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 以前会社で10人ばかりの女の子で集まってお弁当を食べていた時の話です。何の弾みかその中の一人が「あたし、本屋にいくとトイレに行きたくなるんですよね〜」と言い出しました。するとそれに答えてもう一人が「あ、あたしも」。
 残りの人間にはそのような症状はなく「信じられない。何でなの?」等の声が上がりました。2人とも図書館は割と平気なのだそうで、本人曰く「多分新刊のインクの匂いがダメなんだと思う」。
 週に一度は本屋に寄らないと禁断症状が出る店主、その時点までそのような人種の方々がいらっしゃるという事実をつゆ知らず…いやあ、驚きました。そうか、そういう人たちもいるんだなあ。
 本好きの人間が知らないだけで、案外そういう人は多いのかも知れないと思う。もしそういう方々でこのページをあけちゃった方はごめんなさい。同じ人間だけど違う生き物の戯言と思って無視して下さい(って、そんな人がここまで来る訳がないか)。

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 イラストレーター・中山庸子著の『「夢ノート」のつくりかた』という本があります。この本の中に魅力的なヒロインの出てくる本として、3冊の文庫本が紹介されています。
 自作の本の中で自分の好きな本を紹介するのであるから、これは出版社から「宣伝してくれ」と頼まれた訳でなく、「お願いだから一筆書いて」という義理づくの紹介でもない訳で。きっと本当に心から作者が勧めしたいと思っている本なのでしょう。  この3冊のうち1冊を読んで、ほぼ予想通り…残念ながら私は面白いと思えませんでした。多分この作者の方とは、私は話が合わないんだろうなあ。
 …本を紹介するという事には、そういう面もあるんですね。だからちょっと怖いことかな。

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 本棚を見ればだいたいその持ち主の性格が判ると申します。性格までは知らないけれど、その人の傾向というか生活態度というか…何に関心を持っていて、どういう事に憧れているかみたいな事が、その人の本棚の前ではおぼろげながら感じられるもんです。…多分。
 乱読をモットーとする店主の本棚は、地獄の釜の中もかくやというほどのごった煮。絵本に雑誌に図録に設計図面、エロ雑誌にムックに専門書に辞書と言った手合いがスペースの限りに詰め込まれ、ほとんど救いのない状況。実際我が家に初めて来たお客人で、物珍しさのあまり本棚も前に座り込みしばらく動かなかった御仁がいたくらい。
 まあそんな店主のお勧め本ではございますが、こうして他人様にお勧めする段になると、やっぱり他でも評価されてる作品が多くなりますね。本に関する限り店主の感覚は至って正常みたいです。その分、目新しい物が見つかる可能性は少ないかな。
 多分これ読む気になって下さった方って重度の本好きさんで、新聞や雑誌の書評をなにげに読んでしまわれるような方々なんじゃないかと想像してるんで。そういう方々相手であれば、こんなフリージャンルの身勝手な紹介も、まあ何かの話の種ぐらいにはなるんじゃないかな、と。
 ――何か得る物があって下されば幸いです。