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実践データベースマーケティング(第15号)
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実践DBM第15号をお届けします。作者の岩瀬です。このところ睡眠
不足が続いています。今までと違った仕事をさせていただいているの
で時間は使いますが、得るところも大きいようです。マーケティングも
取り巻く環境も日々変わっています。DBMもまた違った可能性を秘め
ていると思います。
さて今週はダイレクトマーケティングのフルフィルメント機能について
お話ししたいと思います。

●○  目次  ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

1.フルフィルメント機能
1.1.受注入力
1.1.1.申し込み番号
1.1.2.チェックデジット
1.2.コールセンター画面
1.3.受注引き当て
1.4.出荷作業
1.5.予信及び債権

今週のお勧め書籍:企業のパラダイム変革(加護野忠男氏)

今週のキーワード:小さな工夫とパラダイム転換

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1.フルフィルメント機能
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フルフィルメント(FF)というのは、注文受付〜商品の引き当て〜
出荷などの企業活動の基幹となる作業のことです。マーケティング関係
のメールマガジンでFF機能を論じるのは場違いのようでもあります。
ただ基幹業務について触れておかなければ全体象が見えてきませんし、
基幹業務の中でマーケティングが活きることこそが理想形ですので、
あえて触れたいと思います。

1.1.受注入力
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ダイレクトマーケィングでは販売のアプローチと結果としての実売デー
タが不可欠です。注文情報もデータとして入力する必要があります。
現在ではFaxOcrや音声応答・Web入力などで直接データ化する方法が
進んでいます。

1.1.1.申し込み番号
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ダイレクトマーケティングの世界では、販売実績を営業マンに結び付け
て評価するように媒体や販売活動に結び付けます。こうしておかないと
販売活動の評価が出来ないからです。『何をご覧になりましたか?』と
お客様に尋ねる方法もありますが、通常は商品を示す番号で管理できる
ようにしています。商品固有の商品コードとは別に注文用の申し込み
番号を用意しているのです。大きく2種類の方法に別れます。

●まったく新しい申し込み番号体系で番号をふるもの
●商品コードに媒体番号をプラスするもの

どちらにも一長一短があります。商品コードに媒体コードを加えるタイ
プの方がシンプルですし、確かな方法です。例えば商品コードは 54321
という5桁の番号だったとします。媒体コードが 333 という3桁の
番号だったとすると、333-54321 という8桁の番号が申し込み番号にな
ります。一目で分かりますし、番号の重複も防げますから良い方法で
す。短所としては番号が長くなることが挙げられます。申し込み番号は
お客様に指定していただく訳ですから、なるべく短いのが親切です。
受注入力された後は媒体コード+商品コードに置きかえれば良い訳です
から、販売期間中に有効であれば事は足ります。実際には返品や問い合
わせがありますので猶予期間を設けますが、通常は媒体コードを付け加
えるタイプよりも短くなります。

1.1.2.チェックデジット
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ダイレクトマーケティングではチェックコードチェックをするのが一般
的です。顧客コードでも同じですが、最後の1桁を計算によって求めら
れる数値にしておきます。こうすると入力時点で番号間違いということ
が分かります。入力ミスを少なくするための工夫です。例えば、先程の
333-54321 という申し込み番号で見てみましょう。まず、全ての桁の
数値を合計します。3+3+3+5+4+3+2+1=24 になりますね。これを一定の
数字で割った時のあまりを使う方法があります。10で割れば、余りは 4
になります。そこで申し込み番号自体を 333-54321-4 というように
決めておくのです。こうしておけば元々有り得ない申し込み番号の場合
には何かの間違いだということがハッキリします。1桁間違えたために
他の商品が届くという誤配の可能性も少なくなる訳です。ちょっとした
ことですが、電話番号にもチェックコードチェックがあればなどと思っ
てしまいます。

1.2.コールセンター画面
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近頃はあちこちでコールセンター立ち上げの話しをうかがいます。CTI
の技術も進みましたし、電話料金自体にも色々なメニューがあります
からますます盛んになるだろうと思います。コールセンターでの基本
用件は、受注入力や問い合わせになります。電話に対応するオペレータ
の生産性を上げるためにも端末画面のデザインは大切な要素です。基本
画面としては、検索・紹介と入力系の画面になります。この他にオペレ
ータに対して自動的に指示を送るものを指示スクリプトと呼びます。
今から10年程前に発表されたのが3種類の対応スクリプト制御でした。
機能としては大きく4種類に別れます。

●顧客履歴を使った指示
●商品情報を使った指示
●コールセンターの稼動状況を使った指示
●総合的に優先順位を決める機能

です。顧客履歴を使ったものは、前回のクレームや納品などの状況から
オペレータが話すべきことを指示します。『交換の商品はいかがだった
でしょうか』とか『カタログはお手元に届きましたでしょうか』とか、
お客様との関係作りに使うことになります。
商品情報を使ったものは、検索した商品についての情報を利用するもの
です。関連商品を紹介したり、一緒に買われることの多いものをご紹介
したりします。あるいは商品に連動したキャンペーンを情報もこの対象
になります。
コールセンターの稼動状況は新しい概念です。コールセンターでの電話
の込み具合によって対応を変えるものです。いくら顧客情報を使って
アップセリング(※)やクロスセリング(※)が出来たとしても、他のお客
様を待たせていたのでは全体最適になりません。電話回線がパンク状態
の時には折り返しコールをするなど、なるべく早く次の電話に出るべき
です。逆に応対に余裕があるのであれば、少しでもお客様との関係作り
を工夫する必要があります。

