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プラスティックについて
07/03/21

道長では漬物を封入するため、合成樹脂の袋を使っています。合成樹脂(プラスティック)といっても種類はたくさんあり、用途に応じて材質も決まっているようです。道長で使っている袋には2種類の合成樹脂、ナイロンとポリエチレンが使われています。保存性をよくするため、真空包装をして加熱殺菌をするのに適した通称でトリプルナイロンなどと呼ばれたりする素材です。

ナイロンは耐熱性が高く、引っ張りや衝撃に強い性質があるものの、水分を通しやすいという性質がある。さらに袋を密封するために熱シールしようとすると融着しにくいという欠点があります。それらの欠点をカバーするためポリエチレン(低密度)のシートをその内側に使用します。低密度ポリエチレンは伸縮性があり、水分を通しにくく、比較的低温で融着します。ちなみに『高密度ポリエチレン(PE−HD)』は伸縮性は少なく、不透明でレジ袋などに使われています。

ここでナイロンとポリエチレン、二種類のシートを貼り合わせる必要があるわけです。そのための接着剤代わりに内側のポリエチレンシートより融点の低いポリエチレンを融けた状態で付着させ、そこにポリエチレンシートを貼り付けるのだそうです。

トリプルナイロンの材質を略称で表示すると『PE/PA』ということになります。PE、PAはそれぞれポリエチレンとナイロンを表す記号です。でも厳密に言うと実際は『PE/PE/PA』となるわけです。さらにこの場合のポリエチレンは低密度ですからそれを表すためには『L−LDPE/L−LDPE/PA』という表示が正しいということだそうです。しかしながら、この場合のポリエチレンは低密度に決まっていますから、ただ『PE』と表記しているそうです。

表記の順序
明確な表記方法は決まっていないようですが、使われている材質の多い順が一般的。そして多く使用されている材料の記号に下線を示すことが多い(PE/PAのように)。

また袋の内側に使われるのは主にポリエチレンと決まっています。それは水や薬品に耐性がすぐれている。添加物が少なくても加工しやすいなどの性質があるため。

環境ホルモンの心配
プラスティックを食品に利用する場合に問題となるのが環境ホルモンです。それを含めてプラスティック素材の安全性を確認するために『溶出試験』をすることになっていて、メーカーに要求すればそのデータを開示してもらうことができます。このテストはメーカーの自主的なもので、公的に認められた機関に依頼して行っています。標準的なテストとしては、重金属類、フタル酸エステルやビスフェノールAなどの化学物質の検出、有機物による汚染についてなどが行われているようです。

溶出試験につかわれる試薬としてはノルマルへプタン、アルコール、酢酸、過マンガン酸カリウムなど。それらの定量の濃度のn−ヘプタン、アルコールなどの溶剤に規程の温度・時間浸すことでプラスティックに使われている可塑剤などの添加物や重金属などを溶出させ、溶剤を蒸発させたあとに残留する物質名と量を特定します。

過マンガン酸カリウムは再生プラスティックに含まれる有機物を検出するために使われます。過マンガン酸カリウムは有機物と反応して消費されますから、その消費量を調べることでプラスティックの汚染を調べます。再生プラスティックの使用の有無を判定できます。

溶出検査に使われる溶剤や検出濃度の許容値は、プラスティックの素材によって違いがあるようです。またメーカーの段階では、それ以前の素材メーカーでの原材料まで把握できていない場合もあるようです。またその原材料について、機密とされていたりして曖昧となってしまっている場合もあるようです。

食品用では検査による添加物の把握ができますが、そのほかの用途のプラスティックではその表示だけがたよりとなってしまいます。ここでは取り上げませんでしたが、添加物としての抗菌剤の問題もあります。

プラスティックとは便利な反面、ダイオキシン、環境ホルモンなどの化学物質の心配が付きまとってしまうという厄介な素材というほかありません。

必要悪というのがプラスティックにあてはまる言葉です。

表記についてはメーカーによりちがう場合があります

商品には『プラマーク』のみの表示をしている場合もあります。


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『つけ太郎ぬか』でぬか漬いろいろ
07/04/05


使い始めたときから、おいしいぬか漬が楽しめると評判の『つけ太郎ぬか』。今回はそのいろいろな使い方をご紹介します。

その1:
まずオーソドックスに野菜のぬか漬をどうぞ。
春の野菜:
春キャベツ:あらかじめ食べやすい大きさに切っておき、海水ほどの塩水で下漬けしたあとでぬか漬
セロリ
アスパラガス:
やはり下漬けしてからぬか漬
たけのこ:皮をむき、縦割りにして塩水で下漬けしたあとでぬか漬

