011 (報告)いらない!遺伝子組み換え食品 京都集会

 3/26、平日にもかかわらず、京都駅前アヴァンティホールには、270名ほどの参加者が集まった。

 基調講演には、農業を基盤としたエコロジスト、ヴァンダナ・シヴァ氏をはるばるインドから。

 京都大学、農学部の西村和雄氏の有機農業と遺伝子組み換えについての話のあと、シヴァさん登場。

 シヴァ氏の講演は通訳を通しておこなわれるため、断続的に意味を伝えるという作業となり、若干臨場感に欠けるものの、氏の長年のグローバリゼーションとのたたかいを理解させるには十分だった。シヴァ氏の講演の内容をまとめてみた。

 戦争では化学兵器を作ってきた会社が、その技術をそのまま使って農薬をつくり、GM作物までも開発し販売する。1960年代に起こった『緑の革命』のもたらしたものは、疲弊した土地と農家の貧困だった。従来の農法では必要のなかった多量の資本投下が近代農業では必要となり、その代償として得られるのは除草の省力、殺虫。その結果環境は汚染され、農家に残るのは債務。

 『第2の緑の革命』とまで言われる、遺伝子組み換え技術。その便利さの結果には、ここでもやはり『負』の資本と環境汚染。バイテク企業の搾取ぶりは目に余るものがあり、イギリスによるインド支配という過去の出来事以来の大きな怒りといえる。

 大国の農産物輸出品の安価な理由は、その背後には国からの巨大な補助金によって成り立っている。そのために、小麦や大豆、綿、トウモロコシなどのダンピングがおこなわれている。

 インドではGM作物であるBt綿(殺虫毒素を持つ)の収量が上がることもなかったし、ビタミンAを強化するというゴールデンライスにしろ、それは他のハーブから摂取できるものであり、まったく不必要な作物といえる。

 そういったグローバリゼーションの対象とされ続けてきたインドの農業を救うため、ナヴダーニャという実験農場を開設。16年前からオルターナティヴなことのために人生をささげてきた。在来種子の保存や栽培試験、たい肥作り、多品種農法(病気が少ない)の実践など、バイオテクノロジーに頼らない従来の農業を振興する運動をしてきた。

 企業的な考え方は農業をだめにする。本来、農業において女性の役割は大きく、そういった助け合ったり分け合うという精神は企業的な考えにはない。

 インドでは女性の力で農、食を守る運動を続け、勝ち取ってきた。

 シヴァ氏との質疑応答にも多くの質問がなされ、それに対して彼女の丁寧な応答は印象的だった。

 この後、遺伝子組み換え食品を考える中部の会から、愛知県農試でのモンサント社との共同研究、遺伝子組み換えイネの中止の報告。

 集会終了後、別会場でシヴァ氏を囲んでのミニ講演。懇親会会場は京都精華大学の学生たちにより設けられ、さらに熱い質疑応答がなされた。ここでもシヴァ氏の熱弁、丁寧な応答が印象的だった。

012 回文探訪
03/05/28


 インターネットで『回文』というのを検索してみると、たくさんのホームページが開かれているのに驚かされます。回文というのは、「新聞紙(しんぶんし)」とか「たけやぶやけた」など、上から読んでも下から読んでも同じ文というのです。
古くから言葉の遊びというものにも興味津々な輩が多いと見えて、和歌、俳句、川柳などをはじめ駄洒落にいたるまで、高尚なものからくだらないものまでいろいろあります。

 『回文』というのは一見、趣味道楽としてはありそうもないジャンルですが、こういったことばの遊びで盛り上がっている人たちもいるようです。

 昔から伝わっているという、いわば『古典』の例:
「長き夜の とおの眠ぶりの皆目覚め 波乗り舟の音の良きかな」というものがよく知られていて、これは江戸時代の百科事典『倭訓栞 』という中に収められているそうです。そのほか
孫抱かば太鼓羽子板博多独楽(まごだかばたいこはごいたはかたごま)
池の名は知らず珍し花の景(いけのなはしらずめずらしはなのけい)

