名前
キリヤマ隊長
作品
「ウルトラセブン」
タイプモグラ
悪人度
かっこよさ度
強さ
存在感
作品貢献度10
「ノンマルトの海底基地は完全粉砕した! われわれの勝利だ! 海もわれわれ人間のものだ! われわれの海底開発を邪魔する者は二度と現れないだろう!」




 役者は中山昭ニ。98年に逝去され、もうあの勇姿が見れないと思うと残念です。中山
さん、「流星人間ゾーン」にも出演してますが、マヌケなパパ役なんて、僕の知ってる
中山さんじゃありません。僕が大好きなのは、キリヤマを演じる中山さんです。

 キリヤマ隊長、オープニングでは主人公より先に、一番最初にテロップされる男。名
前は漢字じゃありません。片仮名で「キリヤマ」、その下に「中山昭ニ」。この男、毎
回「なに?」と、甲高い声でリアクションします。「な」にアクセント。電話をとって
は「なに?」、隊員の報告を受けては「なに?」、なにがなんでも「なに?」(爆)

 初代マンのムラマツ隊長は、ジェット・ビートルで忘れ物の傘を届けさせる位のお茶
目サンでした。帰りマンの伊吹隊長は、郷秀樹から「隊長は師であり父であり…」とか
言われていながら、郷が「信じて頂けないかも知れませんが、あの少年は宇宙人なので
す」と告白した途端、「僕には君の方が宇宙人に思えるよ! 謹慎し給え!」と突き放
す、まったく鬼のような人物でした。それに比べてキリヤマ隊長、ソツがありません。
あるいみ、影が薄い。90年代に流行した「研究本」では、「ダンとアンヌの社内恋愛を
見て見ぬふりをした理想の上司」などとも書かれていましたが…。

 しかし、断言します。キリヤマ最強。つか、最凶。
「セブン」では、宇宙人本体あるいは怪獣をセブンが担当し、円盤はウルトラホークが
撃墜、という「分業パターン」が堅持されていました。だから…と言うダケではありま
せぬ。このひと、なんと3つの民族を滅亡に追いやっているのです!いいですか? キ
リヤマ個人が3度もジェノサイドを実行しているのですよ?そんな隊長、いや個人なん
て見たことありません。空前絶後。

 引用を散りばめた「バトルロワイヤル」では、最凶の殺人鬼の名前が桐山でした。元
ネタはもちろんキリヤマ隊長だと断固主張しておきます。


 キリヤマ隊長には親友がいます。その名はクラタ隊長。隊長が2人いるのは、こうい
うワケです。まず、キリヤマが所属するウルトラ警備隊は「地球防衛軍」の下部組織、
英語名は「Tokyo defense force」。専用車ポインターのフロントに大きく「TDF」
と書いてあるのはそのためです。ようは日本支部。それにしても
「Tokyo defense force:東京防衛軍」が通称「ウルトラ警備隊」とは、おこがましい
にも程がありますな。(ボソ

 で、親友・クラタは宇宙ステーションV3の隊長なのです。(※たいへん紛らわしい
のですが、ウルトラ兄弟の組織は「宇宙警備隊」です。ウルトラの父が大隊長、ゾフィ
が隊長)

 そして、13話「V3から来た男」で、宇宙ステーションV3が破壊され、唯一生還し
たクラタを迎えるシーンでのこと。

キリヤマ「おお、生きていたか、この悪党!」
クラタ「まだ腕はサビついちゃいないようだな、モグラめ!」

 それまでマイホーム・パパ的なキャラだったのに、いきなり「男」になるキリヤマ。
「モグラ」とは地球勤務のことです。この回はクラタのダンディぶりがこれでもかと強
調されるのですが、あまり関係ないので割愛します。とりあえず、2人が大親友である
ことだけ確認しておきます。

 (※あ、1つだけ。偽アマギ隊員を射殺したダンを見て、

 キリヤマ「なぜ殺した?」
 ダン、説明。
 クラタ「モロボシ……ダン、やるな」
 くぅぅ。この「……」の間がいいゼ。かっちぇーよ、クラタ君)

 さて、35話「月世界の戦慄」、大親友であるところのキリヤマ&クラタ、そして主人
公ダンが、壊滅した月基地を調査に行くエピソードにて。月基地の生き残り1名を含む
メンバーで月基地内を捜査していると、酸素が足りない! ドアが開かない! ……突
然一行は(お決まりの)ピンチに陥ります。するとダンが何かを見つけて「この中に犯
人がいます」。それを聞いたキリヤマ、「ははははは、分かっているよ!」