ポイント‐下漬けすることで素材はほかの味になじみやすくなります。さらにぬか床に余分な水分を移しません

その2:魚のぬか漬
魚も野菜とおなじであらかじめ塩漬けしたいところですが、手間がかかるのと、鮮度を落としてしまうことになるため、あらかじめ汐にしてあるものを選びます。一汐のさば、さわら、サケなどを使います。フィレか切身にしたものを3ミリくらいの厚さにぬかみそで包み、ラップで包んで冷蔵保存。これで1〜3日寝かせ、ぬかをつけたままホイル焼き。とってもおいしい。たらこ、明太子などでもいけます。

その3:肉のぬか漬
トンカツ用の豚肉に塩コショウをしておき、2時間ほど経ってから魚のぬか漬の要領で冷蔵保存。1〜3日寝かせてぬかをつけたままホイル焼きかフライパンで焼きます。調味料は加えません。もちろん鶏肉でもOK。ぬか漬にするとおいしくなるばかりか、とっても柔らかになり、さらに脂っこさが抜けしつこくない味になります。

調理のポイント:
魚や肉をぬか漬する場合、使ったぬかみそは野菜の漬け床には戻さないようにします。ぬかみそも魚や肉と一緒に焼いて食べてしまいます。これが不思議にも香ばしい風味でおいしく食べられます。

米ぬかを食べるのは健康にはとってもプラスになりますが、生の米ぬかは食べにくいものです。魚や肉といっしょに焼いてしまえばまったく違和感がありません。ぜひお試しください。

(余談です)
ぬか漬とビタミンB群
お米を白米で食べるとどうしても失われてしまう栄養素があります。それがビタミンB。江戸時代の江戸では銀シャリを食べるのが『粋』、贅沢とされました。その結果はやったのが『脚気』という病気。ビタミンB群Eなどが不足すると、血液の浄化が妨げられたり新陳代謝のはたらきを鈍くします。この症状は日本人が白米食に転じてから延々と長引く結果となり、明治末期まで解明されないままだったそうです。

脚気の原因が白米にあったという事実の解明は、現東京大学教授鈴木梅太郎のビタミンB1(オリザニン)発見までなされることがなかった。1910年、鈴木は米ぬかに含まれている重要な栄養素アベリ酸(後にオリザニンと命名)を発見、さらに抽出することに成功し、それが脚気の治療に大きく貢献したといわれています。

お米を玄米で食べない食生活では、ぜひともぬか漬を食卓に供えてください。そうすることで、玄米食と似た効果がえられます(ほんとは玄米に含まれる食物繊維も重要)。

本来の日本人の健康は古くは縄文の時代から江戸時代まで、玄米食をいただくことによって維持されてきたわけです。それが白米文化に変わっただけでくずされてしまった。さらには太平洋戦争以後、欧米の食習慣が取り入れられたことでさらにおかしくなってしまっています。

私たちは日本食に目を向け、さらに玄米の重要性を知る必要があります。その解決策としてぬか漬という方法があり、それは日本人が生活のなかから生み出した画期的な健康食品というわけです。

ぬか漬には日本人の知恵が詰まっています。ぬか漬を見直そう


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遺伝子組み換え食品の表示
07/04/15


現在日本で食品として安全性が確認されている遺伝子組み換え(GM)作物は、昨年8月現在で、ジャガイモ、大豆、てんさい、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、アルファルファの8品目。そして品種では76だそうです。アルファルファといえば動物の飼料くらいにしか連想されませんが、発芽して間もない幼苗をサラダにしたり、サプリメントなどに加工利用しています。
さすがに日本では、まだ商業栽培こそされていませんが、世界でGM作物を5万ha以上栽培している国は22カ国。多い順には米国、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、インド、中国で、そのうち1千万ha以上を作付しているのはその上位3国。

そんな状況の中、消費者からの要求から・・ならいいのですが、EUに習えというわけで、平成13年(2001)からGM食品に対する表示の義務化を実施しています。これは厚生労働省による食品衛生法の改正というかたちで行われていますが、その目的の曖昧さからか、単なる建前論からか、正しく厳正な表示がなされているとは言いがたいというのが現状です。