   (以上時代不詳)など

回文にも作法がある(当然例外もある)
同音の発音である「は」と「わ」、「へ」と「え」、「を」と「お」などは同じ語として扱う。
発音を重視するため、濁音や半濁音を清音扱いにできない。例:「ば」を「は」またその逆、「ぺ」を「へ」など
促音(「っ」「ゅ」など)は一語として、清音扱いは可。例:「ゅ」を「ゆ」長音符号や句読点を省略するのは可
要点としては、ひらがな48文字の表記を重視するということで、符号・記号などは省略可。

 こういった遊びは、外国でももちろんあるわけで、英語では回文はpalindromeと呼ばれているそうで、その愛好家をpalindromistというのだそうです。
No melon, no lemon.(メロンなし、レモンなし)
A Santa at NASA.(NASAのサンタ)
Madam, I’m Adam.(マダム、私はアダムです)
Was it a Cat I saw?(私が見たのは猫ですか)

など
日本産で面白そうなのをみつくろってみました。

写真家に感謝し(しゃしんかにかんしゃし)
ご意見番、今晩警護(ごいけんばんこんばんけいご)
何度待ったか、丘立つマドンナ(なんどまったかおかたつまどんな)
住まいが違います(すまいがちがいます)
倒産コンサート(とーさんこんさーと)

思わず笑ってしまうもの(これは下ネタばかりでちょっとまずいかも)・
平和祝い、屁(へいわいわいへ)
掻いたいんきん痛いか(かいたいんきんいたいか)
いかん!下痢、限界!(いかんげりげんかい)
ヘアリキッド、ケツに付けドッキリ、アヘ!

そのほか、分類がむつかしいけれど、こんなのも出てました(感心)。
・123×642=246×321

013 獣害について


 中山間地の農業でのいちばん大きな悩みといえば、獣による農作物の被害だろう。今から30年前と比べると、自然環境は改善の兆しも少ないけれども、悪化の一途というわけでもない。

 にもかかわらず、統計によればここ最近イノシシひとつをとっても、捕獲される数は確実にふえているそうだ。九州での捕獲数はとくに多く、またその全体の数もうなぎのぼりで、1980年を境に急激に増加している。1960年、全国ランキングで上位の山口県が481頭、広島207頭だったのが、2000年にはなんと、山口3823頭、広島4649頭となっている。2000年の野生生物による農業被害額は133億円ともいわれていて、の中山間地での獣害が増えてしまっているのはどうしてなのか。

 こういったことへの原因について、いろいろなことが言われている。ゴルフ場などのための開発により、野生動物の生活圏が奪われた。松や広葉樹の伐採、杉ヒノキなどの常緑樹の増加で動物のえさが減ってしまった、など。しかしながら、それらの理由付けもあまり当てにはならないような気もする。その大きな理由としては、イノシシの数が約40年前とは比べものにならないほど増えてしまっているからだ。

 現実にここ音羽町でも、このところイノシシ、シカ、サルなどによる、農作物の被害がひんぱんに起こっている。
とくにイノシシによる被害は甚大で、畑にとって致命的ともいえるほど。根ものの野菜は根こそぎ掘り起こして食べてしまうし、稲なぞは、せっかく育ったところを一面むちゃくちゃに荒らしてしまうという始末。この場合、食い荒らすというよりは、走り回るという感じ。

 これではたまらないというわけで、山と里の間あたりに獣の捕獲用の檻を仕掛けることとなる。このような仕掛けは、意外と見通しがよく、開けた場所におくと効果があると見え、音羽町の3つのうちのひとつの地区では、昨年なぞはひとつの檻で一夏20数頭も捕獲されている。

 近年の獣害の急激な増加について、いちばん有力な説として、とくに中山間地での離農があげられる。右の表では少しわかりにくいですが、1980年以前まではなだらかに食糧自給率は低下していますが、80年代からの低下が若干急激となっています。現在、離農のはげしい中山間地では山を背後にした農家の空き家や、雑草の生い茂った休耕地が点在。イノシシにとっては絶好の住処ともなりうる。さらにその間近には作付けされている大根やにんじん、ジャガイモ、スイカなど。彼らにとっては、住宅と食糧倉庫のふたつがあてがわれたようなもので、快適そのものの生活ということになる。

