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キャラクター紹介


大空翼
 主人公。サッカーの天才。あおり文句は“スパークするサッカーバカ”。一つの才に傑出した子供がどういう物かを、しみじみ考えさせられる人物である。天は二物を与えずと言うが、与えないのは人の世だという気がしなくもない今日この頃。世界一を目指す男が、それと引き替えに何を得られず死ぬかは興味のある所である。
 父は外国航路の船長で、年の大半は母子家庭。「死ぬほど好きな船に乗りに行く」父親を見て育った息子が、好きなことのために命を賭けるのは当然の成り行きだったといえばそうだろう。あの親にしてこの子あり。小学生のみぎりで周囲から隔絶して“一人でボールを蹴っていた”あたり、方向性としてかなり問題を含んでいたかも知れない。通知票の通信欄には「協調性がない」とか「頑固である」とか、ヘタをすれば「自閉症の疑いあり」ぐらい書かれていた可能性アリ。
 天才が何をどう考えるかなんて事は理解の範疇外であるが、ロベルト本郷への傾倒を見る限り「こいつも人間」と思えたりする。余人と同質なんだが、思い入れの方向性やキャパシティが違うって感じかな。そういう精神力の強さ(あるいは非常識さ)が天才と言う物の醍醐味かも知れない。原作の絵柄から感情描写が読み辛く、エピソードから読むしかないのでいらん勘ぐりをしてしまう。
 とりあえず…才能があって本当に良かった。これで才能がなければただの社会性欠如の欠陥人間になっていた所だ。

岬太郎
 父は放浪の風景画家。赤ん坊の頃からその父親に連れられて全国を渡り歩き、あげくフランスくんだりまで行ってしまう。母は再婚して横浜在住。――原作に明記されていないこの家庭の事情を勘ぐりすぎたとしても、きっと責められはしないだろう。放浪の画家と結婚してしまった女、物心も付かない子供を抱えて全国行脚する父…両親の性格を深く考えると、かなり怖い物がある。親は選べないからなぁ。
 本人が意識してるかどうかは判らないが、重度のファザコン。父親の方にも、息子を愛しているのか憎んでいるのか判断に苦しむ描写が多々見受けられる。父と子の愛憎劇というのは泥沼どころの騒ぎじゃないから、少年誌で詳しく描く訳にいかなかったのだろうが、もう少しこの親子の内情を見たかった気がする。
 小学校だけで20回以上転校をくり返している事から、世渡り上手で小器用な人格が形成されている。行った先々でさっさと周囲にとけ込み、別れる時には何一つ残さない。根本の所で大ざっぱ、故に悲観的な思考もさらりと受け入れてしまえるようなタイプではなかろうか。繊細そうではあるが、その実何も考えていないヤツの可能性アリ。
 大空翼と“ゴールデンコンビ”と括られているが、本人がそれをどう思っているかは定かでない。翼だけでなくサッカー仲間全てに対して好意的とも取れる八方美人ぶりではあるが、その実愛しているのは自分だけ、自分に都合のいい人間の間を器用に泳ぎ渡るだけのような気がしなくもない。まああの父親に育てられてりゃそれもむべなるかな。
 翼に関わらなかったとしても、サッカーを選んだかどうかは議論の分かれる所だろう。彼にとっての翼は父親離れの“きっかけ”だったのかも知れない。

若林源三
 大空翼の第一のライバル。GK。良い家のお坊ちゃんで日本一のキーパーで、体も態度もでかいヤツ。ドラえもんで言うところのジャイアンみたいな物だが、賢かったのは翼の実力を見せつけられた時点で味方に回った所だろう。まあ確かに「ブラジルへ行ってプロになる」と言ってのける同級生から一歩引いちゃうのは当然という物かも知れない。そのトラウマを振り払うためか、翼より一歩先にドイツへサッカー留学し、プロを目指す。
 両親はイギリス在住。兄は東京の大学。小学生にして広い屋敷の主人を任されていた三男坊。…ここの家庭事情も勘ぐればホコリが出そうだ。
 実力・家柄のせいだけでなく人望があったのは確かなようで、小学生の頃から取り巻きに事欠いていない。幼年レベルでのこういう事はほぼ天性に近い部分があるから、先天的に親分肌なのだろう。実力があり人望があり、それに見合ったプライドと責任感を持ち…私見だが、この話の中では一番いい男に成長してくれる人間ではないかと思っている。

