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実践データベースマーケティング(第12号)
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実践データベースマーケティング第12号をお届けします。
発行者の岩瀬です。毎週お付き合いいただきましてありがとうございま
す。さて、今週のお題ではたと迷ってしまいました。

●ご紹介できる範囲で事例をお話しする
●今までご紹介した内容を更に詳しくご説明する
●スケジューリングについてお話しする
●組織論のお話しをする
●数学的なお話しをする
●コンピューティングについてお話しする
●データベースについてお話しする
●ソフトウェアについてお話しする

などと色々考えてみました。数学や組織論・コンピューティングとなる
と、余計に専門的なお話しになります。読んでくださる方が1900名
位になりましたので、どこら辺に話しをシフトさせるべきかちょっと迷
ってしまうのです。そこで今回は私の考える経営戦略についてお話しさ
せていただこうと思います。とは言え、私の経験に基づいたものですか
ら、データベースマーケティングにまつわるものになってしまいます。

●○ 目次 ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

1.事業領域
1.1.自社の強み
1.2.顧客ターゲテイング
1.3.市場の動き

2.計画
2.1.短期計画と中期計画
2.2.資金計画
2.3.イノベーション

【今週のお勧め書籍】:大物になる本(今泉正顕氏)

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1.事業領域
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企業は組織で動いています。目的や目標を共有しないと力が分散されて
しまいます。お客様から見ても特徴を持った企業でなければ、認めてい
ただけないようになりました。総花ではなかなか差別化できませんし、
一つに特化した会社に勝つのは難しい話しです。私の得意の通販でお話
しすると、

●関西では衣料品を中心にした総合通販
●関東では雑貨品を中心にした通販
●九州では単品通販

が盛んです。日本で通販をメジャーにしたのは衣料品系の通販ですが、
総合通販になって差別化が難しくなりました。米国では日本ほど大きい
通販はあまりありません。シアーズローバックなどが撤退したこともあ
りますが、分社化してしまうのです。企業やカタログの特徴を維持する
ために分社化して運営するのが多いようです。私の経験上でも、あまり
大きくなってしまうと効率が落ちるようです。経済ロットになって、し
かも明確な特徴を出せる大きさというのがあるのではないでしょうか。
そういうカタログなりグループ会社を幾つか持つという成長の仕方をし
ているようです。

1.1.自社の強み
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一般には見えにくい強みというのもあります。メーカーが直販している
ので、粗利率が高い場合もあります。個人向けの販売だけでなく、グル
ープ向けのルートを持っている場合もあります。グループとして販売す
る場合には、広告費や物流費が相対的に小さくなりますから利益を出し
易くなります。また仕入先との力関係もあります。製造ラインにまで口
出し出来るような仕入先があれば、在庫リスクが小さくなります。自社
の強みは何なのか、改めて考え直してみるべきだと思います。
と言うのは、時代や状況が変われば強みが強みでなくなるからです。扱
い商品が変化すれば、当然調達物流の強みも変わってしまいます。仕入
れのサイトが変わってしまえば、資金繰りの強みも変わってしまうでし
ょう。
データベースマーケティングでは、強みは顧客リストにもあります。た
だ名前が分かるだけでなくどんな人なのかが浮き彫りになるようなリス
トならば、です。商売に使う訳ですから、過去のことでなく将来を予測
出来る必要があります。そして購入に結びつくリストでなければいけま
せん。自社のリストの特徴は何か、強みは何なのかもやはり考え直す必
要があると思います。

1.2.顧客ターゲティング
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商品やサービスについても総花では競争力を付けにくいとお話ししまし
た。お客様についても同じです。万人向けにするならば、そもそも顧客
データを持つ必要はないかも知れません。顧客データベースを持って、
個別対応や双方向のコミュニケーションをするならばターゲティングが
必要だと思います。結果として複数のターゲティングの合計が市場のほ
とんどをカバーする場合もあるかも知れません。
ターゲティングのメリットとしては、

●顧客像が明確になるので実作業がし易い
●目的を持った顧客開拓が出来るので効率が上がる
●どんなデータが必要なのか想定し易い
●顧客グループに共通したビジネスルールを探し易い

というものがあります。以前お話ししましたが、統計的な方法は正規分
布でしか使えないのです。ビジネスルールもある前提のもとでしか有効
ではない場合が多いのです。

1.3.市場の動き
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企業の盛衰も市場の動きに連動します。発展途上の市場であれば、平均
的な努力でも売上は伸びて行きます。成長期なのか成熟期なのか衰退期
なのかによって取るべき戦略も違ってきます。成長期であれば、拡大戦
略を取ることができます。大きな先行投資をしても売上伸びてくれれ
ば、コストは相対的に低く抑えることが出来ます。在庫にしても拡大期
であれば、相対的に小さくなるので処分も可能です。しかし成熟期には
命取りになってしまいます。
データベースマーケティングは、お客様の特徴を掴んで囲い込むための
手法です。一般に先行投資になります。継続販売することで先行投資を
回収して利益をあげていきます。現在は手放しで成長を期待できる状況
ではありませんから、先行投資のバランスが重要視されます。いつまで
に先行投資が回収出来るのかという見通しが不可欠です。先行投資の損
益分岐点到達時間やお客様の継続購入率を予測出来なければ、バクチに
なってしまいます。

