■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
実践データベースマーケティング(第7号)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

『実践データベースマーケティング』第7号をお送りします。
発行者の岩瀬です。まずお詫びがあります。DBMのメーリングリスト
を開設しましたが、登録アドレスに間違いがありました。ご迷惑を
おかけしました。次のページから登録できます。是非ご参加ください。
http://www.bea.hi-ho.ne.jp/o-iwase/ml/dbml001.htm

●○ 目次 ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

1.情報活用の手順
1.1.情報活用の技法
1.2.情報活用の問題点
1.3.成長曲線
1.4.データと時間軸
1.5.情報の検証

2.データベースマーケティング
2.1.DBMの可能性
2.2.メディアミックス

【あなたのマーケティングの感をチェック!】
  実践!Eメールマーケティングより

【今週のお勧め書籍】:指導力の研究(渡部昇一氏)

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

今回は趣向を変えて、情報活用という大きなテーマから考えてみたいと
思います。データベースマーケティングを考える上でも必要な概念だと
思います。

1.情報活用の手順

私たちは常に何かを判断しながら、次に進んでいきます。中にはハッキ
リしない状況で『えいっ』と目をつぶって進むこともありますが、これ
も進むことを判断している訳です。判断の積み重ねが人生になり、企業
業績になるのだと思います。

判断をする時には無意識のうちに色々なプロセスを経験しています。

●目的・目標の設定
●段取り(スケジュール)の設定
●データ収集と吟味
●ルールの発見
●変化の予測
●対応策の立案(アイデア出し)
●要約・整理
●シミュレーション・リスク分析
●計画の作成

人間は無意識にこんなことをやり遂げているのです。一番最初に来るの
が目的・目標の設定です。これは What to do に当たります。一体何を
するのかということです。次に How to do   が来ます。どうやって実現
するのかということです。判断をするためにどんなやり方をするかとい
う意味です。

そして必要なデータを集め、要約したり膨らめたりしながら対応策を
磨いて行きます。必ずしも上述のような順番になるとは限りませんね。
行きつ戻りつしながら作り上げていくのが普通だと思います。ソフト
システム思考のようにあるべき姿から入る場合もあれば、現状の問題
から入る場合もあるでしょう。

1.1.情報活用の技法

情報を扱う技法というのも色々なものがあります。目的や段取りの部分
であれば、MOSTECフローやTBシートなど書式に落とすものが
あります。MOSTECとは、目的・目標・戦略・戦術・実行・検証と
いう流れを示しています。TBシートはDIPSで紹介されているもの
で、タスクブレイクダンシートの略です。目的や段取りをまとめるため
のチェックシートです。スケジューリングではアローダイヤグラム
(PERT)も使えます。

データ収集については2次情報の使い方やデータベースの技術などが
あります。データの吟味という部分では基礎統計量なども必要になるで
しょう。ルールの発見では、今のところデータマイニングが注目されて
いる技法です。伝統的なものでは多変量解析も重要な技法の一つです。
勿論、質的なデータでは数量化理論が使えます。

予測ではやはり統計解析や非線形方程式が使えます。通常の統計解析は
線型方程式になっています。正比例や反比例を扱うものなので、直線的
にしか解析できないのです。非線型方程式はジュラシックパーク
(映画)にも出てきた例のカオス理論が代表的です。簡単なものであれ
ば元データを対数変換しても非線型のように扱うことが出来ます。

アイデア出しや要約には問題解決技法が良く使われます。アイデア出し
では、ブレインストーミングやブレインライティング・チェックリスト
法などがあります。要約にはKJ法やイッシューダイヤグラム・7×7
ボックス法などがあります。拡散させては要約していくという過程で
考えを整理していくことが出来る訳です。

シミュレーションではOR(オペレーションズリサーチ)やリスク分析
があります。最適化の計算も簡単に行なえるようになりました。

1.2.情報活用の問題点

現在は量的にせよ質的にせよ情報(データ)を入手し易い社会です。
POSも発達しましたし、インターネットで世界中から情報を検索する
ことも出来ます。しかし、情報の量は増えても、その活用法まで進化し
ていると言えるでしょうか。情報量が増え、変化が激しい現在は却って
情報活用の難しい時代なのではないかと思います。

●データが多すぎてどう使って良いか分からない
●変化が激しいので、データが陳腐化し易い
●様々な価値観が実現出来るので、お客様のニーズが細分されて見える
●平均的なものが一番多い訳ではなくなって来ている
●専門分野はますます深くなっている

などの傾向が見えます。

1.3.成長曲線

私は職業柄、色々な予測をしてきました。経験的には右肩上がりの時に
は統計的な予測が良く当たります。これが成熟市場になってしまうと、
精度が落ちるのです。統計解析自体が正規(標準的な)分布を前提にし
ています。右肩上がり、あるいは衰退時期には直線的な傾向があるので
当たる訳です。正規分布というのは平均的なものが一番多く、平均から
外れたものが少ない状態です。

