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実践データベースマーケティング(第17号)
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実践データベースマーケティングの岩瀬です。まだまだ残暑がきびしい
ですが、皆様どうお過ごしですか。高校野球も終わり、夏休み気分も
終わりですね。
第17号をお送りします。今回は業務指標について書いてみたいと思いま
す。情報の活用というとマーケティングに使う分析手法の話が多いです
が、実際の運用の面では業務の評価とか管理の方が役に立ちます。情報
活用という見方をすれば、分析業務だけが注目を集めるのは偏ってしま
います。通信販売の場合には受注や出荷、仕入れなど基本的な業務を
広くカバーしています。通信販売を例にしてご説明したいと思います。

●○  目次  ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

0.業務の指標管理
1.仕事の単位
2.業務の評価
3.可変に出来る項目
4.意思決定に必要な情報
5.判断の階層

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0.業務の指標管理
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ロケットの命中率を上げるには、発射角度や推進力をシミュレーション
する方法があります。しかし実際には風があったり気圧が変わったり、
空気抵抗があったりで100発100中とはいきません。命中率を上げるアプ
ローチに軌道修正があります。目標と自らの進路を比較しながら、軌道
の微調整をするのです。
事業を行なう場合、計画し準備するのがシミュレーションであり発射
準備でしょう。これに対して日々、業務内容をチェックして修正してい
くのが軌道修正に当たります。

ただし事業の場合にはロケットを命中させるというような単純な目標で
はありません。目標を設定し評価基準を明確にすることから始まりま
す。評価基準が整ったところではじめて目標と自らの進路との差がはっ
きりするのです。日々改善を重ねてお客様へのサービスを向上させたい
のであれば、顧客サービスの評価基準を設定するところから始める必要
があるのです。

1.仕事の単位
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更にさかのぼって考える必要があります。顧客サービスと一口に言って
も具体的に何のことだか分からないからです。商品の品質向上という面
では長い間研究がされて来ましたが、顧客サービスは古くて新しい分野
だからです。
現業についての業務管理を行ないたいのであれば、現在の仕事内容から
出発する方法があります。現在の仕事を分解して、その上で企業側で
変化させられる項目を明確にするのです。現在の仕事が明確になれば、
評価の基準がハッキリしてきます。採れる行動が明確になれば、意思
決定に必要な情報がハッキリするのです。まずは現在の仕事を意味の
ある単位に分割することから始まります。そしてコントロールし易い
単位にまとめるのです。

通信販売で考えれば次のような仕事の単位を作ることが出来ます。

カタログ種類決定、カタログ概要決定、顧客開拓方法決定、新規登録、
カタログ請求受付、DM方法決定、販促の決定、DM抽出、
宛名ラベル印刷、封入封緘作業、カタログ配送、注文受付、与信管理、
問い合わせ受付、クレーム対応、売り場決定、商品収集・商品開発、
商品決定、価格決定、商品掲載決定、コピー決定、
カタログ制作納期管理、カタログ制作・校正、商品計画数決定、
初回発注、受注予測、必要数決定・追加発注、商品納期管理、検品、
検収、商品引き当て、商品補充、商品発送作業、商品配送、入金処理、
督促、売り掛け処理、返品受け付け、返品再加工、商品転売、
商品価格変更

この他にも資金繰りや会員制度の運用などがありますが、企業によって
在り方がかなり変わって来ます。

2.業務の評価
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このような業務について、それぞれ業務の評価をする指標を作る必要が
あります。例えばコールセンターでの受注業務について考えてみましょ
う。注文を受けるオペレーターの評価にも色々な方法があります。一般
的なのは、電話の件数と電話の内容のチェックでしょう。コールセンタ
ー全体の完了呼率だけでなく、オペレーター単位にも処理件数を調べる
ことができます。日々の処理件数は基本的な評価項目になります。電話
の内容は3者通話や録音で調べることができます。全数調査は無理です
が、抜き出し調査で内容を調査します。
この他に処理の売上高で評価する方法があります。特に電話によるアウ
トバウンド業務が多い場合には使われる方法です。本来の目的から言え
ば、売上高で量る方法が理にかなっていますが、諸刃の剣になるケース
が多いようです。アウトバウンドの成果を売上高で量ると、どうしても
セールスが押し込みになり勝ちです。かえってお客様に不快感を持たれ
るケースが出てきます。このため、お客様の継続注文数で量る方法も
実践されます。1回の注文を取るだけでなく、その後のお付き合いを
評価する方法です。実際に測定するのは難しいのですが、オペレーター
を地域担当制にしたり、顧客担当制にしたりして計測をします。現在の
ACD機能では地域担当や顧客担当制も出来ますが、規模がある程度
以上にならないと実施は難しい方法です。地域担当制の場合には、オペ
レーターが率先してその地域の話題を研究したりというメリットがあり
ます。中には肉筆の手紙を商品に同梱したりする場合も出てきます。

このように業務の評価を何で量るかによって、評価される側の採る行動
も変化してきます。業務を如何に評価するのかは大きな課題です。

3.可変に出来る項目
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業務を表す指標は評価基準として大切ですが、もう一つ意思決定のため
の情報という意味があります。企業側で可変にできることがあれば、
その判断のために使う訳です。オペレーターの人数を決定する、カタロ
グの部数を決定する、分割出荷の基準を決定するなど、決めなければ
ならないことが沢山あります。一度決めれば終わりというものでもな
く、業務の状態を観察しながら変化させて行く必要があるものです。
先ほどの仕事の単位に即して可変にできる項目を考えてみましょう。

