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身 の ほ ど
 いじめ、引きこもり、少年の凶悪犯罪が、テレビ、週刊誌などで騒がれています。子供は幼児の時には「何にでもなれる」「どんな夢も叶う」というような万能感を持っています。親も子供への期待のかけ方は凄まじいものがあります。特に今の日本は、財産ばかりか、学歴も、社会的地位も親から子へと連鎖していくと言われます。勝ち組、負け組ということさえも伝わっていくのです。親も子供に対して過度な期待をかけるものです。親が子供に期待をかけるのは、「子供自身の将来のために」とか「子供の幸せを願って」などと美しい言葉で取り繕いますが、本音は親自身の欲望のあらわれもあると思われます。以前大変なブームになりました、マンガ「巨人の星」は父親の星一徹が子供の飛雄馬に自分の果たせなかった夢を子供にかけて鍛えるスポーツ根性物語でした。日本が高度成長期で頑張る姿が感動の物語として大変な人気でした。
 実際に現在でも親が子供の犠牲となって子供の成功を願うことはよくあることですね。 
 イチロー、石川遼、福原愛、芸能タレント、親が自分の仕事を捨ててでも、子供にすべてを注ぎ込むのです。成功例は美談として語られますが、多くの場合は挫折がほとんどでないかと思います。皆様も子供を育てられるときにはどんなに多くの希望があったことでしょうか。
 しかし幼児から子供へ、そして青年へと成長するに従って、かって持っていた夢ははかなくも消えて現実の社会との折り合いをつけていかなければならなくなってきます。成功例の裏側にどれだけ挫折をした子供たちがいたことでしょうか。子供の頃から一つのことしか親から教えられなかった子供は成功しなかったときには残りの人生をどのように過ごすのでしょうか。
 親は自分が叶えられなかったことを、自分の子供に再び自分の夢を押しつけると言われます。
 成功した子供は幸福なのかもしれません。しかし多くの子供は挫折を繰り返します。東大に入学できても誰もが一流の企業人や官僚のトップになれるわけでもありませんし、プロスポーツ選手になれたからといってもいつまで一線級でいられるのはわずかな選手しかいないのです。 大人になるというのはそんな「身のほどの」自分を知ることなのです。いま万能感の喪失を受け入れられない人たちが増えているように思えます。この事を受け入れられなくなるとストレスからなのか「ひきこもり」「キレる」「弱い者に対して攻撃」するようになると言われます。 人間は死ぬまでストレスを感じないで生きていくのは不可能です。挫折をしないで生きていくのも不可能なのです。もしそのような方がおられたらつきあいたくないですね。もちろん子供の時にあまりにも強いストレスや挫折を与えますと怪我ではすまなくなることもありますから親は注意深く見守らなくてはなりません。しかしそれでも「挫折」の経験を積むことは大事なのです。挫折や失敗は本当の自分、等身大の自分を知ることなのです。念仏の教えはこの等身大の自分との出会いです。過大評価も過小評価でもありません。人間が成長するというのはこの等身大の自分を知ること、仏法を聞くというのもまさにその一点にあるのです。
 本当の大人になるというのはこのことなのです。 自分の責任を放棄して、他に責任を押しつける風潮がそこかしこで見られますが、本当の「私」を知る勇気が求められますね。いじめ、引きこもり、ニート、キレる、青少年の根本問題はこのあたりにあるようですが・・・・