『ミッションII』中垣慶
少年画報社ヒットコミックス1〜5/大都社復刻(少年キング連載。単行本1987〜1989)
1990年読
1998.4.19記

hyoushi  YoungKing別冊「OURS」で中垣慶が連載していた占いマンガ『お願いアルカナ』が、今発売されている号で最終回を迎えた。別にチェックしているわけではなくて、たまたま見ただけだったのだが、申し訳ないけど「まだ続いていたの?(@@;」が正直な感想だ。いや、もう、とっくに終わっているかと思っていたのだった。

 何しろ占いマンガである。マイナー(といっても胸張ってマイナーをやっているようなマニアック系というわけではなく、単に知名度が低いだけ)青年週刊誌の、さらに隔月(今は月刊かも(^^;)の別冊で、占いマンガだ。しかも超能力系で、イマイチよくわからん。最近絵がだんだん少女マンガしてきていて、一応サービスカット満載なものの(設定の都合上ヒロインは毎回脱ぐ)・・・、な、なんか・・・、初めて見た時には本当に「大丈夫か、中垣慶!?」と叫びたくなってしまった(^^;。私が大の占い嫌いということもあろうが・・・(--;。

 そもそもこれの元となった、通信ゼミの何年生だかで連載されていた『風使い・銀牙』は、私は実は結構好きだったりするのだ(^^;。うん。媒体が媒体だっただけに、枚数が制限されていて、非常に中途半端な印象はあるものの、なかなか小学生向けとしていい線を行っていたと思う。だがしかし、それを青年誌(の、しかも別冊で(笑))やるか〜(笑)。

 さて、漫画レビューの記念すべき1発目が、『ミッションII』である。なぜ唐突に『ミッションII』なのか(笑)。別に中垣慶がうちの高校の卒業生(10数年先輩(^^;)だからというわけではない(生ピンナップを見せてもらったんだけど、無茶苦茶美しかった(@@;)。純粋に私は『ミッションII』という作品が好きなのだ。そして、勿体無いとも思う。

 『ミッションII』は、どの作品よりも、「中垣慶的」だ、と言っていいと思う。伝説の名スタントマンの孫で、ジャッキー・チェンに憧れる小柄な中学生・成坂龍太がアクションスターを目指す物語である。舞台は神戸(中垣慶の居住地という以上の意味はない)。中学2年生の龍太のクラスに、幼なじみでランボー(スタローンじゃなくて(^^;)に憧れる、大男・国分雄介が転入してくる所から始まる。要するに凸凹コンビの学園物という仕様。Ryuta_Yusuke_Natsumi

 中垣慶という漫画家は女性である。この頃はアクションマンガで売っていた。生き生きとした、力強く、それでいてなぜか丸みのある線で描かれるアクションシーンは、男性作家顔負けである。たまにデッサンがおかしい所があっても、勢いで読ませてしまうだけの力があった。『ミッションII』は、スタントもの漫画ということで、その活劇シーンがふんだんに登場する。本当に画面のなかでキャラクターがゴムまりのように楽しそうに跳ねる姿が魅力的な漫画だ。

 5巻中4巻は龍太と雄介の中学生時代を描いている。これがもう、どうしようもなくクサイ(^^;。そこらへんが、最も中垣慶的たる所以でもあるんだけど、なんつーかもう、読んでいる間中、背中がむずがゆくて仕方がない。もうやってられんわ、と思ってしまうくらいクサイのだ。気障、というような洒落たクサさではない。なんというか、泥がついたというのは言い過ぎにしても、埃をかぶったクサさを感じさせる。こういうのは私はすごく好きなんだが、ウける路線ではないわな。とにかくさりげなさだとか、自然さという言葉とは無縁の学園生活が展開される。

 何しろヒロインとなる綿毛のように軽やかな上級生・志鷹夏生(したか・なつみ)は、ハリウッドの有名な監督の娘で、異人館に住んでおり、金髪で、演技の才能がばっちりで、なぜか合気道の達人、さらに催眠術まで使えてしまうのだ(私が見せてもらったキングが、ちょうど催眠術の号だったので、てっきり超能力者か何かかと思ってしまった(^^;。物語中で説明はされていないが、別にそういうものではないらしい)

 で、ストーリーの方も、突然アイドル映画のスタントマンを仰せつかったり(このアイドルが宿命のライバル臭い)、蟷螂拳使いのアメリカ人に襲われたりとまあ、まあ(笑)。でも3巻に収録されている、映研の映画(これも無茶苦茶クサイ内容(笑))に出演するあたりから、俄然面白くなってくる。雄介と龍太が、本格的に役者の道に挑みはじめるのだ。と言ってもいきなりデビューというわけではなく、龍太の祖父が開設した「神戸フィルムアカデミー」とかいう専門学校に、龍太・雄介・夏生共に通って、まずお勉強。スタントを並行してやっていたりするんだけれども、本格的にデビューするのは5巻からになる。

 ここにきて、それまでのクサ〜い学園ものが生きてくる。中学を卒業して、高校に行かずに役者の勉強に専念することを選んだ龍太が、まず手始めに子供向けのアクションドラマに出演して、メジャーデビューを果す。まあ、そんなに上手くいくかいな、と思いそうなものなんだけど、4巻続いた学園ものが、自然にそこに連れていってくれるので安心だ(笑)。

 とにかくこの5巻は無茶苦茶面白いのだ。子供のヒーローになりながら、でも自分が目指しているものとは違うと思って悩む龍太。で、勝手に角山映画(笑)のオーディションを受けて、悪役を演じて、役者としても認められるようになってくる。もう、この5巻目があるならどんなクサイ学園ものがあったって許せる!と思わせるほどいい内容。というか、それまでの4巻あってこその、5巻なんだよね。さあ、これからが本番!!

 といったところで、突然物語は幕を閉じてしまうのだ〜(;_;)。少年キング休刊。その後、どの雑誌にも引き取ってもらえずに・・・、未完。最終巻の発行日が、実際には存在しない日付――昭和64年1月15日となっている所も、憐れみを誘う(;_;)。

 ちなみに雄介は子供向けアクションドラマで共演した後、医師免許を持ったアクションスターを目指して(笑)高校へ進学。夏生ちゃんなどは、4巻のラストで渡米したきりだ(;_;)。あまりにも悲しすぎる! 嗚呼、勿体無い!!(i-i)

 いつか、再開することを祈りつつ・・・ないない(--;。


 探せばあるもの(^^;=>中垣慶承認ファンクラブ・神戸フィルムカンパニー

ざ・ぼん