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実践データベースマーケティング(第11号)
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実践データベースマーケティング第11号をお届けします。
発行者の岩瀬です。今回は販売ルート(媒体)から見た分析として、
比較検証についてご紹介します。

●○ 目次 ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

1.テスト設計
1.1.比較元と比較先
1.2.比較の尺度
1.3.無作為抽出

2.テスト計画
2.1.テスト結果の利用
2.2.再現の可能性

【今週のキーワード】:お客様は神様か?
【今週のお勧め書籍】:歴史からの発想(堺屋太一氏)
【お知らせ】:Eメールでの顧客育成(今なら10%OFF)

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1.テスト設計
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販売や広告の面白さは、こちら(企業)から仕掛けられるところにある
と思います。特にレスポンスの分かるものについては色々なテストを
組み込むことが出来ます。データを後から分析することも可能ですが、
計画段階からデータの利用を考えていれば得るものはより一層大きくな
ります。

1.1.比較元と比較先
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仮説を立てて検証していくには比較するのが一番分かり易い方法です。
新しい販促をするのなら、実施前と実施後で比較することも出来ます。
わざと実施しないところを作って比較することも可能です。こうすれば
実験室での実験のように純粋な効果を測ることも可能かも知れません。
実際には経済問題では、全く同じ状況というのは作れません。それでも
効果を測らない販促は1回きりのもので、次につながらないのです。

通販ではコントロールとテストという呼び方をします。標準的な販売を
コントロール、1ケ所だけ変えた物をテストと呼んでいます。例として
割り引きを考えてみましょう。カタログ通販で割り引きを実施すること
にします。現在のところ販売単価が1万円なので、1割の千円までは
割り引き販売が可能とします。すると、

A.割り引きを実施しない
B.注文時に千円割り引きを実施する
C.注文時に500円割り引きを実施する
D.注文時に10%割り引きを実施する
E.注文時に5%割り引きを実施する

というようなパターンが出来ます。他にも沢山あると思いますが、例と
して以上の5種類で実施するとします。

 表1.割り引きのテスト結果(金額単位=千円):ダミーデータです
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|種類|配布数|購入者|購入額|経 費|原 価|割引|利益|
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|A |10,000|  500| 5,000| 2,000| 2,500|  0| 500|
|B |10,000|  750| 7,350| 2,000| 3,675| 750| 925|
|C |10,000|  650| 6,175| 2,000| 3,088| 325| 763|
|D |10,000|  700| 7,350| 2,000| 3,675| 735| 940|
|E |10,000|  600| 6,120| 2,000| 3,060| 306| 754|
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

この表はダミーデ−タです。このテストでは注文発生率はBタイプが
一番良いことが読み取れます。利益ではDタイプが一番良くなっていま
す。細かく調べていくと、定額割り引きでは購入確率が高いが、販売単
価が低くなることが分かります。逆に定率割り引きでは定額より購入確
率は低いものの、販売単価が大きくなることが分かります。別表にして
みましょう。

表2.割り引きのテスト結果(金額単位=千円):ダミーデータです
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|種類|配布数|購入率|購入者|購入単価|購入額|貢献度|
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|A |10,000| 5.0%|  500| 10.000| 5,000| 0.500|
|B |10,000| 7.5%|  750|  9.800| 7,350| 0.735|
|C |10,000| 6.5%|  650|  9.500| 6,175| 0.618|
|D |10,000| 7.0%|  700| 10.500| 7,350| 0.735|
|E |10,000| 6.0%|  600| 10.200| 6,120| 0.612|
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

購入者を増やす目的ならばBタイプが良いことになります。この場合で
はBかDタイプを次回から本採用ということになります。しかし実は
比較の仕方によって解釈が変わってくるのです。

1.2.比較の尺度
=========

表1のテストからその後の経過を調べてみるとしましょう。テストの後
は同じ条件で販売しているとします。テスト時に購入のあったお客様の
その後を追跡調査してみましょう。テスト後1年間で3回の販売をした
とします。

