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実践データベースマーケティング(創刊号)
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『実践データベースマーケティング』へのご登録ありがとうございます。
発行者の岩瀬と申します。私は今まで個人通信販売や情報系システムの立ち上
げをやって来ました。現在は主に顧客データベース絡みのコンサルティングを
させて頂いています。こんな経験を元にデータベースマーケティング
(以下DBMと省略)について書いてみたいと思います。しかし私のノウハウ
だけでは範囲の狭いものになってしまいます。皆様からのお問い合わせや投稿
を頂ければ幸いです。ご意見などはこちらまでお願いします。


創刊号をお届けします。このメールマガジンでは通信販売(以下通販と省略)
の事例を中心にデータ活用の方法をご紹介していきます。創刊号ではDBMが
どんなことに使われているかを簡単にご紹介したいと思います。詳細について
はまた、回を追ってご紹介したいと思います。

●○ 目次 ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

1.口座抽出
1.1.RFM分析
1.2.注文内容分析
1.3.カタログ配送時期

2.商品分析
2.1.パイロットカタログ
2.2.商品の継続掲載
2.3.商品ターゲット分析

【今週のキーワード】:仮説→検証
【今週のお勧め書籍】:販売の科学(唐津一氏)
【今週のお勧め】:『実践!Eメール・マーケティング』

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1.口座抽出
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通販では、どのお客様にどのカタログをお届けするかが大きなノウハウです。
紙のカタログでは、カタログ製作に一部当たり数十円〜数百円のコストがかか
ります。DM(ダイレクトメール)費用でも同じく数十円〜数百円のコストが
かかってしまいます。より期待の高いお客様にカタログを届けるのは当たり前
ですが、どこまでカタログを届けるかによって、採算がある程度計算できるの
です。固定費を算出して、部数によって変化する変動費と売上げを組み合わせ
ることで利益を予測します。期待の高いお客様からカタログを出していきます
から、経済学で言うところの収穫逓減の法則が当てはまります。


1.1.RFM分析
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一番一般的な方法はRFM分析です。アメリカのDMA(通信販売協会)
http://www.the-dma.org/ の文献でも紹介されています。日本でも荒川圭基
氏や江尻弘氏が本にされています。RFMはお客様の過去の注文履歴をポイン
ト化したものです。Rはリーセンシー(近さ)、Fはフリークエンシー(回数
)、Mはマネタリー(金額)を表します。過去の注文が近い程、回数が多い程
、金額が高い程、次に買っていただく確率が高いという考え方です。
手法にはマトリクスセル法やポイント法があります。ただしこの10年で効き
方は随分変化してきました。

日本では大きく分けて3種類の通販があります。

●関西に多い衣料品通販
●関東に多い雑貨品通販
●九州に多い単品通販

Rポイントは特に衣料品や単品通販に良く効きます。雑貨物(一般流通商品)
に関してはRの効き目が悪いのが普通です。RFMポイントもお客様と企業の
取り引き全てで考えた総合ポイント、カタログ別のポイント、商品ジャンル別
ポイントなどがあります。企業によっては、商品によって得点を調整するRF
MIとかRFMTなどもあります。

これらのポイントでお客様を識別して、購入期待の高いお客様にカタログをお
届けする訳です。実際にはRFMポイントに顧客属性を加味してお客様を識別
します。近頃はRFMに対する批判も多くなってきました。確かにRFMだけ
では以前のような精度は期待出来なくなっています。RFMも色々な分析手法
の1つという位置づけになって来ています。


1.2.注文内容分析
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私は良く創刊時に行ないました。今までに買っていただいた注文内容でお客様
を選別する方法です。例えば子供服のカタログを創刊する場合を考えてみまし
ょう。普通、過去に子供用の商品を買っていただいたお客様を探します。次に
は子供服カタログの創刊を告知してカタログ希望を募集します。これだけで
ロットにならない場合、あなたならどうしますか?

