bake
その8 推奨環境について


 HPのトップページでよく見かけるのが“このページはIEX.XとNNX.Xで表示確認しています”とか“推奨環境はXX(ブラウザ名やディスプレイ解像度、フォント名などなど)です”といった記述です。おそらくHPオーナーさんの環境だと思うのですが、ちょっと考えてみて下さい。


 インターネットは「いつでも、どこでも、誰からでも」アクセスできるのが基本です。小難しいいい方をすると「完全な情報的平等」とでも言うんでしょうか?一局集中型の情報管理ではなく、点在するサーバーで情報を管理し、どんなに人里離れた所に住んでいる人でも欲しい情報を得ることができる。年齢や性別や身体のハンデキャップの有無の条件に関係なく、欲しい情報を得ることが可能なのです。Eコーマスだのネットバンキングだのと言った便利な技術があるのは認めます。けれどネットの一番の意義は、この「情報の平等性」じゃないでしょうか。
 古い機械を使っている人でも、OSが違う人でも、通信速度が遅い人でも、同じ情報を得ることができる。だからこそ「たくさんの人に読んで欲しい」という書き手さんの格好の活躍の場になるのでは、と私は考えました。もしこの考えが正しいなら、推奨のブラウザを決める事はそれだけ読んでもらえる可能性を狭める行為だと思いませんか?
 そんなこんなもあって、私はこのページに推奨ブラウザを指定していません。できる限り色々な人に読んで欲しいから“このブラウザでないと読めません”というページは作りたくなかったのです。たとえどんなに一般的でないブラウザであっても「読めません」と言われれば対応するつもりでいます。別に難しい事ではありません。文章だけを表示する事は、どんなブラウザだってできる事なのですから。


 最初にHPを作る時、皆さんは一体どんな事を考えますか?お友達のカッコいいページを見て「こういうの作りたいな」と思ったのがきっかけですか?あるいは「我が家のペットの○○クンをみんなに見てもらいたい」とか「HPでお店を持って商売をしたい」と考えたのが始まりでしたか?
 まず考えなければいけないのは「何が目的か」という事です。たとえば「可愛いページを作って誉めてもらいたい」とか「アニメーションを公開したい」「人をあっと言わせるような印象的なページを作りたい」というのであれば、対象ブラウザを限定する必要が出てきます。場合によっては動画再生や音声再生のプラグインも必要かも知れません。
 Windowsソフトをネット販売する会社のHPがMacで見たらぐちゃぐちゃであっても、それは決して間違いじゃありません。そのページの目的は「Windowsユーザーにソフトを買ってもらう事」なのですから、その目的さえ果たせればいいのです。


 では「大勢の人に自分の作品を読んでもらいたい」という目的があるなら、どんなページを作るべきでしょう?Macにないフォントを使ってページを作ったり、古いブラウザでは読めないような凝ったデザインのページを作ってよいのでしょうか?

 表示を確認する時は、できる限り古いブラウザを使用して下さい(古いブラウザで表示できれば、新しいブラウザでも表示できるはずです)。ついでに言うと、WinとMacではバージョンの同じブラウザでも、表示は同じになりません。誤表示を避けたければ、HTMLの文法に忠実にページを作ることです。市販のホームページ作成ソフトでページを作成するのであれば、作ったページはさほど問題なくどのブラウザでも表示することができるハズです。
 ページを作成したら、最低IEとNNの両ブラウザで表示確認する事をお勧めします。Macの場合はIE・NN共標準で入っています。Windousの場合、IEは標準でついてきますがNNは入っていません。NNも雑誌の付録のCD-ROMに入っていて無料ですので、ぜひインストールして下さい。実はNNの方が文法チェックが厳しいので、IEで表示される文書がNNで見ると真っ白ページになる事があるのです。反対にNNでちゃんと表示されているならば、IEでもちゃんと表示される確立は高いです。
 HP文書を作成したらまずNNで表示確認して、それからIEで確認するのがいいと思います。

 IEはWindowsのシステムの一部であり、新バージョンをインストールする事によってシステムが不安定になる事がまれではありません。会社によっては一切の個人的バージョンアップを禁止している所さえあります。IEの表示確認を行う場合は、できるだけ古いバージョンの物を使う事をお勧めします。最新バージョンではなく、ver4.0あたりの物を使うのがベストでしょう。


