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実践データベースマーケティング(第18号)
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実践DBMの岩瀬です。またご無沙汰してしまいました。今回はお客様
との接点になる媒体について考えてみたいと思います。お客様との接点
では店舗や営業マンがありますが、今回は情報伝達のメディアについて
のお話しです。

●○  目次  ●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

0.媒体特性
1.新聞折り込み
2.テレビ・ラジオ
3.雑誌
4.定型郵便
5.カタログDM
6.電話
7.FAX
8.電子メール
9.Web

今週のお勧め書籍:ポスト資本主義社会(P.F.ドラッカー)

今週のキーワード:予測は2度おいしい

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0.媒体特性
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お客様への情報発信のメディアには様々なものがあります。メディアの
変化は驚くほどのスピードです。電話の普及率とFAXやインターネッ
トの普及率を比べてみるとそのスピードには格段の差があることが
分かります。

表1.日本でのメディアの普及率10%までの期間
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|通信メディア  |年数|
|−−−−−−−−−−−|
|インターネット | 5年|
|パソコン    |13年|
|携帯・自動車電話|15年|
|ファクシミリ  |19年|
|無線呼出し   |24年|
|電話      |76年|
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企業においても媒体のミックス効果を考えなければならなくなっていま
す。単体の媒体の効果が相対的に低くなってきています。お客様が日々
受け取っている情報量が増えたために記憶に残り難くなっています。
そこで情報発信でも全体最適を考えたマーケティングが求められていま
す。例えばテレビと新聞折り込みチラシを連動させたり、DM後にテレ
マーケティングでフォローする方法が取られています。また口コミを
誘発させるためのマーケティングは地味ですが効率の良い方法という
ことが出来ます。

1.新聞折り込み
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新聞折り込みチラシは集客目的や通販で使われています。折り込み部数
と集客や販売実績から効果を測定することが出来ます。一般にはエリア
マーケティングということになります。効率の良い地域や曜日・日を
検証していきます。或はチラシの表現を複数用意して実験することも
あります。折り込みの1回毎に企画コードをつけて統計的に傾向を掴む
ことが出来ます。
特に通信販売では新規顧客を取り込む媒体として位置付けていますが、
継続して使うと既存のお客様からの反応も大きくなっていきます。通販
会社ではお客様の
『名寄せ※』をしていますから、まったく新しいお客
様なのか既に取り引きのあるお客様なのかを掴むことが出来ます。また
既存のカタログ販売との影響度合を調べることも出来ます。該当地域の
広告量と販売量・カタログ配布の時期をずらしながら検証することで
影響度を求めることが出来るのです。
広告は1回きりでなく繰り返し行ないますから統計的に検証するための
分類が必要です。どの新聞を使ったとか曜日・チラシの訴求パターン・
競合の広告状況などを記録しておくと、自社の折り込みチラシの傾向を
求めることが出来ます。

『名寄せ※』同一のお客様であると判定すること。以下のような目的で
行われる。
●物流の効率化(同じところに複数の販売促進を行わないように)
●債権管理(過剰金・未入金・予信管理など)
●販売情報の活用(問い合せや過去の受注履歴を正しく把握する)

2.テレビ・ラジオ
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テレビ・ラジオは折り込みに比べるとエリア展開をし難いものになりま
す。地方局を使う手もありますが、関東に集中する場合などは全国展開
とあまり変わらないコストになってしまいます。近年はスポンサーと
して定期的に広告するよりも一時期に集中してスポットを流す方向に
あると言えるでしょう。
テレビの効果は把握し難いのが現状です。短い枠では実際に販売まで
行なうのは至難の技ですから、テレビ・ラジオで知名度を上げて他の
媒体に連動させるのが定石と言えます。ただし、これも近年増加傾向の
インフォマーシャルがあります。今後テレビが多チャンネル化していく
中でどんな広告活動が展開されるのか楽しみでもあります。

3.雑誌
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雑誌の場合、通常はエリアではなくライフスタイルやライフステージで
のターゲッティングになります。読者層を考えた出稿になります。例外
としてはタウン誌があります。選ぶ雑誌によってレスポンスはかなり
変わる媒体です。ハガキを付ける、見開きで展開する、記事と連動する
など色々な実験が行われました。現在では実売部数は減少傾向で、
ロットが小さくなって来ています。企業によってカタログ請求やサンプ
ル請求・実際の販売・記事広告など出稿の仕方も色々です。