 以前と比べて、離農が多く里近くに彼らの住みやすい環境ができてしまった結果として、山の獣たちは恐れも知らずに、山奥から里山へと生活の場を変えつつあるのかもしれない。

 実際、中山間地での農業には電気牧柵なしでは考えられないほど、獣害は深刻な問題となっている。平坦地では農耕機具も充実していて、野生動物対策などという余分な経費も考えなくてもすむ。デカップリングという考え方もあるのだけれど、それが明確な形で政策となり得ていない現実を考えると、今後さらに中山間地での農業は厳しい局面を迎えてしまうのかもしれない。



       自給率の低下の推移


014 パーシー・シュマイザー氏名古屋講演
03/07/04


 7/2、鶴舞で行われたシュマイザーさんの講演は、北米カナダの農家で起こっているなかば信じがたい現実を物語るものでした。つまり、農家が自ら自家採取した種子を作付けできるという権利に対する巨大多国籍企業の生物の特許を盾に取った『種子の支配』についてです。

 遺伝子組み換え作物が米国で開発され、商品化されてまだ数年しか経っていないというのに、すでに日本の面積の1.5倍以上の広さで栽培されている。その9割以上が米国とその直轄といっていい、アルゼンチンで行われている。

 カナダの農地でも米国と似たような遺伝子汚染が現実のものとなってしまっている。それは、大豆ととくにシュマイザーさんの主作物であるカノーラ菜種について深刻なものとなっている。

 1998年、シュマイザーさんはモンサント社とのライセンス契約なしに、GMカノーラを栽培したという訴えを受けてしまった。もちろんそれまで、彼はモンサントのカノーラの種子を買って作付けしたことはなかった。もちろん自ら進んでその種子を採取して栽培するなど、考えもしないことだった。

 いわば、このふって沸いたような『訴訟』はいわれのない事であり、シュマイザーさんにとってはむしろ、種子に汚染を受けてしまったという被害者としての意識だけが浮上するという、なんとも納得のゆかない現実と直面することとなってしまったのだった。

 実は今日に至るまで、北米ではモンサント社に訴えられそうになった農家は、500軒を超えている。しかしながら、シュマイザーさんのように最高裁まで審判が持ち越されるという例はほかにはない。これは、個人である農家が巨大企業モンサントと裁判で対抗することで、巨額の費用を必要としてしまうこと。もしかすると勝ち目が無いかもしれないという予測のために、公判をあきらめてしまう。そしてモンサントから提示される『示談金』を受け入れてしまうから。

 どのような事情があろうとも、ライセンスなしで栽培されているというGMカノーラが農場に存在している限り、その所有権はモンサント社に帰属してしまうという、とんでもない理論がまかり通ってしまっているからなのです。

 シュマイザーさんはすでに、一連の公判のために3000万円以上の出費を余儀なくされました。そればかりでなく、今まで半世紀にわたって培い、育種してきたカノーラ菜種のすべても『GM汚染』によって失ってしまった。かれは2000年以来、カノーラの栽培はできなくなってしまったのです。

 このように米国・カナダでのGM作物の栽培がもたらしたGM汚染は、日本で想像するよりもずっと深刻な事態を引き起こしてしまっているということを、シュマイザーさんの報告から実感します。すでに自然界に放たれたカノーラ菜種は、ラウンドアップをかけても枯らすことのできない、厄介なスーパー雑草と化してしまっている。それらはとんでもなく広範囲に拡散していて、もはやそれを収拾することは不可能といってよい。

 今、日本でもモンサント社のラウンドアップ耐性大豆の作付けをしようとする動きがある。これは『バイオ作物懇話会』なる団体によるもので、一昨年から日本各地で敢行されている。昨年は北海道でかなりの広さで作付けされており、今年は反対運動のおかげで進んではいないものの、茨城県で収穫までを見込んだ作付けが行われている。

 もちろん日本で、奨励品種以外の大豆を栽培しても、交付金の対象にはならない。だから農家にとってGM大豆を栽培したところで、利益の対象にはなりえないことが明白といえる。にもかかわらず進められている大豆のデモ栽培は一見無意味な行為のように見受けられるかもしれません。しかしながら、今消費者、農家がこうした動きを見過ごすということが、GM作物の日本国内での栽培を容認、受容してしまうことにもなりかねない。