現在のGM食品表示制度には、次のような改正されるべき点が挙げられます。
GM食品の表示義務は、原材料一括表示欄に記載される項目のうちで多い順から3番目までとする
以上のうちで、原材料のGM混入率が5%未満であれば表示をしなくてもよい
発酵や熱処理などで組み換え遺伝子が分解・破壊され、検出不能になる場合には、GM表示をしなくてよい
家畜やペットのえさにはGM表示の義務がない

いくらGMの表示義務があるからといっても、以上のような逃げ道のおかげで、多くの企業ではその加工食品が遺伝子組み換え作物を使用しているのかいないのか、その真偽を消費者に明かさないままにすることができてしまう。要するに『わからない』ですまされてしまう。

消費者というものは、たとえば米国などでは、GM食品についての表示については『実質的同等』であれば義務付けられてはいません。だからといっては何でしょうが、EUの動向を見つつ、米国での甘さに準じているといった感じでしょうか。

EUでのGM混入率の許容値
日本では輸入作物が分別生産流通管理(IPハンドリング:生産から流通まで、他の荷物と分別して取り扱うこと)された荷物であっても、そのGM混入率が5%以下ならば組み換えの表示をしなくてもよいことになっています。ちなみにEUでは0.9%という厳しさです。もっとも、この5%というのは極端に甘い値です。たとえば濃度5%の塩水を連想してみてもわかりますが、はっきりいって辛くて飲めません(海水濃度でさえ3.4%ほど)。これは相当な濃さの濃度です。

GMはもちろん、食品添加物などについてもそうですが、もっとも大きな問題はなんといってもその安全性についてです。いったいどこの主婦が自分の家族の健康を祈って、お昼のおべんとうに食品添加物をいれるでしょうか。またどこの農家が、自分が健康障害を起こしてまで農薬散布をしたり、昆虫が食べると死んでしまうようなトウモロコシやじゃがいもを自分の家族のために生産するでしょうか。

いうまでもなく『食』とは『おいしい』以前にまず『安全』でなければなりません。なぜなら私たちはグルメや食欲を満たすためではなく、毎日を健康に生きるために『食』するからです。
メーカー、生産者としての義務とはなんでしょう。それはまず、健康を求める消費者から信頼を裏切らないものを生産すること。

現在のGM食品表示制度には、あまりにも大きな抜け道がありすぎます。これをザル法と言わずして何あろう。厳格な制度の確立が望まれるところです。

GM作物の作付は世界中を覆うかのように思われますが、意外にもごく一部の農業大国に限られている。今後心配なのは中国の動向


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天然酵母とイースト
07/04/24


道長では最近、岡崎市のかりんとうメーカーにお願いして、地元の小麦粉を使った『かりんとう』の試作をしました。できばえは上々で材料にしっかりこだわって、商品にしたいと思っています。

それはともかく、かりんとうもパンと同様、生地を油で揚げる前に発酵の作業があります。その際に使われるのが酵母菌(イースト)ですが、それを天然酵母にするかイーストにするかという初歩的な選択がまずあります。もちろん『イースト』とは『酵母菌』という意味ですが、通常世間的には『イースト』は単一的な酵母菌を工業的に、合理的に生産するのに対し、『天然酵母』は単一的な菌には違いありませんが、天然に存在する酵母菌であり、人為的な改良や遺伝子の操作が行われていないという条件がまず付きます。さらに『天然酵母』は化学的でなく有機的な培地で培養される点が大きな違いです。

さらに『イースト』には乳化剤や保存料などの添加物が使われることが多いのに対し、『天然酵母』の場合には食品添加物は使われません。

どちらも『酵母菌』なのに
天然酵母もイーストも、どちらも酵母菌であるにはちがいありません。しかしながらたとえば工業的にパンなどを生産する場合、経済的で扱いの楽なイーストを使うであろうし、さらに発酵を促進させるため、イーストフードと呼ばれる化学的な食品添加物が併用されるのが常識です。

それに対し天然酵母は、経済性や生産性よりも風味や安全性を追求する結果の選択肢ということで、製品作りに際して、すべてのほかの原材料にも当然厳選吟味がなされるわけです。