成長のS字カーブというのがあります。導入期・成長期・成熟期・衰退
期という曲線です。ビジネスなど時間軸で見た推移というのはおおむね
S字カーブなのです。これは直線ではありませんから線型の方程式では
解けないことになります。予測するためには非線型方程式が必要です。
カオス理論ではフラクタル(相似系)を基本にします。実際に電力系な
どは予測にカオスを組み込んでいます。ただカオスというのは似ている
ものを識別することは出来ますが、因果関係(そうなる理由)を明らか
にすることは出来ません。

業界の成長曲線と企業業績の成長曲線を比較してみると、その企業の
特徴が見えます。普通はほぼ同じような形になっていますが、波が早い
か遅いか振れ幅など競合との差が見えてきます。

大きな話しをすれば、資本主義社会自体がS字カーブの成熟期に来てい
ます。このまま衰退期を迎えるのか、新たなS字カーブを描き始めるの
か別れ目に来ていることになります。日本経済自体もまったく同じこと
が言えます。おそらく大部分の企業もそうでしょう。これらはすべてフ
ラクタルであると言うことが出来ます。私たちは今、次なるS字カーブ
のための導入期を創らなければいけない訳です。そして情報活用という
分野でも、まったく新しい活用方法が求められています。情報の量・変
化の激しさ・定性情報の利用など課題は沢山あります。

1.4.データと時間軸

ビジネスへの情報活用の可能性はこれからますます広がっていくと思わ
れます。ただし再現可能ということが大切です。また再現可能という
だけでなく、再現の確率が問われる世界でもあるのです。経済分野では
再現することがとても難しいものです。実験室のシャーレの中ではない
からです。再現性ということだけで見れば、経済問題に科学的という
ことは有り得ないのかも知れません。そしてドラッカー博士が言うよう
に、経営者は経済の結果を享受するだけでなく経済を創るものでもあり
ます。つまり経験的に法則をとき明かすだけでなく、法則を創っていく
立場にある筈なのです。こういう矛盾を抱えた上でDBMを考えていく
必要があるのだと思います。

我々が使うデータは全て過去のものです。例え昨日のものであっても、
過去のものに違いはありません。それに対して我々が行なうのは未来へ
のアプローチなのです。これは時点の違いを述べたものですが、それ以
上に想像力の大切さを物語っています。データは解釈と想像力を伴って
始めて情報としての意味を持つのです。未来の土俵に乗った考え方でな
いと、ビジネスには応用できないと思います。

逆説的な情報の定義があります。『それを知った知ったことでその後の
行動が変わること、これが情報である』という定義です。その人にとっ
て、行動にまで及ぶ力がなければ情報とは言えないという意味です。
元CIA高官の書いた本にも面白いことが書いてありました。
『知りたいことと知っておくべきことを区別しなければならない』とい
う内容です。知っておくべきことは必ずしも快い内容とは限りません。
かえって、あまり聞きたくない内容の方が多いものです。意識しないと
耳に心地の良い情報しか集まらなくなってしまうものです。その結果
独善的になってしまう危険があるのです。将来のために何かを判断しな
ければならない。その判断のために知っておくべきことを明らかにしな
ければならない。という意味だと思います。

1.5.情報の検証

物事を複眼で見なさいという教訓があります。一方からだけの視点で見
ていると、物事の本質は見えてこないことをいましめています。鼻の形
を見ただけでは、象の全体を説明することは出来ません。立体的に説明
するには、前後左右上下と色々な角度から観察する必要があります。し
かもほとんどの情報は直接的なものではありません。誰かの解釈が入っ
てしまうのが普通です。色々な人の視点というフィルターを潜りぬけた
情報で物事を判断していくのです。同じ情報であっても複数のソースを
持ってチェックをかける必要があると思います。

情報を検証する場合、一方の側からの意見に偏らないことも必要です。
ディベートは論理的な考え方を訓練するだけでなく、反対の立場からも
物事を考えてみるのにも役立ちます。前提になっているものを疑って
みると面白い発見があるものです。今まで目的だと思っていたものが
実は手段でしかなかったとか、一部分にしか当てはまらないことだった
とか。時々前提自体を疑ってみるのはとても大切なことだと思います。

2.データベースマーケティング

データベースマーケティングもやはり、この情報活用のうちの一つに当
たります。データを使うマーケティングを全てDBMと言うのか、それ
とも顧客データベースを特にDBMと言うのかは意見の別れるところで
す。定義から言うと、『顧客データベースを使ったマーケティング』を
DBMと言っています。私は顧客データベースに限らず、明細データを
使ったマーケティングをDBMと考えています。色々なデータの塊を
再現可能な形でシミュレーションを行なっていく、これがDBMの本筋
であると考えるのです。