 今、南アメリカ、メキシコ、米国、カナダで起こっている『遺伝子汚染』が、日本で現実のものとなれば、この狭い国土という状況を考えれば、明らかに深刻な事態となりかねない。私たちがGMフリーの食品を選ぶ権利、農家が種子を自家採取する権利を放棄しなくてはならなくなる。そして、非GMの自然環境をも。

 GM作物の国内栽培だけは、許すことはできません。


015 アントシアニンという色素
03/07/10


 赤しそは今がシーズンで、梅ぼしを漬けるときにいっしょに入れると、鮮やかな赤色としその風味がすばらしくマッチします。世界に誇る日本の保存食の中で、筆頭に数えてもさしつかえないでしょう。赤い梅ぼしと白いご飯のとりあわせ。食欲減退の夏バテのからだをシャキッと。

 しそはひろくアジアの暖かい地域が原産とされています。日本では、縄文時代の遺跡からしその実(種子)が出土しているほどで、その頃すでにハーブとして利用されていたのでしょう。各種ビタミン、ミネラルが多く含まれていて、古くから薬用として広く用いられてきました。

 香り成分でもっとも多く含まれているピレルアルデヒドという物質は別名シソアルデヒドとも呼ばれ、強い抗菌作用があります。生ものの食品に付け合せて、食あたりを防いだりします。免疫効果を正常にもどすはたらきがあるとされるαーリノレン酸は、アレルギーを抑制するはたらきもあり、アトピーや花粉症などのアレルギーにも効果があるといわれています。

 赤しそは塩でもんだだけでは紫色のアク汁が出るだけですが、それをしっかり絞って梅酢を含ませ、さらにもむと今度は真っ赤に変身してしまいます。子供のころもそうでしたが、今になってもおどろいてしまうほど。白いご飯に赤い梅ぼし。それだけで食欲がでてきます。

 赤しその場合にはシソニンという色素が、梅酢に多量に含まれているクエン酸などの酸に反応するからだそうです。酸性アルカリ性の試験で使われるリトマス試験紙の青が赤に変わるのと、同様の変化。

 リトマスというのは、地中海西部沿岸や南半球地域から採れるコケの一種で、その色素をアルコールで抽出したものを酸・アルカリを判断するための試験紙に使います。日本ではかつて『ウメノキゴケ』という地衣類を利用してリトマスを作っていたことがあるそうです。こういう性質をもつ植物の色素はほかになすの紫いろの発色、酸性雨で変色するアジサイ、アサガオ、赤カブ漬などとたくさんあります。

 それらの色素の多くは、『アントシアニン』系なのだそうです。もともとの色は青っぼい色ですが、酸にあうと赤い色に発色する。また中和するにしたがって退色し、アルカリにあうと青色にもどる性質がある。とくに『酸』に出会うと赤くなるという性質が食品に応用されているところなんかは、実にうまくできているといえる。

 なんといっても『赤』という色は精神を高揚させるばかりか、食欲をもアップさせてくれるところがいいですね。


吉村庸氏(高知学園短大教授)からコメントをいただきました。
著 書:
「原色日本地衣植物図鑑」保育社
「短期大学からの挑戦」(株)南の風社
「ナチュラルガーデンブック」
環境活動:
森・里・川ビオトープの会(高知県)主宰
 リトマスゴケは地中海地方が中心ですが、南米やイベリア半島などでも採取されており、原材料を発酵させて作ります。実験的には材料にアンモニア水を加え、それにオキシドールなどの酸素発生剤を加えてしばらく置くと紫色系統の色調に変わります。リトマスゴケそのものが天然に酸化されて発色するわけではありません。

 日本にはリトマスゴケは産しません。ただ、この発色の原理はレカノール酸という地衣成分が基本ですので、この成分を含む地衣類であればリトマスを作ることは可能です。以前(戦時中)武田薬品ではリトマスを日本産のウメノキゴケを使用して上記の方法でリトマスを作り、リトマス試験紙を作りました。できた色素を酸性にすれば赤、アルカリ性にすれば紫に変わります。

