発電所見学シリーズ


柏崎刈羽原子力発電所
(新潟県柏崎市・刈羽村)


(手前から7号機・6号機・5号機)



 8月も終わりに近づいた、26日・27日に電子科の先生達と新潟県にある「東京電力柏崎刈羽原子力発電所」に行って来ました。
 水力発電所は何カ所か行った(このホームページにも書いてありますが)のですが、原子力発電所は今回初めてです。一緒に行ってもらった先生方も初めてと言うことなので、とても楽しかったです。

 ここ柏崎刈羽原子力発電所は、世界最大の発電能力を持つところだそうです。東京電力は、ここの他に福島県にも2カ所持っており、現在3カ所で17基の原子炉を持っています。この3カ所で首都圏の約4割の電気が作られているのですから、首都圏の人たちは感謝しないといけませんよね。
 ちなみに東京都心の電気は「火力発電」によってまかなわれているそうです。そのためなのか、東京湾岸には火力発電所がたくさんあります。

 原子力発電というと、あまり良いイメージがないと思いますが、放射能の問題をのぞけば「少ない燃料でたくさんの電気を作ることができる」という、原料に乏しい日本にとっては何ともありがたい発電方式なんです。でも、昨今の状況を見ると、なかなか「安全ですからご心配なく!」とは大きな声で言えませんよね。

 さて、今回の見学では「原子炉の真上まで案内してもらえる」と言う話だったのですが、実際行ってみるとガラス越しの見学になっていました(急に見学中止にならないだけいいか?と思いましたが)。世界最大の原子力発電所と言うことで敷地もかなり大きい。案内係の方が東京ディズニーランドが5個入るとか、東京ドームが○○個入ると言っていましたが、いまいちピンと来ませんでした。

 まず発電所の中を見学する前に、「サービスホール」で原子力発電の基本知識を勉強しました。
サービスホール
 ここには、原子力発電のしくみをわかりやすく説明するため、原子炉のミニチュア模型や原子炉の建物の壁が展示してあります。ほとんどの展示物が実際に使われているものと同じなので、見学前に見ておくと構内で実物を見たときよくわかると思います。

 また、小さな子供でも楽しめるようクイズなどのゲームもあり、原子力発電に興味を持ってもらえるようなものになっています。見学をした日にも、小学生らしき団体がきていました。




 <サービスホール内の展示物>
実際の壁を展示
(人がたくさんいたので近づけませんで
した)
原子炉の模型(実物の1/5)
写真だと小さいですが、この模型だけで
も建物3階分くらいあります

使用済み燃料の輸送容器
使用済み燃料を再処理施設へ送るとき
に使われるそうです。
原発の運転基数・発電量の
表示板
世界の原発の数やその発電量が表示さ
れています。写っていませんがボタンを
押すとその国の原子炉の数や発電量が
わかります。

※モニタリングポストとは
発電所の周囲の放射線量を測定
し、発電所内部から放射能が漏

だしていないかを確認する装置で
す。柏崎刈羽原発には9カ所設置
されています
放射線の監視盤
原発の周りに設置されているモニ
タリングポストからの放射線量が
表示されています。

 1時間ほどサービスホールを見学した後、原子力発電所が柏崎刈羽の地にできるまでの記録映像を見ました。
 映像ホールは、100名位入ることのできる大きな場所なので、施設見学などで来ても一斉に見ることができそうです。
 ここで驚いたのがナビゲータ。部屋にはいると目の前に「ASIMO」がいたのです。東京電力というと「でん子ちゃん」なのになぜ「ASIMO」…。このASIMOは東京電力の従業員の一人(?)のようで、胸には東京電力のマークが入っていました。テレビや雑誌でしか見たことのなかったASIMOがこんなところで見られるとはびっくりです。ビデオよりもASIMOの方が気になったりしてしまったのは私だけでしょうか?
 子供が喜びそうだなと思いつつ、うちの生徒も喜ぶだろうなと考えてしまいました。


 サービスホールの見学を終えると、実際の発電所内部へ。カメラの準備も完璧だったのですが、発電所内部は、1年前にあった同時多発テロの影響で、警備が強化され、荷物類の持ち込みが禁止になったそうです。そのため写真がありません。普段(テロが起きる前)は写真撮影が可能だったそうです。かなり残念。

 発電所入口から建物内部に入るまでいくつものチェックを受けます。まず、飛行場にあるような金属探知器を通過し、その後、入口で受け取ったICカードを使って自動ドアを通り、原子炉の建物に入る際、再びICカードを使って自動ドアを通るのです。さすがは世界最大級の原発。チェックは厳しいです。

