産廃たい肥について

『フェロシルト』が埋め戻し材の名目で、実は産業廃棄物を処分する目的で農地などに埋め込まれていたというニュースが報じられています。

豊橋市や渥美半島などでも、只でたい肥を配達進呈するとか、ほ場整備をしてあげるという甘い話が持ちかけられています。とてもありがたい話なのでお願いすると、産廃と汚泥を混ぜ合わせただけというようなとんでもない汚物を大量に投入されてしまうという被害が多発しています。

そのような被害が音羽町や近隣で起こってはたいへんと、豊橋でそのような産廃業者相手に運動をしている方に来ていただいて、講演会をひらいた。会場には町内の農家などから、30名以上が出席。悪質なたい肥業者についての話をきいた。


収穫できず、花の咲いたキャベツ畑を掘り起こしているところ。この下に産廃たい肥が埋められている
本来ならダンプ一杯のたい肥は6000円から1万円くらいはするものが、ただで、しかも投入までしてくれるというような甘い話が年寄りしかいないような農家にもちかけられることが多いそうだ。数日の間に畑は4〜5mも掘り起こされ、たい肥名目の産廃が埋め込まれる。その汚物の上には2mほどの土がもどされるので、畑は客土されたように土が盛り上がり、一見してたいへん良好なように見えてしまう。

掘り起こされた産廃たい肥には、このような建築廃材や、ダイオキシン汚染の心配な焼却灰も含まれている。

ところがその畑に作物を作り始めると、事態は一変することとなる。生育不良、病害虫の発生などでまともな作物に育たないことがおおい。

このことの直接的な原因は、地中に埋められた有機物から発生するアンモニア系のガスによるものと思われる。その事実に気がついた頃にはすでに『時おそし』。業者との間で契約書が交わされており、もとに戻すことはむつかしい。さらにこの状態で放置しておいた場合、10年くらいは畑として使えないだろうといわれている。まして、汚泥には重金属や有害化学物質の含まれている可能性も十分に考えられる。仮に一見良く育ったとしても、作物が取り込むかもしれない有害物質の心配もある。

何年か経つうち、土の中の廃棄物(汚泥や建築廃材など)が腐食し、盛り上がっていたはずの土も陥没してきたりする。現実的に畑としてばかりでなく、土地としても価値のないものとなってしまう。

生育不良のキャベツ

だいこんの根は二十日大根ほどにしかなっていない


イネも生育不良
ここで始末の悪いことに、こういったことでだまされた農家というのは、その事実を他人に伝えなかったりするもの。そんな事に引っかかったことの恥を、他人にさらすことになってしまうからなのだろう。そんな理由もあり、この手の悪行は世間の公然の事実としてさらけ出されるまでに、けっこうな時間もかかってしまう。それに『たい肥』として、あるいは『改良工事』としての名目があるため、法的に規制することがむつかしい。そのため、それらの悪徳業者は手を変え品を変え、法の目をかいくぐっては営業を続けている。


産廃たい肥は2m以上も深く埋め込まれている。これを取り除いて元通りにするには、産廃物の処理も合わせると1反あたり何百万円の費用がかかってしまう。
こういった問題をそのまま放っておくことは、同じような被害をさらに広げてしまったり、新たな手口による産廃物の不法投棄などが行われたりします。

それを未然に防ぐためには、常日頃の地域の環境にたいする問題意識を高めておく必要もあります。

日本の農業は、生産と消費を上手に循環させて、環境に負荷をかけない方法で行うことが基本です。

当然ですが、『農業』に課せられる期待も、今後さらに大きく、多様なものとなってくるでしょう。

『農業』を行うものにとって、環境を扱う仕事をしているのだという『使命感』もあわせ持つ必要もあるのではないでしょうか。

無料で配達された産廃たい肥
よく見ると瓦の破片、ベニヤ、焼却物なども見つかる