 ヨーロッパでは各種の媒染剤を使用して毛皮、羊毛を染めていました。アニリン工業が勃興するまではこのリトマス染料で大もうけをしたようです。

ウメノキゴケを使ったリトマスの作り方:
http://home.hiroshima-u.ac.jp/lichen/trend/litmus.htm


016 今、茨城県でたいへんなことが起こっています
03/07/30


一般の畑で栽培されていた、遺伝子組み換え大豆が反対派によって、処分・すき込みされました。

一昨年前から、『バイオ作物懇話会』という団体による、遺伝子組み換え(GM)大豆の国内でのデモ栽培がおこなわれています。このデモ栽培というのは、GM作物の優秀性を理解し、広く普及しようという目的によるもので、宮崎県・長友勝利代表による自主的な活動ということになっています。

昨年は北海道北見ほか、全国6ヶ所で大々的に栽培されました。しかしながら、全国的な「GM作物のような、消費者の望まないものは作らない」という気運から、栽培のための候補地が見つからず、今年はただ1ヶ所、茨城県谷和原(やわら)村の2反ほどの畑でのみの栽培をおこなっていました。昨年も谷和原村で同様の栽培がおこなわれています。

ところが、今年は収穫までの栽培をするという(今までは開花前に処分・すき込みされていた)懇話会の方針に、地元農家はじめ、地域に関連の生協などが反発。そして6月末の段階では、すでに開花が確認されました。このままでは、近隣の大豆に交雑する可能性があり、デモ栽培の続行はやめてもらいたい。という再三の申し入れも受け入れられなかったため、せめて花粉の飛散防止用シートをかけてほしい。ということでありましたが、強風でそれもならず。とうとう反対派有志の、トラクターによる強制執行という結果となってしまいました。

おかげで地元では警察まで動き出す始末となり、日本では前代未聞の事件に発展してしまいました。わたしたち各地のGM関連の運動機関では、次々に更新される情報におおわらわといったところ。このような事態は、フランスの農試に侵入、研究用GM作物引き抜きをして話題となったジョー・ボベさんの日本版ということになるのでしょうか。

ここで少し付け加えておかなければなりません。それは、『バイオ作物懇話会』という団体の素性について。この団体が、日本モンサント社とのつながりを持っていることは、以前から周知の事実でした。しかしながら、今回の一連の顛末のなかで、STAFF(食品化学広報センター)、農林水産省が直接顔を出す場面があり、それらの影でのつながりというものに、いささかのきな臭ささえ感じられてしまう。

認可されているはずのGM作物がなぜ受け入れられないのか
食品として認められている以上、GM作物を国内で栽培することは違法ではありません。今年、日本も懸案の『カルタヘナ議定書』に調印するため、国内でのGM作物の栽培にあたっては、農水省の許可が必要であるという取り決めを作った(しかし、許可を受ければ、正当に栽培ができるということになる)。したがって今回の谷和原村でのデモ栽培も、違法なことでは毛頭ない。にもかかわらず反発がある。進んで栽培しようという個人はいない。その理由は、GM作物が売れないことを、生産者は知っているからに他ならない。なぜなら、大多数の消費者がそれを望んでいないから。

そういった消費者意識、反対派の態度に、推進派の言い分は「非科学的である」。その言動に対して「社会的な反発がこれほどまでに続いていることにたいする科学的な回答をもとめる」と答えた人もいる。米国の推進派は「GM作物で死んだ人はいない」という。これこそ非科学的な論理とはいえないだろうか。この言動は、ダイオキシン汚染に対してさえ発せられている。

はなしを谷和原村にもどします。GM作物反対派が恐れたことは何か。それはせっかく培ってきた地域の農産物の信用が失われることへの恐れ。地域の農業の将来に、決してプラスとはならないだろうという予測。では、GM推進派の期待とは何か。農作業が合理化される。減農薬ができる。収量が増える。利益が上がる。これらはいずれも具体的な理屈のようにも思える。しかし、米国・カナダでそれらの事実はひとつも立証されていない。明確な証といえば、遺伝子汚染された広大な農地とバイテク産業の種子支配。

