深田久弥 山の文化館


平成14年12月にオープンされた加賀市大聖寺にある深田久弥の山の文化館に行って来ました。大聖寺(だいしょうじ)は深田久弥の生まれ故郷で戦後もしばらくこちらで生活をしたようです。そのためか生家跡や彼の石碑が町の至るところに残されています。今回の山の文化館も元は絹織物工場であった建物を少し改装して彼の遺品(ダウンジャケット、テント、山スキー板、遺稿など)や全国から寄せられた深田執筆の書籍・山岳図書を集めて館内に展示しています。


平成16年2月、JR北陸線高岡駅から単身で飛び乗り金沢駅で下車、そこから普通便に乗り換えて約50分程で大聖駅に着きました。ここは福井県との県境、加賀市役所のある町で加賀温泉の次の停車駅になります。駅前通りは昼間でもわりと交通量は多く、田舎びた町という感じはしませんでした。駅から徒歩15分程で大聖寺番場町にある山の文化館に到着。

絹織物の工場跡だったらしい白壁の建物や囲いがあり、切妻造の腕木門には「山の文化館」と書かれた表札がかけられていました。門から敷地に入ると、西洋建築の影響を受けた木造二階建の古い建物が正面に(事務所棟)、その東側には木骨石造二階建の石蔵が建っていました。明治43年に絹織物工場として建てられてた旧「山長株式会社」の建物を改装して文化館にしたようで、平成14年12月にその事務所棟・石蔵・門が国の登録有形文化財になりました。

館内に入ると平成17年3月31日までは無料ということでただで入館。係りの人が事務室からわざわざ出てきて、文化館ができた経緯や館内の展示品の説明などをしてくれました。

パタはまず最初に生糸の保管庫として使われていた石蔵にある展示室に入室。館内のどの部屋も土足を脱いでスリッパで上がることになっています。部屋には深田愛用のテントやダウンジャケット、海外遠征時のパスポート、深田直筆の原稿が展示されていました。原稿を覘いてみると「祖母谷温泉」(ばばだにおんせん)と書かれた原稿がファイルに収められていました。あの黒部峡谷の奥地にある富山の祖母谷温泉のことです。剣岳に登った帰りに立ち寄ったのでしょうか?さらに部屋の外側には彼の生い立ちを記した年表や日本百名山のDVDシアターのTVがあり、ここでゆっくりと遊んで過ごせるスペースを作り出していました。

年表によると彼は大聖寺で生まれ育ち、旧制・福井中学(福井市)、一高、東大と進み、作家志願のため東大を中退して、鎌倉に移り住んだようです。昭和初期の文豪、川端康成、小林秀雄、広津和郎らとの交流。その後は結婚、出兵、終戦、家族を連れて大聖寺へ帰省、金沢、東京と移り住み、波乱の昭和の激動期を過ごしました。しかしこの激動期の中でも山に対する憧憬は深く、日本のみならず海外遠征も果たして様々な山を歩き続けました。彼の最期は茅ヶ岳登山の最中、脳卒中によって亡くなったそうです。享年まさしく山の作家にふさわしい一生でした。

次に入室した部屋は2階にある談話室で襖で仕切られた部屋が3部屋あり、そのうちの一番大きな部屋には囲炉裏と座椅子、本棚、ビデオ鑑賞をするためのTVが置いてありました。また床の間には深田愛用の山スキーの板とストック、かんじき、わらぐつが展示されていました。ふとガラス戸越しに外を見ると電線の向こうに白山が。。。でも住居の屋根や電線がじゃましてちょっと雰囲気がまずかったです。

階下に下りて最後に入室したのは図書室です。ここには日本全国から寄せられた山岳書籍や深田久弥執筆の図書が置かれていました。そして部屋の真ん中には大きな机と椅子、隅の方にはDVD鑑賞ができるTVと机がありました。ガラス戸付きの本棚には深田執筆の図書が置かれていて最近、発行されたものからかなり昔のものまであり、深田のスペースを作り出していました。パタの場合、丸一日、ここにいてもあきませんねぇ。

でも電車の時間を気にして、この日は早々と退室することに。帰りに受付で深田久弥の記念切手を買いました。生誕100周年の切手だそうです。山の文化館を出た後は加賀市役所の屋上に登って加賀の白山を撮影。この日は雲一つない晴天で山はまずまず見えたのですが、ズームを上げないと大きく写る距離ではありませんでした。
しかしここで生まれ育った深田は冬の晴天時に大聖寺から仰ぎ見るこの白山にとても感動し、この山が彼の登山の原点となりました。パタも13年前に登った夏の白山が登山の原点です。

パタはとりあえず加賀温泉郷ならもっと間近に見えるかもと判断し、JRを使って加賀温泉駅で下車。確かに大聖寺より大きく見える、見える。。。感動のあまり国道沿いの雪の積もった歩道を歩きましたが、下から見るのはやはり写りが悪い。さっと周囲を見渡すと平和堂の屋上駐車場辺りに目がいき、そこから写すことにしました。
さすがにここが一番写真写りが良かったです。日の出の瞬間なんかもこの加賀温泉郷から撮るのがいいでしょうねぇ。何しろ加賀温泉駅には白山の全容を写した大きな写真が展示されているのですから。加賀温泉は温泉と観音と白山の見える町です。


  

(左)山の文化館・事務所棟(右)加賀温泉駅前から見た白山


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