発電所見学シリーズ

須田貝発電所(群馬県水上町)





 ゴールデンウイークの真っ只中、温泉で有名な群馬県水上町にある「須田貝発電所」に行って来ました。
 東京電力の管轄する発電所へ行くのは初めてなので、どんなところなのか楽しみでした。
 発電所を見学するには、上の写真にある「TEPCO電源PR館 須田貝」で申し込みを行います。申し込みと言っても、事前予約をしたわけでもなく、当日直接行って受付をするだけなのです。このPR館についての説明は後ほど。

 須田貝発電所は、昭和30年9月に完成した日本初の「地下式発電所」です。地下に発電所が作られた理由は、この周辺の自然環境を最優先にするため、雪によって発電ができなくなることをさけるためなどがありますが、一番の理由は、地下に作ることで水力発電の命ともいえる「落差」を大きくするためです。

★なぜ「落差」は大きい方がよいのか?
 みなさんも知っているとおり、水は高いところから低いところに流れる習性があります。この習性を使ったのが「水力発電」で、上のダムから水を流し水車を回しています。このとき、ダムに貯めてある水をたくさん流せば、それだけ水車が回るので電気がたくさん作られます。しかし、ダムの水は限りがあるのでたくさん使えばすぐになくなってしまいます。このため、少ない水でたくさんの電気を作ることはできないかと考えたのです。そこで考え出されたのが、「落差」(高さ)を作って高いところから水を流す方法です。

 例えば、図のように自転車で坂を下りることを考えてみると、Aの坂とBの坂とでは坂の急なBの方が自転車のスピードが速いですよね。水の場合も同じで、自転車が「水」にあたり、スピードが「水車を回転させる力」になります。このため、同じ水の量を流しても、高いところから流した方が水車を回す力はたくさんとれるのです。
 ですから、落差を大きくすることで、少ない水でも水車が早く回り、短時間にたくさんの電気を作ることができます。



変電所(左側にあるのが変圧器) 須田貝ダム

 発電所へは、PR館の職員の案内に付いてPR館の隣りから入ります。まず目に入るのが、大きな変圧器。ここでは、発電機で作られた電気を昇圧(電圧を高くする)します。発電機で作った電気は電圧が低いのでそのまま送ることはできません。そのため、変圧器を通して電圧を高くした上げます。ここでは、発電機で11,000Vの電気を作り、この電気を変圧器で154,000Vにします。

 変圧器の前を通り、先へ進むと「須田貝ダム」が見えてきます。写真では、ダムから水が流れていますが、普段はあまり流さないそうです(運が良かったのかな?)。ここで見えている水は発電には使いません。

 このダムの下に発電所の入口があります。扉を入ると細く長い階段があります。階段の左側には「インクライン」と呼ばれる台車用のレールがあり、点検用の材料などを運んだりしています。もともとは、建設用資材の運搬に用いられていたものだそうです。ここをゆっくりと下りていくと、発電機が見えてきます。

地下発電所入口
発電機
軸(水車と発電機をつないでいる)

 写真で見ると、発電機が小さいように見えますがかなり大きいのです。私が発電機の前に立てば大きさが何となくわかってもらえると思うのですが、高さは私の身長よりも1m位高いです。11,000Vもの電圧を作り出すのですから当たり前なのかもしれませんが、実際にみると実感します。このあと、階段を下りて発電機の下にいくと、軸(写真)があり、発電しているとかなりのスピードで回転している姿が見られます。ちなみに、水車には1秒間にドラム缶325本分の水が2本の鉄管を流れ、水車は毎分250回転しているのです。

 見学時間はそんなに長くはないのですが、なかなか見ることのできない施設を間近で見ることができますので、特に電気の勉強をしていなくとも、雑学として勉強になると思います。


<発電所 設備概要>
 
ダム 発電機
総貯水量…2,850万立方メートル
利用水深…5m
ダム高さ…72m
ダム頂長…194.4m
ダム体積…21万平方メートル
型式…立軸傘形発電機
出力…48,000kVA(2台分)
電圧…11,000V
周波数…50Hz
変圧器 水車
型式…屋外用三相油入自冷式
出力…48,000kVA(2台分)
電圧…発電機側11,000V
     送電線側154,000V
型式…立軸渦巻フランシス型
有効落差…77m
水量…毎秒65立方メートル(2台)
出力…47,800kW(2台分)
回転速度…毎分250回転


