名前
ヨブ・トリューニヒト
作品
「銀河英雄伝説」
タイプ扇動政治家
悪人度10
かっこよさ度
強さ
存在感
作品貢献度10
「専制主義が私に力を与えてくれるなら、今度は専制主義が私の恩人になるでしょうな。私は民主主義を賛美する以上の真摯さをもって専制主義を信奉しますとも」




 自由惑星同盟末期の政治家。国防委員長、暫定政府首班等の要職を経て、宇宙歴79
6年、国家元首にあたる最高評議会議長になる。爽やかな外見と巧みな弁舌で同盟市民
の支持を得るが、その内実は保身と出世の術に長けた扇動政治家であった。

 同盟市民の愛国心を煽っては戦争を遂行し、軍部にも影響力を浸透させるが、彼の権
力維持・出世のための近視眼的な政策は軍部や国力の停滞を招いた。799年、帝国軍
に侵攻されるとあっけなく降伏することになる。

 その後、帝国に庇護を求めて亡命し、新領土総督高等参事官としてハイネセンに赴任
する。帝国に議会を開かせた後、それを基盤に自分の勢力を伸ばしていこうという計画
を企てていたらしいが、最期はあっけなくロイエンタールに射殺された。


 この作品では、「最良の専制政治と最悪の民主共和政治」といういささか作為的な設
定のもと、「それでも最良の専制政治に最悪の民主共和政治は優る」という作者の結論
を前提に、ヤン・ウェンリーという作中の理想的な民主主義者の言動・行動を通して民
主主義を礼賛する、というのが話のボトムラインである(と筆者は考えている)。

 「専制政治の体現者=ラインハルト」と「民主主義の体現者=ヤンウェンリー」のイ
デオロギーの戦いにばかり注目してしまいがちだが、民主主義礼賛という基本的コンセ
プトからしてみれば、ラインハルトよりもむしろ「最悪の民主共和政治の体現者」であ
るヨブ・トリューニヒトの方がやっかいな敵役となってくると思われるのである。

 作中で、トリューニヒトは扇動、保身、権勢欲、陰謀・・・、民主主義のありとあら
ゆる負の側面が具現化されたキャラクターであり、これを心ある民主主義者たるヤン・
ウェンリーが批判する、対決することによって民主主義の負の側面を徹底的に叩く。ト
リューニヒトは作者の主張を明快に表現するための便利なサンドバックとでも言えよう
か。

 一つ興味深いのは、この「最悪の民主共和政治の体現者」は、専制政治の体現者であ
るラインハルトにも、最良の民主主義の体現者たるヤン・ウェンリー一味にも打倒され
なかったことである。彼を殺したのは、政治的背景が全くもって希薄なロイエンタール
によってであった。

「法も,民主主義も,専制君主の侵略も,彼を抹殺することはできなかった。
それをなし得たのは全く理不尽な理由で放たれた一発の銃弾だったのである」

と作中には記されている。


「民主主義もたいしたことはありませんぞ。私をご覧下さることですな、元帥、私のよ
うな人間が権力を握って、他人に対する生殺与奪を欲しいままにする。これが民主共和
政治の欠陥でなくてなんだと言うのです」
ロイエンタールを前にして、自分の腹のうちを全てさらけ出すかのように語る。所詮、
民主共和制など彼にとっては出世のための道具の一つでしかない。

「専制主義が私に力を与えてくれるなら、今度は専制主義が私の恩人になるでしょうな。
私は民主主義を賛美する以上の真摯さをもって専制主義を信奉しますとも」
上の発言に続いて。

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