78. 呉越同船(27巻FILE.10〜28巻FILE.2)
 万単位のオーダーで卵を生んで、生き残るかは運任せというのが魚類なんかの生命戦略。逆に多産でない動物は、それに反比例するように子育てに時間をかける。ゆえに熊だのライオンだのに限らす鳥類なんかでも、母親から子供を引き離すのは壮絶な作業である。話の発端となったハンターは、一体どうやって小熊を捕まえたのだろう。巣穴から引っさらったのか? だったらそこで待ち伏せしてりゃいいんであって、小熊を殺してつるす必要はない。まあたぶん狩猟よりそういう事のやりたい男だったのだろう。
 暗号という名称は「解読方法を知っていれば誰にでも解読できる物」に限定して使って欲しいと思う今日このごろ。互いの行動・思考パターンに解読法をゆだねるようなシロモノは、単なるダジャレ・謎かけである(酒鬼薔薇の文章と種別的には変わらない)。当然キッドの予告状も暗号ではない。読み解けるヤツの神経構造の方がおかしいのだ。
 余談だが、友人にマタギの息子と結婚した奴がいる。ダンナの実家はマタギの里で、毛皮のちゃんちゃんこを着たオヤジや、農作物を荒らしにきた猿を撃って食っちまったじーさん、マムシ酒を漬けるばーさんなど、話のネタにこと欠かない人材が揃っているようだ。人間より熊が好きなオヤジぐらいは軽くいそうである。人間より二次元が好きな奴がいるかは不明だが。


79. 偽りの人(28巻FILE.3〜28巻FILE.5)
 西原理恵子のマンガに、両親に全然似てない学友が、親族一同の写真で遠縁のお爺さんにそっくりなのを発見した時、そいつの母親が泣き笑いしていたという笑えないネタがあった。服部平次の場合爺さん似な訳だから、そこまで話は複雑ではない。似ていない事が何かと災いの種になる日本の村社会、毛色の違う子供は厄介だ。だからって平蔵そっくりの平次が登場したら、それはそれで更に厄介だが。
 たこ焼きプレート足の上に落として骨折した女、服部母登場。設定としては「デキるけどヌケた女」と言った所か。小五郎に会うために30年前の写真探しを依頼して、殺人事件に巻き込まれるあたりが血筋。30年間音信不通の女の写真握って死んでも、その女は容疑者にはならない。けど、その日ちょうど訪ねてきたなら話は別。このタイミングの悪さで話の要領がイマイチ掴めなかった。それはそうとダイイングメッセージって証拠になるの? 結婚指輪握ってたからって妻が犯人である証拠にはならないと思うけど。
 どうでもいいが訪意の電話はした方がいいよ、小五郎。


80. 人魚の呪い?(28巻FILE.6〜28巻FILE.10)
 ネタはともかく怪奇路線は構成が難しい。この話もイマイチ判りやすいとは言えなかった。守りたい秘密があって、なおかつおかーちゃんの恨みを晴らしたいとなると複雑にもなるんだろ〜けど。
 町おこし、が大事業であるのは言わずと知れた事である。その目玉に長生きしてるばーさんを据えてしまった場当たりさ加減が、とても田舎臭くてよい(電通あたりが絡んでたら、絶対こんな事はなかったろう)。そうして一度始めた事を止められない人間の無精さも納得しよう。――だからって日々一人二役でコスプレ生活してるこのねーちゃんの存在は納得せんぞ。いっくら何でも特殊メークで日常生活は無理ありまくり。サザンの桑田が特殊メークでMC撮った時に、顔から首筋まで肌荒れでぼろぼろになったと言っていたぞ。
 祭りの時の犯人のこのねーちゃん、素早さは尋常とは思えない。婆から娘に変身するのにおそらく1分以内。1時間内に滝の上まで登って友達殺してつり下げて、それから祭りの続き、となる。あとはお通夜やってる座敷の横の庭で絞め殺して争う声は聞こえなかったのかとか、殺してから焼いたんだったら検視でバレるぞとか、保険証返しておけよとか。…火事場でもケータイ繋がるんですか?電波状態大丈夫ですか? 今まさに焼き殺されんとする被害者からの電話ってけっこうシュールだよなあ。
 蜘蛛屋敷の時はそれほどでもなかったけれど、今回は意識して画面を不気味にしようとしていたフシがある。でもなあ、やはり絵柄がコレだとどう足掻いても怪奇は無理っぽい。別に誰も諸星大二郎の絵でコナンが読みたいとは思ってないだろうからいいんだけど(でも…ちょっと見たいかも)。