 表3.テスト後1年間の利益(金額単位=千円):ダミーデータです
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|種類|対象数|テスト|1回目|2回目|3回目|年間利益|
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|A |  500|  500|  275|  200|  140|  1,115|
|B |  750|  925|  263|  180|  114|  1,482|
|C |  650|  763|  293|  208|  140|  1,404|
|D |  700|  940|  245|  168|  106|  1,459|
|E |  600|  754|  270|  192|  130|  1,346|
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

表2(この表もダミーデータです)ではテストを含めて4回の販売の
利益額を表しています。年間の利益ではBが一番になっています。購入
者を一番多く集められたBの方が金額として大きかったからです。とこ
ろがこの表にはもう一つの特徴があります。テスト後の1回目〜3回目
の販売では効率が明らかに違うのです。千円割り引きをしたBや10%
割り引きをしたDでは極端に継続率が落ちていることが分かります。も
しも期間を1年でなくもっと長く取ると、逆転する可能性もあります。
購入単価は同じとして購入率を見てみましょう。

 表4.テスト後1年間の購入率:ダミーデータです
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|種類|対象数|※テスト|1回目|2回目|3回目|継続率|
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|A |  500|  5.0%| 13.0%|  9.1%|  6.4%| 28.5%|
|B |  750|  7.5%| 9.0%|  5.5%|  3.5%| 18.0%|
|C |  650|  6.5%| 11.0%|  7.3%|  4.9%| 23.3%|
|D |  700|  7.0%| 9.0%|  5.5%|  3.5%| 18.0%|
|E |  600|  6.0%| 11.0%|  7.3%|  5.0%| 23.3%|
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

これは実際に起こり易いのですが、割り引きなどのキャンペーンで開拓
したお客様は一般に継続率が低くなります。しかし購入経験者を増やす
には威力を発揮するのです。

このように評価する時には

●何を尺度にするのか?(人数・売上・利益など)
●どの期間で評価するのか?(1回の販売かその後の経緯も見るのか)

によって結果が違ってしまう場合が多いのです。今までの例では、次の
ようなことが分かります。

●割り引きが多いほど、購入者が増える
●割り引きは定額表示の方が購入者が増える
●割り引きは定率表示の方が購買単価が増える
●割り引きしたお客様は継続購買率が低くなる

数値はダミーデータですが、上の内容は実際に経験した内容です。今回
は割り引きのお話しでしたが、ポップの書き方やチラシの形式などに
よってもかなり効率が変化していきます。実際に比較テストを積み重ね
ると、社内に貴重なデータを蓄積していくことが出来ます。データウェ
アハウスの重要性は色々なところで言われています。次のステップは
データの内容になるのでしょう。

1.3.無作為抽出
=========

同じ状況で比較するには媒体や商品だけでなく、お客様も同じ条件に
しなければなりません。良く使われるのは無作為抽出です。いったん
抽出したお客様を無作為(ランダム)に振り分けます。ランダム関数で
選ぶ方法もありますし、何かの順番に並べて順番に振り分ける方法も
あります。アンケートなどの抽出では住民台帳方式というのがありま
す。何件かに1件ずつサンプルを取る(サンプリング)方法です。振り
分ける場合は、サンプリングの発展形と考えれば良いと思います。

他に実験計画法というのもあります。予めお客様を識別するグループを
考えておきます。各グループ毎に必要な人数を確保する方法です。どち
らにしても、同じ条件で比較出来るようにする訳です。

予測ではこの他に全く同じお客様を追跡する方法もありますが、比較テ
ストではあまり使いませんので、省略します。

2.テスト計画
=======

テストをするのは、その結果を利用して更にビジネスの効率を上げるた
めです。テスト後にも使えなければ意味がありません。もしも再現性が
期待できないものであれば、テストは無駄になってしまいます。