(※)アップセリング→購入商品を少しでもグレードの高い商品にもって
          いくこと
(※)クロスセリング→お客様の購入したかった商品以外のものもお勧め
          してオーダー単価を高くすること

このように大きく分けると3つの指示があることになります。お客様の
履歴を使う部分は更に色々な種類がありますが、今回は割愛させていた
だきます。このままではオペレータが判断をしなければならなくなりま
す。ベテランのオペレータならば機会が指示するよりも巧みに対応しま
すが、全てのオペレータに期待することはできません。そこで総合的に
優先順位を決めて指示をしてあげる必要が出てきます。クレームのお客
様に対してクロスセリングをする訳にはいきませんから、情報の組み合
わせによって優先順位を変えていきます。

他にもコールセンターでは色々な工夫が出来るようになりました。

●IVRを使って呼を目的別に割り振る
●ACDでオペレータの負担を均一化する
●発信者番号表示で担当オペレータを割り当てる
●難しい内容の場合は画面毎転送(エスカレーション)する
●管理者が応答内容を聞いて点検する
●応対を録音してデータ化する

などなど様々なものがあります。Webと連動したものもありますし、
電子メールの対応まで考えている仕組みもあります。この分野は更に
使い方が工夫されていくでしょうが、Webや音声応答など自動入力も
注目を集めています。色々なチャネルを使って全体最適を考えていく
必要があります。

1.3.受注引き当て
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注文がデータ化されるとエラー処理・予信処理などを経て、商品を引き
当てる処理に移ります。保留にする場合でも仮引き当てを行なう場合が
ありますから、処理の流れも企業によって違います。引き当て処理には
リアルタイム処理もあればバッチもありますが考え方は同じです。商品
の引き当てによって注文がいくつかの状態に別れます。メーカーとの
商品引き取り契約によって引き当ての方法が異なります。メーカーから
直接発送する場合や在庫の心配のない商品の場合には引き当て処理は
しない場合もあります。受注=発注というケースを受発注と呼んでいま
すが、在庫の心配がなければ全ての注文について引き当てを許すことに
なります。しかし商品を引き取るケースでは在庫の問題がついてまわり
ます。出荷場に商品がある場合、倉庫に商品がある場合、入荷予定が
ある場合など商品の所在によってまず別れます。

更に考えなければならないのが、注文は商品1点だけとは限らないと
言うことです。お客様からAとBという商品を1点ずつ注文いただいた
とします。Aは出荷場に在庫があり、Bは4日後に入荷予定だったと
します。まずAだけを出荷した4日目以降にBを出荷することを分割
出荷と呼んでいます。この場合には送料や梱包資材が2回分必要に
なってしまいます。A商品はあるものの引き当てだけを行い、Bの入荷
を待って出荷するケースも多いのです。この時に引き当てだけは済まし
ていますので、4日目以降の時点でも在庫に問題はありません。問題に
なるのはBの入荷予定の精度と入荷までの期間です。あまりにお待たせ
する場合には分割出荷に切り替えていきます。詳細については出荷作業
として項を改めます。

1.4.出荷作業
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引き当てでご説明したように分割出荷する場合やまとめて出荷する場合
があります。出荷の命令を出す時に判断をすることになります。分割
出荷の基準が必要になる訳です。お待たせする期間や注文金額によって
条件を設定します。また出荷作業との兼ね合いもあります。商品の入荷
によって出荷作業量が大幅に変化してしまう場合には、調整をするため
に分割基準を変更することもあります。理想で言えば分割基準は固定で
はなく、シミュレーションをして変更できることが望ましいのです。

出荷命令と同時あるいはその前にいくつかの命令が出されます。倉庫
からの商品移動や発注・検収などの指示です。あるいは倉庫内の商品の
配置替えをする場合もあります。出荷作業の方法によりますが、商品の
保管方法にも固定棚方式や移動棚方式があります。
まず出荷作業の方式の違いからお話ししましょう。伝票と商品発送用の
箱を移動させながら、その場その場で商品を入れて行く方法がありま
す。仮にラインピッキングと呼んでおきましょう。この場合には商品を
入れる担当者(ピッカー)は商品単位になっています。目の前を流れて
いく伝票を確認しながら自分の担当商品を入れていきます。
これに対して商品を仕分けながら一定のシュート口に落としていく形式
があります。いくつかのオ−ダー毎にまとめて商品を集めておきます。
ソーターという装置(回転寿司の回る台のようなもの)で商品を流しま
すが、所定の位置が来ると商品を落としてオーダー単位に仕分けるので
す。最初にいくつかのオーダー毎に商品を集めて来ますが、商品を集め
易いように場所毎にピッカーを配置します。これをゾーンピッキングと
呼んでおきましょう。