 発電所の見学の後は、TEPCO PR館の中を見学しました。揚水式発電の仕組みやダムの構造模型などが展示されています。また、外には実物の水車や発電機が展示されています。
フランシス水車
(実際に使われていた)
ランナ(水車)
大きさがわかってもらえますか?
入口弁
(実際に使われていたもの)

 須田貝発電所で使われている水車は、フランシス水車といいます。写真は水車が縦になっていますが、発電所では水車を横にしたものが使われています(昔は縦型で使っていたのですが、時間がたつうちに軸が変形したりしてしまうので、現在は横型が主流となっています)。水車の構造は、軸を中心にして考えます。軸が縦になっているものは「縦軸型」、横になっているものは「横軸型」といいます。ちなみに写真のフランシス水車は軸が横になっているので「横軸型」、須田貝発電所の水車は「縦軸型」になっています。

 そのほか、PR館の建物の横にある「入口弁」(水車に水を送る管の入口にあり、発電時に水を流したり、停止時に水を止めたりする役割をしている)は、実際に矢木沢発電所で使われていたものです。弁の直径は4,276mm(4.276m)もあります。かなり大きい!!

 PR館には、揚水発電に関する史料だけでなく、左の写真にあります「太陽光発電」も実際に行っており、PR館の空調用電気として使っています。

 太陽電池パネルは320枚(表面積でいうと約180平方メートル)あり、1枚で最大64W、全体では20kWの電気が作られます。
 太陽電池はまだまだ太陽光を電気に変換する効率が良くないので、たくさんの電気を取り出すためには、広い面積がないとならないのです。そのため、PR館全体の電気をまかなうほどのたくさんの電気を得ることはできません。もっと効率の良い太陽光パネルができれば、まかなえるかも・・・。





<TEPCO電源PR館・須田貝 いんふぉめーしょん>
開館時間 4月1日〜11月30日→9:30〜16:00/12月1日〜3月31日→9:30〜15:30
休館日 年末年始、1・2月の土・日・祝日(他の月は無休)
入館料 無料(予約の必要はありません)
発電所見学
案内時間
午前:10:00,10:30,11:00   午後:13:30,14:00,14:30
(工事中等で見学できない場合もあります。)
駐車場 あり
交通機関 鉄道:JR上越線水上駅よりバスで約1時間、または上越新幹線上毛高原駅よりバスで約1時間20分
「湯の小屋温泉」行「須田貝発電所入口」下車徒歩10分
車:関越自動車道水上I.Cより約20km、40分
連絡先 〒379-1721 群馬県利根郡水上町大字藤原6152
TEL:0278−75−2361 / FAX:0278−75−2362
ホームページ http://www.tepco-pr.co.jp/goto/sudagai/





<ちょっと足を延ばすと...>

 ・月夜野びーどろパーク
 須田貝ダムより月夜野方
面へと南下すると、県道61
号線沿いにある、ガラス加

の会社が直営しているお店
です。
 美術館見学や実際に吹き
ガラスも体験できますので、
興味のある人はやってみて
はどうでしょう?
 写真右にあるような作品を
作ることができますよ。


・吹割の滝

 国道120号線を日光方面に進むと少々にぎわった場所が見えてきますが、ここが「吹割の滝」です。道路からは見えないのですが、お土産屋さんの駐車場(食事or買い物をしないと置くことはできない)または、村営の駐車場(無料?)に止めて階段を下りると川岸にでます。ここを川沿いに下っていくと、ごう音とともに水しぶきが見えます。
 写真で見るように、華厳の滝のように見上げるのではないのですが、迫力はあります。近くまで行くことができるのですが、吸い込まれそうな感じがしました(真ん中の写真にはありませんが、滝周辺に白い線が書かれていたのですが、たぶんこれ以上近づかないようにと言う警告なのでしょうが、誰も守っていませんでした)。

 今の時期は、涼しくていいかもしれません。それに、今話題の「マイナスイオン」もたくさん放出されていますから、リラックス効果抜群ですよ!


 昭島からは遠いのですが、水上までは「圏央道→関越道」で行けますので、ドライブがてら行ってみてはどうでしょうか?滝は一度みなさんに見てもらいたいですね。