81. 閉ざされた秘密(28巻FILE.11〜29巻FILE.2)
 誰も待っていなかったろう、かっこいい目暮警部の話。
 結局この犯人は自分の息子を轢き殺した女に復讐したかったのか、厚底ブーツ履いてる女全員に制裁を加えたかったのかどっちなんだろう。人間の心理として、長年追い続けたターゲット一人殺したあとで、なおかつ無関係のもう一人が目に入るものなのだろうか。おいらが犯人なら、その日だけは家に帰ってゆっくり寝るけど。


82. 見えない恐怖(29巻FILE.3〜29巻FILE.5)
 バスジャックである。今日びイカレた高校生ぐらいしかやらないバスジャックである(昔は世界征服を企む悪の秘密結社が幼稚園バスでやっていた)。おまけに爆弾強盗…ますますイカレた高校生である。銀行強盗・営利誘拐――こういうガテン系の犯罪って、やっててそれなりに楽しいのかなあ。
 ビデオ屋に爆弾投げ込む高校生が出没するこのご時勢に、爆弾のプロというのは一体どういう人物であろう? とび職人の発破屋だろうか? 原子爆弾作っちゃえる理学系専門家だろうか? 爆発規模はさほど大きくなかったから、乗客皆殺しのためには後部座席のエンジンの上にも一つ置いといた方が良かったんじゃないのか。
 前々から思ってたけど、ジンって自己顕示欲の強いヤツ? それで犯罪者になったクチ? いくら薄暗いクラブの中とは言え、あんだけハデにナイフ振り回したら注目されると思うよ。


83. 愛犬家たち(29巻FILE.6〜29巻FILE.8)
 柴犬のアーサー、シェパードのコナン、パピヨンのドイル。たぶん家族3人が三様の犬を飼っているのだろうと思うが、家族共通のシュミが犬と推理小説ってのは何だかな、という気がしなくもない。いかにも金持ちの道楽家族っぽいなあ。
 こんな面倒な事しなくても素直に「その首輪をくれ」というか、黙ってこっそり失敬してしまえば良かったのにと思うのは私だけか。犬の条件反射では、いつもと違う部屋で、しかも主人からエサがもらえるんでないとしてもOKなのか? ――愛犬家同士って、同人と同じく(失礼)なかなか本音が吐けない物なのか?
 バカ高い血統書つきの犬を飼う奴らにに対して「命を自分の道楽にして楽しいか」という感想しか持てない私は心貧しき貧乏人でございます。


84. Kスリー(29巻FILE.9〜29巻FILE.11)
 尊敬していた有名人がヤク中の殺人犯だった、ってのと真性マゾで女王様の下僕だった、ってのはどっちが辛いもんだろう? 有名人本人にしてみれば「知りもしないくせに勝手なオレを作るな!」というのが本音なんだろうが。まあそれで金貰ってるような物なんだから、仕方がないといえば仕方がない。お綺麗な顔で澄ましてなきゃならない立場に立っちまった自分を呪えばいい。
 硝煙反応を出さないために、このおっさんは服を裏向きに着ていたのだと言う。銃を撃ってから窓から顔を出すまでの3秒間に、服を着直せたのだろうか。たしか一番下の階だったから、ヘタすれば裏向きに着てるの判っちゃうんじゃねーの?
 もしも私が殺される時は、決して意味不明なダイイングメッセージだけは残すまいと思う。死後の捜査の迷惑を考えると、黙って死んどいた方が得策だって気がしてきた。

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