発酵技術と遺伝子組み換え
現在、安全性審査の承認を得た遺伝子組み換え作物は、ジャガイモ、大豆、てんさい、とうもろこし、なたね、わた、アルファルファの8品目77品種。そして『添加物』と称する6種、14品目(07年4月現在)。これらは食品や薬品を製造する際、発酵などを促進させるための酵素などを工業的に大量に生産するため、それに関与する微生物を遺伝子組み換え技術により作り出そうというもの。

この技術はたとえばチーズを作る過程で応用されているようです。発酵促進のための『キモシン』という酵素を組み換え微生物で大量生産しようというものですが、この場合、そのチーズの一括表示欄には『遺伝子組み換え』という文言は表示されません。その理由としては、結果として組み換え遺伝子の痕跡が残らないからということになっています。

『キモシン』ややはり遺伝子組み換え微生物による『リパーゼ』(食用油脂の加工助剤)なども、その安全性が確認されていて、消費者の態度如何で日本の食品メーカーでも使われるようになるかもしれません。

これは簡単な理屈です
まったく単純な道理ですが、将来『イースト』にも遺伝子組み換えが行われる可能性は十分あります。しかし、天然酵母にはそれはあり得ません。この簡単な理屈でわかるとおり、『天然酵母』と『イースト』とでは、たとえそれがおなじ『酵母菌』と訳されるとしても、そのコンセプトには180度の違いがあることがわかります。つまり、それをいったい誰のために使うのか、ということなのです。その製品を買っていただき、さらに食べていただく『消費者』のためにそれを使うのか、はたまた、生産する自分の会社の経済性、合理性のために使うのかということ。前者には『安全でおいしい』、後者には『大量生産ができて儲かる』というそれぞれの明確な目的があるわけです。でもこの両者にはとんでもない相違がある。

他にもたくさん
このほかにも、たくさんの同類項があります。保存料、酸化防止剤、色素、化学調味料、アミノ酸などの各種発酵調味料、芳香剤、消泡剤、増粘剤・・・。

『天然酵母』も『イースト』もどちらも大差の無い酵母菌、という論理の危険性はそれ自体の安全性の是非よりも、それを利用するメーカーの安全性への姿勢自体に疑問符が投げかけられることになるわけです。

以上両者は決して等号で結ばれることはないわけです。
塩化アンモニウム
塩化マグネシウム
グルコン酸カリウム
グルコン酸ナトリウム
炭酸アンモニウム
炭酸カリウム(無水)
炭酸カルシウム
硫酸アンモニウム
硫酸カルシウム
硫酸マグネシウム
リン酸三カルシウム
リン酸水素二アンモニウム
リン酸二水素アンモニウム
リン酸一水素カルシウム
リン酸二水素カルシウム
イーストフードとして認められている添加物


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遺伝子組み換え添加物
07/04/29



 現在日本で承認されている遺伝子組み換え(GM)食品は農作物が7種類(77品種)、添加物が6種類(14品目)ということになっています。GM農作物については私たちにも馴染みのあるものがほとんどですが、添加物となるとなにかわけのわからない感じのものばかりです。

遺伝子組み換え添加物
 現在(07年4月)承認されているのは、αーアミラーゼ、キモシン、プルラナーゼ、リパーゼ、リボフラビン、グルコアミラーゼというもの。

αアミラーゼ
デンプンを糖に分解する酵素。オリゴ糖やデキストリンなどの液糖、パンなどの製造に利用されます。

キモシン
レンネットなどとも呼ばれるたんぱく質分解酵素で、チーズの製造に利用される。ただし子牛の胃からしか取り出されれないため長年貴重品とされていましたが、カビの一種から生産されるようになっている。そして、GMキモシンはGM酵母が由来のようです。

プルラナーゼ
デンプンを糖化する酵素で、これもGM酵母が由来しているようです。清酒などアルコールの製造にも利用できる。

リパーゼ
脂質のエステル結合を加水分解する酵素とのことですが意味がわかりません。これもGM酵母由来のようです。乳化剤などに利用されるようです。

リボフラビン
別名ビタミンB2とも呼ばれる。黄色系の着色料として利用されます。ただし栄養強化の目的で利用される場合には物質名の表示義務はありません。枯草菌(納豆菌もその一種)由来。堆肥の発酵には欠かせないのが枯草菌だそうです。

グルコアミラーゼ
デンプンを糖化するはたらきのある酵素。GM酵母が由来。アルコールの製造に使われるようです。
いずれも現在GM酵母などを利用して、大量に製造できるようになってきているそうです。とはいえ、これらの添加物について『遺伝子組み換え』という表示の義務はありません。結果として、由来となっているGM微生物の痕跡が残らないことになっているというのがその理由です。