 …ほとんど楳図かずお「漂流教室」の関谷並みの恐怖の笑いです。そして銃をとりだ
すキリヤマ。ビクっとするダン。ダンに感情移入してるTVの前のお子様にとってはか
なり恐怖です。「志村、うしろ!うしろ!」しかしキリヤマ、クルっと身を翻して「生
き残り君」をイキナリ射殺。なんでも、酸素ボンベのパイプが外れてるのに平気な顔を
してたから宇宙人だと見破ったんだそうな。やるぜ、キリヤマ! 視聴者の予想の先を
行く、さすが隊長、切れ者です。

 しかし、問題はここからです。キリヤマによれば、こいつらはザンパ星人の残党なん
だってさ。なぜ分かる?

「ザンパ星人は、俺とクラタが数年前に全滅させたから」

 ……ぜ、全滅ですか? み、皆殺しにしたのですかぁ?

 まぁTVだから、なんて言わんで下さい。いくらTVでも、他シリーズなら、そもそ
も宇宙人1人を倒す能力を人間が持つのは非常に稀で(天才イデ隊員は例外です!)、
ウルトラマンが敵を根こそぎ全滅させることだって滅多にありません。いや、極めて稀。
それを個人が……。

 じつは、彼・キリヤマは「常習」なのです。たとえば、6話「ダーク・ゾーン」では、
宇宙の英知を結集して建造された人工惑星ペガッサ・シティが軌道を外れて地球に迫っ
てきます。このときキリヤマは、ペガッサ人と連絡がつかないのを知るや否や、ペガッ
サ・シティの破壊を断固たる態度で決断します。もちろん番組内でも、ペガッサ・シティ
には「数億の人間(異星人)」が住んでることが明らかにされてるんですけどね。ウル
トラホーク1号2号、出撃! ミサイル発射! どか――――――――ん。全滅=ジェ
ノサイド。

 そして、42話「ノンマルトの使者」。ある日のこと、原子力潜水艦シーホース号が破
壊され、犯人は「ノンマルト」を名乗ってウルトラ警備隊に挑戦してきます。ダンとア
ンヌは海岸で「海はノンマルトのものだ!」と叫ぶ少年・新一に出会って……

アンヌ「ノンマルトって何?」
新一「地球の先住民族さ。人間が住む前からノンマルトは地球に住んでいるんだ」
アンヌ「新一君はノンマルトなの?」
新一「……(沈黙)」
アンヌ「私は人間だから人間の味方よ。新一君もそんなこと言うべきじゃないわ」

 ……アンヌお姉さん、けっこう怖いです。

 キリヤマ、この報告を受けて(一応)考え込みます。ダンも心の中で「僕の星では地
球人のことをノンマルトと呼んでいる…」とか何とか。ノンマルトとは「ノン・マルス」
マルス(マーズ)は軍神だから、訳せば「非暴力の民」と言ったところか。

 やがて最終決戦。セブンは怪獣ガイロスと戦い、キリヤマたちは潜水艦でノンマルト
の海底基地を発見します。

「(少し躊躇して……)いや、攻撃だ!」
ミサイル発射、どか――――――――ん。……ジェノサイド完了。

 そしてキリヤマ、勝利の宣言!

「ノンマルトの海底基地は完全に粉砕した! われわれの勝利だ! 海もわれわれ人間の
ものだ! われわれの海底開発を邪魔する者は二度と現れないだろう!」

 もう1回繰り返しちゃえ。

「ノンマルトの海底基地は完全に粉砕した! われわれの勝利だ! 海もわれわれ人間の
ものだ! われわれの海底開発を邪魔する者は二度と現れないだろう!」

 ……至言です。(爆)

 ようするに、ここでキリヤマは、あるいみ典型的なナショナリストとして描かれて、
作品に内在する永遠の問題(=地球の味方をすることが正義か?)を、最もグロテスク
な形で引き受けてるワケです。時は1968年、ベトナム戦争でアメリカの正義が決定的に
疑われた時代。日本でもアメリカ(=第7艦隊、ウルトラセブン)に依存することが問
われた時代でありました。(安保問題)シナリオ作家・金城哲夫は沖縄出身、当時の沖
縄はまだ本土復帰していません。沖縄に生まれながら東京で育った金城は、沖縄の土着
アイデンティティが弱かったのか、セブンの初期、ダンにこんなセリフを言わせていま
す。

