西暦弐千年
四月二十四日(月曜日)四月三十日(日曜日)まで


「歌」と内容は必ずしも関連していません(笑)

4月24日
振り向くは あの日のきみと 似たれども
見知らぬ笑みに 月日数えて


黄色い縁取りのある
赤いチューリップが咲いている。

朝靄がゆっくりと消えて
街には暖かい光が満ちてゆく。

本通りに曲がる手前の塀の上に
今日は「西沢のおばさん」と呼ばれる猫がいる。

最初に出会った頃は
ひょいと塀に登ったり
私を見つけると、またひょいと塀を降りて
とことこ走って来て
背中を高くして
足に擦り付けたりしてくれていた。

それは冬の日にだって
陽射しさえあれば
馴染んだ私の朝の風景だった。

この前の秋、
角のお家にあるもみじが色付いた頃からは
ほとんど出会うことはなくなって
いつも眠っていた段ボール箱も
玄関先からは無くなってしまっていた。

最初はちょっと心配したのだけれど
通りに面した窓越しに
なんどか姿を見る事が出来て
胸を撫で下ろして冬を過ごした。

喉を撫でてやると目を細めて
ごろごろ言っている。

でも座り込んでいて
前みたいに伸び上がる事はない。

ぷりっとした固太りだった身体は
見ただけでは冬毛に隠れてあまり判らないのだけれど
なんだかちょっと撫で心地が違っている。

「さぁ、そろそろお家に入りましょうね」
玄関から飼い主の奥さんが出て来て猫に声を掛け
私にも軽く目礼してくれる。

ひょいと抱かれた猫は
何度か私を振返って
お家の中へと入っていった。

ドアが閉まったあとに
いつもその猫が自由に出入りしていた
猫の扉がからからと音を立てていた。


4月26日
その色は 融けしや雨と 夕闇に
寄りべ無きしも のびし藤花


蝶の形に開いている花はまだ少ない。

伸び出した房の色はまだ淡くて
雨の闇に融けている。

藤の花の色が好きだった。


青でもなくて紫でもなく、
それでいて淡いのだけれど、凛としたその色は
「藤色」と呼ぶべき色だった。

私は着物がとても好きだ。
今でも着物で出掛けることは多いのだけれど
でもほとんどの着物は、祖母や母が見たててくれたものだった。

ある日小物を買いに寄った松屋で
その着物に出会った。
付け下げに季節の花をあしらい
まさに藤色の着物だった。

私はその着物に惹かれて
ちょっと無理をしてそれを手に入れた。

少し地味な気もしたのだけれど
私はお茶会へも、その着物で何度も行き
部屋の壁に架けて
飽きもせずに眺めていた。

今の仕事を始める時に
前から欲しがっていた知人へ
その着物を譲った。

今のアパートの近所にある藤の花は
藤棚ではなくて、なんだか雑多に咲いている。

でも花の色はあの着物とおんなじで
その色が好きな私もここにいる。



藤の花画像
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4月28日
手をつなぐ 光の日々も 闇の日も
繋ぎし指に 傷や負いしも


紀ノ国屋を過ぎて坂を下り
青山墓地へ向う。

その日知る辺の人のお墓にお参りするために
私は父と歩いていた。
私はまだ高校の制服を着ていた。

桜は葉を伸ばし
道端の植え込みには
つつじの花が少しだけ咲いている。

ふと見ると道の右側にあるビルに
沢山の人が並んでいた。

「なんだろうね?」
と二人で顔を見合わせた時に
「**ちゃんじゃない!?」
と声を掛けられた。

それはミラノにも一緒に仕事に行ったことのある
宝石デザイナーのおねぇさんだった。
見上げるビルには「ヴァンドームヤマダ」と書いてある。

「ファミリーセールやってるから寄っていきなよ」

その日私は父に細い型貫きの金の指輪を買ってもらった。
初めての金の指輪だった。

とてもお気に入りだったし
他にはシルバーしか持っていなかったので
いついつも大切に使っていた。

でも、今のお仕事を始めてから
なんとなくその指輪をする事が出来なくなっていた。

今日何気無しに覗いたショップで
その指輪と対になる指輪を見つけた。

勿論ほんとに対に成る訳ではないのだけれど
なんだか引き寄せられるように買って来てしまった。

久しぶりに取り出してみた指輪は
くもっていたし、たくさん傷がついてる。

二つの指輪は一緒につけても
可愛い気がする。

今はなんだかちょっと馴染まないけれど
いっぱいの時を過ごせば
ずっと一緒にいたように見えるかも知れない。



ふたつの指輪の画像
(ちょっと画像悪いけど)
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いんでっくす



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