No.1

メダルを持つ者の資格。

 ドリームチームを編成しプロ野球公式戦を犠牲にしてまでオリンピックに望んだ韓国の目的は、メダル以上のモノだったのかもしれない。もしくはオリンピックのメダルの価値こそが、そこにあるのかもしれない。

 国をあげてオリンピックにかけた韓国チームは、開催国のオーストラリアに負け、メダルどころか決勝リーグ進出も危ない状態に追い込まれた。そんな韓国が崖っ渕で迎えた日本戦での日本の先発投手はエース松坂だった。韓国チームは、これを落したら国に帰れなくなる、絶対に負けられない一戦になった。

 結果はエース松坂を打ち崩し、日本戦に勝利。韓国チームは見事に意地を見せた。

 あたりまえだ、韓国ドリームチームは半分素人の日本に負けるわけにはいかない。覚悟が違う。

 そして決勝リーグ進出を決めた韓国はアメリカ戦に勝つことよりも日本に勝つことに照準を合わせた。「韓国野球が日本よりも強い事を証明する。」これは韓国国民の意思かもしれない。そして韓国チームは日本戦に再び勝利し、アメリカ大陸に次ぐ野球大国は日本ではなく韓国であることを世界に証明した。ある意味、韓国チームはメダル以上の成果を本国に持って帰ることになったのかもしれない。その日、韓国中に「韓国の大エースは日本一の投手との名勝負に勝利にした。」というニュースが流れ、国中が狂喜したそうだ。

 まさに韓国野球は意地を見せた。ボクは野球に対する韓国と韓国野球チームの姿勢に最大の賞賛を贈りたいと思う。

 多くの日本人は日本の野球は韓国よりも強いと思っている。ブラジルサッカーチームがカメルーンよりも強いと思ってるよりもたちが悪い。少なくともブラジルの人選はベストだったはずだ。「日本だってベストチームだったら韓国に負けるはずが無い……」そんなことを思ってるのは日本人だけだ。それは勝ってから言う事じゃないか。オリンピックのメダルよりもセントラルリーグのペナントレースのほうが価値があると決めたのが日本の野球で、メダルよりもジャイアンツの優勝とナガシマの胴上げを望んだのも日本人だ。それは悪い事じゃない。日本人の希望も叶い、韓国人の自信も満たし、ナベツネの思惑も達成した。そしてオリンピックでの野球のリザルトは日本よりも韓国が上。オリンピック日本代表野球チームの成果は、それ以上でもそれ以下でもない。

 日本チームも頑張ったが結局は格上のチームからは一つも勝ち星を挙げられなかった。野球はサッカーよりもアップセットの少ない順当なスポーツの様だ。

 解っていたとはいえオリンピックの結果と予選も含めて韓国に3連敗という結果は、悔しくないといえばウソになる。ただ、足並みを揃えてメダルを取る為に全力で戦い結果を出した韓国という国が少しうらやましく思えた。ボクが韓国人だったらきっと韓国野球を誇りに思うだろう。

 少なくともボクにとって野球は特別なスポーツだ。グローブも持っていたし、少年野球もやった。上手い下手はあるけども野球をしない友達はいなかった。ブラジルの子供が女の子みたいにしかボールを投げられないのを見るまでは、世界中の男の子はみんなボールを投げられて当然だと思っていた。日本が特別なんだと気付いたのは、大人になってからかもしれない。野球はセンチメンタルなスポーツだった。映画「フィールド・オブ・ドリームス」のラストで主人公が死んだ父親とキャッチボールをするシーンがある。あの気持ちはきっと野球を愛する国に生まれた者以外には理解出来ないだろう。

 アスリートとは言えない日本人の手に届く可能性がある種目はけして多くない。そしてそのメダルは是非ともこの国に必要なメダルだった。だからこそ多くの問題を振り切ってでも大義名分抱えて取りに行きたかった。それが出来なかったことが悔しい。横文字の柔道があるように、漢字の野球があることを世界に証明したかった。日の丸、君が代、ナショナリズム。難しい事もあるけど、これは戦争じゃない。

 プロリーグの優勝はカネで買えるが、オリンピックのゴールドメダルはけして買うことが出来ない。それを志す動機と達成した暁に得られるモノに違いがありすぎるからなのかもしれない。

 古田捕手のオリンピック出場問題のときに彼の口から語られた一言があった。「オリンピックよりペナントレースの方が大事なのはあたりまえだから……」プロプレーヤーである彼の立場を考えれば、それでいいのかもしれない。でも一野球ファンとして、あの言葉が記憶から消えそうにない。

00/09/27

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kuntan's note