「宇宙でも地球でも正義は1つなんだ」(7話)

 つまり金城は最初、アメリカ・日本・沖縄(・ベトナム)に共通する普遍的正義を構
想していました。しかし作品が進むにつれ、あるいは時代状況が進展するにつれ、そん
なものは信じられなくなってくる。その自虐的な表現が、キリヤマの「われわれの勝利!
海もわれわれ人間のもの!」だったのです。(※ちなみに、「きんじょー・てつお」を
モジって「キングジョー」になったそうです)

 こうした重苦しい雰囲気の中、最終回「史上最大の侵略」はこうなります。クラタ−
ダン−キリヤマのセリフの連鎖が見所です。

 ゴース星人は地下弾道弾で世界の主要都市を破壊すると宣言、史上最大の侵略を開始
します。その途中でアマギ隊員は敵に捕らえられてしまう。が、最後に敵の本拠地を突
き止めた時、同僚のソガ隊員はアマギを先に救おうとする。それを制するクラタ。

クラタ「ヤツもウルトラ警備隊の一員だ。自分が救われることよりも、人類全体が救わ
れることを願うだろう」

 テロリストにジャックされた旅客機を撃墜する決断を想像して下さい。冷厳な功利主
義の原則がここにはあります。その発言をビデオシーバーで見ているダン、この言葉に
触発され、最後の変身を決意します。セブンの肉体的ダメージはすでに臨界点を越えて
おり、このつぎ変身すれば死ぬかも知れないのに。……中略……、アンヌ「ダン、行か
ないで」、ダン「アマギ隊員がピンチなんだよ!」―――そして変身。

 このダンのセリフはクラタの発言に対応しています。つまりダン=セブンは、人類全
体のために戦うのではなく、友人ために戦おうとするワケです。なんというか、浪花節
ですね。(笑)

 すでにニューヨーク・ロンドン・パリ・モスクワが破壊され、廃墟になった地球の片
隅。夜明け前の薄明の中、赤いからだに銀色の鎧を着た騎士が、手足が鋼鉄でできた赤
い色の竜と戦っている。BGMは、シューマンのピアノ・コンチェルト。騎士は正義の
印である剣(アイスラッガー)を竜に奪われ、正義と悪は、もはや見分けがつきません。
この場面の色彩の意味論はすばらしいです。視覚的−聴覚的に盛り上がりまくるラスト。
(※ちなみに、セブン怪獣はエレキング以来、竜をモチーフにしてきました。そして最
後の竜は、自分と同じ皮膚の色をしていたんですね)

 その時、アンヌがセブンの正体を告げ、隊員たちは口々にセブンを指して「ダン!」
と呼び始めます。そしてキリヤマ。

「行こう! 地球の平和はわれわれ人類の手で自ら守り抜かねばならない!」

 ……いや、ジェノサイド常習のアンタはもう十分に人類を守ってるyo (藁)

 ……という冗談は脇に措くとして、好意的に言えば、人類のために戦うこと(クラタ
の言葉)が、ダンとの友情のために戦うこと(ダンがアマギのために変身したように)
に重なりあうような、幸福な「個と全体の一致」がここにあるワケです。しかし、そん
なものが幻想だとすれば、個と全体を無理矢理一致させようとする「ナショナリズムの
詐術」がここにある、とも言えそうです。

 かろうじて怪獣を倒し、夜明けの光に中にスクっと立ちあがるセブン。そして宇宙へ
去るセブンを見送るキリヤマたち。きっと、その胸にはこんな言葉が響き渡っていたに
違いない。

     わ――い、独立マンセー! そして再軍備だ、行け行けドドーン。



「なに?」
「この悪党!」
「海もわれわれ人間のものだ!」
「地球の平和はわれわれ人類の手で自ら守り抜かねばならない!」


「明日を捜します」
珍しくキリヤマが主人公になったエピソードにて。正しくは「明日(を予言する親父が
とても気になるので、休暇をとって)捜します」です。なので、べつに抽象的意味はナ
ッシングなんだけど、カッコつけてるよね…。(23話)
この原稿、キリヤマ隊長の画像は、にひさんに投稿していただきました。

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