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■最近読んだ本■

ジェラシックパーク(マイクル・クライトン)
 何を今更全開ではございますが、アメリカエンターティメントの最高峰にも匹敵すると思うので書く。以前続編である「ロストワールド」の方は友人に借りて読んでた。その時も思ったんだけどこの作者「動機づけがめっちゃ上手い」。
 ミステリーの殺人犯が誰か知りたくて本を読み進めるように、「キミもこれが知りたいだろう?」という疑問を読者の鼻先にぶら下げてくる。父親が娘を助けたい、みたいな個人的な動機じゃなくて、ありあらゆる人が知りたくなるような謎をポンと投げてくる。この手際がすげえ上手くて逆らえない。ちくしょう。
 考えてみれば恐竜について判っていることは骨格とか体重とかそんな事ばっかりで、どんな風に生活していたのかは全然判ってない。群で行動したのか、一頭づつのはぐれ狼型だったのか、親は子を育てたのか、捕食者と被捕食者の行動はどんな風だったのか…誰も知らないんだよなあ。
 目の付け所も確かなんだよなあ。 
ファイヤーボールブルース2(桐野劉生)
 「白い犬とワルツを」が泣けなかった代わりに泣けた。いや、最後の一行で(笑)。女子プロレスラーとして大成しなかった女が主人公なんだけど、その辺の哀愁というか、どんなにその世界を愛していても報われない感じが良かった。
 体を張ってしか生きていけない世界があって、そういう場所でしか生きていけない業を背負った女がいて。でもってそういう女に心底惚れちゃう女もいる、と。世間からイロモノ扱いされても、そんな事関係なし。突き進むのみ。
 前作はミステリー仕立てだったけど、今回のささやかな日常的な話のが「女子プロ」って世界が感じられて良かった。20代の女性、自分の将来に悩まない訳がない。そういう話。

6()
 すんません。少女漫画です。文庫になったのを期につい手を伸ばしてしまいました。ハマると怖いヤオイ乙女ご用達ホモマンガ(笑)。これと『絶愛』(尾崎南)がヤオイ乙女御用達マンガの双璧と思ってるんですが、いかがなもんざんしょ?
 なにが凄いってああた、登場人物すべて美形ってのがすごい。長身で銀髪で碧眼の殺し屋、金髪巻き毛の刑事、ジャーナリストで情報屋のホモ、義理のかーちゃんは演劇界きっての脚本家。…かくも恐ろしき少女漫画のご都合主義を堪能できる恐るべき作品です。男性にとっちゃ宝塚見るのと同じ位苦痛なんだろうなあ。ゴルゴ13と読み比べて笑うのも一興ではありますが。
 「まっとうじゃない選ばれた人間」って言うのが乙女の夢、って事でしょうかねえ。いや、他人事じゃなんだけどさ。
アクロイドを殺したのは誰か(ピエール・バイヤール)
 知らない人のが珍しいだろう名探偵エルキュール・ポアロシリーズの代表作「アクロイド殺人事件」への考察。作者はフランスの心理学者。
 「アクロイド殺人事件」という推理小説は、史上初めての試みをやらかした小説でありまして…ネタばらしちゃうと「語り手が犯人」なんですわ。で、これが「フェアじゃない」とこの作者の方はおっしゃる。
 それだけの話なら、タダの推理小説オタクのヨタ話なんだけど、さすがは学者先生。この事件の真犯人を指摘して下さってます。これがねえ、もう誰にも文句が付けられない人物でございましてねえ。こっちのが真犯人として明らかに説得力があるんですよ。
 推理小説のレトリックについて深く考えさせられる一冊でございました。
 パロディ作品がコレくらいアカデミックな物になれば、世間も見直してくれるんだろうなあ(笑)。