優良顧客にお届けするのも一つの方法です。子供のいそうな年代に送るのも
一つの方法です。この他にバスケット(併買)分析があります。子供用の商品
と一緒に買われた商品にはどんなものがあるかを調べる方法です。子供用の
商品は買っていなくても、子供用の商品と相性の良いものを買っているお客様
を探す訳です。また子供用の商品を買う場合の注文の特徴も調べます。

特徴としては次のようなものがありました。

・一緒に買われるものは紳士服・下着
・注文は1オーダー当たりの注文点数が多い
・顧客年代は20代後半〜40代前半
・住んでいるところが地方都市

このような条件で抽出したお客様は、優良顧客を年代で抽出したものより2割
位注文発生率が高かったのでした。


1.3.カタログ配送時期
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カタログをお届けしてから注文をいただくまでの期間は、配送時期との相関が
高いものです。カタログが薄い場合はページ数との相関もありますが。早目に
カタログを送ると、注文までの平均日数が延びます。遅くお届けすると前倒し
で注文が入ります。

しかし最終実績で見ると、やはり配送時期によって注文発生率が変わってきま
す。最終の注文発生率と相関のあるものとして、

・地域
・気温
・他社のDM時期
・店舗のバーゲン時期
・お客様の支払い残額

などがあります。特にお客様の支払い残額や支払い完了時期に着目したものを
キャッシュフロー分析と言います。

カタログ配送の時期を分析するのは、勿論売上げの多くなる時期を見つけるの
が目的です。しかし会社によってはフルフィルメント(注文受付から出荷まで
の作業)効率を重視する場合もあります。商品の手配・コールセンターの稼動
などの問題です。一時期に注文が殺到すれば、欠品が増えますし電話回線もパ
ンクします。商品の発送作業が遅れるとお客様の信用を失いかねません。営業
だけを考えれば一番売れそうな時期にカタログを届けるのがベストです。しか
し在庫を残さない・欠品を少なくする・電話の話し中を少なくする・商品の
発送までの時間を短縮するなどまで考えると、平均して注文が来た方が良い訳
です。こういう面からもいつカタログをお届けするかをシミュレーションする
必要があるのです。

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2.商品分析
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通販では商品の品切れ・売れ残りがハッキリ見えます。逆にある程度まで計画
出来るところが強みになります。ここでもデータが使われます。


2.1.パイロットカタログ
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殆どの通販会社がパイロットカタログを展開します。プレメイルなどとも呼ば
れます。ジャストインタイムで販売する以前にサンプリングしたお客様に販売
テストをするのです。この段階では商品は最低ロットしか仕入れていません。
単品毎の売れ行きを分析して、追加発注をするのです。

予測の仕方にも色々な方法があります。一般的なのは進捗比較です。カタログ
での販売計画が2千万円だとします。このうちパイロットカタログで現在
100万円売れているとします。するとカタログの進捗は5%です。商品Aが
現在5個売れているとすると、単純予測では100個(5÷5%)売れる計算
になります。ただし商品によって時系列の受注曲線が違ってきます。秋口に
カタログを出す場合、防寒商品などは後半(秋を実感してから)の方が良く
売れます。また流行の商品は受注ピークが早く、ベーシックな商品は平均して
後半まで受注が来ます。そこで似ている商品の過去の受注曲線を探して、
進捗率を補正してやる必要が出てきます。


2.2.商品の継続掲載
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本当は商品を継続掲載した方が商売にうまみがあります。過去のデータがある
方が売れ行きも予測し易くなります。単品の扱い高が増えれば、必要経費が
相対的に小さくなるので利益も大きくなります。ただし現在は流行が短く
なっていますし、同じ商品ばかりだとお客様に飽きられてしまいます。継続し
て商品を掲載すると何割か売れ行きが落ちます。効率が落ちても平均以上に
売れそうな商品ならば継続販売した方が有利な訳です。分析手法としては
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)分析やABCZ
(ABC分析の変形版)分析があります。


