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震災より三年を経て
 
東日本大震災は三年の時を経ましたが、未だ仮設住宅、又放射能からの退避にによりましていつ故郷へ帰れるかも知れない人々が二十三万人を超えています。被害を受けた人、受けなかった人、同じこの日本に住んでいながら不条理そのものであります。【不条理ー事柄の筋道が通らない事、とあります。】不条理な事が多い時代です。説明のつかないまさに不条理な事、許すことの出来ない事が数多くあります。しかもその不条理な事を人間が犯すようになり、言い訳さえもするようになってきています。今年の三月十一日現在、死者一五八八四人、不明者二六三三人、避難等生活に関する震災関連死三〇四八人になっています。悲しいつらいことです。
「寄り添い」「絆」「東北に優しさを」などと声たかだかに叫ばれました。しかし三年が過ぎ時間と共に思いが薄れ、記憶の風化が日本の中で進んでいるように見えてなりません。愛する人を失った悲しみ、故郷への思いはいつまでも消えるものではないでしょう。目の前の肉親を救えなかった悔い、自分が生き残ってしまった後ろめたさもあると思います。「花は花は花は咲く」とNHKからよく流れてきます。しかし福島は現実にそれどころではないのです。
 被災者は耐えがたい難い状況にあるのです。このような中で国土強靱化、原発再稼働等が着々と進められようとしています。「日本人の価値観の見直し」という反省が震災直後は叫ばれましたがどこに行ってしまったのでしょうか。三年過ぎればすっかりと忘れ、津波に流すよりも、水に流すということなのでしょうか。犠牲の方々に申し訳ないことですね。
 又復興の名の下に以前の生き方に戻ろうとしています。世論調査でも今政治に望む事は「景気回復」です。結局は「お金」「経済」ということでしょう。その中で被災地はどんどん捨てられ忘れ去られていきます。仮設住宅からいつ出られるのか、放射能汚染による家族の崩壊、離婚率も高くなってきていると言われます。「フクシマ」から避難生活をされてる方への心ない差別現象も生まれてきています。復興のための、人手不足、資材の不足も言われています。東京五輪が優先され被災地の復興が遅れることも予想されています。
 このようなことこそが不条理そのものと言えます。自然界も人間の目から見ますと不条理な事を引き起こします。どんなに真っ正直に生きても自然が牙をむけば人間などはひとたまりもありません。日本は昔から自然災害の多い国でした。しかし幾たびの災害を乗り越え耐えて、営々と生活を営んできたのが私たち先祖の歴史でした。不条理には二つありまして自然界の不条理と人間が起こす不条理があると思います。人間が自らの都合、利益で起こし作る不条理は許されるものではありません。不条理なことが起こったとき「想定外」ではすまされません。仏教で説いている生老病死など四苦八苦は不条理な事ではありません。当たり前の事です。  不条理な事を起こすのは実は人間のみであることを心すべきでしょう。戦争であれ、過労死であれ、いじめであれ、すべて人間が起こす「人災」の不条理です。私の根っこにはいつもそのようなものがいつも潜んでいることを仏法は警告し知らせます。
 今一度本当の「寄り添い」とか「絆」とは何であったのか再確認が大切でしょう。
 犠牲になられた方々へ残った私たちの責務を真剣に考えなければ・・・・・・