ざ・ぼん

『13』古川日出男/幻冬社

 あらすじ紹介・・・と行きたいんですが、今一つストーリーそのものが「???」という感じだったので、書けないです(笑)。TRCの内容紹介を読んでも「視覚異常者にして映像の天才・橋本響一は「神」を映像に収め、ハリウッドへ向かった。霊力の森、未開部族の家族の一員として過ごした響一の少年時代のできごとが絡み合って…。」(帯か何かからの引用でしょうが)とか書いてあ って、これも読んだ直後の私が「何じゃそりゃ?」と思ってしまうようなものですし。物語についてなら、タニグチリウイチさんの積ん読パラダイスの『13』項を参照していただけるといいかも(^^;。未読の方は、上記ページだけを読んだら、以下は不要かもしれません。

 というわけで、いきなり感想から。

 なんというか、物語全体が「拡散」しているような感じを受けました。キーワードは沢山思い浮かぶのです。片目だけ色盲の色彩の天才・響一、「作られた」偽りの黒いマリア="13"=ローミ、森と共に生きるウライネ、聖書から神を作り上げたデイビッド・・・、これは第一部「13」の登場人物で、これだけを見ると、まあ、物語の体裁を成してはいるような感じがするのですが(もちろ ん未完)、(おそらく本編と思われる)第二部「すべての網膜の終り」のハリウッドの映画づくりが絡むと「?????」となってしまう。神様、神様、神様、ねえ?

 物語という球形の物体があって、その表面から半径に比べて短すぎる釘だけを与えられて打ち込んでいるような、そんなもどかしさが残りました。どの釘をさしても、決して中心には届かない。どの釘も、長さが足りない。第一部と第二部の間を埋めるピースが欠けているような感じがするのは、多分、作者自身意図したことだと思いますし、それはいいのですが・・・。

 結構キャラクターに引っ掛かりました。第一部でも、キャラクターの思いを掴み損ねてしまって、何を考えているのかは「わかる」けれども、感情移入とか共感とは程遠く、まあ、それも作者の意図・手法なのかなあ、と納得しかけてはいたのですが・・・(ただ、上記のそれぞれの「神」と関わるメインキャラクターと同じくらい出演している関口のキャラクターの薄さがなんともいえず、変な感じではある。「神」を見ることのない者として書かれているにしても、踏み込みが甘い)。第二部がなあ。ハリウッドに入ってからのマーティン、ココ、マデリン、CDのキャラクターの描かれ方が、どうも類型的で、空っぽという気がしてなりませんでした。「才気溢れる監督」、「乗りに乗っている女優」、「女優のややエキセントリックなルームメイト」、「挫折の淵から見事復活したミュージシャン」。うーん(^^;。

 もしかして、ハリウッド映画なんて大嫌いという私の偏見とか、神様が一体何やねんという私の信念とか、そういうことが邪魔しているだけかもしれませんが、とりあえず「よくわからん」というのが私の感想でした。なんのこっちゃ(^^;。


ざ・ぼん