GM農作物とのちがい
GM微生物の特徴はといえば、いうまでもなく『目に見えない』という点です。また農作物が野外で人の目に付く場所で栽培されるのに対し、GM微生物は企業の工場のような『密室』の中で応用される点が、さらにGM添加物にグレーな印象を与えています。生きたままのGM微生物が環境に放出されてしまったとしても、第三者にはわかりません。

厚生労働省に聞いてみました
GM微生物由来の添加物が、現在日本で利用されているかどうか、また、日本でGM微生物が工業的に応用されているのかどうかについて、厚生労働省に聞いてみました。その『問い』に対し、厚労省の回答は『わかりません』でした。安全性の認可はしたが、その後のことについては把握をしていない。

そこで、雪印乳業に聞いてみました。回答は『使っていない』とのこと。ぼくとしては『ああ、そうですか』だけです。
現代でいう『発酵技術』とはもう発酵ではなくて、酵素による分解であり、製造工程によっては酵母菌の存在がなくても可能ということ。結果的に糖やアルコール、みそや漬物ができればよいという、合理性と経済性のみの追求ということです。そこには消費者には知らされない灰色な部分が多すぎる。

メーカーによる経済性や効率性だけを追求する姿勢は、本来食品の製造ではあたりまえの基本さえ二の次にしてしまうということにもなりかねません。多くの多国籍バイテク企業のなかには、安全性よりも経済性を優先しているとしか思えないものもあります。

GM農作物を環境の中で拡散防止の措置なしで栽培する場合は、農水省・環境省の大臣の認証を受ける必要がありますが(第一種使用等)、実験室や工場のような閉鎖された施設内で使用する場合(第二種使用等)、外の環境に出ることのないような措置をとる義務がある、ということになっています。

しかしながら、密室でしかも秘密主義で行われる企業でのGM微生物の利用が、正当な設備で安全に行われるという保証があるというわけでもありません。知らぬ間に起こりうる環境でのGM汚染を考えると、何か空恐ろしいものを感じてしまいます。

わたしたち市民の知らないところでGM技術が使われ、表示義務のないまま市場に出回り、私たちの食卓に並んでいても私たちにはわからないという現実も考えられてしまいます。

現在のような不完全なGM表示制度の下では、わたしたちの『GM食品はいらない』という明確な意思表示をし続けることが、メーカーなどの消費者をあざむくような心ない行為を食い止める最低限の方法なのかもしれません。


116 月の沙漠
07/09/17


子供のころからこの唱歌を聴いたり歌ったりするとき、月光にかがやく砂漠と二頭のラクダというただただ幻想的というか寂しげな光景だけが浮かぶばかりで、なぜかそれ以上のものを何もイメージすることができませんでした。

この詩は静岡県の焼津市に隣接する藤枝市生まれ(1897〜1977)加藤まさをの作品。竹久夢二とならぶ大正から昭和にかけての叙情的なイラスト画家ですが、少女雑誌などに多くの詩も載せています。『月の沙漠』は1923年発表。

この曲名を見て気付くのは『砂漠』ではなくて『沙漠』と表記している点です。この『沙』という文字はもちろん砂を意味しますが、水辺の砂を意味します。つまりこの曲名が指すのは砂浜だそうです。

千葉県の外房、網代湾に面する御宿町がこの詩の舞台だといわれています。この地は関東から意外に近く、海もきれいなところ。別荘やリゾートで有名なところ。

『月の沙漠』が発表された年、加藤は20代半ばでしたがけっこう売れっ子だったようです。でもこのころなんと彼は結核の病に陥ってしまっていた。だから御宿町に療養のため、滞在していたのだろう。そこで作られたのが『月の沙漠』。
この詩で気づくのはふたつというか『二』という数『対』。一番では二頭のラクダと金と銀の鞍。二番では銀と金の瓶。三番ではさきとあと、王子様とお姫様。そして三番で目立つのがおそろいの『白い上着』。これって死に装束ではないかしら。