今回のGM大豆の処分事件は、一体どんな方向に発展してゆくのだろうか。政治力の介入でもありうるのだろうか。あるいはもみ消されるのだろうか。はたまた、単なる不法侵入、器物破損などの罪状での、執拗かつ継続的な取調べの繰り返しがおこなわれるのか。

しかしながら、地元の農家がこうむるかもしれなかった、有形無形の被害について無視されてははなはだ迷惑なことといわざるをえない。

017 沢 庵 和 尚


 たくあん漬で親しまれている沢庵和尚は名を宗彭(そうほう)といい、1573年に但馬(たじま)の国(兵庫県)に生まれたといわれている。

 1603年に江戸幕府が開かれ、幕藩体制が確固となりゆく時代を生きた人物といえる。

 沢庵は京都大徳寺在職中、幕府の態度(幕府のほうが朝廷よりも格が上であり、宗教家に対してもその統制下に置こうという政策)に対して抗議文を提出。羽(う)州(東北地方)へ流罪となるが、3年後に許され江戸に呼ばれることになる。これは沢庵の徳の高さを示す出来事で、紫衣事件と呼ばれています。

 いよいよ本題のたくあん漬ですが、これは彼の故郷但馬州の大根の保存漬のことで、沢庵が江戸品川、東海寺で徳川家光を迎えたとき、この漬物を供した(沢庵は家光にとってよき相談相手だったといわれている)。そのとき、沢庵は『たくわえ漬』と答えたそうですが、家光は『沢庵漬』だと感激して名付けたといわれている。
 その沢庵和尚、1645年(正保2年)東海寺で没しますが(73歳)、そのときの遺言は『夢』一字、筆を取り書いたといわれています。また、「自分の葬式はするな。香典は一切もらうな。遺体は山に埋めて二度と参るな。墓を作るな。朝廷から禅師号を受けるな。位牌を作るな。法事をするな。などとも言い残していたといわれます。
沢庵和尚といえば、歴史的に大きなことをしたわけでもなく、かといって誰もがその名を知ってもいる。そして何よりも『沢庵漬』という庶民的な食品で親しまれている。

 その仏教にたいする無欲なまでのひたむきさ、何者も恐れぬ勇気というものに、時代が変わってもその心というのは、『たくあん漬』という伝統的食品とその親しみを込めた発音の響きで、わたしたち日本人の忘れてはならぬ何かを教え続けていてくれるのかもしれない。

018 農家資格 X
03/08/26


 いくらなんでも秋冬作の支度をしておかないといけない、ということで遅ればせながらたい肥の投入作業ということに。本来なら8月入って早々くらいにしておかなければならないこと。

 たい肥は一宮町で乳牛を飼っている方のところへ2tのダンプでもらいに行く。野積み状態になっている牛糞たい肥は、現地へ行ってホィールローダを借していただいて、積んでくる。最近続いた長雨で、たい肥も水を含んでいて重そう。このお宅では以前、生ゴミ生かそう会で牛糞たい肥の切り替えし作業の練習をさせていただいたところ。

 今回、畑にはダンプ2杯を入れる。ダンプを畑の奥にバックで突っ込み、自分の作ったわだち沿いに戻りながら、荷台からスコップでたい肥を撒き散らそうという寸歩。今回もむすこ二人を動員しての作業、というわけで途中までは順調にはこぶ。ところが水はけのよいこの畑の、ちょうど真ん中へんの水持ちのよい辺りで、なんとダンプがはまってしまったのでした。一同3名、ダンプの脱出のためにスコップで掘ってみたり、板切れを挟んでみたり。悪戦苦闘の約30分の末、仕方なく積荷のたい肥をダンプして降ろして身を軽くし、ほうほうの体で脱出成功(精根尽き果てた感じ)。後でよく考えてみると、先回もここでダンプがはまってしまったことを思い出したのだった。下の息子いわく、「ぼくは『デジャヴ』を見ていると思った」ですって。