2.3.商品ターゲット分析
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商品開発では、どの商品がどんなお客様に売れているのか検証する場合があり
ます。しっかりしたコンセプトやターゲットを持たないと企業の力を相乗効果
に出来ないからです。一般的なのは年代別の売れ行きを検証して次の商品開発
の参考にするものです。狙っていたターゲットと実購入層はどうして違ったの
か仮説を立てながら商品の企画をします。

逆に商品の方にターゲット年令を記録しておくことで、購入者に消費年令とい
う項目を付加する方法もあります。私たちは物を買っていただくことが目的で
すから、戸籍上の年令よりも消費年令の方が常に正しいのです。

この他にも色々な分析方法があります。統計学を使ったものもありますし、カ
オスやデータマイニングを使うこともできます。シミュレーションをするなら
ば、オペレーションズリサーチ(OR)をすることも多いものです。ハッキリ
言えることは、特別な数学を使うよりも仮説を立てて検証してみることが一番
確かな方法だということです。確かに実験していく上では、実験計画法や多次
元解析法など知っていると便利なことは色々とあります。しかし何よりも必要
なのは、実際の事業やお客様の行動を理解することのようです。

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【今週のキーワード】:仮説→検証
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DBMの醍醐味は仮説→検証にあると思います。顧客分析にしろ商品分析にし
ろ、或いは広告・媒体などの分析にしても本当に良かったかどうかは検証して
みなければ分かりません。例えば価格表示について考えてみましょう。価格
表示を白地に赤で書くのか、赤字に白抜きにするか迷っているとします。一番
手っ取り早いのは2種類作ってテストすることです。価格表示以外はなるべく
同じ条件にした上で比較販売するのです。コストがかかりますが、仮説検証を
繰り返すことでその会社独自のノウハウを蓄積することが出来ます。予想通り
の結果だったとしてもどれだけ効果があったのかがハッキリします。

仮説→検証では必ず比較できるようにしておくことがポイントです。何を持っ
て比較するかや締め日まで決めてあればベストです。比較するのは注文発生率
なのか、販売金額なのか、継続注文率なのか、何を持って良しとするかです。
こうしないと担当者の意思が入ってしまうからです。テストする場合は予め
比較の計画を作っておくこと。当たり前のことですが、なかなか徹底できない
のではないでしょうか。


【今週のお勧め書籍】:販売の科学(唐津一氏)
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毎週お勧めの書籍を紹介してみたいと思います。独断と偏見ですが、私にとっ
て役立った本をご紹介します。あなたのお勧めも是非教えてください。

唐津さんは主にメーカーでのデータ活用をされてきた方です。「販売の科学」は
読み易く、実際に使える本だと思います。特に仮説→検証についてとても参考
になる本でした。


【今週のお勧め】:『実践!Eメール・マーケティング』
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私の友人もメールマガジンを創めるとのことです。偶然、名前までそっくりな
のですが、インターネットビジネスについてのマガジンだそうです。
実践!Eメール・マーケティングについてのご意見は直接以下のアドレスまで
お願いいたします。(内容には実践DBMとの直接の関係はありません)

┏■『実践!Eメール・マーケティング』 ■━━━━━━━━━━━━━┓
┃インターネットでビジネスをお考えの方、WEB制作に関わる方にご参考
┃にしていただけるEメールの必勝法を毎週お届けしています。        
┃                                                           
http://www.yui-marl.net/email/index.htm           
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□(株)カレン  村上英夫
┃ 
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今回は通販のデータ活用について簡単なご紹介をしました。私としては何回か
大まかなお話をさせて頂いてから、一つひとつについて細かい内容を書いてい
きたいと思っています。今後どこからお話をすべきか、或いはご意見、あなた
のノウハウなど投稿して頂ければ幸いです。あなたの投稿によって、これから
内容を変えて行きたいと思っています。よろしくお願い申し上げます。


発行人/編集人:岩瀬 理(Osamu Iwase)

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