 建物内は普通のオフィスビルのようで、原子炉があるという雰囲気ではありませんでした。途中にあるパネルや写真の説明を受け、まずはタービン室へ。タービン自体は見ることができませんが、火力発電所のタービンに比べると小さな感じがしました。
 その後、いよいよ原子炉へ。サービスホールで見た模型の実物は見ることができませんでしたが(運転中なので)、原子炉のほぼ真上(ガラス越しでしたが)を見ることができました。それぞれの場所には、放射線量を表示した液晶パネルがありましたが、原子炉の真上の値はそんなに大きくはありませんでした。それだけ放射線が出ないような構造をしているのですね。
 次に見たのが、原子炉を集中管理する「中央制御室」。外からは決まった人しか入れないとのことで、かなり警備システムが厳重であるそうです。室内では、6〜7名の職員がチームを組み原子炉を監視しており、1〜2時間に1回原子炉やタービンなどの点検をするそうです。見た目には、忙しく働いているという感じではなかったです(どちらかというと「暇そう」に見えました)が、原子炉の制御は自動化されており、手動で動かすことはほとんどないそうです。もし、忙しく動いていたら何か異常が起きたときなので、見学なんてしていられないですよね。

4号機外観 左の写真は、7基ある原子炉のうちの1つで、今回見学した4号機です。中心の大きな建物に原子炉があり、後ろ側に発電機があります。左側につながっている建物は、移動用の通路です。

所内はかなり広いので、歩いて回ることはできません。そのため、発電所の車で移動をしました(写真は車内から撮ったものです)。

 このような建物が7つあるのですから敷地がかなり広いことはわかってもらえるのではないでしょうか?


<柏崎刈羽原子力発電所概要>
敷地面積 約420万平方メートル
原子炉 沸騰水型軽水炉 改良型沸騰水型軽水炉
ユニット名 1号機 2号機 3号機 4号機 5号機 6号機 7号機
出力(万kW) 110 110 110 110 110 135.6 135.6
着工 S53.12 S58.10 S62.7 S63.2 S58.10 H3.9 H4.2
営業運転開始 S60.9 H2.9 H5.8 H6.8 H2.4 H8.11 H9.7


 4号機を見学した後、車で周辺を外から見て回りました。排水口
 特に、印象に残っているのが右の写真の場所です。ここは、原子炉で作られた水蒸気を水に戻す時に使われた海水を海に戻す排水口です。毎秒78トンもの水が出ている姿はかなりのものです。見ていると吸い込まれそうになります。ここから出てくる水は通常の海水の温度より7℃ほど高いそうです。このためすぐに海へ流さず、壁をもうけて徐々に温度を下げ、それから海へ流れるように作られています。写真の中央部に、ブロックのようなものが見えると思いますが、これが壁となって暖まった水がすぐに海へ流れないようになっています。


 原子力発電は、100%安全なものとはいえないのですが、資源の乏しい日本にとって少ない燃料で多くの電気を作ることのできる方式は必要だと思われます。現に首都圏で使われている電気の40%は原子力発電によって作られたものなんですから。しかし、安全管理の面でまだまだ足らないところが多く、必要だと認めてもらえないのが現状です。安全管理・関係各所の倫理感などの考え方がしっかりとなれば、放射能漏れや自己・故障の隠蔽はなくなり、国民に広く認められた電力エネルギーの中心を占めるようになると思います。
 原子炉の構造でいえば、決して放射能漏れが起きることはありません。放射線が漏れないように5層もの壁を作り、周辺の放射線量を監視し、万が一漏れたとしても、原子炉内だけで対応できる仕組みにしているのです。原子力発電所からの放射能は、自然界から受ける放射線に比べれば、ものすごい小さい値です。将来の電力エネルギーがどのようになっているかわかりませんが、「二酸化炭素の排出量が少ない・大きな電力を少ない燃料で作ることができる・燃料がリサイクルできる」という原子力発電が世の中に受け入れられる日がくるのではないでしょうか。そう思いつつ工業(電気)教育をしている今日この頃です(これは私の個人的な考えですが…)。





<柏崎刈羽原子力発電所いんふぉめーしょん>
開館時間 9:00〜16:30
休館日 毎月第1水曜日(祝日含む)・年末年始
入館料 無料(発電所見学は予約が必要)
見学コース 1時間30分コース…発電所の敷地内を一周するコース
2時間コース…発電所建物内を窓越しに見学するコース
2時間30分コース…発電所建物内を直接見学するコース
各コースとも予約が必要
駐車場 あり
交通機関 鉄道:JR柏崎駅からバスで30分(東京電力前下車)、タクシーで20分
車:北陸自動車道西山I.C.から15分。または柏崎I.C.から20分
連絡先 〒945−0393 新潟県刈羽郡刈羽村大字刈羽字西浦4236−1
TEL 0257−45−3131(代) 発電所見学の予約もここへ。
ホームページ http://www.tepco.co.jp/kk-np/servhall/index-j.html

 東京電力のホームページに、事故の隠蔽についてのお詫び文があります。 → http://www.tepco.co.jp/

  発電所の見学は、事前に予約をすれば誰でも見学できます。
  ぜひ、みなさんにも見てほしいです!(かなり遠い場所ですが…)