 もしも推奨ブラウザを定めるのであれば“このページはスタイルシートを使用しています。スタイルシート対応のブラウザ(IE4以上NN4以上)を推奨とします”とするのが親切です。“このコンテンツはJavaScriptを使用しています。お使いのブラウザのスクリプト実行をONにしてご覧下さい”のような注意書きも必要でしょう。ヘビーネットユーザーでひんぱんに海外サイトへアクセスしていらっしゃる方は、ウイルスよけのためにJavaもScriptもOFF指定していらっしゃる方が少なくありません。
 「文章と動画で一つの作品だから、ちゃんと両方表示できるブラウザを推奨したい」と言うのであれば、それでもいいと思います。ただ動画を表示できないブラウザでも、文章だけ読んでもらえるようにする事は可能です。



    <HTML>
    <HEAD>
    <TITLE>文書タイトル</TITLE>
    <META HTTP-EQUIV="Content-Type"CONTENT="text/html;charset=x-sjis">
    </HEAD>
    
    <BODY>
    <SCRIPT LANGUAGE="JavaScript">
    <!--
        if(navigator.appVersion.indexOf("Win") != -1){
            if(navigator.appName.charAt(0)=="M"){
               if(navigator.appVersion.charAt(0)<=2){
                lication.html="WinIE2.htm"
               }else
               if(navigator.appVersion.charAt(0)>=3){
                lication.html="WinIE3.htm"
               }
            }else
            if(navigator.appName.charAt(0)=="N"){
               if(navigator.appVersion.charAt(0)<=3){
                lication.html="WinNN3.htm"
               }else
               if(navigator.appVersion.charAt(0)>=4){
                lication.html="WinNN4.htm"
               }
            }else{
              lication.html="Winその他.htm"
            }
        }else
        if(navigator.appVersion.indexOf("Mac") != -1){
            if(navigator.appName.charAt(0)=="M"){
               if(navigator.appVersion.charAt(0)<=3){
                lication.html="MacIE3.htm"
               }else
               if(navigator.appVersion.charAt(0)>=4){
                lication.html="MacIE4.htm"
               }
            }else
            if(navigator.appName.charAt(0)=="N"){
               if(navigator.appVersion.charAt(0)<=3){
                lication.html="MacNN3.htm"
               }else
               if(navigator.appVersion.charAt(0)>=4){
                lication.html="MacNN4.htm"
               }
            }else{
              lication.html="Macその他.htm"
            }
        }else{
          lication.html="その他.htm"
        }
    //-->
    </SCRIPT>
    お使いのブラウザではJavaScriptが動作しません。<BR>
    <A HREF="その他.htm">こちら</A>をクリックして下さい。<BR>
    </BODY>
    </HTML>

 ちょっと長いですが、上の枠内にあるのがOSとブラウザの種類・バージョンを判定して表示するページを振り分けるための仕掛けです。<SCRIPT LANGUAGE="JavaScript">から</SCRIPT>までの間が自動で表示を振り分けるスクリプト、その下の紫の文字はスクリプトが動かない場合の文章へのリンクです。
 if(navigator.appVersion.indexOf("Win") != -1)は「この文章を見ているのがWindousだったら」の意味。その下のif(navigator.appName.charAt(0)=="M")は「IEだったら」という意味です("M"は、MicrosoftのMです)。そしてif(navigator.appVersion.charAt(0)<=2)が「バージョンが3以下だったら」という意味。同じくif(navigator.appVersion.charAt(0)>=3)は「バージョン4以上だったら」という意味です。
 lication.html="WinIE3.htm"は「WinIE3.htmという文書を表示して下さい」という意味です。つまりこの仕掛けは、見ている人に合わせて表示する文書を変えているんですね。スタイルシートに対応しているIEver3以上と以下で、表示する文書を変えるのに有効です。
 あとは全部一緒です。if(navigator.appName.charAt(0)=="N")は「NNだったら」でif(navigator.appVersion.indexOf("Mac")!= -1)が「マックだったら」という意味。最後のelse{が「WinでもMacでもなかったら」。…どうですか。HPを見る人にはこんなにたくさんの種類の人がいるんですよ。その全部の人に文章を読んでもらえたらすごいと思いませんか?

 自分の環境と同じ環境で見る人全てが見てくれる訳ではありません。HPのトップページに来てもらう事は、誰にでも訪れるチャンスでしょう。けれど「立ち止まって読んでもらう」事は、努力しなければ訪れないチャンスです。
 自分と違う人への思いやりは、想像力と知識の産物です。――精進を続けましょう(偉そうに…)。