写真はフィルムで撮影)
サン・ジェスト城  トリエステにあるサン・ジェスト城。 そこから見える市街 (フィルム撮影)
核データシンポジューム  1985核データセミナー  2003年11月 茨城県東海村にある日本原子力研究所(現(国研)日本原子力研究開発機構)で開催された核データシンポジュームにおいて、茶谷のポスターの前で。 
 1985年に、やはり日本原子力研究所で開催されたセミナーにて。 
国際会議場で  2004年10月 アメリカのニューメキシコ州サンタフェにあるエルドラドホテルで開催された核データ国際会議のポスター会場にて。
サンタフェ 1 サンタフェ 2
サンタフェ アーケード街 サンタフェ 3
 The Santa Fe Plaza National Historic Landmark, Cathedral, and Cathedral Park.
 茶谷の海外渡航経験はこの2004年のアメリカと1997年に、やはり国際会議で行ったイタリアの2回だけです。 
学術講演会 1 学術講演会 2  2007年1月 熊取町の熊取交流センター煉瓦館・コットンホールで開催された 第41回京都大学原子炉実験所学術講演会(2007年) でトピックス講演をする茶谷です。 このときの報文は こちら【PDFファイル4547kB】


その後
 2007年京都大学原子炉実験所の技術職員定年退職者4・5人の内ただ一人、茶谷だけが再雇用されませんでした。再雇用されるのは勤務成績優秀な人だけです。このため茶谷は「勤務成績優秀でなくてえらい悪かったな」と懺悔の日々を過ごしています。 茶谷が奮起して2008年(平成20年)に創った会社(株式会社原子炉工学研究所 )は2022年(令和4年)10月19日に清算結了しました。 

 原子力関係のモンテカルロ計算コードMCNP, Monte Carlo N‐Particle, を用いて、茶谷が詳しい構造等を知っている KUR(軽水タンク型研究用原子炉) の炉心や照射設備について中性子スペクトルの計算を、また炉心内の中性子束分布の計算をしました。  

原子炉炉心や照射設備における中性子スペクトルの計算
中性子スペクトル MCNPを用いて 計算した、KUR(低濃縮ウランシリサイド燃料)の、炉心や照射設備 における中性子エネルギースペクトル(Neutron energy spectra)の一例。計算モデルは下の中性子束分布計算時のモデルに準じています。この計算には Core 2 Duo E6400 (2.13GHz)のプロセッサを搭載したパソコンを用いて、7000分間計算をしました。 

このスペクトルを用いて、多くの知見が得られます。 
例えば当社の事業目的の一つである中性子束測定に関しては、
@ 熱中性子束を測定する場合、金のカドミ比を計算からも求めることができます。 計算方法として例えば   第40回京都大学原子炉実験所学術講演会(2006年) で報告しています。 報文はこちら 【PDFファイル370kB】  
A JENDL 等を併用して、高速中性子束を測定するときに用いるしきい反応の平均断面積を計算することができます。 
B またスペクトルを左の図のように比較することで、 一目見て照射設備の特徴が分かります。 

原子炉炉心内の熱中性子束分布の計算
 熱中性子束分布  Flux分布の計算モデル (左)MCNPを用いて計算したKUR(高濃縮ウランアルミナイド燃料)炉心 「ほー7」における縦(鉛直)方向熱中性子束分布(Thermal neutron flux distribution in the vertical direction at ho-7)()と 義本氏ら(平成17年9月,KUR保守報告書)の実験値(
この中性子束分布は燃料領域においては発熱分布に対応しています。 このことから燃料の燃焼率分布を知ることができるし、効率のよい照射場所を特定できます。 また燃料のない領域においては炉心から漏れ出た高速中性子が熱中性子になる様子が分かります。 

(右)中性子束分布の計算モデルの概略(平面図)



茶谷の写真集  (Photo Gallery; Photography by CHATANI Hiroshi)

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Amateur Radio  山口県立岩国高等学校在学中に取得した電話級アマチュア無線従事者免許証。  電話級は現在第4級と読み替えます。 
H Tamura YAMAHA GC-30B 1970年代に購入したギター(Hiroshi Tamura 作)と(YAMAHA GC−30B)。 それぞれ、杉655mm、杉(?)660mm。 GC−30Bは表現力がありバランスが良く大きな音が出ます。  昔、練習をしていたころはご近所にずいぶんご迷惑をおかけしたのではないかと。 
ホシホウジャクの吸蜜  ホシホウジャクの吸蜜
 大阪府泉南郡熊取町永楽ダムにて (2010年9月)
冬の薬師寺  冬の薬師寺・若草山 遠景  (1982年(昭和57年)から1997年(平成9年)) (フジクローム)
お水取り  お水取り2  東大寺二月堂 修二会(お水取り・お松明)  (フジクローム)
万灯会

浮見堂
 春日大社 万灯会(まんとうえ)  (フジクローム)


 鷺池の浮見堂  (フジクローム)  
まほろばの春  まほろばの春  若草山ドライブウェーからの眺め 向こうに東大寺、遠くに興福寺の五重塔を望む。(フジクローム) 
よき日  よき日。  白秋の里 柳川にて (フジクローム)
月   満月ではないのですが・・・・。  
 デジスコ(デジタルカメラの前にフィールドスコープを取り付けた)による撮影 自宅マンションベランダよりのぞむ (2011年7月) 
オオスカシバの吸蜜(1)   オオスカシバの吸蜜(2)
ツマグロヒョウモン♂の吸蜜
ウラギンシジミ
カマキリの交尾
 オオスカシバ (大透翅)   長居植物園 (2013年10月) 
 ツマグロヒョウモン♂ (褄黒豹紋蝶)   長居植物園 (2013年10月) 
 ウラギンシジミ( 裏銀小灰蝶)   新滝の池 (2008年9月) 
 カマキリは交尾の後、♀は♂を食べてしまうと言われますが、交尾の最中に食べ始めることもあります。    新滝の池 (2011年10月)   
野点     野点(のだて)   談山神社(たんだんじんじゃ) ある秋の一日 (フジクローム) 
白川郷 1
  白川郷 2
   白川郷 (2007年11月)
Program
  Result
   N−88 BASIC を用いて作った “d―T反応により発生する中性子のKinematics” を数表化するプログラム。 およびその計算結果の例。 (19??年)
20 21



最近の茶谷です  ここ   



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   更新日: 2016(平成28)年10月8日,2023(令和5)年3月       Mr. CHATANI's E-mail address
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