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その7 自動巡回ソフトへの対応


 小説などの長文データーを公開する時、考慮に入れて欲しいのが自動巡回ソフトの存在です。どういう物かご存じない方のために説明しますと、要するに読みたいHPのアドレスを設定しておくだけで、そのHPのデータを丸ごとダウンロードしてくれるというスグレモノだったりいたします。
 このテのソフトの一番ポピュラーな目的は、エロ映像集めでしょう。私の身近にもこのソフトを使って5GのHDD一杯のエロ映像を集めた奴がいます。誰とは言いませんけど(笑)。


 長文データーは、読むのに時間がかかります。ケーブルTVなどを導入して、24時間ネットに繋ぎっぱなしの環境を実現している方ならオンラインで全ての文章を読むのもいいでしょう。けれど大多数の方にとって、通信費用は頭痛のタネです。
 考えてもみてください。原稿用紙100枚以上の小説や、20本以上の短編小説が公開されている時、それを全てオンラインで読んだらどれだけの費用がかかることか。けれど自動巡回ソフトを利用すれば、かかる費用は文書読み込みの時間分だけ。接続を切ったあと、好きな時間にゆっくりと読むことができるのです。もちろん面白いと思えば繰り返し読み返す事だってできる。
 通常の書籍を読むとき「今日はここまで。続きはあした」という読み方ができるでしょう?HP文書に、それと同じ事を可能にするのがこのソフトです。


 私も巡回ソフトを使っています。小説を公開しているサイトを見つけると、まず短そうな物を2本ばかりオンラインで読みます。それが自分の好みにあっていたら、おもむろに自動巡回ソフトを立ち上げ、小説メニューページのアドレスを登録。ソフトに巡回を指定すれば、そのページからリンクされている全ての小説をダウンロードしてくれます。
 HP管理者の方にとって、これは嬉しくない事かもしれません。小説ページを直接読みに行く訳ですから、トップページのアクセスカウンタの数字は上がりません。できれば全てのコンテンツを読んで欲しいのに、小説のページしか読んで貰えない。文書をダウンロードされてしまうので、もしかしたら無断転載されてしまう可能性もある。――管理者さんの中には、このような自動巡回ソフトのアクセスを無効にする指定をされている方もいらっしゃいます。


 このようなソフトを受け入れるか入れないかは、管理者さんの考え方次第だと思います。読者側のメリットは先に述べました。では送り側が自動巡回を受け入れるメリットは何でしょう?
 自動巡回ソフトにアドレスが登録されるということは、かなりの確率でそのページのリピーターになってもらえるという事です。つまり1ヶ月に1・2回、ページを自動巡回してしてくれるという事。早い話、固定読者がついた、という事です。小松左京・筒井康隆などという大御所作家さんが、自分のページで文章を発表しているご時世です。その同じWeb上で、月に何回か「新しい小説は出てないかな」と見に来て下さるお客様がつくことは、名誉な事だと思いませんか?


 では自動巡回ソフトを受け入れる場合のページ作りのコツを挙げましょう。

『背景にイメージファイルを使わない。使った場合は背景色を指定しておく』
 ――これは自動巡回ソフトがファイル種別を選択してダウンロードする機能を持っている事によります。比較的大きくなりがちな画像データを読み込まないことによって、接続時間を短縮することが可能なのです。当然、背景のGIFなりJPEGなりは読み込まれず、文書のみのダウンロードになります。
 ダウンロードした文書をオフラインブラウズした時、当然イメージは表示されません。大抵の場合、さほど問題はないのですが、文字色が白または灰色だった場合には、文字が背景にとけ込んで空白の文書になってしまうのです。このような事を避けるために、背景にイメージを張り付けた場合は必ず似た色の背景色を指定しておく事をお勧めします。

『全ページをフレームで構成しない』
 自動巡回ソフトは、指定されたアドレスにリンクするファイルを何階層かまとめてダウンロードしてきます。ですからHP全体がフレーム内で動くものであった場合、必然的にフレームファイルをアドレスとして指定しなければなりません。欲しいのは小説のページだけなのに、リンクのページやBBSのページまでも読み込まれてしまうのです。
 小説、イラスト、写真館など、自動巡回を受け入れるコンテンツのメニューのページを、フレームから外して下さい。作品ページそのものはフレームが使われていてもかまいません。起点となるページのアドレスが確定していさえすれば、自動巡回登録には何の支障もありません。

『階層を深くしない』
 自動巡回ソフトは登録されたアドレスからリンクされている文書を指定された階層数だけダウンロードしてきます。メニューから直接リンクされている文書を1階層、そこからさらにリンクされた文書を2階層と数えます。メニューから全ての文書がリンクされていればいいのですが、メニューの下にさらにサブメニューがある場合などは、ダウンロードする階層数を増やさなければなりません。
 可能な限り、メニューから全ての文書をリンクして下さい。各章に分けた文章をact1、act2…という形でリンクする形式です。第一章の終わりからしか第二章文書をリンクしていない場合、途中の章までしかダウンロードされない可能性があります。
 メニューに章数が書いてあれば、オンラインで読む場合でも文書の長さをみる目安となります。読み手に「これから長編を読むゾ」という覚悟を決めさせるためにも、トップからおおよその文章ボリュームを知らせておく方が親切です。

『コンテンツメニューにHP名を明記する』
 小説メニューのタイトルをただ“小説のお部屋”とするのでなく“京屋の小説部屋”とするのです。
 こういう言い方は何なんですが、HPのコンテンツを全て読んでくれるのは、顔見知りのお友達ぐらいの物だと思います。大多数の人は“初めての方へ”とか“BBSのページ”なんか見てはくれません。どの情報を選択し、どの情報を切り捨てるかは読者の自由。自動巡回ソフトはそれを端的に表したソフトかもしれません。
 全ての人がトップページを“お気に入り”に登録してくれる訳ではありません。小説の読みたい人は小説ページに直行するし、画像が見たい人は画像ページを直接アクセスします。
 ならばせっかく作品を読んでもらうのです。間違いなく自分のページのコンテンツである事を印象づけるよう努力しましょう。作品ページの先頭に作者名・HP名をおしゃれなレイアウトで入れるとか、メニューの下の方に他のコンテンツへのリンクを作るとか…。面白い作品であれば、読んだ人は間違いなく作者名を覚えます。他に興味のあるコンテンツがあれば、オフラインからオンライン接続に切り替えて見に来てもらえる可能性も高いです。


 Web上には自動巡回ソフトを受け付けてくれないページが存在します。今まで見た中で一番すごかったのはHPの文書を全て直接リンクせず、スクリプトファイルを間に挟んでリンクしているという物でした(ソース覗いてびっくり、でした)。――恐らくこの作者の方は、以前に無断転載か何かでよっぽどイヤな思いをされた事があるのでしょう。
 個人的にそういう経験がないからこそ言えるのかもしれませんが…たかだか何千人に一人か何万人に一人の不届き者のために、他の大勢の方に不自由な思いをさせたくないと思っています。できるかぎり読みやすい文書を、できる限り負担にならないように、叶うなら何度も繰り返し読んで欲しい。
 確かに文書をダウンロードされてしまう事は、無断転載を可能にします。けれどそれと同時に、誰かのHDDの中に自分の作品を置いてもらえることも可能になるのです。自分のHPがWeb上から消えた後まで、誰かのFDやCD-R上に自分の作品が残っている。これって、お気に入りの本がその人の本棚の片隅に置かれているような物じゃありませんか?

 自動巡回対応するかしないかは、管理者の判断次第です。