幸運にも彼は結核という病魔から逃れることができましたが、もしかして療養先の御宿の夜の浜辺で夢うつつのうちにめぐらせた思いとは、死ぬかもしれないという恐れであったのかもしれない。だからこの『ふたつ』という言葉は『生と死』という相反するふたつに結びついている。ふたつにひとつ。生か死か。
当時結核という病の暗示するものは『死』であったことは間違いありません。ほかにも滝廉太郎、森鴎外や石川啄木、宮沢賢治、そして竹久夢二も結核で死んでいます。現代ではそれが原因で死ぬことはほとんどありません。ぼくの母もそのおかげで生死の境を行き来しました。ぼくも発病まで至りませんでしたが感染した痕跡が今もあります。

音楽家、詩人、文学者、画家など、その多くの作品に暗く、死をも暗示するものが多いのは、現代と比べて病や戦争など、常に死が身近にあったからかもしれません。また自己というフィルターを通してそれらの観念的行為を行うとき、『死』とは避けて通ることのできない命題でもあるわけです。それを考えると、いつも死と隣り合わせの当時のほうが芸術の創造活動のためには、現代よりよほどよい環境であったのかもしれません。まったく皮肉です。



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塩だけ白菜と完全天日塩
07/09/17


国産の完全天日塩だけで漬け込む『白菜漬』。本来の漬物の風味を追求しました。近日発売。本来の漬物に回帰したい、という気持ちを込めた『白菜漬』です。よろしくお願いします。

本来の塩とは
『塩は味を引き出す道具』とむかしから言われてきました。でも昨今ではその意味すら忘れ去られてしまっているといっても過言ではありません。

化学調味料と呼ばれるまことに便利なものが発明される以前、塩はまことにていねいに作られていました。日本の各地に製塩所があり、その地方で伝わってきた独特の方法で塩が作られていました。

採掘法
太古に海水が干上がってできた岩塩を採掘し、そのまま利用するか、不純物が多い場合は一旦水に溶かし、釜などで加熱蒸発させて作る。

揚浜式製塩法
この方法はかなり重労働ですが簡単な設備でできるため、江戸時代など、農家の収入源として行われたようです。まず海水を桶で汲んでくる。砂に海水をまき散らし、天日で乾燥させる。これを何度も繰り返すうち砂粒に結晶した塩が付着してくる。容器に海水を入れ、さらに天日乾燥した砂粒を入れ、塩を溶かし出し、濃くなった塩水だけを大鍋に移し、加熱して水分を飛ばして塩の出来上がり。

入浜式製塩法
この方法は梅雨や台風などで乾季の少ない日本では不向きな方法です。潮の干満を利用して塩田に海水を引き込み、微妙に落差をつけた複数の田を海水が移動する間に塩分濃度が凝縮され、最終的に塩が結晶化するという仕組み。しかし日本ではそれほどの日射があるわけではないため、この方法で濃い塩水を作り、平釜で加熱し乾燥していました。

温暖な気候と長い乾季があり、さらに潮の干満の大きな国では、天日だけでの製塩が可能です。地中海や中国南部、東南アジア、中米などではこの方法。

流下式製塩法
さらに合理的な方法として考えられたのがこの方法。高いところまで海水をくみ上げ、竹箒状のものをたくさん吊り下げたところに繰り返し流し落とす。そのうちに海水の水分が飛び、濃い塩水を得ることが出来る。あとは平釜で加熱乾燥。この方法では日射もさることながら、風で乾燥させるため効率的な方法。

そしてイオン交換膜法
日本の塩はほとんどはこの方法で量産される。海水中のイオン化した塩分などを電気とイオン交換膜を利用して不純物のない濃い塩水にし、さらに真空釜で水分を蒸発させて作られる。この方法では100%工業的に効率よく塩を作ることができる。ただし塩化ナトリウムの純度が高く、白いというメリットしかなくミネラル分を含まないため、本来の健康的価値、そして『味を引き出す道具』としての役割を失ってしまい単に塩辛く、採りすぎると健康に悪いだけの調味料となってしまいます。

『ソルトビー』の完全天日塩『海一粒』
『ソルトビー』では流下式で得られる濃縮海水を、さらに天日で乾燥させて作った完全天日塩です。高知県黒潮町は汚染の少ない太平洋に面しており、温暖な気候を利用して一年を通した塩作りを可能にしています。昔ながらの方法と、さらに日射だけを頼りにするというこだわりの完全天日塩です。

人工的な加熱をして作られる塩では得られないマイルドな味。さらに素材の風味を引き出す力の強さは、漬物やみそ、微妙な四季の風味を大切にする日本料理には欠かせません。微妙な味を大切にするフランス料理にも天日塩はなくてはならない重要な調味料です。

