この一言は、ウン十年の時を経てソフトボールのグランドに立ったSさんの口から発せられたもの。
1塁ベース上に、ふたつのベースが並べて置かれることから、これを「ダブルベース」と呼びます。フェアー地域にあるのは通常の白いベースです。ファール地域にあるのが、オレンジ色のベースで、これを「オレンジベース」と呼びます。
Sさんが驚いたのもそのはず、このオレンジベースは歴史の新しいもので、日本では、正式には1996年からルールブックに載っています(その前から一部で使用されていましたが)。
ダブルベースの目的は非常に明確で、打者走者と一塁に入った内野手の接触を防止するためです。ソフトボールは塁間が狭いため、一塁はいつもクロスプレーです。イチローの内野安打のような、間一髪! というのが多く、接触の危険性が高いのです。特に、1塁手はバンドに備えてベースより前に守備位置をとることが普通なので、前に打球が飛んだ場合は2塁手か投手が1塁のカバーに入り、野手と走者がちがう角度で走り込みながらボールを待つ状態になるので、ますます接触のチャンスが高まります。ダブルベースは、1塁ベース上での接触を防止するための非常にすばらしい措置であると思います。
しかし、そうやってひとつ新しいことを導入すると、その適用について、いろいろ決めなくてはならないことが出てきます。それがルールです。吉村本には、ダブルベースについての8つの注意事項があげられています(なんと8つも!)。ここでは大まかにまとめます。
・基本的に言って、1塁でプレーが行われるときには、打者走者はオレンジベースに触塁しなければなりません。1塁でプレーとは、アウトかセーフかっ!という状態です。内野安打や、ライトゴロ、振り逃げなんかがこれにあたります。
・1塁でプレーが行われないときは、オレンジベース、ホワイトベースのどちらを踏んでもいいです。具体的には、長打で1塁から2塁に向かって駆け抜けるとき、外野への安打で1塁を回って2塁をうかがうときなどです。
・それ以外は、オレンジベースは存在しないものと考えます。オレンジベースを駆け抜けて、1塁セーフとなって、戻って来てオレンジベースに立っていたら、タッチされてアウトです。投手が投球するとき、オレンジベースだけに触れていると離塁アウトです。タッチアップするときオレンジベースを蹴って走り出してもアピールされたらアウトです。打者走者以外にとって、オレンジベースは何の意味もありません。
・守備側はホワイトベースのみを使用します。(ただし、ファール地域から1塁ベースに触塁しようとするときは、どちらでもかまいません。例えば、内野手の1塁への送球が大きくファール地域にそれて、それを捕球した1塁手が1塁に触塁しようとするときなど)
やっぱり、けっこう複雑になりましたね。
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