海賊物と聞いて、活劇物を想像してしまったのですが、"剣客物"というよりは"時代物"というような感じでした。当時の海賊やイギリスの商館の生活や風習の描写に重きを置いており、血沸き肉躍るようなものではありません。船同士の戦いもありますが、策略とハッタリの戦いといった感じです。派手な活劇的なところを抑えた分、迫力不足ではありますが、非常に人間味あふれるお話でした。ナンバー2となる男爵<バロン>の謎、したたかな商人と海賊、烏合の衆でありながら結束する船員たちなど、様々な人と、モアの邂逅を描いた、まさに『海賊モア船長の遍歴』というそのまんまな内容。
楽しかったのですが、今一つのめり込めなかったのは、どうも私がヨーロッパ中世史に心が動かされないという所だったかと。佐藤亜紀でも『1802』は(中世なのでしょうか? ホント、世界史知識皆無なので)そこらへんのことがネックになって上の空で読んでいたり、かなり損をしていると思うのですが……。うーん。でも、この時代が好きな方にはいいかもしれません<うーん、無責任な言い方だなあ……。