『海一粒』だけを使った漬物『塩だけ白菜漬』にご期待ください。

(企)ソルトビー
 〒789-1716 高知県幡多郡黒潮町熊野浦
 TEL/FAX:0880−55−2040
 http://www.salt-bee.com/


118 漬物と添加物
08/03/26



道長では渥美半島(愛知県田原市:旧渥美郡)の前川漬物さんにたくあん漬の製造をお願いしています。『古式一丁漬』『甘口しぼり』『梅肉しぼり』『ひの菜ぬか漬』がそれにあたります。

ほかの業者さんに委託生産をお願いする場合とくに気を使う点は、道長の意向に沿った商品をまちがいなく作っていただけるかどうかということです。とかく製造業者さんは自分に慣れた方法、原材料での製造を望むものです。しかし、それが安心・安全につながらない場合があります。

前川漬物さんでは『砂糖しぼり』という方法で『甘口しぼり』『梅肉しぼり』というたくあん漬を作っていただいています。

一般のたくあん漬を製造する場合、塩蔵の大根(輸入原料を使う場合も塩蔵)を塩抜きします。これにソルビットや液糖などに酸味料やアミノ酸などの調味料、防腐剤などを混ぜ合わせた濃い調味液を加え、大根に十分吸い込ませふやかす。すると大根はふっくらと仕上がります。高塩度のベースにかなり濃い味の調味が上乗せされ、とても食べられたものではないような気がしますが、アミノ酸や甘味料などを強力に効かせることでそれも緩和されたような錯覚がはたらき、うまいと感じさせることができてしまいます。

これに対して前川漬物さんのたくあん漬では、もともとさほど濃くない塩で漬けた大根を重石で何度も漬け直し、さらには粗糖を使って漬け直し、大根を凝縮していきます。こうすることで大根の体積は生の状態の1/3程度に減ってしまいます。でも押して縮めるだけなので風味が薄まることがなく、さらにはここちよい歯ごたえが得られます。

このように一般のたくあん漬けのように添加物を多用した食品はまず素材が貧弱なため風味も悪く、必然的に濃い味付けでごまかす結果となります。

今から40年ほど前には事情はさらにきびしく、ぼくが幼少のころ経験した食は現代よりかなりひどい状況だったと今にして思います。現代より強烈な添加物漬けの食品を食べ、それをおいしいと思って育ってしまった。これはとても残念なことだとも思います。

でも、しかしです、幸いにもぼくは自分の母親の作ったぬか漬けの野菜をたべることができました。土用の炎天の下、縁側に干されている梅ぼしをつまみ食いすることができました。七輪にホタテ貝に取っ手をつけた小鍋をかざし、焼き味噌だけのおかずでごはんを食べて満足感でいっぱいになれた。むしろそんな『食』に支えられていまの自分があるのだとも思います。そしてそのときの味、香りが今も新鮮に思い起こされるのです。

ぼくにはそんな単純な味が魅力だし、たくあん漬けに求める風味・歯ごたえもそれが基本になっているのかもしれません。

おいしそうなのはいいけれど、これが添加物の固まりかと思うと・・


119 純豆みそ
08/04/06



三州岡崎の八丁みそも同じですが、純豆みそは塩と大豆だけで仕込んで作ったみそのことです。その他にみそには米こうじを加えて作った麹みそ、麦こうじを加えた麦みそがあります。発酵熟成期間が長くなるほど褐色・黒色に変化していきます。

米みそや麦みそに使われる米、麦こうじには多くのデンプンが含まれていますが、豆みそにはデンプンが少なくタンパク質の多い大豆だけが使われるため、発酵による分解に時間がかかります。そのため2年近くの醸造期間が必要となります。

メイラード反応
タンパク質が褐色になる現象をメイラード反応(褐変反応)というそうです。これは微生物による作用ではなくて、タンパク質と糖が同居する場合に加熱や時間的な作用で、その二つが結合して風味が発生すること。それに合わせて褐色変化が起こります。

この反応が起こる際にそれこそ様々な物質が作られるらしいのですが、化学的には謎の部分が多く、解明されていません。とにかくその様々な物質には様々な風味があり、八丁みそなどに特有の『渋み』なども含まれます。