2.1.DBMの可能性

データベースマーケティングでは購買履歴が一番確かな情報です。実際
に買ってもらうことが目的だからです。たまたま通信販売では業務上、
データベースを作る必要がありました。業務上必要な情報なので蓄積し
ますが、お客様の趣味や家族構成などメンテナンスにコストのかかる
ものは活用出来ていないのが実状です。データベースの活用については
なるべく自動的にメンテナンス出来る情報を使うのが早道であると言え
ます。

インターネットでのマーケティングは企業側のコストの安さとデータ
収集の容易さに魅力があります。お客様がどんなページを見たのかとか
どんなキャッチコピーに反応したのかを捉えることが出来ます。直接の
注文データは確率的に少なくなりますが、興味のデータまで捉えること
が出来ます。お客様を特定出来る方法を組み込んでおけば、過去の履歴
をたどることも出来る訳です。

物を売るにも広告をするにも色々なメディアがあります。選択肢はまだ
まだ増えていくでしょう。店舗・地上波TV・カタログ・新聞・雑誌・
チラシ・CS放送・ポケベル・ラジオ・電話・営業マン・Web・
Eメール・・・
これらのメディアの特性を捉えて、相乗効果を引き出すことができれば
マーケティングも新しい局面を迎えることが出来るでしょう。

2.2.メディアミックス

広告ではTVと新聞チラシを連動させたり、イベントと絡めてみたりと
メディアの相乗効果実験がされています。店舗でもチラシやカタログを
作ってみたりしています。
通販の場合でも、カタログ・リーフレット(定型郵便で送れるようなも
の)・新聞チラシ・TVショッピングなどをミックスしています。カタ
ログで売れ筋商品や顧客特性を探し、売れるものについてリーフレット
やチラシなど1部当たりのコストの安い媒体で面の拡大を行ないます。

私の経験では年代別売れ筋商品をチラシ作成に利用したところ、目に
見えて売上げが上がりました。ただ在庫の調整に苦労した覚えがありま
す。薄い媒体ほど一時に受注が集中しますから、スケジュール調整の
必要があるようです。

現在ではインターネット上でテストマーケティングを行なうものもあり
ます。複数のキャッチコピーを作って、Eメールでランダムに配信しま
す。結果の良かったものを店舗やチラシに利用しようというものです。
Eメールの反応は1日で集計出来ますし、定期的に行なえば履歴から更
に分析していくことも出来る訳です。

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

以前ご紹介したメールマガジン『実践!Eメールマーケティング』では
Eメールを使ったキャッチコピーのテストについて報告しています。
発行人の村上さんからキャッチコピーのテスト結果をいただきました。
あなたはどのコピーに人気があったと思いますか?
(商品は時刻表ソフトです) ★答えは最後にあります★

★☆★☆★ あなたのマーケティングの感をチェック! ☆★☆★☆

【1】悩み解決型
 時刻表はもうめくらない!「乗車日」「乗車駅」「降車駅」を指定
 するだけ

【2】価格訴求型
 『ビジネスカスタム時刻表』が“格安”でダウンロード!

【3】レア型
 こんな便利アイテムを発見!JRだからこそできる“ワザ”

【4】流行型
 ビジネスマン必携!モバイルで時刻表検索は当然!
 交通費精算もラクラク!

実践Eメールマーケティングでは独自のテスト手法を使い、上記のよう
な4つのアプローチによる読者のレスポンスの違いの検証を行っていま
す。どのキャッチコピーが最もうけたか当ててみてください。
詳しくは『実践!Eメールマーケティング』でお知らせしています!
http://www.yui-marl.net/email/index.htm

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

【今週のお勧め書籍】:指導力の研究(渡部昇一氏)
ドイツ参謀本部を書かれた渡部氏の著書です。最初にインパクトが
あったのは次の言葉でした。
『経済や思想に科学的などというものはありえない。科学的というのは
誰がやってもそうなるということだ。』
情報を活用するには再現性が大切ですが、変化を読み取って未来に活か
すことが大切なのだと再認識しました。

本の内容はリーダーとスタッフについての考察です。ドイツ参謀本部が
スタッフ側から書いているのに対して、こちらはリーダー側からの考察
です。
ホームページの書籍紹介コーナーでは『組織と個人について考える』で
関連書籍をご紹介しています。

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

★☆★☆★ あなたのマーケティングの感をチェック! ☆★☆★☆
 答え:【1】6.1%【2】1.2%【3】3.1%【4】3.0% (反応率)
 という訳でこのテストでは悩み解決型に人気がありました。
★☆★☆★ あなたのマーケティングの感をチェック! ☆★☆★☆

今週は情報活用という観点でお届けしました。あなたはどんな分野に
興味がありますか。興味のある分野を教えていただけませんか?
例えば、
●分析手法
●データベース設計
●DBMの事例
●マーケティング  などなど

メールをお待ちしています。
mailto:


発行人/編集人:岩瀬 理(Osamu Iwase)

バックナンバーのメニューへ