 昼食の後、再度ダンプに積んできたたい肥を、今度は首尾よくスコップでばら撒き作業完了。先ほどやむなくまとめて降ろしたたい肥の山をスコップで運んだり、トラクターでの鋤き込み、畑の周りの草刈と作業員各自、けっこうな重労働ということになった。

 道長のように、ほとんど休みなしの仕事をしていて、その合間を見ての農作業はどうしても遅れ気味となってしまう。素人の男の作業員3名が、1反足らずの畑で右往左往する様は、さぞ滑稽かつ無様なものなのかもしれない。

 とかくするうち、時は秋へと進んでゆくのです。

019 表浜ネットワーク


最近豊橋市を中心に、畑にただでたい肥を入れてやるという甘い話をもちかけ、それどころか産廃と汚泥を混ぜ合わせただけというようなとんでもなく大量の汚物を投入されてしまうという被害が多発しているという話がある。

そのような被害が音羽町や近隣で起こってはたいへんと、豊橋でそのような産廃業者相手に運動をしているひとに来ていただいて、講演会をひらいた。会場には町内の農家などから、30名以上が出席。悪質なたい肥業者についての話をきいた。

本来ならダンプ一杯のたい肥は6000円から1万円くらいはするものが、ただで、しかも投入までしてくれるというような甘い話が年寄りしかいないような農家にもちかけられることが多いそうだ。数日の間に畑は4〜5mも掘り起こされ、たい肥名目の汚物が埋め込まれる。汚物の上には2mほどの土がもどされるので、畑は客土されたように土が盛り上げられ、一見してたいへん良好なように見えてしまう。

ところがその畑に作物を作り始めると、事態は一変することとなる。生育不良、病害虫の発生などでまともな作物に育たないことがおおい。このことの直接的な原因は、地中に埋められた有機物から発生するアンモニア系のガスによるものだろう。そんなことに気がついた頃にはすでに『時おそし』。業者との間で契約書が交わされており、もとに戻すことはむつかしい。さらにこの状態で放置しておいた場合、10年くらいは畑としてつかえないだろうといわれている。まして、汚泥には重金属や有害化学物質の含まれている可能性も十分に考えられる。仮に一見良く育ったとしても、作物が取り込むかもしれない有害物質の心配もある。

何年か経つうち、土の中の廃棄物(汚泥や建築廃材など)が腐食し、盛り上がっていたはずの土も陥没してきたりする。現実的に畑としてばかりでなく、土地としても価値のないものとなってしまう。

ここで始末の悪いことに、こういったことでだまされた農家というのは、その事実を他人に伝えなかったりするもの。そんな事に引っかかったことの恥を、他人にさらすことになってしまうからなのだろう。そんな理由もあり、この手の悪行は世間の公然の事実としてさらけ出されるまでに、けっこうな時間もかかってしまう。それに『たい肥』として、あるいは『改良工事』としての名目があるため、法的に規制することがむつかしい。そのため、それらの悪徳業者は手を変え品を変え、法の目をかいくぐっては営業を続けている。

こうした産廃業者の集まっているいわゆる『産廃銀座』というのが、渥美半島の表浜海岸の静岡県との県境に近い『細谷地区』あたりに集中しているとのこと。また細谷海岸近辺では、産廃業者がたれ流す汚水も問題になっている。それが原因なのか、海の魚や巻貝が大量に死んで汀に打ち上げられることもある。

表浜というのは、浜名湖の今切口から渥美半島先端の伊良湖岬に至るまでの海岸のことで、風光明媚で水のきれいな浜辺。投げ釣りもさかんだし、夏には季節風のおかげでよい波ができ、サーファーたちの集う場でもある。また『アカウミガメ』の産卵のための上陸もあり、保護団体の活動も行われている。

この浜名湖今切口から伊良湖岬までの表浜海岸の環境を見つめようという目的で、それらの人たちが集まって『表浜ネットワーク』という会が運営されている。それらのすべての人たちがボランティアとしてはたらいている。浜辺の清掃、ウミガメの保護、海岸線の侵食の様子調べ、汚水で汚された海水の検査・分析、産廃業者の監視、行政との折衝・・。