日向小次郎
 キャプテン翼という物語の中では異質と言ってもいいほどの従来型スポ根男。父親を事故で亡くし、母と幼い兄弟を養いながらサッカーで金をもらう事を夢見る直情型熱血FW。ゆえに勝つこと(結果を出すこと)に並々ならぬ情熱を傾ける。フィールドネーム“猛虎”。
 従来の“巨人の星”型スポ根であれば間違いなく主役を張れた人材だが、いかんせん時代が悪かった。「好きだからサッカーする」大空翼にどうしても勝てず、止せばいいのにこれまた“巨人の星”型の暑苦しいリアクションで燃えまくる悪循環。思わず失笑を買ってしまうほどにベタ。中学生編の決勝戦の非常識さはすべてこの男に起因すると言っても過言ではあるまい。
 流行ではないが、日本人受けするキャラクターであることに間違いはなく、ゆえに年長者のファンが多い。とはいえ最後まで主人公の当て馬役から抜け出せずにいた感のある気の毒なキャラである。――いかに日本人好みのキャラクターとは言え、いいかげん飽きられ使い古されている。特にワールドユース編あたり、もう一ひねり欲しかった気がする。

若島津健
 存在自体が問題の空手屋キーパー(自宅が空手道場)。大空翼の後ろに若林源三がいるように、日向小次郎の後ろにも存在感のあるキャラクターをという意図がミエミエで登場した不気味な長髪男。長じて女性ファンが多く付いたが、未だにこの男のどこがそんなに魅力なのか判りかねている店主である。実際にいたら、半径3m以内には近づきたくないタイプ。
 日向小次郎を追いかけて、私立中学に越境入学してしまう。中学生で同級生のケツを追いかけてしまう男を一体どう表現すべきなのだろう(しかも相手は特待生、自分は一般入学である)。女の子の連れション的心情なのか、あこがれのお姉さまへの忠誠心か…。日向小次郎への敵愾心みたいな物が一切感じられないのが、この年頃の男の子として信じられない。この年で自分の人生の主役を他人に譲って、何の疑問も感じなかったんだろうか。
 ワールドユース編でそのプライドの鱗片を見せてくれたが、日向の頼みで帰ってくるあたりが甘ちゃん。総じてこいつの心情は理解し難い。何を思ってサッカーをやり、何を思って日向小次郎のケツを追いかけているのだろう。

三杉淳
 心臓病フィールドプレイヤー。存在自体が問題なキャラその2。
 心筋細胞は受精2週間ぐらいで形成され、そのまま一生使い続ける非分裂細胞である。この心筋に異常があるのが心臓病で、奇形が進んでいない若年時の手術か、心臓移植かしか根絶治療の手だてはない。その彼が心臓押さえながらサッカーするんである。大会責任者は心臓が止まりそうになっている事だろう。
 財閥のお坊ちゃんで、優等生(将来は医者兼サッカー選手を目指すそうな)。周囲のおかいこぐるみの過保護と敷かれたレールを走るのがイヤだからサッカーに入れ込んだ、ぐらいの事情は何となく推察できる。が、何をおいても心臓病である。サッカーと心臓病の取り合わせは、どう転んでもギャグにしかならない。
 体のハンデをカバーすべく、チーム戦術に重きを置く現代サッカーに一番親しんでいる。小学生でオフサイドトラップを仕掛けるあたり相当な物だ。

松山光
 北海道ふらの市のサッカープレイヤー。おそらくこの物語の中で一番まっとうで一番精神的にノーマルな人間。そんな男が周囲に引きずられて世界一にたどり着いてしまうのがこの物語だったりする訳で。ある意味彼本人にとっては不本意な話なのかも知れない。
 チームワークを尊び、才能のなさを努力でカバーする根性の人。恐らく将来どんな仕事に就いたとしても、そこそこに成功するタイプである(よほどの不運に捕まらなければ、だが)。根本の所で善人であるからして、他人を殺してでも前に進むような大空翼や若林源三、日向小次郎なんかとは根っから相性が悪かろう。たぶんそういう切り捨てられてしまう者の代表として、この物語の中にいるのだと思う。
 決して強烈な個性を発する訳ではないのに、本人さえ知らない内に輪の中央に立っているタイプ。敵は少なく味方は多く、苦労も少なくはないがそれを苦労と感じないだけの愚直さを持つ人物。遠くに見て憧れる星ではないが、近くあって尊敬できる魅力的な男だろう。

