『だからこそライターになって欲しい人のためのブックガイド』
田村章・中森明夫・山崎浩一/太田出版(1995)
1998.11.28読了・記

ざ・ぼんへ


 とまあ、これを見ても分かるとおり、メインで書いているのは「田村章」と いう"ライター"です。「はじめに」も「おわりに」もそうだし。

 ライター募集要綱、ブックガイドなどの実用的な所も面白いです。特に募集要綱などは、いつも自分が読んでいる雑誌(紹介されているのはサブカルチャー系が多い)の原稿料だとか、野次馬的に楽しみました(^^;。また、ブックガイドなどは3人がそれぞれ自分がこれぞと思う本を出して田村章がまとめるという書かれかたなので、それぞれの趣向が分かって読み甲斐があります。

 「はじめに」「おわりに」と2つの対談で語られているのは、「いったいライターって何だ?」というような内容であるような気がしました。「作評随ラ」という妙なヒエラルキーが厳然と存在する文字系メディアの中で、作品を売る「作家」に対して、商品を売る「ライター」という「職業」への三人三様のこだわりと意気込みが面白いです。性質上、脚注が多いのですが、これに脚注索引がついたら、ライター人名辞典・系図になるんじゃないかしら、もったいないと思ってしまいました(^^;。

 さてさて。対談の中でも「ライター」という職業のあいまいさというのが何度も言及されています。「ライター」という人は、「ライター」として大成し「自分の名前」が出て来るようになってしまうと、次の職業にうつってしまうことが多く、本当は違うステップへ進みたいが為の足掛かりというように見られることがままある。いつの間にか「ノンフィクション作家」や「ルポライター」になったり、あるいは「作家」になったり、大学や専門学校の先生になったりとか。山崎浩一はそういう状況の中で(当時)40代にして「雑誌ライター」で有り続ける人物として中森明夫対談で語られています。

 この本のメインのライターであるところの「田村章」は数種類のペンネームを使い、「女性自身」でシリーズ連載を持っていたり、野島伸司のドラマのノベライズを書いていたり、タレントのゴーストライターをやっていたり(『噂の真相』10月号?によると、浅野ゆうこの本も彼の手によるものだそーで)という単行本仕事が中心のいわゆる「売れっ子ライター」な方なんですが、本名でこつこつ書いていた小説がやっと最近売れ始めまして、その名が「重松清」なのだそうです(典拠同上)。

 と思って読むと、面白いです(*'▽'*)。そういう動機でこういう本を読むのは邪道と言うか、外道という気がしますが、まだ重松清が作家としての「名」が売れ始める直前の、『見張り塔から ずっと』が山本周五郎賞候補になるちょっと前に書かれた本です。言っている内容は、"ライターで作家の重松清さん(34)"名義で『AERA』に書いてもと寸分かわらないのですが、色々とおっかけらしく野次馬的に楽しむことができました<コラコラ。
#でも、やっぱり、「ダ・カーポ('98.2.4)」で「重松清」が自分で言っていたように、どこまで行っても「ライター」が本業であり続けそうな人……ではあるなあ。

 こういう邪道な興味を持っていない人でも充分楽しめますし、結構ブックガイドなども役立つと思いますので、見掛ければ手にとってください。私が買ったのは初刷ですが(意識したわけではありません。今気付いた)、書店では'97年二刷の本と一緒に並んでいました。売れてるの、これ……?(^^;
#装丁が太田出版の雑誌っぽいので、1359+税には割高感がありますが(^^;。


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