4.定型郵便
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大判のカタログと区別してリーフレットなどと呼ばれるものです。元々
は紙代や印刷費用・郵送料の問題から薄いカタログを区別して来まし
た。送付先の住所・氏名などがないといけない訳ですが、自社リストだ
けでなく各種名簿を使うことが出来ます。10年前と比べるとリスト業者
も多くなりしっかりした管理をしているようです。ただし『なぜ私宛て
に届いたのか?』という反応は起こります。外部リストを使う場合には
そのための対応方法が必要です。
郵便の場合には定型料金・冊子料金などがあります。加えて広告割引が
ありますので、部数によって料金は異なります。また第3種郵便もあり
ます。冊子の制作費よりも郵便代金の方が高くなってしまいますので、
コスト管理が重要です。

この他にカスタマーバーコードによる割引制度があります。現在番号は
7桁ですが、11桁までの所定のコードに変換してバーコード印字すれば
他の割引とは別枠で5%の割引を受けることが出来ます。カスタマー
バーコードを印字するにはシステムが必要になりますが、DMを日常的
に使う企業では対応しておきたいものです。

5.カタログDM
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元々は郵便で行われたのでDM(ダイレクト・メール)ですが、現在で
は宅配が増えて来ました。重量と部数によっては既に郵便よりも安く
なっています。転居情報は郵便局の方が把握していますが、コスト
パフォーマンスは良いようです。リーフレットでもハガキDMでも同じ
ことなのですが、着荷確認という作業があります。全数を調査するのは
コストもかかりますが、抜き取りでも良いので次のような項目の調査を
しておきたいものです。実際にお客様に届いているのか?到着までに
何日かかっているのか?着荷時の状態はどうか?などです。これらは、
もちろん商品発送でも同様のことです。顧客リストを使うビジネスでは
古くからダミーリストやモニターリストを使って来ました。元々は他社
とリストの交換をする場合に、契約以外の使われ方をしていないかどう
かを調査するためのものでした。山田一郎さんという人がいれば、住所
や電話番号はそのままで山田一男などという架空のリストを作るので
す。もしも架空の山田一男という宛先でDMが来たり電話が来れば、
情報の元がどこであるかが分かるのです。現在ではリスト交換用だけで
なくサービスの品質管理をするためにも社内モニターによる調査を行い
ます。地域的な問題まで調べたければ、知人や取引先にも協力してもら
ったりするのです。電話回線の込み具合を定期的に調査したり、物流の
滞留時間・着荷状態などを調査することになります。

6.電話
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米国では個人相手のアウトバウンドコールに規制をする州がいくつか
あります。カリフォルニア州もその一つですが、結果的にテレマーケテ
ィングを
BtoB※へシフトさせる現動力ともなりました。電話は使い方
によっては非常に有効な方法ですが、もし活用方法に工夫を加えない
なら現状ではコストのかかるメディアであると言えます。それは通信費
だけでなくオペレータの人件費にも問題があります。効率の良いテレ
マーケティングの仕組みや付加価値を生む活用法を加えないと、
せっかくのテレマーケティングが生きてこないのです。現在では技術の
進歩で様々な改善策が提案されていますが、実際に巧く使いこなせて
いるのはごく一部のようです。
自動分呼(ACD)の技術はここ10年ほどで飛躍的に伸びましたが、実際に
はどんな仕組みに生かすのか試行錯誤のケースが多いようです。お客様
の発信番号地域で分けるのか、お客様によって担当オペレータを付ける
のか、空いているオペレータを優先的につなげるのか、オペレータの
スキルを考慮に入れるのか、音声応答などを入れて分岐させる技術も
入れるのか、などという選択肢があります。
実際の運用面では地域制や顧客担当制のオペレータというのは、ある
程度の規模に達しないと実現出来ません。どこまで行っても最終的に
人間の判断が入り込んでしまう以上、オペレータのセンスや自覚・技術
を上げるための訓練が必要になります。

BtoB※ Business to Business の略で法人向け販売のこと

7.FAX
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FAXを使ってお客様とのコンタクトを取る方法も結構使われます。FAX
ボックスだけでなくFAXでのDMもあります。鮮度を求める商品や価格が
変動し易い商品に良く使われます。ただしお客様のFAXの用紙を使いま
すし、DMを送る間回線を占有してしまいますので、会員制を取るのが
一般的です。他にもFAXでモニターを組織化する例もあります。こまめ
にお客様の意見を取り入れられることから定期的な調査などに向いて
います。