市民運動というのはいつもそうなのだけれど、一部の経済至上主義の企業を相手に、これもやはり給料で作動している行政を動かすために、無償でしかも自らの時間と労力をすり減らしながら運動している。しかもその運動は永続的に続いてゆくというのが宿命ともいえるのだろう。

その地道な活動のおかげが、今の世の中をかろうじて保っているといっても言い過ぎではないと確信するものです。

パンフレット:表浜ネットワークより

表浜ネットワーク: http://www.omotehama.netをごらんください


020 抗生物質耐性遺伝子とマーカー


 現在、日本で食品として認可されている遺伝子組み換え(GM)作物は大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、ワタ、トマトの6品目で、55品種に及んでいる。

 ある作物にある特性をもつ遺伝子を挿入というか打ち込むことで、今まで不可能であった性質の作物を作り出せるというのが、GM技術の画期的なところだろう。

■組み換えの方法
 遺伝子を組み換えるというと、すばらしい技術のように思えるのだけれど、実際は計算どおりの場所に目的の遺伝子を組み込むというほど精密なものではない。方法としては、@パーティクルガン法、Aアグロバクテリウム法、Bエレクトロポーション法の3っつがある。@は小さな空気銃で遺伝子を打ち込む方法で、Aは感染力の強いバクテリアの遺伝子の力を借りて目的の遺伝子を導入する。Bは電気ショックを利用する方法ということになる。

■組み換えの確認
 目的の組み換えができたかどうかを確認するには、実験者がそれをチェックするための目印(マーカー)になる遺伝子もいっしょに入れてやる必要がある。除草剤耐性の作物の場合は、その除草剤を与えれば見分けがつくからいいけれど、わかりにくいものについては、抗生物質耐性の大腸菌などの遺伝子を使うこともある。遺伝子の導入作業を完了したものに、実際にその抗生物質を与えてやることで判別しようというもの。つまり、生き残ったものに目的の遺伝子が導入されたことになるというわけ。さらにこのあと、遺伝子の導入の行われた数千から1万を超える細胞をひとつひとつ増殖させ、不完全なものを振るい落とし、最終的に2つくらいに絞り込むという気の遠くなるような作業も行われる。

■抗生物質耐性マーカー遺伝子の問題点
 目的の遺伝子を導入すると同時に、マーカー役の抗生物質耐性も付いてまわるため、出来上がるGM作物にもその特性が受け継がれることになる。問題なのは、その抗生物質耐性が及ぼしうる影響。どういうことかというと、抗生物質耐性遺伝子を持った作物を食べ続けた場合、その遺伝子が腸内細菌に取り入れられ、抗生物質の効かない細菌が生まれてしまうのではないかということ。Oー157やSIRS結核などの出現なども、こういったことの何かが原因としてはたらいているのかもしれない。

■抗生物質耐性マーカーを使用しているGM作物
 現在認可されている55品種のうち、なんと24品種ほどもあるからおどろいてしまう。当初、これらの遺伝子も人や動物の腸内で消化され、分解してしまうだろうと言われていた。ところがそうばかりでもなさそうだという実験結果もでてきており、いままでの安全性の判断では不足してしまう可能性もある。

■体内ばかりではなく、自然界でも
 こういったことは、生物の体内ばかりでなく、自然界でも起こりうること。たとえば、あるGM作物を栽培した畑の土に住む微生物に組み換え遺伝子が取り込まれ、その性質をもった微生物がその畑で増殖するようなこともありうるかもしれない。思わぬところで、生態系に大きな影響を及ぼすことにもなりかねない。そしてその結果として、どのような現象が起こるかについては、まったくの未知数ということになる。

■ダイオキシン、環境ホルモンの心配事の再来
 ダイオキシン、環境ホルモンの問題は、過去においてまったくの未知のものであった。にもかかわらず、現在では大きな問題となってしまっている。それに、GMの問題が加わるかもしれないという将来像は決して歓迎できるものではないだろう。

■グローバリゼーションとしての問題
 これらの問題に対して、『それが原因で死んだ者はいない』などという非科学的な言動さえあるようだが、そういった理屈が地球規模で全世界を巻き込むための経済戦略としてまかり通ろうとしている現実も見逃せないだろう。