めぐみのにっき
西暦弐千年
三月二十六日(日曜日)四月二日(日曜日)まで
「歌」と内容は必ずしも関連していません(笑)
3月27日
春色の さまざまなりし 花や木々
芽吹きて咲くも 咲きて芽吹くも
ちょっと用があって不動産屋さんへ寄る。
新しい生活を始める人々で
カウンターはごった返していた。
今住んでいる部屋は
ちょっとした御縁があって
一人暮らしを始める時に、いっぱつで決めた
お気に入りの部屋だったりする。
でもマンションでもコーポでもメゾンでさえない。
手入れは行き届いているのだけれど
建って15年は悠に越す
「木造モルタル2階建て、鉄の外階段」
っていうお洒落とは程遠い、まさに「アパート」だ。
でも私はこの部屋が大好きだ。
南の窓は1間半(約270cm)の幅があって
でも西陽を遮る場所に欅の古木があり
夏は葉を繁らせ、冬は葉を落とす。
北にある玄関を出ると
目の前に桜の樹の枝が張り出していて、
今の季節は花芽が膨らんでゆくのを楽しめ
そして舞う花びらを俯瞰する贅沢が味わえる。
敷地には桃や金木犀や
その他たくさんの花の咲く木々があり
塀沿いには笹が程よい茂みを造っていて
四季の花々の咲く花壇がある。
今日、私は猫といっしょに
この部屋へ戻って来た。
ほっとらかしにしていたプランターに
ちっちゃな黄色いビオラが咲いている。
去年の苗が自分で育っていたんだね。
今日から猫と私は、この部屋で暮らす。
いつまでこの暮らしを続けるのかは
まだちょっと判らないけれど。
御無沙汰致しました。
11月1日に生活の拠点を実家に移して
早いもので5ヶ月が過ぎていました。
私は何度かこの部屋に戻っていましたが
猫は五ヶ月ぶりに戻った部屋に、まだ戸惑い気味だったりもします。
色々考えて
色々相談もして
祖母を見送った事を期に
もう一度実家から離れて暮らす事にしました。
まだ色々あるので
サイトの運営は不定期になるかとは思いますが
何卒宜しくお願い致します。
またネット不在中ではありましたが
「せっけん王国」は20万ページビューを迎える事が出来ました。
この拙いサイト、そして日記をご覧頂き
ほんとうにありがとうございます。
心からの感謝を込めて。
3月28日
春雷や 朽葉流し 若芽打つ
桜花咲く日々 避くは情けや
春の嵐が吹く。
駅から歩くアスファルトの道は
川のように雨が流れて
風に追い出された、隠れていた朽葉が
くるくるまわりながら
側溝へと消えてゆく。
斜めにさした傘の中で
肩をすぼめて、足元だけを見つめて歩いても
雨は私に降りかかる。
昨日と同じように
花々は咲いているはずなのだけれど
今日の私に愛でる事は出来ない。
びっしょり濡れてしまった私は
階段を昇って
玄関の扉に手を伸ばす。
花芽の膨らんだ桜の枝が
玄関を開けた灯りに浮き立つ。
今日の嵐が
今日だった事を
ちょっと「ありがとう」って思って
眠る事にした。
3月30日
紅色の 涙の壷や その花の
「エリカ」と言う名 知らず愛でしも
お花屋さんで
久しぶりに切り花を買う。
うちの猫は花が好きだ。
と言っても、美しさを愛でてくれるのではなくて
ぱくぱく食べてしまう。
花びらの大きな花が特に好きで
薔薇や蘭はもちろん三色すみれなんかも
あっという間に食われていたりした。
身体にも悪そうな気がして
私はテーブルの上やベッドサイドにお花を飾るのはあきらめて
ベランダや窓の外のプランターに草花を植えたり
鉢植えも絶対に猫が登れない場所にほんの少し飾っていた。
お花屋さんの前に
ちょっと赤みのかかった桃色の壷の形をした
小さな花の寄り添う枝が飾られている。
それはE・ブロンテの「荒ヶ丘」に登場するヒース・クリフの