8.電子メール
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FAXの形式を進化させたものが電子メールでしょう。こちらもお客様の
電話回線料金を使いますから、企業としてはコストが安くて済みます。
今までのDMの理論では上手く機能しない媒体です。通常のDMは固定費と
変動費を合わせた総コストと、予想レスポンスで計画を立てます。予算
的に10万部のDMしか打てないのであれば、当然レスポンスのありそうな
お客様から送付対象として選んで行きます。このため部数の変化によっ
て収穫逓減の法則が成り立ちます。利益に出るDM部数というのを試算す
ることが出来るのです。こういう考え方からRFM理論が生まれました。
ところが、電子メールでは媒体制作費用やDM発送費用がほとんど固定費
のみです。沢山出せば出す程、効率が良いということになります。
ですからRFM理論は通用しません。逆にお客様は自分に不用なメールは
ジャンクメールとして送信を拒否します。コンテンツがお客様に合った
ものでなければ受け取って貰えないのです。一般の紙DMでもその傾向は
ありますが、電子メールの場合は配信拒否が顕著です。このため商品
ありきのマーケティングから、お客様が望むものは何か?というマーケ
ティング形態に近づきます。キーワードとしては、

●お客様が選択する権利を持つこと
●お客様が情報を探す手助けが出来ること
●お客様の代わりにお勧めを見つけること
●自分用にカスタマイズされているという印象を与えること
●ラジオのDJのような温かみを感じさせること

などが上げられます。私は昨年電子メールでの販促実験を続けていまし
たが、紙DMとは似て非なる世界だと感じました。また返信し易いこと
から、お客様の情報を取り込んでコンテンツに生かしていく仕組みが
必要だと思います。他にもWeb連動や形態端末への適用などまだまだ進化
を続けています。

9.Web
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Webの場合には集客型の媒体になります。言わば店舗です。ただし検索
エンジンなどを使えば低コストでオープン出来ますし、コンテンツ次第
で企業規模に関わりなく集客することが出来ます。チャンスの大きい
媒体とも言えます。現在のところ販売というよりは情報収集の媒体とい
うイメージの方が大きいですが、徐々に変化してきているように感じ
られます。Webの場合でもパーソナルWebの実例が幾つも出てきました。
また電子メールと連動させるケースも大変に多くなっています。
即時性・検索性に富みますから、調査のための媒体としても有効です。
アンケートをする場合にも、本調査をする前にWebを使うことがお勧め
です。料金も安上がりですし、何よりも調査が速いという利点がありま
す。後から、『あの質問を入れておけば良かった』ということがない
ようにネット上で予備調査をしておくのです。

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今週のお勧め書籍:ポスト資本主義社会(P.F.ドラッカー)

有名なドラッカー博士の本です。読んだ方も多いと思います。未来を
的確に読むだけでなく人間への優しさに満ちた人だと思います。文中、
特に次の個所が好きです。
『目指すべきは、組織に働く人間全員を責任ある存在にすることで
 ある』
ウォルマートが急成長している時にも同じような言葉が使われていまし
た。ノードストロムのルールにも同じようなものがあります。双方とも
厳しい企業ですが、個人が自分で考えて積極的に参加するべきという
姿勢を持っています。ノードストロムの社員マニュアルには次のように
書かれています。
『ノードストロムの最大の目標は、かけがえのないカスタマーサービス
 を提供することにある。その達成のためには、いかなる場合でも、
 あなたが最善だと確信する行為を自分で意思決定し即実行しなさい』


今週のキーワード:予測は2度おいしい

私は良く古本屋へ行きます。読書量も多いので財布と相談して、という
ことなのですが、面白い楽しみ方があります。未来予測というような本
は古くなると二束三文になってしまいます。こういう本を結構買って
います。もう過ぎ去った話ですから答えが出ています。どんな読み方を
して結果はどうなったのかというのを見ています。何が原因で予測と
変わってしまったのかとか、何を機軸に見たから予測が当ったのかとい
うところを見るのが好きなのです。
商売上でも予測は日常業務です。ある程度の予測は何事にもついて廻り
ます。予測するということは何かの判断をしている訳で、後から振り返
ると思いもよらない結果になっていたりします。どんな現状把握や
どんな考え方があるのかというのを後から検証してみるのも味わい深い
ものです。

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またまた発行が遅くなってしまいました。本当に申し訳ありません。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

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作:発行/岩瀬 理(osamu iwase)

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