2.計画
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以上のような大きな流れを抑えた上で計画を立てる必要があります。
データベースマーケティングは計画的な販売方法ですから、計画やシミ
ュレーションは不可欠です。特にお客様について先行投資になりますか
ら、見通しを立てることができなければいけない訳です。

2.1.短期計画と中期計画
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『お客様を囲い込んで継続購入によって利益を出す』というお話しをし
ました。今期の販売は販売だけでなく、来期への仕込みでもあります。
この2面性を理解しないとデータベースマーケティングは出来ません。
例えば通信販売では短期の利益を出すことは可能です。事業規模を小さ
くして良いリストだけで販売をすれば良いのです。お金のかかる顧客開
拓をやめれば良いのです。短期の利益は出せますが、中期的に見ると縮
小再生産になってしまいます。縮小再生産では今年よりも来年のリスト
の購買パワーが落ちてしまうのです。これを繰り返すと、どこかで破綻
が来ます。一旦縮小したものを元に戻すのは容易なことではありませ
ん。そのバランスを取ることが大事です。

以前、短期計画を作る時には2〜3年先のリスト計画も一緒に作ること
をお話ししました。現在の事業計画でいけば、来年はどんな規模の商売
が出来るのか、再来年はどうかというシミュレーションです。このバラ
ンスがないと事業を存続させることが出来ないのです。ただし市場の変
化や競合があります。あまり先までは読めませんし、予測通りにもなり
ません。自社の損益分岐点到達時間や継続購入率によって、シミュレー
ションする期間は変えるべきでしょう。

場合によっては、ある時点から成長を考えないことも重要です。一定の
大きさを超えてしまうと、どうしても顧客リストの効率が落ちます。
商品や個々の顧客リストであれば収穫逓増の法則ですが、顧客開拓とい
う面で見れば収穫低減の法則が働きます。成熟期になった市場では異質
の成長が必要になります。それまでとは違った価値基準・経営戦略が必
要になってきます。現状維持の戦略や、ブランドとしての育て方などで
す。複数のブランドを扱ったり、違ったリストの利用方法を作るなどの
方法です。

2.2.資金計画
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データベースマーケティングはお客様についての先行投資が必要とお話
ししました。利益の考え方も1回の販売だけでなく、期間損益を考える
必要があります。そして資金繰りもそれにあった方法をとらなければな
りません。1回毎の販売も利益を取りながら、回を追う毎に利益を大き
くする、しかも資金繰りも織り込んで行く、ということになります。
資金ということで考えれば、

●先行投資の回収スピード
●成長・衰退での経費バランス
●在庫の処分方法

という問題も発生してきます。粗利が大きくても在庫が陳腐化してしま
うとか、完全仕入れの場合には受注予測や仕入れ方法・在庫処分は大き
な問題です。

2.3.イノベーション
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市場や世相は大きく変化していきます。短期と中期を連動しながら計画
していても、なかなか計画通りには進みません。市場が変わるのを待つ
だけでなく、企業から市場を変化させていく試みも必要だと思います。
計画の通りに運営していただけでは、計画以下にしかならない筈です。
自己改革を起こさせるような仕組み作りが必要だと思います。

データベースマーケティングでは今まで分からなかったことが、色々と
見えてくると思われがちです。しかし今まで通りのことしかしていなけ
れば、その結果データには限界があります。世相を反映したものしか見
つけられないのが普通です。実際に企業側から仕掛けて検証していくこ
とが必要です。仕掛けた結果をデータとして検証出来ることがデータベ
ースマーケティングの強みなのです。このことはあまり理解されている
とは言えないのではないでしょうか。

こちらが変化して色々な仕掛けをしているからこそ、今までにない可能
性をデータで検証出来るのです。常に昨日とは違う何かを織り込んで行
く必要があると思います。

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【今週のお勧め書籍】:大物になる本(今泉正顕氏)

東北一のバス会社福島交通の社長になった織田大蔵氏の語録です。気持
ち良いくらいに本音で語ってくれます。参考になることが多く、何度も
読み返しています。

●魚のいるところに投網をぶて
●君子は豹変していいのだ
●競争に勝つには同じことをしてはだめだ

などの言葉も分かりやすく具体的で、とにかく面白いのです。

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今回は総論のようなお話しをさせていただきました。今後の構成につい
てはまた考えてみたいと思います。あなたのご希望も是非教えてくださ
い。よろしくお願いします。

発行人/編集人:岩瀬 理(Osamu Iwase)

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