ゾーンピッキングでは商品を移動させて伝票のところに集めます。一方
ラインピッキングでは伝票を移動させて商品を集める訳です。どちらも
一長一短がありますが大型商品にはラインピッキング、衣料品など小さ
く軽い商品にはゾーンピッキングが向いています。

どちらの方式にしても最後に検品作業を行ないます。キチンと商品が
入っているかなどを確認して配送に回し、出荷報告データを作成する
ことになります。
またピッキング作業の前に伝票セットという作業がある場合もありま
す。納品書・請求書など普通は一緒になっていますが、お客様への個別
のレターなどを一緒にする場合もあります。

出荷作業時には一緒に情報をお届けするチャンスですので、色々な工夫
がなされています。カタログやチラシを同送したり、広告費を取って
他社の広告を入れたりもします。
カタログやチラシの同送で一番簡単なのは全員に同じものを送ってしま
うことです。これならば、最終検品時に入れれば良いことになります。
その他にお客様によって同送するものを変える必要が出てきます。あら
かじめカタログやチラシの発送予定ファイルを作っておけば、商品発送
時にお客様個別に指示することができます。一つの商品として納品書に
印字してしまう方法もありますし、別欄を作って印字する場合もあり
ます。どちらにしても配送費用を削減することが出来ますし、お客様に
個別の対応をすることができます。

1.5.予信及び債権
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最後に債権関係を書いておきたいと思います。 ダイレクトマーケティ
ングの場合には後払いの形式も多いので、予信限度額を決めている場合
があります。お客様の入金状態によって変化させていきます。お客様に
よって変化する訳です。
お客様からの主な入金(支払い)方法には次のようなものがあります。

●コンビニエンスストアでの振り込み(後払い)
●郵便局での振り込み(後払い)
●銀行振り込みによる後払い
●クレジットカードでの引き落とし(後払い)
●配送時の代金引替え払い
●銀行引き落とし(後払い)
●電子マネー
●郵送や振り込みによる先払い
●銀行振り込みによる先払い

などです。一般的にはクレジットカード払いや郵便振り込み、コンビニ
エンスストアでの振り込みが多いようです。年齢の若いお客様には24時
間利用できるコンビニストアでの振り込みが人気があります。逆にシル
バー市場には代金引替えや銀行引き落としが好まれているようです。
日本ではアメリカ程クレジットカード利用が多くありませんが、それで
も一番扱い易い方法と言えます。

さて先払いや引替えならば問題はありませんが、後払いですと信用調査
や予信が必要になります。クレジットカードの場合にはクレジット会社
が代行してくれる訳ですが、クレジット会社とのやり取りが必要になっ
て来ます。郵便振り込みやコンビニエンスストアでの振り込みの場合に
は自社での予信情報が必要になって来ます。電話番号が通じるかとか、
限度額を設定するとかの方法です。予信限度額についても購入商品が
換金性の高いものか否かによって変わって来るでしょう。あるいは自宅
への配送なのか送り先を変えるのかとかによっても変える必要があるか
も知れません。

以前、職業によって不良残率が違うかどうかを検証したことがあります
が、職業による違いはほとんどありませんでした。不良残率に違いが
見られたのは地域でした。学生や転勤が多いような地方都市の場合、
住所が変わることによって不良残になってしまうケースが目立ちまし
た。本当の詐欺口座では購入商品の内容や納品場所に特徴がありまし
た。債権についても過去のデータを利用しながら、ノウハウを築いてい
く必要を観じます。

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今週のお勧め書籍:企業のパラダイム変革(加護野忠男氏)

ドラッカー博士も言っていますが、企業には革新(イノベーション)
が必要です。『創造的な破壊』を行なうことで企業は寿命を永らえる
ことが出来るのでしょう。この本では、『革新をシステム的に興して
いくにはどうすれば良いのか』という問題について考察しています。

今週のキーワード:小さな工夫とパラダイム転換

ビジネスの中では小さな工夫の積みかさねが大切になってきます。今回
お話ししたFF機能の中にもマーケティング的な部分が折り込まれてい
たと思います。本当に小さな工夫ですが、実際にビジネスの基幹になる
部分ですから影響力が出てきます。
一方継続的にビジネスを伸ばしていくためには革新が必要です。市場が
大きく変化していく時代に同じことを繰り返していては、相対的に古く
なっていってしまうからです。革新のためにはパラダイム(世界観)の
転換が必要になってきます。今まで行なってきたことであっても着眼点
や価値観が変わればまったく違うものに変化していくのです。特に企業
内の常識になっているようなものについては、疑ってみる必要があるで
しょう。企業内の常識から離れた時に新しいパラダイムを創り出すこと
が出来るのです。

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今回はダイレクトマーケティングのFF機能について、情報活用を交え
ながらお送りしました。マーケティングの観点とは少し違うかも知れま
せんが、身近に利用できる情報なのではないかと思います。色々な分野
で情報を有効活用することが求められているのです。

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作:発行/岩瀬 理(osamu iwase)

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