2.1.テスト結果の利用
============

テストは必ずしも同量ずつ行なう必要はありません。効果が測れれば
良いのです。一番有望なものを行なって、何割かテストを行なえば良い
訳です。一番簡単なテストとしては何%か実施しないでコストパフォー
マンスを比較するものでしょう。媒体の特性によってテストのし易さも
違ってきます。薄物のリーフレットやカタログ・インターネット・地域
限定の店舗販売などはテストに向いています。テスト結果を新聞の折込
チラシやカタログ・TVなどで本展開していくことになるでしょう。

テストをする場合には、
●公正に比較出来るか?
●何で比較するか?
●どの期間で比較するか?
●その結果を何に利用出来るか?

というような問いかけに答えられる必要があります。実際にテストを
行なう前に明らかにしておく必要があります。また企業では担当者が
変わることを前提にしなければなりませんから、テストの日時や方法も
記録しておく必要があるでしょう。実際に利用するという点から考えれ
ば、テストしたお客様が分かるような仕組みを作っておく必要もありま
す。上の例のように、その後の経過を観察したい場合が多いからです。

企業内でテストマーケティングのルールが出来ていれば理想です。テス
トの企画書と結果レポートを分かる形で保存することが出来ます。

2.2.再現の可能性
==========

実際の販売では色々な要素が織り込まれます。周年記念とかリニューア
ルキャンペーンとか再現出来ない条件があるものです。媒体(メディア
)の組み合わせにも工夫が必要になる場合もあります。

テストマーケティングもルール化して色々な場合のデータがあれば、特
殊な要因を補正してやることもある程度可能になってきます。季節変動
や物価調整のように複数時点のデータがあれば、そこから読み取ること
が出来るようになるからです。補正の方法については、以前予測のとこ
ろでご紹介しています。ご参照ください。

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【今週のキーワード】:お客様は神様か?

販売にしても生産にしても、本当の価値はお客様が決めてくれます。
テストマーケティングが出来れば数値で示せますが、そうでない場合も
お客様が評価を決めてくれています。私達の仕事を評価するのは上司で
はなく、お客様ということが出来ます。ありきたりの話しですが、そう
いう意味ではお客様は神様と言うことが出来るのではないでしょうか。

【今週のお勧め書籍】:歴史からの発想(堺屋太一氏)

成長思考の組織が停滞を迎えたら、異質の成長を考えねばならない。
これは文中からの引用です。成長はいつまでも続くものではありませ
ん。以前成長のS字カーブでお話ししたように、大きな流れがありま
す。その流れの中で競争があり、改善がある訳です。停滞を迎えた場合
には違った価値観から見た成長が必要になるのではないでしょうか。
違った価値観がまた新しい市場を生み出すかも知れません。本書では
歴史から異質の成長ということを観察しています。

【お知らせ】:Eメールでの顧客育成(今なら10%OFF)

今回は媒体からの分析として、テストマーケティングをご紹介しまし
た。以前ご紹介しました『実践Eメールマーケティング』では、インタ
ーネットでのテストマーケティングをご紹介しています。今回は、広告
や販売のテスマーケティングのお知らせです。私の名前を出していただ
ければ10%OFFになるそうです。

インターネット(特にEメール)は簡単にテストマーケティングが実施
できる媒体ではないでしょうか。

文中の本誌とは『実践Eメールマーケティング』です。

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今回は販売ルート(媒体)の分析ということでご紹介しました。本当は
他にも色々なものがありますが、基本的なものをご紹介したいと思いま
した。カタログであれば、ページ数の限界効用や商品構成の分析もあり
ます。店舗であればレイアウトやキャンペーン・ポップなどの効果測定
があります。営業マンやチェーン店の場合には、成功事例発見のための
方法論などもあります。これらはまた別の機会にご紹介したいと思いま
す。

発行人/編集人:岩瀬 理(Osamu Iwase)

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