ご存知ですか『豆みそ(赤みそ)』の調理法
『赤みそ』でみそ汁を作る場合、煮詰めたほうがおいしい。よくみそ汁を作るとき、煮立つ一歩手前で火をとめるべし、といわれます。せっかくのみその風味が飛んでしまうからです。しかしながら、赤みそではちょっと勝手がちがいます。屋台などでみそ田楽を出す場合、そこで使われる赤みそのタレは加熱しっぱなしです。旅館や料理屋などで出されるみそ汁も赤だしと決まっています。これも食べる時間がまちまちのお客様に、冷める、加熱するを繰り返してもだいじょうぶだから。また『味噌煮込み』といえば当然使われるのは赤みそです。

長期間熟成された赤みそにはその分麹菌、酵母菌、乳酸菌などによりタンパク質やでんぷん、糖などが分解され、たくさんのうまみ成分が作られています。またメイラード反応などによっても風味に加えて渋みなどのそれに反する成分も蓄積されている。それを調理の段階で沸騰させたり加熱時間を長くすることで、メイラード反応などによるような香気成分が飛んだりする。加熱によってうまみ成分は飛びにくいため、長期熟成で蓄積されたうまみが生きてくるというということらしいのです。

この答えを導くために、八丁みその蔵元、さらには中央味噌研究所にも問合せしましたが回答を得ず。新城市・福津農園の松沢政満氏にお聞きして何とかそれらしい回答をいただくことができました。さすがは松沢さん。どうもありがとう。

愛知県武豊町カクトウ醸造にて


120 
特別栽培と農薬使用量
08/05/31


ご存知のとおり夏野菜の特に白菜は平野部での栽培は不可能です。白菜やレタス、キャベツなどは長野県の最奥部八ヶ岳や北海道などの冷涼な地域での栽培ということになります。道長では昨年まで6月〜10月の間、八ヶ岳の特別栽培の白菜を使用していました。

農薬のカウント
特別栽培というと慣行栽培レベルと比べて、農薬の使用回数が半分以下ということになっています。ただしこれは成分でのカウントなので、同じ薬剤を時期をずらせて3回使えば3カウントになります。水田などで使われる複合除草剤などのように、1回でも2成分を含めば2カウントが加算されます。

白菜の慣行栽培レベル
もちろんこれは全国統一ではありません。地域によって違います。たとえば愛知県東三河地域では夏季の白菜には慣行レベルはありません。実際夏季に特別栽培農産物として白菜の生産・販売を行おうとする農業者がいないため、その慣行レベルは定められていません。

八ヶ岳地方での夏季の白菜の慣行レベルは20カウントほどのようです。したがって特別栽培となるとその半分の10ということになる。

化学肥料の窒素分
八ヶ岳地方でのデータがないため、愛知県東三河地方での白菜(冬作)の慣行レベルで調べてみます。それによると化学肥料の窒素成分が10アール当たり33kg以内であること、ということになっています。したがって特別栽培ではその1/2までは化学肥料を使っても良いが、残りは有機の窒素を使用しなければならないということになります。

以上のことからわかりますが、夏季での高原野菜には、特別栽培といえどもけっこうたくさんの農薬が使用されることがわかります。

愛知県東三河地域での冬作白菜
道長の地元東三河地域の冬作白菜の慣行レベルは農薬34回ということになっています。

右の表は特別栽培の例ですが、それでも9種類の農薬を使います。消費者にきれいなハクサイを届けるための最低限の農薬ということでしょうか。

図中で魚毒性とありますが、これはコイと、ミジンコで一定時間後に半数が死んでしまう濃度(LC50:半数致死量)でAよりCの方が毒性が高い。さらに高いと『水質汚濁性物質』と定義付けられます。


毒性について:毒物、劇物、普通物の順に毒性が強い。測定方法は経口、経皮、吸入とあり、試験用の動物の半数致死量で判断。普通物とは劇物以下の基準ということであって、毒性がないということではありません。それにしても『普通物』とは、なんと都合の良い命名でしょう。有効成分については勉強不足で説明ができません。あしからず。

現実に安全な農薬というのはほとんどありません。特に化学物質を製造する場合、これは化学肥料を含めててですが、必ずといっていいほど副産物ができてしまう。そしてそれは環境に負荷をあたえてしまう場合が多いわけです。

道長では:今まで、夏季にも白菜の漬物『白菜漬』『和風きむち』を企画してきましたが、やはり農薬の使用量が気になっていました。今夏より、思い切ってこれらの漬物の出荷を秋までお休みにすることにしました。

どうかよろしくお願いします