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 業務の単位  |      可変に出来る項目
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カタログ種類決定|統合・廃刊・創刊
カタログ概要決定|部数・ページ・サイズ・紙質・発送時期
顧客開拓方法決定|開拓方法・媒体・開拓時期・規模の変更
新規登録    |人員増減・ハガキ形態・受付方法・作業手順
カタログ請求受付|人員増減・作業手順変更・選択カタログ変更
DM方法決定  |抽出方法・発送時期・配送方法・組み合わせ
販促の決定   |販促方法・対象・時期の変更
DM抽出    |人員増減・作業手順変更
宛名ラベル印刷 |人員増減・外注比率・印刷方法・作業手順
封入封緘作業  |人員増減・作業手順変更
カタログ配送  |業者変更・ペナルティ設定
注文受付    |人員増減・ハガキ形態・受付方法・作業手順
与信管理    |与信基準変更・作業手順変更
問い合わせ受付 |人員増減・回線増減・作業手順変更
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まだまだ色々なものがありますが、企業側で可変に出来る部分を予め
明確にしておくと打てる手がハッキリしてきます。企業側で変更をする
ために必要になる情報もハッキリしてくるのです。

4.意志決定に必要な情報
============

マーケティング部門に限らず、通常業務の中でも色々な意思決定がある
ことが分かりました。企業側で可変に出来る事柄については意思決定の
ための情報が必要になります。必要な情報を業務指標として常に変化を
観察する必要が出てきます。次にフルフィルメント業務について、意思
決定に必要になる情報例をあげてみます。

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   分野  |集計単位|  対象  |    項目
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郵便物の前処理|仕分け |登録、受注、|受付数、処理数、未処理数
       |    |問い合わせ |最古日付、作業者数
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電話受付   |時間  |問い合わせ、|全呼数、完了数、溢れ呼数
       |センター|受注、   |回線数、折り返しTel数、
       |    |アウトバウンド|作業者数
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
入力処理   |入力形態|登録、受注、|回付数、処理数、未処理数
       |    |問い合わせ、|最古日付、作業者数
       |    |アウトバウンド|
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
審査     |拒否理由|伝票数、金額|審査数、未処理数、拒否数
       |不良月数|      |最古日付、不良残金額、
       |    |      |拒否金額、作業者数
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
EDP部門  |理由別 |登録、受注 |受付数、処理数、
       |    |      |リジェクト数
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
商品手配   |商品別 |SKU必要数  |入荷予定数、
       |    |      |最長リードタイム
       |    |      |最小納品ロット、最古日付
       |    |      |受注進捗率、分割出荷数
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

このような情報の中から判断に必要になるものを分かり易い形で指標化
していくことになります。

5.判断の階層
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全ての指標を一人の人間がチェックすることは出来ません。判断も一人
が全てを判断することも出来ません。判断に階層を作る必要が出てきま
す。担当者がすべき判断、管理者がすべき判断、経営者がすべき判断と
いう3階層が普通でしょう。判断に必要な情報も同じく階層になって
きます。経営者向きに全体が把握できるような情報を集約してアウト
プットすることも必要になってきます。
あるいは担当者の日報を管理者がまとめて整理することも必要になって
きます。判断の階層を分けて、必要な情報も階層化して変化をチェック
することになります。

このように業務の指標を作り管理することが必要になります。業務の
指標を算出するためにはデータが必要になってきます。データ活用の
一つの形として分析だけでなく、業務指標という考え方があるのです。
ただし業務の指標はあくまでも企業の立場に立ったものです。出来れば
お客様から見た指標を考える必要があります。欠品率や返品率は通常、
商品単位に集計されますが、お客様から見れば自分の注文がその企業と
の100%の係わりです。たとえ欠品率が1%であっても、欠品したお客様に
は100%の欠品です。商品で集計するよりもお客様の分布で見る必要が
出てきます。また平均値というのは判断を誤る元です。集計単位には
気を付ける必要があります。

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今週のお勧め書籍:社長のための情報学(松村和男氏)
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この本の内容は、元々経営者向けの情報誌『繁栄の泉』に連載された
ものです。分かり易くてためになる内容が詰まっていると思います。
1988年初版ですが、内容は厳選されたものだけに時間に風化してしまう
ようなものではありません。全員賛成ならやらない、などイスラエルの
格言に即したものもあります。情報の基本的な考え方として参考になる
本です。

今週のキーワード:目的と目標
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将来こうなりたい、という目的を持って私達は日々活動しています。
ミサイルであれば照準に当るものでしょう。具体的に活動するためには
途中通過点になる目標を持つ必要があります。途中で方向を確認して
微調整を行うためです。目的は時代によって変わらないもの、目標は
時代の変化によって変わっていくものだと思うのです。業務の指標管理
も言わば目標の体系化と言うことが出来ます。常に変化を察知して次の
手を打つために目標が必要になるのだと思います。
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作:発行/岩瀬 理(osamu iwase)

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