カール・ハインツ・シュナイダー
 ドイツ人。ドイツ代表ジュニアチームのキャプテンにして孤高のストライカー。父親が認められないサッカー監督で、母親と離婚騒動を起こしていた事からくる人間不信を囲っている。自分と同じ境遇を分かちあっている妹を溺愛している模様。
 応用の利かない愚直なドイツ人の典型。フィールドネームが“皇帝”であるからカリスマ的な人望はあるようだが、本人にそれを受け止める気がさらさらないのが困った所。友情よりも、サッカーに対する己の野心・プライドよりも、家族問題の方が切実らしい。思いこんだら女より理屈の効かないタイプかも知れない。
 金髪碧眼の美少年(うぷぷ)。ドイツ人の常で、きっと年を取ったら赤ら顔のビア樽野郎になるんだろうなあ。
 ハンブルグFCでは若林源三のライバルだった。現在の所属はバイエルン・ミュンヘン。

エル・シド・ピエール
 フランス代表ジュニアチームキャプテン。MF。
 けっこうな家のお坊ちゃんで、どうやらお貴族様らしい。とくればかなりベタなキャラクターである事は察していただけるだろう。おフランスのお貴族様とくれば、もうこりゃ美形キャラしかあり得ない訳で…。薔薇の花とかピアノとかシャワー後のコロンとかが高橋陽一の描く美形のサインなんだろうと思うと…ちょっと切ない。
 徹底した個人主義で鳴るフランス人チームでキャプテンを張るあたり、ただの綺麗所でない事だけは確かである。試合中にチームメイトをどつき倒すあたり、性格的にはかなりどすこい奴だと思われる。

ファン・ディアス
 お調子者のアルゼンチン人。モデルは誰に聞かなくても判るマラドーナであろう。天才を自称しチームを引っ張るカリスマリーダー。調子に乗せてしまうと一番怖いタイプである。何たって常識という物が通じない。自分が神様なんだから。
 万全の自信で挑んだ国際Jrユース大会で彼以上の非常識男・大空翼(前半初っ端に3点差つけられて、そこから逆転するんだもん)に破れ、とりあえず雪辱を狙っているらしい。できればヤクに走らない、まっとうなサッカーをして欲しい。

カルロス・サンターナ
 映画で“ロベルトの愛弟子”という看板背負って登場。明らかに翼への当て馬キャラだと思っていたら、本当にそうだった。原作ではそれ以上に気の毒な設定で、つくづく報われない奴だの観を新たにさせる。
 ブラジルのような国で最下層から這い上がるには、それこそサンバかサッカーしか手段がないのは事実である。しかしだからって「サッカーを楽しめないサッカーサイボーグ」という設定は無理がありすぎる。サッカーのような自由度の高いスポーツを楽しめないとしたら人格欠損の可能性あり。自分の考えで何かを作り出し、自分の体全てを使って何かを表現するような職業が楽しめずにできるはずがないじゃないか(世の中にはそれがやりたいがために安定した職を捨てる人間がゴマンといるんだぜ)。
 何にせよ大空翼の腐れ縁ライバルの一人には違いなく、よって「ボールは友達」な感化から逃れられる訳もないんである。

ナトゥレーザ
 ブラジル奥地のアマゾンのジャングルに生息する謎の新人類。どうやら超能力が使えるらしい、ってのは冗談。
 ワールドユース編の最後の1巻にだけ登場し、美味しい所をさらっていったちゃっかり者。やはり超能力者と思われる兄同様、その行動は人類の理解を越えている(地球の反対側から神のお告げで日本にやってくるあたり…)。
 アマゾン川側流域には、いまだに一銭の金も使わず生活する人々がいる。魚を捕り、芋を掘り、自分で作った小屋に住む。そういう人々は街に出てきたがらないそうだ。金がかかるという事それ自体が煩雑に感じてしまうらしい。そういうカルチャーギャップな部分をサッカーで表現するとああなるのかと思ってみたり。
 最終的にスペインリーグ・レアルマドリットに移籍し、同じくバルセロナに移籍した翼とライバルしている模様。フィールドネームは“サッカーの王”。