やり場のない感情に理解は出来ないのだけれど、
何故か魅せられしまった幼い日を思い出す。
その花がいっぱいに生い茂った荒れ野に思いを馳せ
その花を見るだけで
胸がいっぱいになったりもした。
「ヒース」としてその花の名前を、私は憶えた。
そして吉田秋生さんのコミックス
「カリフォルニア物語」の主人公の名前としても、胸に強く残り
「ヒース」は花言葉の「孤独」と共に
春の美しい花でありながら
「寂しさ」と共に想いの中にあったりした。
その見なれた花は「エリカ」として売られていた。
鑑賞用として育てられた花は
ちょっと弱っちい感じがしたのだけれど
久しぶりに私はその花を手に取ってみた。
猫は少し香りを確かめていたけれど
小さな花を食べる気はないようだ。
枕元の花瓶に咲く「ヒース」の色と比べながら
私は明日のルージュを選んでみる。
私の唇の色が
「ヒース」の色と同じだとは
誰も気付きはしないのだけれど。
4月1日
色深く 影を落とせし 桜木の
先駆く花や 淡きその色
カーテンを開けると
思いがけない強い陽射しが差し込んで来て
私は驚く。
カレンダーは4月1日。
春は来ているのだけれど
開いた窓から吹き込む風は
ちょっと強くて冷たい。
そして霞もかかっていない空は高くて
鳶が舞っていたりした。
私の部屋のドアを開けると
桜の木がある。
朝日の中でも
地に伸びる影は、はっきりしていて
その影を避けて
おとなりのお家の犬のジョンくんが
ぽかぽかした光の中で眠っている。
東南の方向に伸びた枝に
桜の花が開いているのが見える。
アパートの陰になっている枝々の花芽は
まだ少し固いのだけれど。
今日咲いた桜の花も
枝々の花達が、揃って満開になるまで
散らずにいられるといいなぁなんて
ちょっと思ったりしながら
私は駅に向った。
4月2日
あの日から 歩みし道や つづれ折り
されど残りし 日々の想いや
入社式の日、私は頬を染めて
その場所に座っていた。
運良く就けた仕事は
やり甲斐があると思ったし
自分なりに懸命に調べて選んだ仕事だった。
けっこう大きな会場で行われた式は
華やいだ雰囲気だったのだけれど
余り堅苦しくはなくて
壇上には沢山のお花以外には
マイクが一本ポツンと立っているだけで
社長をはじめ役員様たちも会場の
新入社員の私達と同じフロアの両面に
並んでおられたのが好ましい印象として今でも残っている。
仕事を始めてからは嫌な事もあった。
理不尽だと思う事もあったし
自分の力が至らなくて
悔しくてしかたない事もあった。
最初見えなかった会社や上司や先輩達、
そして同僚たちの様々な面も少しづつ見えて来て
腹が立ったり、悲しかったり、そして苦しかったりもした。
思わぬ成功にそれまでの謙虚さを無くしてしまい
自分が見えなくなってしまった人や
嘘に嘘を重ねて作り上げた自分を持て余し
そして壊れてしまった人もいた。
私自身もそんな時期があったのだけれど
ありがたい事にそれを諭してくれる
隣人に恵まれていた。
壊れた時に無条件に受け入れてくれる存在は
確かに必要かも知れない。
でも私の事なんて、どうでもいいからこそ言える甘言に
何度もすがろうとしかけた時もあった。
あの日から随分時は流れてしまったけれど
それぞれの日々が今の私に繋がっている。
当たり前だけど
まだまだ納得できる自分に成れてはいない。
でも毎日少しづつ私は私を知ってゆく。
何年か後の自分に、残せる今日である事が
今出来るすべてのような気がして
いたりもするのだけれど。
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